共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日は山口小夜子さんの祥月命日〜坂東三津五郎との共演による音楽ファンタジー《カルメン》

2023年08月14日 18時55分25秒 | 音楽
台風7号絡みなのか何なのか、今日は朝からドカ雨が降った…かと思えば強烈に晴れたりを繰り返す、よく分からない天候となりました。それでも夕方からは日差しが雲に遮られ、ちょっとはマシな体感になってきました。

ところで、今日8月14日は山口小夜子さんの祥月命日です。



山口小夜子さん(1949〜2007)は、かつて世界のファッション業界を席巻した日本のファッションモデルです。その活動はモデルだけに留まらず、女優、パフォーマー、ファッションデザイナーと多岐にわたり、晩年はその活動を自ら『ウェアリスト=纏う人』と説明していました。

横浜市で生まれた山口小夜子さんは学校法人杉野学園ドレスメーカー女学院に通い、同校卒業後の1971年にプロのモデルとしてデビューして高田賢三や山本寛斎のショーで注目を集めました。1959年にはルイ・フェローに見出されて1972年のパリコレクションに起用され、ニューヨークコレクションにも出演しました。

1960年代にパリコレクションで活躍した日本人モデルは、大きな目でキュートな顔立ちが特徴でした。しかし山口さんは彼女たちとは違った切れ長の目と黒髪のおかっぱ髪で登場して、新たな日本人モデルブームを引き起こしました。



白い肌に切れ長の目の美しさを作り出す繊細なアイライン、高い位置のチーク、くっきり縁取った赤いリップによる山口さんのエキゾチックな顔は、特にヨーロッパで熱狂的に支持されました。遂には



山口さんの顔を象った「SAYOKOマネキン」というマネキン人形が作られるほどで、一時期世界中のトップブランドのショウウィンドウのマネキンが全部「SAYOKOマネキン」になるほどの人気でした。

1973年から1986年までは資生堂のモデルとして専属契約を結び、「美」の普遍的イメージを国内外に発信していくことになりました。1973年の『シフォネット』のポスターは、



ハーフモデル全盛の時代に、黒髪おかっぱのいかにも「日本人らしい」モデルの登場を鮮烈に印象づけ、時代の転換点を体現するものとなりました。

資生堂のポスターで特に有名になったのが、見出し画像に使った『京紅』という口紅のポスターです。ジャパンビューティーたる山口さんの魅力が最大限に引き出されているこの写真は、



没後に制作されたドキュメンタリー映画《氷の花火 山口小夜子》のポスターにも使われました。

モデルとして活動しながら、ファッションデザインや服飾品のプロデュースも担当した山口さんは、1977年には



雑誌『ニューズウィーク』の「世界のトップモデル6人」にアジア人で初めて選ばれることとなりました。同じく1977年にスティーリー・ダンのアルバム『彩(エイジャ)』のジャケットを飾り、ファッション業界以外でも知られるようになっていきました。

モデルに演技、ファッションデザインと『ウェアリスト』として多方面で活躍していた山口さんでしたが、2007年8月14日に急性肺炎のため死去しました(享年57)。最後の出演映画となった『馬頭琴夜想曲』の木村威夫監督は山口さんについて

「1週間ほど前に会ったばかりだったが、体調が悪い様子はなかった」

と語っていることから、関係各位にとっても山口さんの死が如何に突然だったかが窺えます。

2015年、東京都現代美術館にて



山口さんの生涯と携わった作品群を回顧する『山口小夜子 未来を着る人』が開催されました。山口さんの没後8年を経過しようという時の開催だったのですが、この回顧展はリアルな『山口小夜子』を知らなかったはずの世代にも熱狂的に受け入れられ、入場者数は5万5千人、最終日だけでも3千人もの観客をを動員し、大盛況のうちに幕を閉じることとなったのでした。

さて、そんな山口さんの祥月命日に拙ブログでご紹介するのは『音楽ファンタジー《カルメン》』という映像作品です。台本は佐藤信、音楽は池辺晋一郎、出演は山口小夜子、五代目坂東八十助(後の十代目坂東三津五郎)という顔ぶれでした。

この作品はビゼー作曲のオペラ《カルメン》の舞台を日本に置き換え、音楽と実験的な映像でつづった音楽ファンタジーです。あらすじは


他人を傷つけた咎で連行される女と、それを護送する堅物の男。はじめはきりきりと女を引っ立てていた男だったが、やがて女の妖艶な魅力に心奪われ、やがて享楽の道から破滅へと堕落していき…。


というものです。

後にこの作品は、第41回イタリア賞国際コンクール・テレビ音楽部門特別賞(ウンブリア州知事賞)、エミー賞国際コンクール優秀賞、第10回国際芸術フィルムフェスティバル国際コンクール最優秀脚色賞といった、海外の様々な賞を受賞しました。そして今なお、観る人に強烈な印象を残す作品として語り継がれています。

そんなわけで、山口小夜子さんの祥月命日である今日は『音楽ファンタジー《カルメン》』(ダイジェスト)をご覧いただきたいと思います。踊りの名手としても知られた五代目坂東八十助、後の十代目坂東三津五郎(1956〜2015)との共演で、山口さんの妖艶な魅力満載の映像世界をお楽しみください。


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