日本女子プロ将棋協会(LPSA)に関するニュースをしばらく全く見ないので存在を忘れていた。そういえばこの団体はどうなっているのだろうか。LPSAは2007年に将棋連盟に所属していた一部の女流棋士が独立し、設立した団体。当初は「女流棋士は独立する」という趣旨の記者会見が女流棋士によって行われたので、てっきり女流棋士全部が独立するのかと思ったが、過半数は連盟への残留を希望し、少数による独立となった。特に清水市代や里見香奈といった看板強豪女流棋士が連盟への残留を表明したことはLPSAにとって痛かっただろう。
おそらく経済的な面でうまくやっていけないと思った女流棋士が多かったので連盟に残留したのだろう。確か独立に際して連盟が主催する棋戦に参加できなくする案がLPSAの執行部に通知されたらしい。先立つものやスポンサーがなく理想だけ掲げて独立してもうまくいかないのは誰でもわかるので、そう考えた女流棋士の大部分は残留を希望したのだろう。
もともと将棋の世界は実力トップの棋士を広告塔にして商売をしているところである。男性棋士なら羽生や渡辺、女流棋士なら連盟側は里見や清水といった人たちだ。女流棋士の場合はさらにルックスを売り物にする人気女流棋士も広告塔になっている。連盟の人でいえば鈴木環那や中村桃子といった人である。
LPSAもこの点に関しては例外ではなく強豪棋士やルックスのいい棋士を広告塔にしている。しかし、残念なことにLPSAには看板としてはいまいちな人しかおらず苦しい印象がある。LPSA所属の強豪棋士というと、中井広恵や石橋幸緒しか思い浮かばない。しかもかつては強豪だったかもしれないが、今や実力は完全に落ち目で女流棋士の中では実力的に二流である。ルックスのいい人というと、よくわからないもののホームページを見るところ中倉姉妹を売り出しているような印象がある。私は彼女らを美人というのはかなり違和感があるものの、姉妹女流棋士ということで目立つ要素があるため広告に使っているのかもしれない。正直30過ぎの彼女らをルックスの関係で見ている人など今や極めてマイナーであろう。もともと20代のときだってそんなタイプの女性ではない。
このようにLPSAは広告塔になる女流棋士が皆無であるため経営的に苦しい。独立とは名ばかりで現在でも連盟主催の女流棋戦に参加しており中途半端な立場でしか活動せざるを得ないのが実態である。もともと清水や里見といった金儲けの主力になる女流棋士が離れないように「独立するんだったらウチの女流棋戦には参加させないからな!」と連盟が女流棋士を脅した([1])ために、多くの女流棋士が残留を選択したという事情があったのだろうから、彼女らの残留が決定した時点で目的達成ということでLPSA所属棋士の連盟主催棋戦への参加を認めたのだろう。
例えば実力やルックスの関係で現在も広告塔の一人であろう矢内理絵子は当時独立準備委員でLPSAの公式ファンクラブMinervaの勧誘を行っていたが、裏切って連盟に残留した。連盟としては脅しが効いた形になった。ちなみに、現在矢内はタレント事務所に所属し、連盟の広告塔として活躍している。2012年度は4年連続NHK杯戦司会を務めるという異例の事態が起きた[3]。日本将棋連盟でも棋士会副会長となった。連盟のブロマイド販売でも矢内のものが宣伝された。矢内は裏切って連盟に所属したことで、それなりにうまみのある地位を得たようだ。連盟は単に脅すだけでなく、残留すればタイトル戦の聞き手役を任せるなど、それなりにアメも用意して残留工作した。
「主力となる客寄せパンダの女流棋士は自分達が抑えているし、イニシアチィブは確保している。LPSAが商売敵になるといっても、連盟主催棋戦への参加という経済面を人質にとっておけばいざというときには脅しでどうにでもなるし、たかだか女十数人でやる団体の運営などたかがしれている。」と連盟になめられている部分がある。独立のときも「誠意をもって対応する」「独立したい人には独立を勧める」と公式見解を出したり、LPSAが発足したときには連盟から祝辞を述べる使者を出したりなど表面上はうまくやっていく姿勢を見せている。しかし、実態には軋轢があり例えば第4回日レス杯に関する紛争でも連盟とLPSAの仲の悪さが伝わってくる[2]。この事件は連盟所属の3人の女流棋士(鈴木環那、中村桃子、渡辺弥生)がLPSA主催の独自棋戦・日レスインビテーションカップ(日レス杯)に参加することをめぐって起きたもので、連盟の主張によればLPSA側が彼女ら3人が参加すると勝手に決めてネット上に名前を載せたとしている。
『弊社団に属する女流棋士3名は、本人達に全く事前了解も無くインターネット上に名前をさらされました。一人は泣き、一人は理事会に一任し、一人は口頭にて断りました。罪も無い か弱い女性へのこのような仕打ちは今後は止めて下さいますようお願い申し上げます。[2]』
要するに中村や鈴木といった人は上でもいったようにルックスがよいと(一部で)思われており、その面で連盟の広告塔になっているため、LPSAとしてもそれをぜひ利用したかったのだろう。ただそれでは商売敵を有利にしてしまうので連盟との交渉は難航し決裂したということ。連盟によれば泣いた女流棋士までいたらしいが、事実はさておき、こんなことで名前がネットに出たからといって泣くほどのことだろうか。連盟がこの件でかなり怒っているのは文面を見てわかるが、「女を泣かせた。罪もない、か弱い女性へのこんな仕打ちは止めろ!」という文章は「弱い生き物の女を酷くいじめたお前達はとても卑劣な悪いやつらなんだ!」と酷く相手の人格を非難する文章で、連盟が正式に出す文章としては大げさというか品格がない文章に思える。事情を知っているなら、「米長会長、何の罪もないか弱い女性をいじめているのはあなたじゃないですか!」と誰かさんならいいそうだ。こういう問題は彼ら同士で解決すべきことでいちいちこんなことをネットで公開してまで争うこともないと思う。
いずれにせよ経営面でもLPSAは非常に厳しいことは間違いない。今まで一人も四段になった棋士がいないことや男性棋士との対戦成績を見てもわかるように、もともと女流棋士は実力的にはアマチュアのレベルで大したことないというのが通説的な見解であり、プロとしての実力的には商売として人を惹き付けられるほど彼女らの将棋に魅力がないのは予想していたし、LPSA側もプライドとして認めないだろうが、実力的には将棋連盟の羽生や渡辺のように高度な将棋で人を惹きつけられないことはうすうすわかっていただろう。つまり、腕前の点で商売が苦しいことはわかっていたはずだ。どういう計画で経営を軌道に乗せるつもりだったのかよくわからないが、このままいくと経営破たんするだろう。
中原誠との不倫や失踪、自己破産など数々のトラブルで将棋界を永久追放された林葉直子を日レス杯で参加させるなど、大変なお騒がせ女を参加させないと話題がとれないくらい注目されていないLPSAの棋戦は今のままならどうしよもないであろう。
正直いって、女性が自分の理想などを掲げて将棋を続けていくことには多いに賛成するし、ぜひ実現してほしいと思う。だからLPSAには経営的にもきちんと成功してほしいと思っている。現在の経営状態は非常に厳しいであろうが、なんとかがんばってほしい。将棋の世界は基本的に上でも述べたように強い棋士の誕生が注目の的となる。LPSAには女性の棋力向上によって男性に勝る強い棋士を何人も誕生させて将棋ファンを魅了してほしいと思う。
参考
[1]LPSA側には弱みをつかれた部分はあるだろうが、独立するとは連盟には依存しないということであるから、連盟主催の棋戦に参加させないと言われても仕方ない。
[2]第4回日レス杯に関する見解 日本将棋連盟 2010.5.17
[3]世界変動展望 著者:"NHK杯戦司会は矢内理絵子が異例の続投!将棋連盟とNHKとの交渉に難点があったのか?" 世界変動展望 2012.4.8
じゃ意味ない
LPSAは愛さんを研修会で認めていただき正攻法で攻めるべきだと思います。
ただでさえ、ジリ貧な将棋会の内輪もめで、せっかく女流棋戦が注目を少しは集めているものをつぶすのは、ここ10年女流棋士を応援しているものには寂しく思います。
女流棋士の人にも色々な考えがあると思いますが、将棋会発展のため大きな心を持って発言してほしいと思います。
問題は連盟基準とLPSA基準の差でしょう。連盟基準で女流になれず涙を流してきた人がたくさんいたので、別基準は認められないというのが連盟の言い分だと思います。連盟基準を通過した人ならLPSAに人が流れないという思惑もあるんじゃないかと思いますが・・・。
最近「将棋連盟、LPSAの問題点 - 両団体の幸福と将棋界の発展を願って」(2013年2月5日)という記事を書きましたが、トラブルの連鎖で互いに相手を否定したいという悪循環になっている部分があるような気がします。
それについては両者できちんと解決してほしいと思います。女流についてはあなたの言うとおり昔に比べればずいぶん棋力が上がりました。内のトラブルで停滞するのは惜しいです。きちんと和解してほしいですね。
なぜか、両者を同等扱いで「和解」だなんだと言う人が多いですが。
独自組織として独立したんなら独自運営、独自棋戦だけでやればいい。
遠くに振れれば振れるほど儲かります
ただし中心から離れすぎると
肝心な磁力も弱まります
興味深く記事を読みました
賛同する所,多くあります