世界変動展望

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渡辺明の脅迫で三浦弘行が出場停止になった事について

2016-10-22 00:00:00 | 囲碁・将棋

スマホ不正の報道で、渡辺明竜王が「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」と述べ、調査を強く求めた事が明らかになった

渡辺明のこの発言は極めて重く、驚いた。

スマホ不正疑義で出場停止処分や竜王戦挑戦者交代が報道された時、率直にいって、年末までの出場停止は重く、グレーで処分するのは黒っぽい印象を受けた。グレーで処分するのは実質的に黒扱いしたとも言えるから、何か確実な証拠を掴んだのかもしれないとも思った。

しかし、現在まで物証が出ないのに、渡辺明の上の発言が大きな要因となって出場停止や挑戦者交代が実施された事がわかって驚いた。

渡辺明や羽生善治の発言はただの一棋士の発言とは全く重さが違う。極端にいえば首相の発言のようなものだ。今回のスマホ不正で羽生善治のツイートが報じられたり、名人戦主催者変更事件の時に羽生や渡辺の発言が報じられたのは、彼らの意見が将棋界で非常に大きな影響力を持っている事の証だ。

彼らの発言がなぜそんなに大きな影響力があるかといえば、彼らが将棋界に非常に大きな貢献をしているからだ。将棋連盟は羽生や渡辺といった天才棋士を看板にして商売をしているところだ。将棋連盟の収益は天才棋士の誕生に大きく左右される。だから、羽生善治や渡辺明のおかげで将棋連盟は大きく儲けさせてもらっており、彼らは連盟にとって非常に大切な存在だ。そういう人物の発言が非常に重いのは当然だ。彼らはただの名人、竜王よりもっと上の存在だ。

例えるなら、彼らの発言は徳川家康の発言と同様の影響かもしれない。知ってのとおり、家康は江戸幕府初代将軍で、徳川政権の誕生に最も貢献した人物だ。そのため将軍職を秀忠に譲っても大御所として絶大な権力を発揮した。本来であれば将軍の専権事項であるはずの次期将軍の決定を、隠居の身でありながら、わざわざ江戸城に出向いて、皆の前で「次の将軍は竹千代(家光)とする!」と公言し、決定した。武家の棟梁である将軍秀忠でさえ、家康の決定に逆らう事はできなかった。当時はお江の方の影響で弟の国松(忠長)を次期将軍にする考えもあったかもしれないが、さすがに家康の決定には逆らえなかった。秀忠は将軍だが何の貢献もしていないし、棚ぼたで将軍になっただけだ。関ヶ原の戦いでも間に合わず、何の役にも立たなかった。そんな人物が江戸幕府成立の最高貢献者に逆らう事ができるはずがない。

羽生善治と渡辺明の発言が非常に重いのは徳川家康の発言が非常に重いのと同じ理由で、極端にいえば将棋界の人たちは羽生善治や渡辺明のおかげで飯を食わせてもらっているからだ。

だから、今回渡辺明竜王が上の発言をしてまで強く調査を求めたから、グレーの三浦が出場停止や挑戦者交代に追い込まれても不思議ではないと思った。

しかし、今回の渡辺明の言動は正直あまり賛同できない。

確かに渡辺明はスマホ不正で被害感情が強かったのだろうし、プロの感覚では黒の確信があるのかもしれない。竜王戦の前哨戦ともいえるA級順位戦でスマホ不正を確信し、渡辺にとっては不正を行った棋士と竜王戦で戦うのは、また不正をされるかもしれないから、たまったものではないと思ったのかもしれない。また、渡辺明はA級昇級から何年も挑戦者になれず、後輩の佐藤天彦に先を越されてしまったし、年齢を考えても今期こそ挑戦者になるという強い思いがあったと思う。例年挑戦権は1,2敗がラインだから、スマホ不正で1敗したのは痛く、その影響も二度と対局したくないという思いを強くさせたのかもしれない。

しかし、上の説明のとおり、非常に重い地位にいる渡辺明が

疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない

とまで述べて、調査を強く求め、事実上強制的に挑戦者交代や出場停止に追い込んだのは賛同できない。

渡辺明の地位を考えれば、この言葉は端的にいって連盟に対する脅迫だ。

渡辺明のおかげで飯を食わせてもらっている連盟が、渡辺明に「疑念のある棋士とは対局しない。対局放棄で竜王を剥奪されても構わない。」とまで言われたら、スポンサーが一番金を出して影響力のある読売新聞である事も考えると、対局放棄で竜王剥奪なんて事態になったら、極めて甚大な損害があるのは明白だ。下手をすると将棋界の存続さえ危ぶまれる。連盟は渡辺明の要求をのまざるを得ない。

私は非常に重い地位にある渡辺明が脅迫で挑戦者交代や出場停止を実施させたのは不適切だと思う。

今回三浦弘行がグレーだったにも関わらず、竜王戦挑戦者を降ろされ、出場停止処分を受けた事からもわかるように羽生善治や渡辺明はその力の使い方によってはグレーの棋士をタイトル挑戦者から降ろしたり、出場停止にしたり、棋士生命を絶つかもしれない状態に追いつめる事ができてしまう。彼らの発言は将棋界で総理大臣の発言と同様の重さがある。だから、その言動は非常に慎重でなければならない。

確かに渡辺明は被害感情があり、棋士人生を左右するかもしれない竜王戦やA級順位戦に真剣勝負で望んでいるから、彼にとっては不正をしていると確信している相手とは対局できないのかもしれない。

しかし、将棋界における渡辺明の地位を考えると、脅迫で挑戦者交代や出場停止を実施させ、一棋士の棋士生命を絶つかもしれない状況に追い詰めるのは、やり方として適切でないと思う。

もっと正当な方法があったはずだ。

それが彼の望む結果を出せなかったとしても、それは仕方ない事ではないか。

前にLPSAの某棋士の対局放棄事件が起きた時に、記事を執筆して、いろいろ批判されたが、今回もこんな記事を書いてしまって、おそらく渡辺明ファンなどに叩かれるだろう。覚悟している。しかし、私は渡辺明に私を含めて将棋ファンの意見に真摯に耳を傾けてもらいたいと思う。

三浦弘行は社長を激怒させた平社員のような状態で、このような問題には非常に慎重な言動をするであろう羽生善治がグレーとツイートし橋本崇載も渡辺と同様に完全に黒で二度と対局しないとツイートしたから、非常に重く、同様の考えの棋士たちも複数いるだろうから、羽生善治が白黒つけられず、疑わしきは罰せずが大原則といっても、疑念を抱えて生き残れる状況でない。

一方、渡辺明もここまでやって挑戦者交代や出場停止を実施させたのだから、不正が認定されなかった時は責任問題に発展するだろう。

問題が報道された時に考えていた事態よりも、現在はずっと大変な状況だ。こんな状況になったのは前例がない。こうなった以上、尚更公正な調査は必須なので、厳正に実施してほしい。

また、将棋界が一刻もはやく通常の状態になり、発展していく事を願っている。



1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-10-22 06:31:29
私は、外部から指摘されるより前に、組織内部でしっかりと自浄作用が働いたことを評価しています。渡辺さんが決心しなければ、外部から指摘され、もっとひどい状況になっていたのではないでしょうか。
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