ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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インド74~シュリ・オーロビンド・ゴーシュ

2020-04-25 08:39:16 | 心と宗教
●シュリ・オーロビンド・ゴーシュ
 
 ラーマクリシュナの影響を受けた宗教家の一人に、オーロビンド・ゴーシュがいる。
 ゴーシュは、1872年カルカッタに生まれ、7歳よりイギリスで教育を受けた。ケンブリッジ大学のキングス・カレッジを卒業して帰国し、教職にたずさわり、カルカッタのナショナル・カレッジの学長となった。1903年ベンガル分割反対闘争に参加し、ティラクらとともに反英運動を展開した。インドの独立を主張し、目的達成のためには暴力の行使も厭わない急進的なナショナリスト・グループのリーダーとして活動し、イギリス官憲に逮捕・投獄された。
 獄中で『バガヴァッド・ギーター』について熟考し、ある時、突然啓示を受けたという。釈放されると政治運動から身を引き、ヨーガの行者となって、インド南部のポンディシェリーに隠退した。1925年その地にオーロビンド・アーシュラムを建設した。アーシュラムは、道場を意味する。ゴーシュは、以後、そこを拠点にヴェーダ、『ウパニシャッド』、『バガヴァッド・ギーター』等を研究して、数多くの著作を発表する一方、ヨーガの実習・指導を行った。
 ゴーシュは、不二一元論の世界幻影論に異を唱えた。世界はブラフマンの自己展開によって顕現する。世界の中に魂が内在化して、徐々に霊的な進化を遂げる。霊的進化には物質・生命・精神の段階があり、それは意識の発展段階でもある。意識が発展し上昇するにつれて、梵我一如の真理に近づいていくと説いた。ここには、西洋の進化思想の影響が見られる。
 ゴーシュは、新しいタイプのヨーガであるインテグラル・ヨーガを唱えた。インテグラル・ヨーガは、神的な生命に相当する「スーパーマインド(超越心)」と呼ばれる高いレベルの霊的意識を確立することによって、地上での生活の進化を促進することを目的とする。その実修を通して、究極的な神的実在を体験することにより、自己は全人格的に変容し、聖化されて、超人になることができるという。
 ゴーシュのいう超人は、ニーチェが説いた超人とは違う。悪魔的な巨人型のアスラ(魔神)ではなく、ヨーガによって絶対者(神)の力、愛、英知を体得した聖なる人格である。伝統的には生前解脱者に相当する。
 ゴーシュは、普遍主義的な思想を説きながら、シヴァ宗の信仰対象であるシヴァを絶対者とする。シヴァと個我は本質的に同一である。物質世界において、シヴァの神の力を自由に駆使し得る人は、超人であるとする。そして、ゴーシュは、そうした精神的に高いレベルの人間の養成を試みた。超人の出現によってのみ、人類の政治的・社会的・経済的な諸問題を解決することができると考えた。
 ゴーシュは、インド思想こそが世界を導き、人類を救う思想であると力説した。同時に、すべての宗教は同一の道に通じるものであるとも主張した。
 「あなたの生命は、ただ神の道具として与えられたものであり、ひとえに、聖なる神の顕現を助けるためにのみ与えられたものであるということを、よくよく心得ておくことだ」と人々を諭した。
 ゴーシュの弟子の一人に、『告日本国』で知られる詩人ポール・リシャールがいる。また、ゴーシュの思想と行動は、クリシュナムルティ、マハリシ、ラジニーシ等の宗教指導者に影響を与えているとされる。
 ゴーシュは、1950年に亡くなった。フランス人女性、ミラ・アルファサがアーシュラムを継承した。1968年にポンディシェリー近郊に、国際的な村落共同体オーロヴィルが建設された。そこでは、民族・思想・信条等を超えたヒューマン・ユニティー(人間の和合)の実現を目指し、持続可能な自然循環型社会の創造に取り組んでいると伝えられる。

 次回に続く。

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