対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

オイラーの公式、起承転結。13

2020-04-24 | オイラーの公式
ドモアブルの公式
  cos nz=((cos zi sin z)n+(cos zi sin z)n)/2   (1)
  sin nz=((cos zi sin z)n-(cos zi sin z)n)/2i   (2)
に、
nz=x の仮定、すなわち z=x/n を代入すると、
  cos x=((cos x/ni sin x/n)n+(cos x/ni sin x/n)n)/2
  sin x=((cos x/ni sin x/n)n-(cos x/ni sin x/n)n)/2i
となる。
n→∞ のとき、cos x/n=1、 sin x/nx/n だから、
  cos x=limn→((1+ix/n)n+(1-ix/n)n)/2
  sin x=limn→((1+ix/n)n-(1-ix/n)n)/2i
となる。これを次のように表示すると、
  cos x=limn→((1+ix/n)n+(1+(-ix)/n)n)/2    (3)
  sin x=limn→((1+ix/n)n-(1+(-ix)/n)n)/2i    (4)
となり、
右辺の分子 (1+ix/n)n、(1+(-ix)/n)n に指数関数の形が見えてくる。

ex=limn→(1+x/n)n
は実数 x についての定義(eは自然対数の底、ネイピア数)だが、虚数についても成り立つと拡張する。
すなわち、
eix=limn→(1+ix/n)n
とする。
同じように、
e-ix=limn→(1+(-ix)/n)n
である。
(3)(4)は次のようになる。
  cos x=(eix+e-ix)/2   (5)
  sin x=(eix-e-ix)/2i   (6)

この式は、自由調和振動の微分方程式の特殊解から導かれた1740年の式、
  cos x=(eix+e-ix)/2
それを拡張した1743年の式、
  cos x=(eix+e-ix)/2
  sin x=(eix-e-ix)/2i
をモアブルの公式からとらえ直したものである。これまでは外的関係にあった弧と虚の指数の関係を、「消失する弧」(ドモアブルの公式の右辺)を「虚の指数」に変換することによって、内的に示したものである。
オイラーは(1)(2)から(5)(6)を導いた後、次のように述べている。
「これらの公式により、虚指数量が実の弧の正弦と余弦に帰着される様式が理解される」。