世界変動展望

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解説:STAP論文 検証不足露呈 ネイチャー、編集者判断強く

2013-02-28 23:31:50 | 社会

毎日新聞 2014年07月05日 東京朝刊

 科学誌に投稿された論文の査読の内容が明らかになるのは異例のことだ。取材で判明した英科学誌ネイ チャーなど3誌の査読者たちの指摘は、ES細胞の混入以外にも、専門家の間で現在議論されているSTAP細胞を巡る科学的な疑問点をほぼ網羅していた。不 正論文を掲載したネイチャーは、撤回を掲載した号の論説で「致命的な問題があると見抜くことは難しかった」と記したが、データを少しでも検証していれば、 科学史に残る不祥事を回避できた可能性がある。

 論文ではSTAP細胞は複数の細胞が集まった「塊」様のものを指すが、掲載したネイチャーを含む複数の 査読者たちが一つの細胞でも万能性を確認できたかを重ねて尋ねていた。著者らは一つの細胞でも万能性を持つかの実験はせず、遺伝子データなどの解析結果を 提示した。だが、このデータは、理化学研究所上級研究員の独自解析で、ES細胞のものではないかと疑われる結果が出ている。

 論文掲載の可否を決める権限は、査読者ではなく編集者にある。資料を読んだ東京大エピゲノム疾患研究セ ンターの白髭克彦教授は「掲載したネイチャーの査読者の中にも懐疑的なコメントが含まれており、(掲載したいという)編集者の判断がかなり強く働いた印象 を受けた」と話す。

 近年、有名科学誌には「商業主義」との批判がある。なぜネイチャーは論文を掲載し、他の科学誌は免れたのか。経緯の検証は科学界全体の教訓となるはずだ。【八田浩輔、須田桃子】