hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

貫井徳郎『失踪症候群』を読む

2021年05月31日 | 読書2

 

貫井徳郎著『失踪症候群(新装版)』(双葉文庫ぬ1-04、2014年10月19日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

失踪した若者たちに共通点がある。その背後にあるものを燻り出すべく、警視庁人事二課の環敬吾は特殊任務チームのメンバーを招集する。私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄。三人のプロフェッショナルは、環の指令の下、警視庁が表立って動けない事件を、ときに超法規的手段を用いても解決に導く。失踪者の跡を追った末、ついにたどり着いた真実とは。悪党には必ずや鉄槌を下す―ノンストップ・エンターテインメント「症候群シリーズ」第1弾!

 

「症候群シリーズ」は(1)『失踪症候群』(2) 『誘拐症候群』、(3)『殺人症候群』

 

警視庁には、影の特殊工作チームが存在し、諸般の事情から警察組織が手を出しにくい事件を捜査し、犯人を社会的に抹殺する。警務部人事二課の環敬吾が指令を送るのは、私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄のプロフェッショナルなメンバー3人。

 

数年間の若者の失踪事件にかすかに共通点が見られる。捜査一課として動くわけにはいかないので、のチームに背後にあるものを探る仕事が依頼され、チームは一覧ファイルを元に行動を開始する。

原田が担当した小沼豊を、大学で入っていたロックバンドから、ライブハウス、セミプロバンド「ゼック」と辿っていく。また引越しをくり返す住民票をたどって行ったが、結局戸籍の附票から判明した現住所には吉住計志が住んでいた。

チームの倉持の担当した広沢良美も住民票を次々と移していて、現住所には失踪者の一人の山口早希代が住んでいた。武藤が調査した泉直雅の現住所には失踪者の一人の村山繁朗が住んでいた。

 

 

(たまき)敬吾:警視庁警務部人事二課。特殊工作チームのリーダー。30代後半。浅黒く顔は堀が深くモデル体型。常に冷静で必要最低限のことしか言わない。

原田柾一郎:特殊工作チームの一員。表の生業は私立探偵。妻は雅恵。娘は高校生の真梨子。

武藤隆:特殊工作チームの一員。表の生業は托鉢僧。元警察勤務。

倉持真栄(まさはえ)特殊工作チームの一員。表の生業は肉体労働。190㎝近い大男。

小沼豊:北海道から上京し、アパートを親に知らせずに引越して失踪した。

吉住計志:コンビニでアルバイトし、ゲームにはまっている。

馬橋庸雄:大手不動産会社・新興エステートの社員。

バンド「ゼック」メンバー:リーダー田中文昭、ビビりの村木了、ボーカルで女性に人気だが酷薄な羽田陽介、狂暴な長谷宏冶、ドラムの池上昇平

 

本書は1998年3月に双葉社より刊行された作品の新装版。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

まあまあ面白いという所か。失踪者とその関係者が多いので覚えられない。

 

そもそも、他人と互いに入れ替わるという話で、その目的が親から逃れるためというしょぼいものなので、迫力不足。失踪者のうちの一人が殺されたことで、ようやく極悪人たちの登場となる。

 

リーダーの環敬吾は頭脳明晰で、底を見せず、倉持は単純明快な武闘派で、いずれも只者ではない雰囲気を漂わせて興味を引く。この本では武藤の出番はほとんどないが、底知れない感じがある。しかし、もっとも多く登場し、その家庭のトラブルまで描かれる原田は、特に強くもなく、特技もなさそうなただ普通のおっさんで、面白味がない。なぜチームの一員に選ばれたのか疑問だ。

 

貫井徳郎(ぬくい・とくろう )の略歴と既読本リスト

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5月の散歩

2021年05月30日 | 散歩

 

マーガレット?(4月25日)

 

マーガレット・ボール??(4月25日)

 

 

木が壁に張り付いている。(4月25日)

壁の向こう側は駐車場になっていて、木の形に穴が開いていた。

 

 

赤いクレマチス(5月1日)。奥に紫の見事なクレマチスがあったのだが、世話している人がいたので盗撮できなかった。

 

 

よく見ると、「キンカン塗ってまた塗って」のキンカン(?)が沢山。(5月6日)

 

名も知らぬ白い花(5月8日)

拡大しても君の名は?

 

 

白と紫の花が混じりあうこれも知らない花(5月14日)

 

 

ふてくされの休業「休めって言うから休みます」。気持ちはわかります。(5月6日)

 

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レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』を読む

2021年05月29日 | 読書2

 

レイチェル・カーソン著、上遠恵子訳、森本二太郎写真『センス・オブ・ワンダー』(1996年7月25日新潮社発行)を読んだ。

 

原題は ”THE SENCE OF WONDER”。原書はメイン州の林や海辺、空などの写真を収めた大判になっている。
本書は2014年発行の57刷だが、26刷から旧版のカバーと本文写真を森本二太郎撮影の、カーソンの別荘のあるアメリカ・メイン州の海辺、森、植物などの写真に全面的に変更された。

 

 

著者レイチェル・カーソンがガン宣告を受けながら書いた『沈黙の春』は環境保護運動のきっかけを作った歴史的名著だ。次に最後の仕事として本書を書き、遺作となって、彼女の友人たちによって出版された。

 

 

レイチェルは毎年、夏の数か月をメーン州の別荘で過ごした。本書は、彼女が姪の息子・幼いロジャーと、海岸と森を探索し、雨を吸い込んだ地衣類の感触を楽しみ、星空を眺め、鳥の声や風の音に耳をすませた、その情景を詩情豊かな筆致で静かにやさしく語りかけてくる。

 

レイチェルは、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、つまり「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を、いつまでも失わないでほしいと願っていた。そのためには、「わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる」ことだという。

 

わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。

 子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。(p24)

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

肩ひじ張らずに幼い子どもと森の中を歩き、足元の小さな世界を眺めるレイチェルの目線は澄み切って、やさしい。ガンにおかされ、おそらく余命を知り、後の世代に託そうとする彼女の静かな想いがしみわたってくる。

 

森の中の小さな、小さな光景、わずかな動き、ひそやかな音、なんということない話なのだが、あらためて自然というものが心に忍び寄ってくる一冊だ。

 

本文中に挿入されているメーン州の海辺、森、植物などの写真が美しい。とくに子どもが足元の小さな驚きを発見したような小さな写真、例えば一面のコケの中の芽吹いたばかりの木の赤ちゃんなどの写真は、レイチェルと幼いロジャーが発見した光景を眼前に彷彿とさせる。

 

 

レイチェル・カーソン Rachel Carson

1907年5月ペンシルヴェニア州生まれ。ペンシルヴェニア女子大学、ジョンズ・ホプキンズ大学に学んだ後、合衆国漁業局(現在の魚類野生生物局)に入る。海洋生物学者、作家。

1962年『沈黙の春』を出版。

著書に『潮風の下で』『われらをめぐる海』『海辺』『センス・オブ・ワンダー』がある。

1964年4月ワシントン郊外のシルヴァースプリングにて56歳で死去。。

 

 

上遠恵子(かみとお・けいこ)

1929年生れ。エッセイスト、翻訳家。レイチェル・カーソン日本協会理事長。東京薬科大学卒。

1974年、ポール・ブルックス『生命の棲家』(後に『レイチェル・カーソン』と改題)を訳出。以来カーソン研究をライフワークにする。

訳書にカーソン『センス・オブ・ワンダー』『海辺』『潮風の下で』などがある。

 

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スムージー(最終版)

2021年05月28日 | 食べ物

 

2020年11月18日に「スムージーにハマる」で「グリーンスムージー」、「シャインマスカット」、果肉入りの「梨」をご紹介した。

 

 

さらに12月20日「まだまだスムージー」で「あまおうスムージーMix ラズベリー入り」、「Wベリー&ヨーグルトMix」、「豆乳バナナMix」の3種を紹介した。

ここまでで結局、もっともシンプルな「グリーンスムージー」が一番という結論だった.

 

 

その後、いくつかご購入。

左の「川中島白桃&マンゴーMix」は確かに白桃の味は感じられるが、マンゴーはどこ?という感じ。でも、甘みに嫌味が無く、「グリーンスムージー」を続けた合間に飲むのには最適だ。

右の「オレンジざくろ&ヨーグルトMix」は、とろりとしながら爽やかで、なかなかだが、ほんの少しの甘味だが後味が残る。

 

「ビタミンスムージー 黄桃甘夏&バレンシアオレンジ」は美味しいが、フルーツジュースとの差が明確でない。

 

「完熟バナナ&豆乳」は毎朝バナナを食べている私には、これなら本物の方が良いという感じ。

 

通常の3本分の「グリーンスムージー 1000g」を見つけ、ついでに「愛媛甘夏&レモン」にも手を伸ばす。

「愛媛甘夏&レモン」はさっぱりして美味しいが、スムージーらしさが今一つ。

「グリーンスムージー 1000g」は、小分けにして飲む必要があるので、面倒だ。

 

カゴメのホームページを見ると、野菜果実ミックス「野菜生活」シリーズとして、30種以上が並び、しかも新商品、リニューアルが次々登場している。とても付き合いきれません! 

 

ということでいろいろ浮気したが、結局、続けて飲んでも飽きが来ず、どこでも手に入りやすいこともあり「グリーンスムージー」が、私的には一番ということになった。おそまつでした。

 

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桜木紫乃『いつかあなたをわすれても』を読む

2021年05月27日 | 読書2

 

桜木紫乃文、オザワミカ絵『いつかあなたをわすれても』(2021年3月31日集英社発行)を読んだ。

 

集英社のサイトにはこうある。

記憶という荷物を下ろし始めたさとちゃんは、ママのおかあさん。そして、わたしのおばあちゃん。おばあちゃんに忘れられてしまったママはこれまでの思い出の荷造りを始める。「あんしんしていいよ。これは、たいせつな、たいせつな、わたしたちのじゅんばん」。やがて訪れるお別れを前にして、ママからおばあちゃんへの、そしてわたしへの思いが語られる…。
直木賞作家・桜木紫乃による初の絵本。中央公論文芸賞を受賞した小説『家族じまい』に登場する人々のもう一つの物語。生まれ、育ち、そして子どもを生み育み、やがて老いていくこと、そのすべてが”たいせつなじゅんばん”だということがこの作品に描かれています。
おんなのこがおんなのひとになり、しあわせの階段を上がる時も、老いていろんなことを忘れていく時も、そのすべてがかけがえのないものだというメッセージが心に響きます。

 

【著者・桜木紫乃からのメッセージ】
母が、わたしの名前を忘れていることに気づいたとき、実はあまり悲しくなかったんです。ああそうか、とうとうきたか、という感じでした。不思議なほど、感情は揺れませんでした。思ったのは、ふたりが母と娘として半世紀かかって描いてきた絵に、ちゃんと余白が生まれて、完成が近づいてきたということでした。
この先、どんどんわたしを忘れてゆく母のことを考えながら、「家族じまい」という小説を書きました。絵本「いつか あなたを わすれても」は、小説からは漏れた、孫の視点で書いてみました。不要な言葉を取り払ってゆく作業のなかで、わたし自身が娘になったり孫になったり、いつか迎える老いた時間を眺めたり、ひとつ、女に生まれたことの答えを探す、よい時間を過ごせたと思います。
「おかあさん、わたしをわすれていいよ。わすれたほうが、さびしくないから。わすれたほうが、こわくないから」この言葉を、気持ちを、母に手渡したい。
その気持ちが、絵本というかたちになりました。

 

42頁の見開きに絵が描かれていて、数行の文が書かれている絵本だ。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

認知症で娘を忘れてしまったおばあさんのさとちゃん。さとちゃんの娘である母はそれほど悲しまない。母と娘として積み重ねてきた長い、長い日々がしっかりとあるから。
娘は、自分の娘であるさとちゃんの孫娘へ語りかける。母から娘へ、そして孫娘へと繋がれる女性としてのリレー。

 

オザワミカさんの絵は、とても優しい気持ちになる、さわやかで、すがすがしい絵だ。

 

 

桜木紫乃(さくらぎ・しの)の略歴と既読本リスト

 

オザワミカ

愛知県出身。イラストレーター。書籍や雑誌のイラストや演劇の宣伝美術を主に手がける。

2010年の漫画家・江口寿史氏との二人展「reply」など展示会活動多数。
2019年リボーンアートフェスティバル青木俊直展ディレクター。
フリーブックレット『BOOKMARK』イラストデザイン担当。

 

 

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5月のボトルブラッシュ

2021年05月26日 | 散歩

 

西オーストラリアのワイルドフラワーの一種のボトルブラッシュを日本でも方々で見かける。

 

昨年5月のブログでも紹介していた定点観測地点のボトルブラッシュは、今年、4月25日には花が咲いていなかった。

 

5月1日には枝の先端部に花芽(?)が出来て、良く見ると一番上にほんの少しだけ赤い花が見えた。

 

5月8日には一気に花が咲いた。

 

右下を接写してみた。確かにボトルブラッシュ、ビン洗いのブラシだ。

 

5月11日、別な家にもっと華やかなボトルブラッシュを見つけた。しかも、鯉のぼりと並んで。

 

5月16日、さらに派手に満開のボトルブラッシュ。

 

 

 

 

 

 

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麻生幾『救急患者X』を読む

2021年05月25日 | 読書2

 

麻生幾著『救急患者X』(2021年3月15日幻冬舎発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

<呪><恨><殺>そして<救い出して>―― 謎の血文字が病院に惨劇を呼び覚ます。
麻生幾が新たに生み出す医療サスペンスホラー。

 

大学病院の5階から落下した身元不明の女性が救命救急センターに運び込まれる。救命医の吉村は必死の処置を試みるが、身動きできないはずの女性は、「救い出して!」と叫び、襲い掛かる。

その後も連続して身元不明患者が搬送され、病院のトイレの鏡には血文字が。

 

高度救命救急センター

吉村:36歳。救急科専門医。チームリーダー。4歳の娘・渚を亡くし、妻・絵美とも別れる。

美里:29歳。ナースリーダー、秋子:ナース長、梨愛、静香:ナース(美里の後輩)

小林:32歳。チームセカンド、藤田:31歳。チームサード、村松:研修医

林原:センター長(救急医学教室主任教授)

X:氏名不詳のICU入室者の名称。

 

関東医科大学付属病院

杉村:事務長、三田村:事務次長、坂井:事務局人事課長、森田:総務課長

 

草刈:刑事

 

陽子:飲料の運転手。1年前、リストカットで吉村が救命処置を行った。

赤松:葬儀社・寝台車の運転手。2年前、交通事故にあった娘の手術を吉村が行った。後に病院事務とトラブル。

山田:医学部の解剖学実習で使う献体の手配業者

 

 

麻生幾(あそう・いく)

大阪府生まれ。小説デビュー作『宣戦布告』がベストセラーになり映画化もされた。

以後、『ZERO』『瀕死のライオン』『外事警察』『特命』『奪還』『秘録・公安調査庁 アンダーカバー』『トッ!』など著書多数。

 

 

外傷:(がいしょう、英: injury, trauma)。外的要因による組織または臓器の損傷の総称。
この本ではトラウマセンターとは、外傷センターのこと。
いわゆるトラウマ、つまり心的外傷(英語: psychological trauma)は、外的内的要因による肉体的及び精神的な衝撃(外傷的出来事)を受けた事で、長い間それにとらわれてしまう状態をいう。

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5月のバラ

2021年05月24日 | 散歩

5月の散歩中に見かけたバラをご紹介

 

バラと言えばなんと言っても深紅のバラ。

 

こちらは八重。

 

ピンクのバラも穏やかで晴れやかだ。

 

けっこう大輪で見事。

 

ピンクとオレンジの混合。

 

柔らかなクリーム色

 

バラって、アブラムシ退治などけっこう手がかかると思うのだが、皆さん通りがかりの人のために手入れを怠っていません。たっぷり楽しませていただきました。

 

 

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ジョン・ル・カレ『スパイはいまも謀略の地に』を読む

2021年05月23日 | 読書2

 

ジョン・ル・カレ著、加賀山卓朗訳『スパイはいまも謀略の地に』(2020年7月25日早川書房発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

イギリス秘密情報部(SIS)のベテラン情報部員ナットは、ロシア関連の作戦遂行で成果をあげてきたが、引退の時期が迫っていた。折しもイギリス国内はEU離脱で混乱し、ロシア情報部の脅威も増していた。彼は対ロシア活動を行なう部署の再建を打診され、やむなく承諾する。そこは、スパイの吹きだまりのようなところだった。 ナットは、新興財閥(オリガルヒ)の怪しい資金の流れを探る作戦を進めるかたわら、趣味のバドミントンで、一人の若者と親しくなっていく。 ほどなく、あるロシア人亡命者から緊急の連絡が入った。その人物の情報によると、ロシアの大物スパイがイギリスで活動を始めるようだ。やがて情報部は大がかりな作戦を決行する。そして、ナットは重大な決断を下すことに……。
ブレグジットに揺れるイギリスを舞台に、練達のスパイの信念と誇りを描く傑作。

 

ル・カレが88歳で書いたの最後の作品。原題は、”AGENT RUNNING IN THE FIELD”

 

イギリス秘密情報部(SIS)の引退時期が迫るナットは、エストニアから帰還後、吹き溜まりのような<ヘイヴン>へ異動となる。感情的ならが優秀な新人のフォローレンスが手掛かりを作った新興財閥(オリガルヒ)の資金ルートを探る作戦にやる気を見せ始めた。一方、若いときからの趣味のバドミントンではクラブのチャンピオンだったが、純粋な若者エドが挑戦してきて、好敵手となり、親しくなる。
ロシア人亡命者<ピッチフォーク>からの緊急連絡でロシアの大物スパイがイギリスで活動を始めるという情報が入る。

 

< >は暗号名

イギリス秘密情報部(SIS)(オフィス)

ナット: 主人公。ロンドン総局の吹き溜まりのような「ヘイヴン(安息所)の支局長

ジャイルス・ワックフォード:前「ヘイヴン」の支局長

フォローレンス:見習い2年目で「ヘイヴン」の新人。才能あるが落ち着きが必要。<ローズバッド作戦>立案。

「ヘイヴン」のメンバー:デニーズ、リトル・イリア

セルゲイ・クズネツォフ:暗号名<ピッチフォーク>、「ヘイヴン」の運用要員。

ドム(ドミニク)・トレンチ:ロンドン総局長。再婚相手は保守党の実力者レイチェル。

ブリン・ジョーダン:ロシア課課長

ガイ・ブランメル:ロシア対策支援課課長

パーシー・プライス:監視課課長

マリオン:保安局幹部

アネッテ(ワレンチナ):モスクワ・センター幹部。セルゲイにアクセス。

フェリックス・イワノフ:ロシアの休眠工作員

アルカジ―:SISのかっての運用要員。暗号名<ウッドベッカー>
<オルソン>:新興財閥(オリガルヒ)のウクライナ人、愛人は<アストラ>
エド(エドワード)・スタンリー・シャノン:ナットのバドミントン仲間。190㎝の長身。

プル―(プルーデンス):ナットの妻。無料奉仕の法律相談弁護士。娘はステフ(ステファニー)。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

実際に英国情報部のスパイだったル・カレの小説は、リアル感一杯。その分、裏切り、だまし合いなど複雑怪奇な人間関係の糸がからまっていて、ややこしい。会話も、裏の裏の読み合いで、面白いのだが、読むのにくたびれる。


スパイ物だが、撃ち合い、取っ組み合いなど派手な立ち回りシーンがなくものたりない。

複雑な人間関係で面白いのだが、登場人物が多すぎて、しばらく時間を置いてから再び読みだすと、年寄の記憶力では、話について行くのが難しくなる。またく、裏を読み合う陰謀ばかりで、くだびれる。

 

 

ジョン・ル・カレ John le Carre (1931年10月~2020年12月)

イギリスのドーセット州生まれ。オックスフォード大学卒業後、イートン校で教鞭をとる。東西冷戦期にイギリスの諜報機関MI5に入ったが、MI6に転属し、旧西ドイツのボンにイギリス大使館の二等書記官として赴任、その後ハンブルクの総領事館に勤務した。

1961年に『死者にかかってきた電話』で小説家としてデビュー

1963年、第三作の『寒い国から帰ってきたスパイ』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞と英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞受賞
スマイリー三部作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1974年)、『スクールボーイ閣下』(1977年、CWA賞ゴールド・ダガー賞受賞)、『スマイリーと仲間たち』(1979年)が人気。
スパイたちの遺産』、最後の作品は本書の『スパイはいまも謀略の地に

 


加賀山卓朗(かがやま・たくろう)
1962年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家

訳書、ル・カレ『地下鉄の鳩』、シズマン(共訳)『ル・カレ伝』

 

 

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カズオ・イシグロの略歴と既読本リスト

2021年05月22日 | 読書2

カズオ・イシグロ/Kazuo Ishiguro

1954年11月8日長崎生まれ。1960年海洋学者の父親、家族でイギリスへ渡り、英国で育つ。日本とイギリスのふたつの文化を背景に育ち、その後英国籍を取得した。

ケント大学で英文学を、イーストアングリア大学大学院で創作を学ぶ。一時はミュージシャンを目指していたが、やがてソーシャルワーカーとして働きながら短編小説を雑誌に発表。

1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞
1986年の『浮世の画家』でウィットブレッド賞受賞
1989年の『日の名残り』イギリス文学の最高峰ブッカー賞受賞
2017年ノーベル文学賞受賞。同年英王室よりナイトの爵位を授与
2018年日本の旭日重光章受章

その他、長篇に『充たされざる者』(1995年)、『わたしたちが孤児だったころ』(2000)、『わたしを離さないで』(2005)、『忘れられた巨人』(2015)、『クララとお日さま』(2021)

短篇集に『夜想曲集-音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(2009)がある。

映画脚本、ジェームス・アイヴォリー監督2005年公開『上海の伯爵夫人』

参考:日吉信貴著『カズオ・イシグロ入門』

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カズオ・イシグロ『クララとお日さま』を読む

2021年05月21日 | 読書2

 

カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳『クララとお日さま』(2021年3月10日早川書房発行)を読んだ。

 

ノーベル文学受賞第一作で、8作目の長編小説。

表紙の裏にはこうある。

カズオ・イシグロ最新長編

人工知能を搭載したロボットのクララは、
病弱な少女ジョジーと出会い、
やがて二人は友情を育んでゆく。
生きることの意味を問う感動作。
愛とは、知性とは、家族とは? 

 

原題:“KLARA AND THE SUN”

 

語り手のクララはAF(Artificial Friend、人口親友)。AFは人口頭脳搭載のロボットで独自の個性を持つ。このクララと病弱な少女ジョジーの友情の物語。

 

クララ:最新版B2型ではなくB2型のAF。女子。外を見ることが好きで、お日さまを崇拝している。観察と学習への意欲が大。

AFも売る店:店長、クララの友だちの女子AFローザ、男子AFレックス。

ジョジー:病身の少女。一目見た時からクララを選んだ。

リック:ジョジーの幼馴染。(遺伝子)向上措置を受けていない。

アーサー・クリシー:ジョジーの母。ジョジーの姉・サリーを亡くした。クララをなんで選んだか?

ヘレン:リックの母。クリシーの友人。

バンス:ヘレンの昔の恋人

ヘンリー・カパルディ:ジョージ―の肖像画を描く。

ポール:クリシーの元夫でジョジーの父親。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

久方ぶりの五つ星。
「今年の五つ星は」と検索してみると、新川帆立著『元彼の遺言状』伊岡瞬著『いつか、虹の向こうへ』全卓樹著『銀河の片隅で科学夜話』東野圭吾著『むかし僕が死んだ家』向田邦子著『父の詫び状』アガサ・クリスティー著『春にして君を離れ』、『東野圭吾公式ガイド』。

2月1日以外は、3月3件と4月3件と集中している。気分が盛り上がっている時期には良く思える、つまり気分しだいの評価だということを再確認した。

 

と言っても、この本は面白くて、ちょっとだけ考えさせる。最初、「子どもの話かよ」、「流行のAIロボットの話?
」って思って読むのためらったが、好きなカズオ・イシグロだし、ノーベル賞受賞記念だし、一応読んでみるかと、読み始めたら、止まらなくなった。

 

描写が映像的だ。ロボットの目から見た外界がブロックに分割され、統一される課程、店のショーウインドウからの景色、野原の中の納屋内光景など、映画脚本も書いたことのあるカズオ・イシグロの筆には引き込まれる。

 

語り手がロボットというのがいい。外界から学びながら、成長していく。個性、自立性もあって、親友と決まったジョジーの、必ずしも言う通りではなく、彼女のためになる行動を取ろうとする所もあって、機械ロボットではないが、人間でもないという微妙なところでバランスよく描かれている。

読んでいくうちにロボットであるクララに引き込まれ、同一視している自分に気がつく。

 

クララが再会した店長に語るところもなかなか意味深だ。(p431)

「カパルディさんは、継続(継承?)できないような特別なものはジョジーの中にないと考えていました。探しに探したが、そういうものは見つからなかった――そう母親に言いました。でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。……」

 

カズオ・イシグロの略歴と既読本リスト

 

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貫井徳郎『誘拐症候群』を読む

2021年05月19日 | 読書2

 

貫井徳郎著『誘拐症候群(新装版)』(双葉文庫ぬ01-05、2014年11月16日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

誘拐事件が連続して起きていた。しかし数百万程度の身代金を払えば子供が無事帰ってくるため、泣き寝入りのケースが多く、警察は誘拐があったことに気づかない。ネット上で<ジーニアス>と自ら<天才>を名乗り、闇に身を潜める卑劣な犯人を炙り出す。警視庁の影の捜査チームに招集がかかった。だがその時、メンバーの一人、武藤隆は、托鉢中に知り合った男のために、別の誘拐事件に巻き込まれていた――ページを繰る手がとまらない、面白さ抜群のシリーズ第2弾!

 

《症候群》3部作の第二作。3部作は、《失踪症候群》、本書、《殺人症候群》

 

武藤隆:表の生業は托鉢僧。元警察勤務で、特殊工作チームの一員。

高梨道典:絵本作家、ティッシュ配り、宅配便運転手。妻・賢淑(ヒョンスク)は妊娠中(後、和樹を出産)。

高梨道治:大手メーカーの社長。道典の父。桜井は部下。

山上靖男:平凡なサラリーマン。娘の加奈子が誘拐され500万円を要求された。

田村公平:ホームページに日記を公開。34歳。幼稚園児の娘・秋穂が誘拐され700万円を要求された。

磯村咲子:ハンドルネーム《SAKIKO》。母・初江の看護のために勤めを辞めた。32歳。

<ジーニアス>:ネットで知性溢れる話し方。咲子に仕事の依頼をする。木下春男を名のる。

後藤巧己(たくみ):<ジーニアス>の相棒。弟は競馬好きの後藤俊和

橋上篤志:新宿でティッシュ配り、後パチンコ店員。パチプロの山名隆行は友人。

(たまき)敬吾:警視庁警務部人事二課。特殊工作チームのリーダー。冷静で冷たい。チームは諸般の事情から警察組織が手を出しにくい事件を捜査し、犯人を社会的に抹殺する。チーム員は、原田柾一郎、190㎝近い大男の倉持真栄(まさはえ)。

 

 

本書は2001年5月に双葉社刊行の新装版。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

数百万円なら警察に届けないだろうとの小口誘拐がユニークで、1億円の大口誘拐とのからみが面白い。執筆当時はまだ新しかったネットを利用して姿を現さないで仲間を動かす<ジーニアス>の存在も魅力的だ。

 

特殊工作チームがもっと活躍してからめば、より面白くなっただろう。頭が良く、常に余裕のある<ジーニアス>が最後の方はバタバタになるのが、がっかりだ。

 

 

貫井徳郎(ぬくい・とくろう )の略歴と既読本リスト

 

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板橋悟『新版 なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?』を読む

2021年05月17日 | 読書2

 

板橋悟著『新版 なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?』(2016年12月31日主婦の友社発行)を読んだ。

 

主婦の友社の内容説明は以下。

数学ギライの人・数学が苦手な人に贈る、義務教育の算数・数学やりなおし講座。
「分数の割り算はひっくり返してかける」のはなぜ? 「マイナス×マイナスがプラスになる」理由は? 今まで疑問を持たずに(あるいは持っても)通り過ぎてきたところにこそ、数学ギライの原因がありました!

 本書が提唱するのは「実生活にあてはめて説明する」「図に描いて表現する」こと。公式の暗記は必要ありません。だから、今までの数学の本に挫折した人も、無理なく読めて、実感を持って理解できます。
また一見数学と関係なさそうな「ダイエットする」「料理を作る」「部屋を片づける」といった実生活の問題を、数学の考え方を使ってすっきり解決する方法も紹介します。これで「わかる!」「役に立つ!」数学があなたのものになります。

 

「分数の割り算はひっくり返してかける」というその理由が理解できず数学嫌いになった人がいるという話は聞いていた。私自身は分子に割られる分数、分母に割る分数を置くと、ひっくり返してかけることになるので、疑問も持たなかった。しかし、この理屈を数式でなく具体的もので説明しようとしてできなかった覚えがあるので、この本を読んでみた。

 

「はじめに」

本書では、「抽象」と「具体」を行ったり来たりできる思考方法に重点を置いてトレーニングしていきます。…具体的事例から、一般的な法則(本質)を抽出(発見)することを、一般化、すなわち抽象化というのです。抽象化ができると、ひとつの具体例から学んだことを、ほかの事例に応用できるようになります。…数学嫌いな人は、抽象化が苦手な人が多いのです。

私が算数のおもしろさに目覚めたのは、…「自分がそういうやり方で問題を解いたのか、計算のプロセスをしっかり書くこと。書いたら消さずに残しておくこと」でした。

第1章 なぜ分数のわり算は、ひっくりかえすのか?

 

「そもそもわり算とは何か?」

(1) 分ける
りんご6個を2個ずつ分けると、3人。

(2) 何倍か

  A君がりんごを6個持っていて、B君は2個持っている。A君はB君の何倍のりんごを持っているか?

 

(2/3)÷(5/7)

「シーンを思い浮かべて、実感をつかむ」

  • 式の意味を言葉にする  2/3は5/7の何倍か
  • 生活シーンに置き換える ①2/3枚のピザと、②5/7枚のピザをイメージする。
  • 図や記号に書く 比べ安くするために①を7等分、②を3等分し、どちらも21ピースにする。
    ①は14個のピース、②は15ピースになる。
  • 直感的に答えを出す。 2/3枚のピザは、5/7枚のピザの14/15倍。

 

「実際に、計算してみましょう」

  • (2/3)÷(5/7)=(2/3×7/5)÷(5/7×7/5) 同じ数(7/5)を書けても答えは変わらない
  •          =(2/3×7/5)÷(5×7/7×5)
  •          =(2/3×7/5)÷1
  •          =2/3×7/5
  •          =14/15

「分数の割り算はひっくり返してかける」のは、(1)から(4)へショートカットしていたのだ。

 

「分数の割り算はひっくり返してかける」というのは、分数同士のわり算が複雑なので、「わる数を1にする」という目的に向かって進めたプロセスを、ショートカットした結果でした。

 

 

第二章 なぜマイナス×マイナスは、答えがプラスになるのか?

「そもそもマイナスとは何か?」

基準値からのマイナス:基準値からの不足数

《この化粧品を使えば、肌年齢がマイナス5歳に!》、《ロンドンとの時差は、東京からマイナス9時間です》

0からのマイナス:0より小さい数

《東京の最低気温は、マイナス2度でした》

マイナスは「反対の向き」を表している!

《浴槽の水が、1分間に2㎝ずつ減っていきます。3分前には何㎝上まで水が入っていたでしょうか》

 

マイナス同士のかけ算はごく一部の人を除いては日常生活にはあまり登場しないので、具体例を出してすっきりすることは難しいのです。(p60)

 

第3章~第6章 略

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

分数同士のわり算や、マイナス同士のかけ算を、具体的もので説明する部分はややこしいだけで、ピンと来ない。やはり抽象化を受け入れて、数式で考えるようにしないと、小学高学年の算数や、中学の数学は理解できないと思った。この本のように、なんとか具体的なイメージで算数を考えようとするのは無理で、間違っていると思った。抽象化、数式化を避けてはだめだと私は冷たく言い切る。

 

お母さんが数学は嫌いだと思っていると、それが子どもに伝わって子どもも数学嫌いになりやすい。

小学校3年までは身の周りの具体的なものに関連して算数を説明しているが、4年生になると抽象的になり始め、算数が難しくなると言われる。この時期に頑張らないと、あなたの子どもはIT時代に取り残されると、偉そうに私は冷たく断定する。

 

 

板橋悟(いたばし・さとる)

1963年東京都生まれ。PICTO ZUAKI Design Lab 代表。ビジネスプロデューサー。ピクト図解®メソッド考案者。
東京工業大学理学部物理学科卒後、リクルートに入社。米国マサチューセッツ工科大学に社費留学。
帰国後、KIDS向け教育事業を立ち上げ、メディアファクトリーに事業部長として出向。
子どもが直感的に楽しく発想する教育メソッドを研究。
現在はビジネスプロデューサーとして、企業の新商品開発・新規事業開発などに従事。

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左巻健男『ウンチのうんちく』を読む

2021年05月15日 | 読書2

 

左巻健男著『ウンチのうんちく 大便・おなら・腸内細菌のはなし』(2014年6月6日PHP研究所発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

私たちにとって身近な存在であり、健康のバロメーターでもあるウンチ。
本書は科学の視点からウンチにまつわる蘊蓄を集めた一冊です。

◎本書の3つの特徴◎
■一生お世話になるウンチにまつわる「科学・医学的な知識」を扱う 
■とりわけ健康に関わる内容を重視 
■読み切り的な記事が多いのでどこからでも読める

 

「はじめに」

本書の3つの特徴の最後に「(トイレに常備することを推奨します!)」とあるが、ジョークにだろう。

「ウンチは何からできている?」

健康な人のウンチの約80%は水分で、残りの固形分20%のうち、1/3が食べ物の不消化部分、1/3が古くなって剥がれた消化管上皮、残りが腸内細菌とその死骸。

 

「ウンチの色とにおい」

ウンチの悪臭は、インドール、スカトール、硫化水素、アミン。インドールもスカトールも、薄めると芳香で、香水や香料に使われる。

 

「宿便ってなに?」

「腸壁にこびりついて取れないヘドロ状のウンチ」といわれる宿便は存在しない。小腸の吸収上皮細胞は寿命が最も短い細胞の一つで、一日~一日半で脱落して死滅し、ウンチがこびりつく状態にはならないし、内視鏡でも確認できない。

 

「食べたものはどうなる?」

私たちの体には口から肛門まで、大人で約9メートルもの消化管と呼ばれるパイプが通っている。

口で砕かれ唾液と混ぜ合わされて食べ物は、胃に入ると蠕動運動で一分間に3~5回の収縮で酸性の胃液と食べ物が混ぜ合わされる。消化には3~6時間かかる。

小腸での消化・吸収には4~5時間かかり、口から入った食べ物が肛門からウンチとなって出てくるまで24~72時間かかる。

 

「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」

腸内には約1000種、100兆個、1.5キログラムの細菌がある。

離乳食の頃には、食べ物によるさまざまの菌が入り、その人固有の腸内フローラがほぼ決まる。

 

「多様化する寄生虫症」

第二次世界大戦直後の日本では、寄生虫の寄生率が70~80%もあった。今では1%以下。

人間が排出したサナダムシの最大のものは39メートル。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

ウンチに関する幅広い項目を抑えていて、内容も要領よくまとまっている。個々の話はそれなりに面白く、軽く読めるのだが、ウンチ話が好きな私が特にびっくりしたり、深く納得させられる内容はなかった。いわば事典的だ。著者がウンチの専門家ではなく、ライターのためだろう。

 

 

左巻健男(さまき・たけお)

1949年栃木県小山市生まれ。千葉大学教育学部中学理科専攻卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。
東京大学教育学部附属中・高等学校教諭、京都工芸繊維大学教授、同志社女子大学教授などを経て法政大学教職課程センター教授。専門は理科教育(小学校・中学校・高校の理科で何をどのように教えるか)、科学コミュニケーション(科学を一般の人にどう伝えるか)。
著書に、「面白くて眠れなくなる」シリーズの『物理』『化学』『地学』『理科』『人類進化』『元素』『物理パズル』(以上、PHP研究所)、『図解 身近にあふれる「科学」が3時間でわかる本』『図解 身近にあふれる「生き物」が3時間でわかる本』(以上、明日香出版社)など多数。

 

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5月(1)の花

2021年05月14日 | リタイヤ生活

 

5月3日に届いた花

 

ヒマワリ6本、ベニバナ7輪、ブルースター1本、ミニグラジオラス2本と、シダの一種の大きな葉っぱのタニワタリ。

 

ベニバナは7輪の真中だけ咲いている。右下にピンクのミニグラジオラス

 

この白いミニグラジオラスはグラジオラスを名乗るにはあまりにも小さい。

 

小さなヒマワリだが、6輪まとまるとあでやか。

 

ブルースターは半つる性の植物で、茎には産毛のような細かな毛が生えている。ヒマワリの陰で目立たないが、近づいてみると、可憐な花だ。

 

4日経過してヒマワリは最盛期。すでに花びらが乱れ始めている。

 

ピンクのミニグラジオラス

 

白いミニグラジオラス

 

 

4日後、赤を中心に6輪咲いたベニバナ。

 

8日後、周りの6輪も中心が赤味を帯びてきた。

 

11日後、7輪すべてがオレンジ色に変わった。これでこそ、赤い染料や着色料として有名なベニバナだ。

 

 

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