世界変動展望

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羽生、名人位防衛!-第67期名人戦第7局

2009-06-24 19:51:29 | 囲碁・将棋
第67期名人戦第7局は羽生善治が81手で郷田真隆を降して、名人防衛を果した。羽生はこれで通算6期目の名人獲得である。

最終局の第7局は序盤から両者とも長考が多くゆっくりとした展開だった。特に郷田は2日目の午後2時の時点で残り時間2時間とかなり考慮時間を使った。それだけ郷田にとって嫌な展開だったということだろう。

この対局は序盤では形勢互角と判断した人もいたが、観戦した限り序盤から徐々に羽生がリードを広げていったように思う。2日目の午後5時くらいでは形勢がわからなくなり、羽生が若干リードしているものの勝つのは容易ではないと解説されていた[1]。しかし、振り返ってみると終始郷田にはよいところがなく、一方的に羽生が攻めて郷田をKOしたような勝ち方だった。

NHK-BS2の午後8時50分~午後9時の渡辺明の解説によると、郷田はずいぶん苦しい戦いで最後の方は戦意喪失状態だったらしい。そのため周囲ではもう少し粘るのかと思っていた人もいたようだが、81手という早い段階であっさり投了となった。

本局は31手目の▲4六歩(先手は羽生)が序盤の勝負手で、新構想の勝負に持ち込んだのか勝負の鍵だったのではないかと思う。この手で全く未知の戦いとなり、ゼロから戦略構想を練る戦いとなった。こういう戦いは知識や作戦といった事前に準備できるものが活かせず、どちらがより最善手を指せるかという純粋な生の棋力が勝負を分けることが多いと思う。本局もそれが勝敗となって表れたのではないだろうか。

このシリーズを振り返ってみると、羽生が勝ち郷田が負けるように神様に仕組まれていたかのように感じる。なんといっても第3局の最終盤で、郷田がはっきりとした勝勢で勝利目前だったにも関わらず自玉に詰みがあると勘違いし誤った手を指して大逆転負けをしたのが今シリーズを通しての致命的敗戦で、第3局最終盤での郷田のミスによる敗着は今シリーズを通しての致命的敗着だった。もし第3局を郷田が勝っていたら、4勝2敗で名人位を奪取していた

「名人は神様から選ばれた者がなる。」というオカルト的な考えは非科学的で何の根拠もないとは思うが、人気将棋漫画「月下の棋士」の監修を務めた河口俊彦七段の巻末解説によれば、将棋界で一部の棋士がそのような考えを持っているのだと思う。

しかし、今回の郷田真隆のミスによる名人獲得失敗は名人獲得に何か不思議な力がはたらいているような気にさせられた。思えば昨年の第66期名人戦も第3局で森内俊之が最終盤で50年に一度と言われる大スカをして羽生が大逆転勝利し、この敗戦が結果的に森内俊之にとって致命的敗戦となり羽生が名人・永世名人資格を獲得した。案外、河口俊彦七段の言うように将棋の神様とやらがいて名人になる者を選んでいるのかもしれない。

今回の第67期名人戦は熱戦で難解な将棋が続き、第6局のように名局と呼ばれるような対局もあったので、なかなか良かったと思う。

参考
[1]"名人戦第7局。" 渡辺明ブログ 2009.6.25