世界変動展望

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マジックミラーの原理と構造

2009-05-03 00:13:09 | 物理学・数学

一方からは鏡のようにしか見えないが、反対側からみると透明で向こう側が見えるマジックミラーは不思議に思える。物質が透明ならどちら側からの入射光も透過するし、不透明ならどちら側からの入射光も遮断するため、片側だけの光を反射させ、もう片方の入射光を透過するのはできないのではないかと思えるからだ。マジックミラーは一見すると不可能であることを実現する器具である。

では、なぜマジックミラーは片側からは鏡に見え、反対側からは透明に見えるのか。
マジックミラーの原理や構造は意外と簡単である。ガラスなど透明な材質の上に通常の鏡より金属皮膜を薄くして、入射光の半分だけを透過し、残りの半分を反射する「ハーフミラー」を作る。これを一方が明るい部屋、反対側が暗い部屋に設置すると、マジックミラーとなる。

 明るい部屋では光の強度が大きいため、部屋の光がマジックミラーで反射したときの光の強度も大きい。一方で暗い部屋からマジックミラーを通ってきた光はもともと光の強度が小さいため、透過光の強度も小さくなる。したがって、明るい部屋では暗い部屋からの透過光が弱く、明るい部屋の反射光にかきけされてしまうため、明るい部屋からマジックミラーは鏡のように見える。

それに対して暗い部屋では、明るい部屋からの透過光が暗い部屋からの反射光よりずっと強いためマジックミラーが透明に見え、明るい部屋の様子がよくわかるのである。

明るい部屋でもわずかに、暗い部屋の光が透過するのでマジックミラーの近くによると、わずかに暗い部屋の様子がわかる。

この現象は通常のガラスでも起きる。夜になると、部屋からの反射光でガラスに部屋の様子が映り、外が見えにくくなるのは上記と同じ理由である。マジックミラーの場合は、ハーフミラーを使って透過光と反射光の強度差を大きくすることで夜のガラスでおきる上述の現象の程度をもっと大きくしたのである。

マジックミラーはオフィス街の外窓に使われていることが多い。昼間は外から鏡のように見える窓も、夜に行くと中の様子がよくわかる。マジックミラーは赤外線を遮断する効果があるので、省エネの観点からも使われている。

また、スポーツ用などに紫外線など有害な光を遮断し目を保護するために、マジックミラーの加工を施したサングラスが販売されている。

その他、刑事ドラマなどでたまに見かける取調室で、被疑者を取調べ中に被害者を呼んで「この人です!」とかいって被疑者確認をする時にも使われる。匿名性保護の用途といえる。

このようにマジックミラーはいろいろな用途で使われている。

上述の原理のとおり、マジックミラーは暗い部屋からは透明、明るい部屋からは鏡に見えるが、その逆はない。3月下旬に放送された「ルパン三世 VS 名探偵コナン」ではお姫様の衣装をまとった毛利蘭が夜にホテルに戻る際、外からは鏡となっているホテルの窓に映る自分の姿を見て妄想するシーンがある。このミラーは実はマジックミラーでホテルの中からは外の様子がわかるため、鏡だと思って妄想にふける恥ずかしい姿がホテルの中の人には見えてしまったという場面だが、これは原理的におかしいといえよう。夜は外が暗いため、外側からホテルの中はよく見えるはずで鏡にはならない。

マジックミラーはおもしろい器具である。



2 コメント

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Unknown (SOS)
2013-01-07 08:32:15
凄い!!!!!!!感動した!
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それはよかった。 (世界変動展望 著者)
2013-01-08 20:52:27
それはよかったですね。
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