世界変動展望

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金沢大学多久和陽研究室の研究不正について

2012-04-19 00:30:07 | 社会

3月1日に金沢大学グループの研究論文が撤回された[1]。ネットで公示されているので実名を出すが端的にいって多久和陽教授のグループ。図の変更に関しては筆頭著者であるFei Wang氏の単独責任のようだ。

撤回理由は『All authors agree to retract the above article due to multiple use of the same images or manipulation of data in Figures 1A, 2D, 5C, 6B, 6C, and 8A and Supplemental Figure 8E. They are also not able to provide some of the raw data that are used in Figures 2A, 2B, 5, 6, 7C, 8, and 9C, Supplemental Tables 1–4, and Supplemental Figures 2C, 3, 4, 5, 7C, 8A–8C, 8E, 8F, 10A, and 10B. The first author, Fei Wang, has admitted his sole responsibility in altering figures. The authors apologize and deeply regret the impact of this action. However, the authors stand behind data showing that genetic deletion of S1pr2 or pharmacological S1PR2 inhibition alleviates atherosclerosis in Apoe–/– mice fed a high-cholesterol diet.[1]』

簡単にいうと、画像を複数使いまわし、かつデータの操作をしたので撤回になった。しかも著者はいくつか生データを提供できなかったようだ。無論、画像操作というのは改ざんだし、このケースの使い回しは捏造。生データがなかったというのは実験を実施していない証拠である。”manipulation of data(データの操作)”、"are also not able to provide some of the raw data(生データを提供できない)"という言及がバッサリという感じで痛々しい。この公示は捏造や改ざんがあったため撤回したとジャーナルが公的に認めたということだろう。

私があまり論文撤回事由を見ないからかもしれないが、こういう明確な捏造や改ざんの言及をジャーナル側が行うのは珍しいと思う。図の使い回しで撤回になる場合は単に「掲載論文中のいくつかの図は過去に発表された論文で掲載されたものだったので撤回する」という趣旨の文章だけが掲載されることが多いと思うが、ジャーナル側も独自にここまで認定することもあるのだろうか。

ジャーナルがここまで認定するケースは被疑者の所属研究機関などで不正の調査が行われ正式に認定されて論文撤回を求められたケースでは見たことがある。最近捏造で懲戒解雇になった東京医科歯科大学の川上明夫元助教の論文撤回事例などは撤回理由中に「生データを提供できない」という趣旨の文章があったと思う。調査委員会ができて不正が認定されるとジャーナルでも明確な不正の認定がなされる。

そう考えると多久和らのグループも誰かに告発され金沢大学などで調査が行われ、不正が認定されたのかもしれない。もしジャーナル側がきちんと調査して独自に認定したのならよいことだと思う。そういうジャーナルが増えてほしい。

いずれにせよ、不正は後を絶たない。なんとかならないものか[2]。

それにこの事件は金沢大から誰かが責任をとったという公示がない。筆頭著者は当然だが、責任著者([3])である多久和陽と岡本安雄(金沢大医学系准教授)は責任をとるべきじゃないの?捏造して懲戒解雇になったのに山崎雅英の氏名や研究内容を公表しなかったことといい、金沢大って・・・[4]。露骨にいえば、自浄作用がなさそうに感じる。こういうのは金沢大だけの問題ではなく他の研究機関でも珍しくない問題で、何とかしなければならないことだ。

参考
[1]JCIの論文撤回の公示 2012.3.1
[2]世界変動展望 著者:"研究不正が起きる根本原因について" 世界変動展望 2012.4.16
[3]撤回されたJCIの論文の著者 2010.10.18
[4]文科省の不正行為のガイドラインやそれをもとに作られた各研究機関の内規では不正行為があった場合きちんと氏名を公表するのがルール。氏名非公表はルール違反。