対話とモノローグ

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オイラーの公式、起承転結。2

2020-04-09 | オイラーの公式
「グレイゼルの数学史III」(保坂秀正・ 山崎昇訳、大竹出版、 2006年) の記述を読んでみよう。「Eulerの公式の導出いろいろ」(矢野忠)からの孫引きである。
(引用はじめ)
すでに 1740年にオイラーは、 自由調和振動の微分方程式を考察し、 その 2 つの異なった特殊解、 2cos xとeix+eixを得た。それらは級数展開すると同じであることから、 オイラーは次の公式を 確立した。
  cos x = (eix+eix)/ 2    (4)
線形1階常微分方程式に関する1743年の研究論文の1つにおいて 、 オイラーは次の公式を導入 した。
  eix = cos x + i sin x      (5)
『無限解析入門』で、 彼は公式 (1) から出発して、 次の公式を確立した。
  cos x = (eix+eix)/ 2
  sin x = (eix-eix)/ 2i     (6)
これが、 最終的に定式化され、 証明された有名な《オイラーの公式》で、これからただちに、 彼によって前に別の方法で確立された公式 (5)(これも彼の名で呼ばれる)を導いた(確かめてみよ!)。これらの公式の意義についてはオイラー自身が次のように述べている。 「ここからわかることは、 どのような形で虚数の指数量が現実の円弧のサインとコサインになるか ということである」。
(引用おわり)
1740年の(4)式、1743年の(5)式、1745年(『無限解析入門』の出版は1748年だが、執筆は1745年だという)の(6)式がある。そしてさらに(6)式から導かれる(7)式がある。これは(5)式と同じものである。
(4)式はオイラ―の公式の半分を捉えたものである。ここにはじめて指数関数と三角関数の結びつきが発見された。オイラーの公式の「起」である。
(5)式は(4)式を補完するものである。指数関数と余弦関数の関係に、正弦関数を加えて、指数関数と三角関数の関係へと拡張される。これがオイラーの公式の「承」である。
(4)式は明記してあるように、自由調和振動の微分方程式が根拠になっている。(5)式も同じように自由調和振動の微分方程式を基礎にしているとみてよいだろう。
公式(1)は、おそらくド・モアブルの公式である。(6)式はド・モアブルの公式に極限を導入し、虚数の指数関数と関連させることによって導かれている。これは(5)式を導いた方法とは違ったものである。これがオイラーの公式の「転」である。
(6)式から(5)と同じ式が導かれる。これがオイラーの公式の「結」である。

1740年から5年ほどの間にオイラーの公式は確立された。まとめておこう。

  cos x = (eix+eix)/ 2    (4)

  eix = cos x + i sin x      (5)

  cos x = (eix+eix)/ 2
  sin x = (eix-eix)/ 2i     (6)

  eix = cos x + i sin x      (7)

(5)に焦点をあてて、もう少し立ち入ってみよう。