ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

大平池

2024-01-14 08:00:00 | 三重県
2023年11月26日 大平池

大平池は三重県伊賀市山畑の淀川水系滝川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
伊賀市のある伊賀盆地は豊かな地味と寒暖差の大きな気候を生かし江戸時代より良質米の産地となっていました。
一方で年間降水量は1200ミリ超の少雨地帯であり加えて大河がないため水源をため池に求め、現在も市内に約1400基のため池を有す県内屈指のため池密集地帯となっています。
大平池もそんなため池の一つで、ダム便覧には1979年(昭和54年)に三重県の事業で竣工と記されています。
しかしこれは現地改修記念碑に刻された県営の老朽ため池等改修事業の竣工を指すもので、関係者の話では昭和初期に築造されたようです。
管理者は伊賀町土地改良区ですが、実際の池の管理は伊賀地方で『井子(いご)』と呼ばれる受益者組織が行っています。
また約1キロ下流にある田代池とは上下池のような位置関係ですが、それぞれの池ごとに受益農地は明確に区別されています。

田代池と大平池の位置関係(国土地理院地形図より)


大平池に通じる車道は下流の田代池手前から通行止めで徒歩でのアプローチとなります。田代池から貯水池湖畔沿いの遊歩道を進み、廃止された大阪市伊賀青少年野外活動センターの廃墟をやり過ごすと大平池に到着します。
右岸に洪水吐があり、それを跨ぐように管理橋が架かります。 

 
洪水吐導流部
このまま下流の田代池へと流下します。

 
上流面。


洪水吐越流部。

 
右岸湖畔の改修記念碑と水神。
こちらは1979年(昭和54年)の県営老朽ため池等改修事業の竣工記念碑でダム便覧ではこれを竣工年度としています。
工事協力者として三重県、伊賀町(現伊賀市)、大阪市の名があり青少年野外活動センター建設に合わせて池の改修が行われたようです。

 
天端入り口には関係者以外立ち入り禁止と書かれていますが、今回は事前に立ち入り許可を頂きました。
天端は芝生のようにきれいに草が刈られています。
また貯水池側にはかつて野外活動センターがあったためか、ガードレールが設置されています。

 
左岸に池栓がある一方、湖面からも取水用と思われるパイプが伸びています。
放流量を増やすために増設されました。

 
総貯水容量14万立米の貯水池。

 
下流面もきれいに草が刈られています。
土地改良区の話では、草刈は年に一度だけ、シカが草を食みこのような状態になったそうです。

 
左岸から上流面
花崗岩の谷積で護岸。


左岸の階段式池栓
チェーンは新しくこちらも取水設備として機能しています。

 
池の下に下りてみました。
堤高は15.4メートル(ため池データベース)
底樋管を探しましたが見つかりませんでした。

 
基部は石積。

 
帰宅後改めて土地改良区に両池の運用について問い合わせてみました。
大平池の水は田代池経由で滝川に放流されますが、両池の水利権は明確に区別されそれぞれ下流の取水堰から受益農地に補給されるそうです。
当然池の管理や維持・整備についても両池それぞれの井子によりに行われているとのこと。
 
1256 大平池(2029)
ため池コード 242160549
三重県伊賀市山畑
淀川水系滝川
15.1メートル(ため池データベース 15.4メートル)
124メートル
140千㎥/126千㎥
伊賀町土地改良区
1979年