鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

選挙の出口調査の裏側を知ってなるほどと思った

2009-10-08 | Weblog
 先日、東京・神保町の古本屋街へ行き、交差点近くの岩波書店をのぞいたところ、朝日新聞社発行の「Journalism」なる冊子が置いてあり、世論調査を特集していた。小泉首相の登場以来、政局の節目に世論調査の動向が大きく関わっていることが多くなり、かねて関心を持っていたので、早速購入して読んでみた。なかでも興味が引いたのが出口調査について、共同通信社の担当者が書いていた「午後8時1分に当確を打つ出口調査の手法」で、精密なからくりがよくわかった。
 同記事によると、共同通信の衆院選出口調査は6000人の調査員が300小選挙区と11ブロックを対象に投票日の午前7時から午後6時まで実施する。各選挙区とも24投票所で調査し、1選挙区当たり1000サンプル、合計30万サンプルと膨大な数にのぼる。1つのサンプルには質問4つと性別、年代のほか都道府県、選挙区、投票区など11~12項目あり、全体で360万のデータとなる。
 圧巻はこれを携帯電話で入力し、東京・汐留本社のコンピュータで受け、分析していることで、電波の届かない山間部では公衆電話でオペレータに連絡し、オペレータがパソコン入力する手法をとっている。
 一般のアンケート調査で最低必要なサンプル数は300とされている。300あれば平均的な声が集約できる、という経験的なもので、言われているのだが、出口調査の場合、1選挙区当たり1000サンプルと300をはるかに超えているので、ほぼ正確な動向がつかめる、と見ていいだろう。
 この出口調査で欠けているのが今回の衆院選でも20%近くにのぼった期日前投票と午後6時から午後8時までの投票動向が反映されていないことだが、いずれもメインの調査とほぼ変わらない、傾向のものであることが順次立証されてきている、ともいう。
 最大の問題はこの経費が調査、および集計あわせて10数億円と巨額にのぼることで、共同通信ではこれを在京の民放キー局4社と組んで分担している、という。それで、日本テレビ、TBS、フジ、テレビ朝日のいずれもがNHKと似たような選挙速報を流している理由が判明した。テレビ局にはとてもNHKのような人海戦術をとって調査できるようなスタッフはいないので、どうしているのかな、という疑問が解けた
 今回の総選挙での選挙速報ではたまたま24時間テレビの最終フィナーレの時間と重なったこともあって、日本テレビが26.4%の平均視聴率でNHKを抜いてトップになった、というが、実質は共同通信がNHKに勝ったといってもいいいのかもしれない。
 出口調査でもっとも必要なことは調査員に対する教育・指導で、調査にあたっての細かいやり方を明記したマニュアルを作って、調査開始前に約3時間のインストラクションを実施しているほか、調査員を管理するための人も配置して、調査に万全を期している、ともいう。
 最近のテレビの選挙速報番組を見て、どうして開票前から趨勢がこんなにも的確に予測できるのか、不思議だった。新聞の出番をなくしてしまったテレビの選挙報道をガラリと変えてしまった出口調査の実態がよくわかり、なるほどと思った。「Journalism」なる雑誌が刊行されていることも知らなかったが、さすが選挙に強いと定評のある朝日新聞らしい事業である、と思った。件の号は今年8月号であるが、読者の関心が高いせいか、1カ月以上過ぎても店頭にそのまま平積みして置いてあったのも岩波書店らしい見識だ、と思った。
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