世界変動展望

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法科大学院協会の見解に対する意見

2015-09-21 00:58:53 | 社会

法科大学院協会の予備試験に関する意見書で次の文章があった。

『高度の専門職である医師や歯科医師等の養成について、医学部・歯学部で学ぶ過程を省略して国家試験で能力を判定するだけで足りるという意見は聞かれない。専門職を育てるためには、それにふさわしい教育課程が必要である。このことは、法曹養成についても同様に当てはまるというべきである』

医師や歯科医師等の養成について、医学部・歯学部で学ぶ過程を省略して国家試験で能力を判定するだけで足りるという意見が聞かれないのは、国家試験が簡単でほぼ1発合格し、1発合格でなくてもそれに近い回数での合格が保証され、就職先が確保され、その制度で優秀な人材がそこそこ輩出する事が確立してるからです。医師や歯科医師等の養成は、法曹界のように専門職教育課程が主流なのに非常に難しい試験なんてバカな事をやらないんですよ。医学部生や歯学部生はサークル活動やバイトをよくやってるでしょ。医学部生等の学ぶ量がかなり多いのは確かですが、彼らの学校生活は理学部や経済学部の学生と大して変わりません。法科大学院生のように死にもの狂いで試験に偏った勉強やってる人なんていません。私立医学部は法科大学院の学費の約10倍ですが、これで新司法試験のように非常に難しい試験にしたら、誰も進学しないだろうし、今の法科大学院と同じ状況になるでしょうね。予備試験のように専門職教育の過程を省けるなら、誰でもそっちの方を目指すし、その方向を拡大しろと要求するに決まっているでしょう。それに、そんな環境の専門職課程で学生が安心して学校が求める能力を伸ばす事に努めるのは非常に難しいでしょう。

前も言いましたが法科大学院を中核とした司法試験制度にするなら、簡単に言えば新司法試験を簡単にしないとうまくいかないんですよ。新司法試験が旧司法試験と余り変わらない非常に難しい法的学識を問う内容だから、法科大学院生はみんな試験に偏った学習を必死でやっている。試験に受からないと何百万円という学費や数年の時間が無駄になるわけだから、そうなって当然でしょう。今のような試験に偏らざるを得ない状況で、臨床だの外国法だの一生懸命やれ、試験に偏らず幅広い能力を伸ばす努力をしろ、というのは不条理だと思います。

前も言いましたが、現在の新司法試験が要求する法的学識の水準は旧司法試験かそれに近いもので、これは大卒後平均して5、6年試験に偏った学習を死にもの狂いでやってようやく身につくレベルです。東大や一橋大等は旧司法試験で短期合格できるような優秀な人たち集まってるから大卒後2、3年の学習でも合格率が高いのでしょうが、彼らだって死にもの狂いで試験のための勉強をしてようやく合格している事は変わりません。他の法科大学院だったら、尚更そういう努力をしないと無理でしょう。旧司法試験並の法的学識に加え、臨床だの外国法だの、実務、プロセス重視の学習、幅広い能力を身につけるなんて、スーパーマンじゃないんですから、できるわけがないでしょう。そんな法律一辺倒の環境で多様なバックグランドの人たちが法科大学院にくるわけがないでしょう。

法科大学院協会は予備試験のあり方を批判していますが、多額の費用や時間だけでなく、非常に難しい新司法試験のために法科大学院自体がほとんどの受験生から求められていない事をわかっていると思いますが、もし法科大学院制度を維持したいなら、予備試験よりも新司法試験自体をもっと簡単な内容にするように要求しないと、いずれ崩壊するでしょう。非常に難しい司法試験をやってるのに、多額の費用と時間をかけて法科大学院に進学して死にもの狂いで試験に偏った学習をせざるを得ない。法科大学院の実務やプロセス重視の学習なんて実力を伸ばす努力をやってる余裕が全くない。これでは「国家試験で能力を判定するだけで足りる」という意見ばかりになるのは当たり前でしょう。あなたが受験生なら、多額の費用や時間をかけてそんな環境の大学院で学びたいですか?

前も言いましたが、旧司法試験と同じそれに近い法的学識をもった法曹を求めるなら、法科大学院はすぐにやめて旧司法試験かそれに近い制度にした方がいいです。たとえ法科大学院の定員と新司法試験の合格者を釣り合わせ、予備試験を廃止したとしても現在のような新司法試験をやるなら法科大学院は無意味だと思います

一方で法科大学院を維持するなら、新司法試験は簡単にした方がいいでしょう。そもそも法科大学院協会が言う法科大学院の趣旨からは旧司法試験に比してずいぶん低い法的学識を問う試験にするのは必然だと思います。大卒後2、3年の実務やプロセス重視の学習でそれらの能力を伸ばしつつ、旧司法試験や新司法試験で要求される大卒後5、6年試験に偏った必死の勉強だけやってようやく身につくレベルの法的学識を身につけるのは無理だからです。多様なバックグランドの人たちを迎え入れたいなら尚更ですね。

前も言ったとおり、即急に求める法曹像を決めて、旧司法試験と同じかそれに近い法的学識を持った人物を法曹にしたいなら法科大学院を即刻廃止し旧司法試験かそれに近い試験にする、法科大学院を中核とした司法試験にするなら、少なくとも法的学識の点では現在に比べて新司法試験を随分簡単にしないと悪い制度のままで、多くの人にとって不利益が出ると思います。

前もいったとおり、私は総合的な能力向上の点で新司法試験を簡単にして法科大学院制度を維持する制度の方がいいと思います。法曹も試験ではなく結果で評価されるべきです。そのためには試験に偏った学習をして難しい試験を通った人物よりも、今の司法試験より法的学識は低くても総合的な能力が高い人物を法曹にした方がいいと思います。試験勉強だけできるタイプは使い物にならない事が多いし、人や人生を扱う職業なら、尚更総合的能力が高い人物が法曹になった方が多くの国民が幸福になるのではないでしょうか。法科大学院協会も言うように、医学部・歯学部で学ぶ過程を省略して国家試験で能力を判定するだけで足りるという意見は聞かれないのは、そういう過程で専門職人を養成しても優秀な人物を輩出できるからです。法曹界でもそれができない道理はないと思います。私は新司法試験が簡単でも、そちらの方がいいと思います。



1 コメント

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どの業界も、なんと言いますか (Unknown)
2015-09-21 22:17:18
法曹界は変わらないし、変えたくないと思いますが。
結局、裁判官、検察官、弁護士、そして
官僚はつながってますし、大学教員のポジションは
リタイア後や天下り先で、これまたつながっています。
仲良くみんなで、グタグタ制度をいじって、
改善しているフリでしょう。

それと医歯薬系の国試はですね、
私立はとくに、大学の最終学年は、
大学が雇った予備校講師の、国試の対策授業だ、
合宿だで、受験テクニック取得三昧。
トンデモない医療従事者が、数多く養成されてます。
(現場をみたら、病気になっても、
病院に行こうと思わなくなるかも?)

どの業界も似たり寄ったり。
正直に仕事すると、バカをみるようですよ。
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