世界変動展望

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森口尚史(Hisashi Moriguchi)の捏造・経歴詐称疑惑

2012-10-12 21:35:42 | 社会

『iPS細胞:日本人研究者の「初の臨床応用」に疑義

毎日新聞 2012年10月12日 01時46分(最終更新 10月12日 11時27分)

 日本人研究者の森口尚史氏が人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の臨床応用を実施したと読売新聞が11日付朝刊で報じた。これに対して、森口氏が客員講師を務めた米ハーバード大と、患者への治療を実施したとされるマサチューセッツ総合病院は同日、「森口氏の一切の臨床試験は、我々が承認したものではない」との声明を発表した。

 森口氏は、米ニューヨークで10日から開かれていた国際会議で、iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞を移植する治療を実施したとポスターで展示した。この治療は、ハーバード大の倫理委員会の「暫定承認」を受けたと説明。読売新聞が、この内容を報じたことに対して、国内外の研究者から疑問の声が上がった。

 森口氏は11日、研究内容をまとめたポスター展示の場で、詳細を報告する予定にしていたが、主催する米財団によると、予定の時間に森口氏は現れなかった。その後、主催者は会場からポスターを撤去。理由について「研究内容の正当性に疑義が呈されたため」と述べた。

 ハーバード大学は11日、森口氏について声明を発表した。それによると、森口氏は「99~00年にかけてマサチューセッツ総合病院の客員研究員だったが、それ以来、同病院やハーバード大とは関係がない。森口氏の職務に関わる臨床試験は、同大学あるいは総合病院の審査委員会により承認されたものではない」としている。

 森口氏は毎日新聞の取材に「ハーバード大の在籍証明書も自宅にある。倫理委員会について大学が一つ一つ細かい決定まで把握できていないだけではないか。倫理委の決定文を持っている。うそはついていない。きちんとした手続きで進めており、なぜこんなことになるのか、何が何やら訳が分からない」と話した。

 森口氏は現在、東京大医学部付属病院に特任研究員として所属。がん細胞を使った幹細胞研究などを専門としている。

 00~09年に在籍した東大先端科学技術研究センターのホームページによると、森口氏は95年に東京医科歯科大大学院を修了。その後、99年まで財団法人医療経済研究機構やマサチューセッツ総合病院客員研究員を務めたことになっている。08年4月から09年3月まで同センター特任教授だった。同センターは11日、「現在は在籍していないため」と森口氏の経歴をホームページから削除した。

森口氏のiPS細胞作成の共同研究者で恩師でもある東京医科歯科大の教授によれば、森口氏は学部で看護学を専攻したため、医師ではないという。[1]』

要するに成果の捏造と経歴詐称の事件。森口氏は「iPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞を移植する治療を実施した」と国際会議でポスター発表したらしいが、応用はまだまだこれからだというのに、こんなにもはやく心筋細胞の移植手術を実施したといわれると嘘くさい印象を受ける。国内外の研究者から多く疑義を呈されたのも当然だ。主催者はポスターを撤去したわけだから、端的にいって捏造だと判断されたということだ。

10日に発表したらしいが、山中氏のノーベル医学生理学賞受賞と奇しくも時期が近くなってしまったので余計に注目を集めることになった。注目を集めるため同氏のノーベル賞受賞を受けて発表したのではと思うかもしれないが、通常は何ヶ月か前に発表の申し込みをするから、時期が近くなったのは偶然だと思う。

『米ハーバード大と、患者への治療を実施したとされるマサチューセッツ総合病院は同日、「森口氏の一切の臨床試験は、我々が承認したものではない」との声明を発表した[1]』と報道されており、端的にいって森口氏はiPS細胞を使った応用臨床を実施しなかったことを示唆している。

そもそも医師でない森口氏がこのような臨床を行うことは技術的に無理だし、実施すれば医師法違反で犯罪だ。実施したのは外国だから現地の法律がどうなっているかわからないものの、患者の生命・身体保護の要請は変らないからどの国でも同様の規制法があるだろう。

この件は端的にいって捏造。『読売新聞は11日朝刊1面「iPS心筋を移植」の見出しで、森口尚史氏らが、あらゆる種類の細胞に変化できるiPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植する治療を6人の患者に実施したことが分かったと報じ[3]』たが誤報の疑いがあるので、検証をして後日報道するという[3]。

森口氏はハーバード大の客員講師を務めていると自称しているらしいが、報道を総合するとこれも嘘ということになる。即ち経歴詐称[2]。

ネットで森口氏の情報を調べると、これ以外にも画像の流用による捏造や経歴の詐称があるらしい。調査が進めば大規模な不正に発展するだろう。森口氏の所属先である『東京大学の関係者は12日、「どのような論文に関わったのか調べている」と述べた[4]』ので、調査が進んでこのような事態に発展するだろう。

事件の動機はまず間違いなく森口氏の功名心や虚栄心であろう。世界初のiPS細胞の臨床応用、ハーバード大の客員講師など立派な業績や肩書きで功名を得よう、世間体を良く見せようという悪い功名心や虚栄心が事件を起こした。

現在大きくスキャンダルが報じられ、今後も様々な社会的制裁が森口氏に与えられる。

生命科学系の分野では今年6月末に藤井善隆医師の世界最高数の捏造論文事件が発覚し、大きく報じられ日本は名を落とした。それに引き続き森口氏の事件。なんとかしないとまずいんじゃないですかね?

どうすべきか。論文の共著者や査読者がきちんとチェックする、不正行為対処の規定をきちんと遵守する、第三者機関が厳正に調査する、生データや実験ノートの管理を厳格に行う、などこれまであきれるほど主張し続けてきた。本当にこういう事件は後を絶たない。

参考
[1]毎日新聞(web) 2012年10月12日
[2]asahi.com (web)の記事 2012年10月12日
[3]Yomiuri Online の記事 2012年10月12日
[4]時事ドットコムの記事 2012年10月12日



2 コメント

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この事件は...... (齋藤真也)
2012-10-15 01:34:12
こんにちは

森口尚史の事件は、科学のねつ造と言うよりも、病的な虚言癖の有る男の言う事をそのまま記事にした読売新聞の犯罪と思っています。

いかがでしょうか?
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回答 (世界変動展望 著者)
2012-10-15 02:15:15
読売に限らず毎日など他紙でも論文の研究成果を報道することがあります。成果が捏造だった場合、報道がそれを確認してから報道するのは難しいと思います。同分野の研究者でも捏造の発見は通常簡単ではありません。無論例外はありますが。

あなたの記事も読ませていただきましたが、確かに報道機関の森口氏に対する取材は異常に厳しい印象を受けました。誤報をさせられた仕返しのつもりでしょうか、ボコスカに叩いていじめています。

それに確実な裏付に基づく報道をするのが原則のマスコミがゴシップ的な記事を書くのを見て、読売等の誤報が教訓になっていないと思いました。

例えば朝日では虚言癖を思わせる近所の住人のコメントを報じています。

[千葉県市川市の住宅街にあるアパート。森口氏は家賃6万円あまり、築数十年の1Kに十数年来、1人で暮らしているという。大家の70代女性は「もしウソをついていたなら、なぜすぐ分かるようなことをしたんだろう」といぶかった。

 数年前には「東大教授になりました」と聞いていた。えらい先生でもこんなところに住むんだ、と不思議に思った。](朝日新聞 2012年10月13日)

大家が「(森口が)東大教授になったと聞いた」というコメントなんて確実に裏付のある話ではないでしょう。ゴシップとあまり変らないと思います。なのに報道。これはまずいんじゃないでしょうか?

端的にいって森口のしたことが虚偽であり、虚言癖があると思わせるための偏向報道ですね。メディアは森口に恨みがあるんでしょうか。
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