久野康成公認会計士事務所/株式会社東京コンサルティングファーム(TCF)の 【国際化支援ブログ】

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会社分割によるMBO

2007年08月24日 | 所長と熱く語ろう!(久野康成)

事業の一部を承継する方法として、「会社分割」による事業再編を行った後、子会社株式を役員・従業員に売却する方法が考えられます。


このような事業再編のメリットとして、事業譲渡は「取引」であるため、資産の譲渡対価に対して消費税がかかりますが、会社分割は法的な組み替えであるため株式の交付等の対価が発生しなければ消費税は一切かかりません。


次に、事業譲渡は債権債務移転の個別手続きが煩雑ですが、会社分割では必要ありません。


さらに、従業員の移転についても、事業譲渡の場合は個別に承諾を行ったうえで承継会社へ引き継ぐ必要がありますが、会社分割では権利義務が包括的に引き継がれるため、従業員の承諾は必要なく、また、雇用も保証されます。




 また、このような制度上のメリットだけでなく、会社分割によるMBOは、事業を承継する役員・従業員の買収金額を下げる効果もあります。



 具体的には、土地等に大きな含み資産がある場合は、企業評価額が上がってしまうため、事業を承継する役員・従業員の資金負担が大きくなってしまいます。

 そこで、このような土地等の資産は、事業再編を行うとき、親会社に残したままにして実質的には営業権のみを子会社に移します。

 100%出資の子会社に営業権を譲渡しても、税務上もゼロ評価で移すことができます。



子会社株式を役員・従業員に譲渡する段階で、営業権を加えた評価額で売却すれば資金負担を減少させることができます。



また、事業として使用される土地・建物などを元の企業であるA社に残した場合は、新会社のB社は、A社とリース契約や賃貸契約を結ぶことによって事業用資産を継続的に使用することができます。



 本業部分を譲渡したA社は、結果として資産管理会社となります。

オーナーは、引退した後、肩書きの上では資産管理会社の社長となるのです。




 なお、会社分割を用いた具体的な
MBOの方法の例は下記の2段階となります。



   
売り手企業は、承継したい事業に係る資産負債等を新設分割会社へ承継します。これに対し、新設分割会社は売り手企業に対して株式を交付します。


    売り手企業は、事業を承継される新経営者(役員や従業員)に新設分割会社の株式を売却します。これにより、新設分割会社の株主は新経営者(役員や従業員)となります。