東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明らの論文にデータの使いまわしなどの不正疑惑があるとされた問題で加藤茂明教授が3月末で東大を引責辞任したことがわかった[1]。朝日新聞のオンラインニュースによると
「米国の科学誌に2003年に載った論文の研究データに不適切な処理があったとして、東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授らが論文を取り下げ たことがわかった。加藤教授は3月末、監督責任があるとして東大を辞職した。この論文を含め複数の論文でデータの使い回しや加工の疑いがあるとの指摘が大学外からあり、東大は調査委員会を設けて調べている。
取り下げられた論文は、難病の仕組みを研究したもので、著名な科学誌「セル」に掲載された。加藤教授が指導監督した。取り下げの詳細な理由は明らかにさ れていないが、加藤教授らは実験結果の図について「実験データを正しく反映できていないなど不適切な処理があった」と同誌に説明している。一方、論文投稿時に加藤教授の研究チームに所属し、論文の筆頭筆者だった群馬大の教授は、取り下げに同意しなかった。[1]」
筆頭著者である群馬大学教授にも不正疑惑が持たれている。加藤茂明は辞職したのだから、事実上データ流用等の不正があったことを認めたことになる。加藤は「実験データを正しく反映できていないなど不適切な処理があった」と明確な言及を避けているが、端的にいってデータ流用による捏造、改ざんがあったということ。これは多くの人にとって予想通りのことだったろう。撤回論文の主たる研究遂行者は筆頭著者だから、おそらく不正を知らなかったでは済まされないだろう。取り下げに同意しなかったところを見ると、不正は否定しているのかもしれない。たぶんみんな信じていないだろうが・・・。こんなことやったら一巻の終わりである。せっかく東大医学部医学科を卒業して教授までなったのに。
この事件はおそらく組織ぐるみで行われたもので獨協医大の服部元教授の事件のように教授だけをトカゲの尻尾切りに使って他の者が逃げ延びるわけにはいかない。現実にはそうしようとする可能性は十分あるものの、そういう著しく道義に反する行為は絶対に阻止してほしい。疑惑が持たれたのが今年のはじめくらいだから3ヶ月程度で事実上不正が認定されたわけだ。名古屋市立大学や三重大に比べればかなり早い。研究機関もやればできるんじゃないの?もっと迅速に調査すべきである。
この問題は調査が進めばもっと大問題になるだろう。巨額の研究費返還、多くの研究者の処分などが待っていると思う。加藤も辞職しているが懲戒解雇は当然なのでアニリール・セルカンと同じで東大から懲戒解雇相当とされ退職金は支給されないだろう。おそらく加藤か不正の被疑者の一部はアンダーソン・毛利・友常法律事務所など大手の弁護士に助けを求めているようだが、高額な依頼料を支払っても責任を免れることはできない。端的にいって、裁判をやっても勝てないだろう。やる方が愚かといえる。
東京大学等は被疑者の懲戒解雇、科研費の返還など本件を厳しく処断してほしい。
参考
[1]asahi.com 2012.4.5
[2]世界変動展望 著者:"東京大学分子細胞生物学研究所、加藤茂明(Shigeaki Kato)らの研究不正疑惑について" 世界変動展望 2012.3.29