hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

20年7月(2)の花

2020年07月30日 | リタイヤ生活

 

7月24日に届いた花

 

翌日にはグラジオラスが下の蕾から咲き始めました。

 

色は、ピンク、黄色からオレンジへのグラデーションと黄色です。

 

下二つと左のスプレーカーネーションは、かすかに赤で縁取りされたピンクで、グラジオラスとほぼ同じ色。

 

ブロッコリーみたいなセダム

 

 

 

2日後にはグラジオラスはかなり上の方まで咲いた。一方でスプレーカーネーションは元気がなくなってきた。

 

近くで見ると、グラジオラスの淡いピンクが柔らかそうで愛おしい。

 

こちらは華やか。

 

ソリダコだって負けてなるものかと(花言葉:振り向いて)、小さな小さな花を咲かせています。

 

8月は花が長持ちしないのでお休みします。

 

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知念実希人『リアルフェイス』を読む

2020年07月28日 | 読書2

知念実希人著『リアルフェイス』(実業之日本社文庫ち1-3、2018年6月15日実業之日本社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

顔を変えるのは罪ですか? 渾身の医療サスペンス最新版!
美を創り出す芸術家のように、依頼者の顔を変える天才美容外科医・柊貴之。 金さえ積めばどんな要望にも応える彼のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。 いまの妻の顔を前妻の顔に変えろ、ある男を別人にしてほしいなど。 さらに、整形美女連続殺人事件の謎が……。 予測不能の一気読み医療サスペンス×ミステリー!(『改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ』を改題・改稿)

 

柊貴之(ひいらぎ・たかゆき):天才美容外科医。40歳前後。「私は技術屋ではなく芸術家と誇る。

朝霧明日香:大学院で麻酔の研究中の麻酔科医。28歳、童顔、あか抜けない。

一色早苗:柊クリニックの看護師。30歳前後。モデル並みの美人。DV元夫は春日宗介

平崎真吾:フリージャーナリスト。柊貴之の周辺を調査。

神楽誠一郎:形成外科医。女児死亡の医療過誤事件、連続殺人事件容疑者となるが行方不明。

諏訪野:朝霧の先輩医師。情報通。

二階堂彰三:巨大企業の会長。70歳過ぎ。死んだ前の妻は幸子

二階堂莉奈:彰三の後妻。30歳前後。ベンチャー企業を年商20億の企業にした。

鷲尾竜之介:やくざの親分。外につくった息子が浜中竜也(自称鈴木)で、その娘は真里菜

太田一郎:森の中の療養型病院の院長。

藤井舞子:女優の天城舞。個人事務所のマネージャーが草柳健太

黒川:警視庁捜査一課の刑事。相棒は坂下。

 

本作品は、『改貌屋 天才美容外科医・柊貴之の事件カルテ』(改造舎文庫、2015年刊)を改題・改稿。

 

知念実希人(ちねん・みきと)の略歴と既読本リスト

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

癖の強い登場人物が多く、柊の言動など漫画チックでそれなりに楽しめる。

柊と朝霧の軽妙な会話、柊と一色の関係などを楽しみつつ、スイスイと読み進められる。

 

ミステリーとしての意外性はそれほどではないというか、無理にこねている感じがする。

 

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与那原恵『赤星鉄馬 消えた富豪』を読む

2020年07月26日 | 読書2

 

与那原恵著『赤星鉄馬 消えた富豪』(2019年11月10日中央公論新社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

武器商人として活躍した父から受け継いだ莫大な資産を惜しみなくつぎこみ、日本初の学術財団「啓明会」を設立し、柳田国男ら錚々たる学者の研究を支援。アメリカからブラックバスを移入し釣りの世界で名を馳せ、弟たちと日本のゴルフ草創期を牽引。樺山愛輔や吉田茂をはじめとする華麗なる人脈を持ちながら、ほとんど何も残さずに世を去った実業家、赤星鉄馬。
評伝に書かれることを注意深く避けたかのようにさえ見える、その謎に満ちた一生を追った本格ノンフィクション。

 

第1章、第2章は、赤星鉄馬の父・弥之助が大金持ちになるまでの活躍を語る。薩摩出身で、海軍次官樺山資紀と欧米各国海軍ノ状況視察に同行し、武器商人となり巨利を得た。弥之助は、東京・港区鳥居坂の元井上馨邸約4000坪の敷地に邸宅を構築した。

 

明治15年生まれの赤星鉄馬は父・弥之助の資産を22歳で継承し大富豪となった。相続を終え、ペンシルベニア大学ウォートン校(トランプ大統領が不正(?)入学した)に留学、卒業し、帰国後、東京一の美人・文と結婚する。28歳の鉄馬と21歳の文の新婚旅行は半年に及ぶ世界一周だった。麻布鳥居坂に豪壮な洋館を構える。

 

大正3年(1914)に「シーメンス事件」が起き、薩摩閥と日本海軍高官との癒着が問題になった。すでに他界していた弥之助と海軍の関係が問題となり、財産を継承した鉄馬も指弾された。

 

鉄馬は弥之助が残した茶道具、美術品を売却し、510万円(現在の価値で約110億円)を得て、朝鮮に成歓牧場をつくり、さらに100万円(現在の価値で約20億円)を提供して「啓明会」を設立した。

日本初の学術財団「啓明会」は、多くの研究者を支援し当時は国内の全研究助成費の5分の1を占めるほどの規模だった。しかし、鉄馬は売名を嫌い、財団に「赤星」の名を冠さず、役職につくこともなく、ほとんど表に出ることはなかった。

さらに、趣味の釣りでも活躍し、ブラックバスをアメリカから持ち込み、日本で繁殖させた。

また鉄馬は欧米の大学に学び、リベラル派で、吉田茂や樺山愛輔(白洲正子の父)、岩崎小弥太らと終生の友人であった。しかし、彼は戦後、財産税などの改革で財産を失い、晩年は一人釣り糸を垂れるばかりで、静かに消えていった。

 

岩崎小弥太は成蹊学園に約10万坪の土地と150万円を提供し、社会への恩返しなので三菱とか岩崎の名は出すべきではないといった。しかし、学園西側に父兄のため2万坪を三菱地所が分譲した。鉄馬は関東大震災後に、子どもたちの成蹊学園通学に便利な武蔵野市吉祥寺の3千坪の土地に移った。昭和9年に建て替えられたアントニン・レーモンド設計の約40mの長い建物は武蔵野市が購入・保存の予定となっている。

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

著者は語る。(p7)

赤星鉄馬は一代目が築いた財産を放蕩した典型的な「二代目」だったという見方もあるかもしれない。けれど私には、父弥之助が築いた資産を少しずつ失っていくことが、彼の一生を懸けた「事業」だったように思えてならない。そうして自分の姿を消していく――、意識的にそれを選んだのではないだろうか。

また、著者は、シーメンス事件で財産を継承しただけの鉄馬がメディアから激しく指弾されたことが、その後、名を秘めて表に立つことがない生き方をした原因の一つではなかったかと推測している。。

 

著者は、巻末の参考文献が30ページに及ぶような丹念な調査の末にこの著書を書いているのだが、それだけに枝葉の話を丹念に記述することも多く、冗長な部分もある。

 

与那原恵
1958年東京都生まれ。ノンフィクション作家。
1996年、『諸君!』掲載のルポで編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞。
2014年、『首里城への坂道 鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』で第2回河合隼雄学芸賞、第14回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。

他の著書に、『物語の海、揺れる島』『もろびとこぞりて』『美麗島まで』『サウス・トゥ・サウス』『まれびとたちの沖縄』『わたぶんぶん わたしの「料理沖縄物語」』などがある。

 

 

赤星弥之助・静の子供:鉄馬、兵造、とよ、ふさ、喜介、四郎、五郎、六郎、よし(夭折は除く)

樺山資紀(かばやま・すけのり):海軍大臣・台湾総督。薩摩藩出身。弥之助の妻・静の伯父。

樺山愛輔:資紀の長男。伯爵。米国の大学卒。日本製鋼所、第十五銀行の役員。次女は白洲正子。

 

女性飛行家の草分けであったアン・モロー・リンドバーグの別れの挨拶。(本書p305、『翼よ、北に』)

「サヨナラ」を文字どおりに訳すと、「そうならなければならないなら」という意味だという。これまで耳にした別れの言葉のうちで、このようにうつくしい言葉をわたしは知らない。…… 言葉にしないGood-byであり、心をこめて手を握る暖かさなのだ――「サヨナラ」は。

 

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さくらももこ『さくら日和』を読む

2020年07月24日 | 読書2

さくらももこ 絵・文『さくら日和』(集英社文庫さ24-13、2007年3月25日集英社発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。

21世紀を前にして、人生最大の危機に陥ったももこさん。「ママは本当はさくらももこなんじゃないの?」と息子が疑いを抱き始めたのだ……。「深まる息子の疑惑」はじめ、父ヒロシを連れての社員旅行など、抱腹エピソードが満載。「おめでとう新福さん」で前代未聞のパーティーの主役となった、元担当編集者からの渾身の質問をお楽しみ巻末付録に。人気爆笑エッセイがますますパワーアップして登場!

 

「お兄ちゃんのスカウト」

この冒頭のエッセイは、さくらさんの友人・賀来千香子のお兄さんをさくらプロダクションへ勧誘する話だ。この中で、さくらさんは「小さな会社ですが、私が死んでも印税が入ります。“さくらももこ遺作フェア”も行われるでしょう」と、笑わせどころとばかりに書いている。約10年後とはいえ、2018年さくらさんが53歳で亡くなったことを知る者としてはとても笑うことはできない。

 

「おめでとう新福さん」

さくらさんのエッセイ三部作『あのころ』『まる子だった』『ももこの話』を担当した集英社の編集者・新福さんに感謝する会を企画し、徐々に派手にハチャメチャになっていく。

 

「ヒロシの話」

さくらさんの父親で間違ってばかりのヒロシの話。

 

「深まる息子の疑惑」

幼稚園児の一人息子が、最近また母親がさくらももこではないかと疑いだしている。「ママは、さくらももこなんでしょ」と聞く息子をなんとかはぐらかすさくらさん。

 

他10編 略

付録 新福さんをたたえるパーティーの脚本

おまけのページ 新福さんからさくらさんへの9つの質問

 

この作品は1999年7月集英社から刊行された。

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

 

角田光代さんが、『晴れの日散歩』の中でこの本を、楽しくて面白いと書いていたので読んでみたのだが、私は乗り切れずにコケた。さくらさんの語り口は、ちびまる子ちゃんそのもので、ぼーとして、ゆったりととぼけていて、その点には異存はないのだが、悪ふざけには「おや、おや」と思い、語り口にはあざとさが感じられて、興ざめしてしまう。

 

さくらももこ

1965年5月8日静岡県生まれ。
1986年「りぼん」で「ちびまる子ちゃん」連載開始。単行本は累計3千万部
1989年 同作品で講談社漫画賞受賞
1990年 作詞した「おどるぽんぽこりん」が日本レコード大賞ポップス・ロック賞受賞。
1991年 初エッセイ『もものかんづめ』がベストセラー
1992年 エッセイ『さるのこしかけ』で新風賞受賞
2018年 53歳で死亡。

 

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20年7月の花(1)

2020年07月22日 | リタイヤ生活

 

7月10日に届いた花

 

小型のヒマワリ5本と、まっすぐ棒のように突っ立っている紫のリアトリスと、

 

アワ。昔々の農民が米の代用食としていた粟(アワ)。

奥様の家では飼っていたジュウシマツなどのエサにしていて、鳥は器用にアワの殻をむいて中味だけ食べたという。飼っていた父親は食べた後を息で吹いて、殻だけを飛ばし、アワを残したそうだ。

 

これがリアトリス。高さ180㎝にまで達するというノッポだ。

 

ヒマワリの花は茶色の中心部だけで、周りの鮮やかな黄色の部分はおまけで飾りらしい。

 

中心部がこげ茶でなく黄色と黄緑のヒマワリ。

 

一週間経過してヒマワリの花は乱れて、アワの先端部は薄い茶色に色づいた。

 

アワの茎をむくと、中にも穂が隠れていた(下の写真の白っぽい部分)。

まるで木の枝のように分かれていることがわかる。

 

上の写真の上部を拡大すると、アワの粒が見える。

 

 

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角田光代『晴れの日散歩』を読む

2020年07月20日 | 読書2

 

角田光代著『晴れの日散歩』(2020年3月12日(株)オレンジページ発行)を読んだ。

 

雑誌「オレンジページ」で、14年続く人気エッセイ第4弾。

 

目次

食(旅先で日常で)

私(ある日の私)

世間(変わるもの変わらないもの)

暮らし(進歩と普遍と)

あとがき

 

各エッセイの最後に角田さん撮影の小さな写真が載っているが、大半が愛猫トトの写真。添えられている文言に思わず微笑んでしまう。

 

角田さんは40歳を過ぎるまで肉好きで、出版社の人にも「カクタは肉」と思われている。肉欲? しかし、年齢とともに脂の多い肉はきつく、魚、野菜も美味しくなった。肉よりもっと好きなものが魚卵だという。
どうでも良いことが、私の数少ない嫌いなものに魚卵がある。お鮨屋でも高価なイクラ、ウニなどを除いてもらう。代わりの分との差額を差し引いて欲しいと言ったことはない。思うだけだ。

 

猫を飼い始めて8年。鞄、ピアス、財布、キーホルダー、服とどんどん猫を描いたものが身の周りに増えてきた。

猫ものがひとつだと「わー、かわいい」、二個だと「猫が本当に好きなんですね」、そして三個となると「やだ、猫おばさん?」に変化する。二個と三個のあいだには溝がある。これが、四個、五個となると、相手を軽い恐怖に陥れることを私は知っている。

 

 キス挨拶はともかく、ハグは以前よりずっと身近になったと思う。それでもやっぱり、どこか借りもの文化という気がするし、私自身は照れくささを拭えない。……のだが、他者と、ハグよりもっと全身密着せねばならない満員電車には乗れるのだから、接触にかんして不思議な文化習慣だよな、などと考える。

 

猫の知能は年月とともに成長し、感情も複雑になっていくのではないか。

一歳のころは、久しぶりに帰ると一目散にやってきて、甘えた。

三歳くらいになると、帰ってきたとき目を合わせなくなった。すねている。気が済むと甘えてきた。

四歳のころ、留守にしていた私なり夫なりが帰ってくると、ベッドの下に隠れて出てこない。「すね」表現だ。あるとき、出てこないので夫がそのまま仕事へ戻ると、夫の枕にぺたりとはりついていた。すねるのを止めるタイミングを逃してしまったとでも思っているように。

六歳の今、夫が一週間ぶりに帰って来るなり、猫は私にべったりとはりつき、のどをゴロゴロいわせて夫を見ようともしない。当てこすりを覚えたか。

 

 

初出:「オレンジページ」で連載中の「月夜の散歩」「晴れの日散歩」(2015年2月17日号~2020年1月17日号)を再構成。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

気楽に楽しく、ふむふむと読める。

第一章の食(旅先で日常で)は食べ物や料理の話なので、「オレンジページ」掲載のエッセイだから仕方ないかと思ったが、私には興味がなく、どうしようか迷って末、ともかくと読み進めたら、オモロなった。

 

細かな日常の出来事を何故かと考え、人の機敏をつかみ出す角田さんの腕前、表現力には感服。

 

それにしても、猫満載。入れ込み方はペット嫌いの私は引き気味。夫さんもときどき、静かに登場し、よかった、よかったと、親になった気分。

 

 

角田光代の略歴と既読本リスト

 

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20年6月(2)の花

2020年07月18日 | リタイヤ生活

 

6月26日に届いた花

 

ピンクのバラ3本、深紅のバラ3本、小さなスプレーバラ3本と背後にチリチリしているアルケミラ。

見るからに愛おしく、優しそうなピンクのバラ。ふっくらした下の部分も柔らかな頬のようで両手で支えたくなる。

バラと言えば豪華な深紅。

スプレー(枝分かれという意味)バラは1本の茎に複数の花が咲く。

よく見ると小さな星のような花が集まっているアルケミラ。

 

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山中裕美『食品表示の罠』を読む

2020年07月16日 | 読書2

山中裕美著『食品表示の罠』(ちくま新書1117、2015年3月10日筑摩書房発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

スーパー、コンビニなどで売られている食品には、品名や値段だけではなく、メーカー名、原材料名、賞味期限といったさまざまな情報が記載されている。その表示方法は法律や業界の自主的ルールによって事細かに定められている。しかし本来、食の安全を確保するための食品表示が、製造者本位の、消費者にとって非常にわかりにくいものになっている。本書は、料理研究家の著者が、一消費者として、一人の料理家としての視点に立って、食品表示の裏側に隠された本当の意味や問題点を鋭く指摘。知られざる食品業界の慣習などトリビアも満載。賢い消費者になるためのヒントが得られ、簡単につくれておいしく食べられる厳選料理レシピも付いたおトクな一冊。

 

デパ地下の総菜、ケーキ屋のショーケース内ケーキには添加物表示などがない。これは、対面販売では原材料や食品添加物の表示義務がないため。

 

無着色たらこも着色たらこも添加物処理しないと時間が経つとどす黒くなる。着色たらこの方が少ない添加物ですむのでより安全。(魚河岸の人の話)

 

卵はサイズにはM、Lなどがある。鶏の体格にかかわらず単に年寄りの鶏が産んだ卵がLで、卵白の割合が多く、殻が薄く割れやすい。

 

ビーフステーキの焼き方

脂がなくても安い輸入牛でよい。2㎝くらいの厚さ。

焼く15分くらい前に冷蔵庫から出し、焼く直前に塩・胡椒する。

フライパンでサラダ油を熱し、お肉を入れ、強火で表面、裏面をそれぞれ2分ずつ焼く。火を止め、蓋をして余熱で3分火を通す。

最後に焼き具合を確認するため、楊枝を刺し、10秒数え、下唇の下にあてて熱を感じる。しっかりと熱ければ火が通っている。火が通って赤い状態がちょうど良い焼き具合。

 

日本のチョコレートも世界的チョコレートもカカオ分35%以上の規格は同じだが、世界的チョコは植物油脂分は5%未満の規格があり、日本産はこの規格がなく、多く含まれる。したがって、原材料名は多い順なので、ココアバターが、砂糖や植物油脂より、前の方に書かれているものの方がチョコらしく感じるもの。

 

おせち料理のカタログ写真は8月に行われる。

 

「黒毛牛」「黒毛牛弁当」は、「黒毛和牛」ではなく、交雑種やブラックアンガス種の輸入牛。

 

エナジードリンクの原材料にはパフォーマンスを上げるものはほとんど含まれておらず、カフェインと糖類。

 

牡蠣の生食用は細菌数が基準以下のものであって、鮮度とは直接関係ない。滅菌海水で入念に洗浄するので、加熱用よりも味が落ちるという意見もある。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

生活の中で役立つ、今まで気づかなかった意外な情報がたっぷり。
私はそもそも食品表示などしっかり見たことない。しかも、製造側におおざっぱな網をかぶせるためのもので、消費者が見て理解できる形ではない。

 

ただし、食品の専門家ではない料理研究家が書いているので、綿密な取材にもとづく調査結果ではない。知り合いの市場関係者などからの話がそのまま書いてある箇所もある。文も内容もばくぜんとしたところが多く、断定でなく、「〜のようです」など曖昧な結びも多い。

まあ、それだけ消費者目線での語り口で、共感を呼ぶところがのだが。

 

 

山中裕美(やまなか・ひろみ)
料理研究家。大学在学中から和洋の料理を学ぶ。卒業後、化学品商社勤務を経て1993年より料理教室を主宰。日本料理、フランス料理を中心に、それぞれの文化に裏打ちされた味と素材のよさを引き出す料理作りが好評を博している。食品企業のメニュー開発にも数多く参加、食品に関する各種講習会で講師を務めることも多い。

ル・コルドン・ブルーグランディプロム取得。日本フードコーディネーター協会認定フードコーディネーター。バンタンキャリアスクールフードスタイリング科修了

 

目次

第1章 隠された添加物にご用心!

なぜデパ地下の惣菜には食品添加物の表示がないのか?
イーストフードに代わるパン酵母の正体とは? ほか

第2章 食品表示のルールを知っておこう

特売日の卵はなぜLサイズが多いのか?
年末のかまぼこはストックしてある冷凍品? ほか

第3章 原材料をきちんとチェックする

そばなのに原材料は小麦粉のほうが多いのはなぜ?
「水稲もち米」「もち米」「もち米粉」は何が違うのか? ほか

第4章 紛らわしい表示に惑わされない
国産牛=和牛ではない!
スーパーの牛乳売り場は“間違い探し”! ほか

第5章 健康と美容に騙されてはいけない
「低糖」「シュガーカット」は言葉のマジック!
はっきりした定義がない「栄養調整食品」 ほか

 

F1交配種は一代交配種、F1ハイブリッドと言われ、優れた特徴を持つ種だが、次の世代の種を自家採種しても劣勢形質が現れてしまう。種苗メーカーは毎年F1交配種を売り続けられる。しかも、自社の農薬や肥料しか効果がないようにしていて、そちらでも利益があがる。

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知念実希人『レフトハンド・ブラーザーフッド』を読む

2020年07月14日 | 読書2

 

知念実希人著『レフトハンド・ブラーザーフッド』(2019年3月15日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの宣伝文句 

作品紹介

高校生の岳士は、バイクに同乗していた双子の兄・海斗を事故で亡くして以来、左手から兄の声が聞こえるようになる。

どんな形であろうと兄の復活を喜んだ岳士は、事故の後遺症による妄想だと決め付ける医師や両親に反発、治療から逃げるために家出する。だが、その胸中には喜びだけでなく贖罪の気持ちも入り混じっているのだった。 ボクシングで鍛えた体力を活かし、自転車での強行軍で多摩川を越えて東京を目指すが、野宿した川原で他殺体を発見してしまう。つい触ってしまった血塗れの右手をホームレスに目撃された岳士は、海斗の声に促されるままに逃げ出す。殺人の容疑者としての逃避行が始まった――。

 

左手からアドバイスを送る海斗と協力しながら、真犯人につながる手がかりを探る岳士。“兄弟”はやがて「サファイヤ」と呼ばれる謎のドラックの存在に行き当たる。蒼く煌く液体を少量飲み干すだけで「嫌なことをすべて忘れられる」というサファイヤのことを二人に教えたのは、謎の美女・彩夏だった。どこか危うげな彼女に惹かれていく岳士と、怪しいと警戒する海斗は次第に反発するように。

 

岳士を蝕んでいくサファイヤ、裏社会を仕切る集団、スパイを持ちかける刑事……次々と襲うピンチを乗り越え、“兄弟”は真犯人にたどり着くことができるのか?

そして、左手に宿る海斗の本当の目的とは? 

「どんでん返し」なんて言葉では足りない、一気読み必至のノンストップ・サスペンス。

予想不可能のラスト、切ない衝撃に涙があふれる。

 

エイリアンハンド症候群とは

片腕が自分の意思とは関係なく動いてしまう実在の症状。
脳障害や精神疾患が引き金となるとされている。腕の行動は多様で、物を掴む、字を書く、時には自分の顔を殴ることまであるという。その姿が、まるで何者かに片腕を乗っ取られたように見えることから「エイリアンハンドシンドローム」または「他人の手症候群」と呼ばれる。

 

 

風間岳士(たけし):双子の弟。高校生。「左手に兄がいる」と訴え重度精神疾患の疑いで強制入院、脱走する。

ボクシングでインターハイ・ミドル級3位。警察に追われてから関口亮也(りょーや)を名乗る。

風間海斗(かいと):双子の兄。バイク事故で死亡。岳士の左手を動かし、互いに会話できる。常に冷静。

桑島彩夏:岳士のアパートの隣りの住人。27歳のイイ女。

早川壮介:「サファイア」の秘密を探るジャーナリスト。殺害される。

カズマ:麻薬・サファイアを独占する半グレ集団・スネークの武闘派。空手使い。

ヒロキ:スネークの幹部。

番田:麻布署の刑事。元機動隊員。

 

初出:「別冊文藝春秋」第327~339号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

460ページの長編だが、一気読み必至。主犯は早くから推測可能でも、面白く読める。

ただ、高校生が犯罪に巻き込まれ、解決するためのご都合主義の設定に強引さはあるが、まあ、小説だからそこんところは細かいこと言わないで、という私のような人には面白いだろう。

 

弟の左手だけ兄が動かせるという状況が話に変化をもたせている。また二人が会話可能ということで、互いの会話でやりとりが面白い。

 

さすが医者、麻薬で人が駄目になっていく過程がリアル(っぽい)。

 

 

知念実希人(ちねん・みきと)の略歴と既読本リスト

 

 

幻肢痛:ファントムペイン。四股を切断した人によくみられる症状。断面の神経が感じた痛みを、脳があたかもまだ切断たれた部分があって、そこが痛むように感じる。

 

 

 

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アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件(上)(下)』を読む

2020年07月12日 | 読書2

 

アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳『カササギ殺人事件(上)(下)』(2018年9月28日東京創元社発行)を読んだ。

 

上巻の裏表紙にはこうある。

1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦の葬儀が、しめやかに執りおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は、小さな村の人間関係に少しずつひびを入れていく。余命わずかな名探偵アティカス・ピュントの推理は――。アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ・ミステリ!

下巻の裏表紙にはこうある。

名探偵アティカス・ピュントのシリーズ最新作『カササギ殺人事件』の原稿を結末部分まで読んだ編集者のわたしは、あまりのことに激怒する。ミステリを読んでいて、こんなに腹立たしいことってある? 原因を突きとめられず、さらに憤りを募らせるわたしを待っていたのは、予想もしない事態だった――。ミステリ界のトップランナーが贈る、全ミステリファンへの最高のプレゼント!

 

本屋大賞「翻訳小説部門」第1位や、「ミステリが読みたい!」「本格ミステリ・ベスト10」など、海外ミステリランキング6冠獲得

 

上巻

冒頭、編集者・スーザン・ライランドが、アラン・コンウェイ(仮想の作者)が書いた名探偵アティカス・ピュントのシリーズ第9作『カササギ殺人事件』(本小説)の原稿を編集しようと読み始める。引き続き、仮想の(著者コンウェイの経歴、既刊書名、本シリーズに寄せられた絶賛の声)と、登場人物(ほぼ下記と同じ)が連なる。

 

上巻の本文

冒頭部に引き続き、小説の本文が始まる。英国の片田舎のパイ屋敷の家政婦・メアリ・ブラキストンの葬儀に集まる様々な人の描写から始まる。彼女は屋敷の階段から落ちて死んでいるところを発見されたのだ。彼女は村中の人の秘密を集めて記録していた。

数日後、屋敷の主の准男爵・サー・マグナス・パイが玄関ホールで剣で首をはねられて死んでいた。彼は多くの村人の恨みをかっていた。

余命いくばくかの名探偵アティカスの捜査が始まる。結局、真相を解明した彼は犯人の名を助手のフレイザーに告げて上巻は終わる。

 

 

下巻

編集者・スーザンは『カササギ殺人事件』原稿を読み終えて、すぐ、上司のチャールズに留守電し、結末部がないじゃないと怒る。そして、犯人をあれこれと推理し帰宅途中でアラン・コンウェイの死のニュースを聞いた。社に戻りチャールズからアランの遺書らしき手紙を見せられる。彼女はアランの自殺を疑い始める。一方でアティカスの捜査は着実に進む。

 

原題:Magpie Murders 2016年刊行 

Magpieマグパイ(カササギ)といえば、オーストラリアのパースでよく見かけたAustralian Magpie (カササギフエガラス)に襲われたことを思い出す。(「マグパイに襲われる」「Willy Wagtailにも襲われる」)

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)

 

入れ子構造の二つの話がへたするとゴチャゴチャになってしまう。物語の中の家政婦と准男爵の死と、その『カササギ殺人事件』を書いたアランの死が結びついてしまい混乱している自分が面白い。

 

本編、主に下巻は、女性編集者スーザンが探偵役となり架空作家「アラン・コンウェイ」の死の真相と不明となった小説の終結部を探す物語だ。

もう1つは入れ子になった作中作、アラン著の名探偵アティカス・ピュントが活躍する物語だ。

ずるいのは(そんなこと言っても始まらないのだが)、アランも、そしてピュントも二人とも不治の病で話が混線しやすいのだ。この2つの物語が絡み合うところが読者の頭に刺激を与え、スパイスになって面白味を増す。

 

 

アンソニー・ホロヴィッツ Anthony Horowitz
1955年英国ロンドン生まれ。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。
他、『シャーロック・ホームズ 絹の家』『モリアーティ』『007 逆襲のトリガー』

山田蘭(やまだ・らん)
英米文学翻訳家。訳書にギャリコ『トマシーナ』、ベイヤード『陸軍士官学校の死』、キップリング『ジャングル・ブック』

 

 

登場人物

上巻

アティカス・ピュント:名探偵。余命3か月。65歳。

ジェイムズ・フレイザー:アティカスの助手兼秘書を6年務める。20代後半。。

サー・マグナス・パイ:准男爵。妻はレディ・フランシス・パイ

フレデリック(フレディ)・パイ:マグナスとフランシスの息子。

クラリッサ・パイ:マグナスの双子の妹。教師。

メアリ・エリザベス・ブラキストン:パイ屋敷の家政婦。別れた夫はマシュー・ブラキストン

ロバート(ロブ)・ブラキストン:メアリの長男。自動車修理工場勤務。28歳。

トム・ブラキストン:メアリの次男。12歳で溺死。

ネヴィル・ジェイ・ブレント:パイ屋敷の庭園管理人。

ロビン・オズボーン:牧師。妻はヘンリエッタ(ヘン)・オズボーン

エミリア・レッドウィング:女性医師。50代前半。夫は画家のアーサー・レッドウィング

エドガー・レナード:エミリアの父。元医師。

ジョージー(ジョイ)・サンダーリング:ロバートの婚約者。エミリアの診療所勤務。美人。

ジェフ・ウィーヴァー:墓掘り。息子はアダム。アダムの妻はダイアナ・ウィーヴァー

ジョニー・ホワイトヘッド:怪しげな骨董屋。妻はジェマ・ホワイトヘッド。

ジャック・ダートフォード:レディ・フランシス・パイの愛人。

レイモンド・チャブ:バース警察刑事課の警部補。

ディングル・デル:屋敷に続く森。マグナス・パイは売り払い、住宅が建設されようとしている。

 

下巻

スーザン・ライランド:《クローバーリーフ・ブックス》文芸部門の編集者。アラン・コンウェイの担当。

チャールズ・クローバー:同社のCEOでスーザンの上司。65歳。秘書はジェマイマ・ハンフリーズ

アラン・コンウェイ:本作の著者。アビー荘園に住む。ウエストミンスター校の元教師。

ジェイムズ・テイラー:アラン・コンウェイの恋人男性)

メリッサ・コンウェイ:アランの元妻。アランとの間の息子はフレデリック・コンウェイ

クレア・ジェンキンズ:アランの姉。

アンドレアス・パタキス:スーザンの恋人。ギリシャ人。ウエストミンスター校の教師でアランの元同僚。

ケイティ:スーザンの妹。夫と子供2人。

マーク・レドモンド:映像関係のプロデューサー。

ジョン・ホワイト:ヘッジファンド・マネージャー。

トム・ロブスン:牧師。

ドナルド・リー:ウェイター。元作家志望。アランに自作の構想を盗作されたと主張している。

リチャード・ロック:警視。

サジッド・カーン:アランの弁護士

 

 

 

 

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神田茜の略歴と既読本リスト

2020年07月10日 | 読書2

神田茜(かんだ・あかね)

北海道帯広市生れ。講談師、作家。

1985(昭和60)年、講談師の二代目神田山陽門下に入門。

1995(平成7)年、真打ち昇進。女性の心情をユーモアと切なさを織り交ぜて語る独自の新作講談が人気を博す。

1996年落語家・林家彦いちと結婚

2002年(師匠山陽の死後)落語協会に入会

2010年、長編小説『女子芸人』で新潮エンターテインメント大賞を受賞。

2017年離婚

著書に『好きなひと』『ふたり』『ぼくの守る星』『しょっぱい夕陽』『七色結び』『オレンジシルク』=『一生に一度のこの恋にタネも仕掛けもございません。』『母のあしおと』『シャドウ』などがある。

 

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神田茜『母のあしおと』を読む

2020年07月08日 | 読書2

神田茜著『母のあしおと』(集英社文庫か74-2、2020年4月25日集英社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

愛する妻の死後、楽しく暮らすことに後ろめたさを覚える夫。(「はちみつ」)
「私はあなたのお母さんじゃない」恋人の言葉が忘れられない次男。(「もち」)
義母に嫌われているのではないかと悩む長男の婚約者。(「ははぎつね」)
母・道子の人生は"平凡"な、どこにでもあるものだったのだろうか──?
 道子の死後から少女だった頃まで、その人生を遡る。七つの視点で綴られた感動の連作集。

 

死後から、祖母、義母、母、妻、そして幼い少女と時間をさかのぼり、身の回りの人の視点から「道子」の人生を描いた連作短編集。

 

はちみつ 平成二十六年

妻・道子の死後3年半。二人の息子は東京で家庭を持ち、独り暮らしの夫・日吉和夫は、半分趣味で養蜂を始めた。妻の道子は「どうしても、美味しいことと楽しいことは、家族一緒に体験したい性分だった。」と思い出す。


近所に住む夫を亡くしたばかりのはる子さんと心が通じ合うようになるが、何かというとはる子さんにも「うちのやつは、何々だった」と口ずさんでしまう。
「楽しいと、なんだかうちのやつにわるいなって思うんだ」「私もそう」「楽しければ楽しいほど、うちのやつのことを思い出す」「本当にそうね」

 

もち 平成二十三年

母・道子の葬儀。次男の悟志は自分はマザコンではないと思っているのに、婚約者の佐和子から昨日言われた「悟志さん、私は悟志さんのお母さんじゃないのよ」という言葉が気にかかる。長男・啓太の3歳年上の妻・裕子は「男の人は多かれ少なかれ、みんなマザコンよ」「母親っていうのは、‥最後の砦っていうか。…」という。

 

ははぎつね 平成八年

婚約者・裕子が長男啓太の実家にあいさつに来て、義父・和夫、義母・道子と地元の動物園へ行く。母・道子は啓太とべったりで、裕子は嫁となることに不安を持ち、道子に嫌悪を感じる。道子は最初と最後だけしか裕子と目を合わさなかった。裕子は帰りの飛行機の中で眠たいふりをして、啓太の腕にしっかりとしがみついた。

 

クリームシチュー 昭和六十一年

啓太は高校受験まであと18日。外面の良い悟志はまだ中一だが、たくさんもらってくるので、バレンタインデーのチョコレートがもらえるか気になる。祖母(かつ江)が母・道子を鬼嫁と言いふらし、友達から、聞かれたり、からからかわれたりして、啓太も悟志も傷つき、騒ぎになる。

 

なつのかげ 昭和四十九年

道子が身体の具合が悪く実家に帰っている間、親戚で出戻りのフミちゃんが4歳の啓太と1歳10か月の悟志の面倒を見るために泊まり込んだ。道子の夫・和夫が長期出張から帰って来て、皆揃うと、フミちゃんはこのまま家族としてと、つい思ってしまう。

 

おきび 昭和四十二年

道子の嫁入り前夜、姉たちに甘えているとからかわれながらも道子は昔のことを思い出し、今後の父を心配する。

 

まど 昭和二十八年

道子たちの母は遠い病院に入ったままで、雇った小宮さんに付き添われている。たった10歳の道子が皆が大騒ぎのなか、母に会おうと山を越えて歩いてきた。

 

本書は2018年8月集英社より刊行。初出は「小説すばる」2016年1月~2017年10月号

 

 

神田茜(かんだ・あかね)の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

一人の女性の生涯を死後から10歳まで周辺の人々を含め逆からたどり、連作短編集にする発想が面白い。そして、だんだん若くなっていくというちょっと不思議な感覚で楽しめる。

 

落ち着いた家族思いの道子が、嫁に行くときは不安を持ち、一人残る父を心配し、幼い時は末っ子の甘えん坊だったと読み進めるうち少しずつ徐々に分かってくる。面白い構成だ。

 

一つ一つの話も、女性心理がよく書けていると、女性に疎いおじいさんは感心しました。

 

 

 

以下、ネタバレを含む

 

なつのかげ 昭和四十九年

結局、フミは和夫に「愛情表現をしてもらえないと魂がどんどん萎んじゃうよ。道子さんにもそうだったのじゃないの?」と告げる。そして、フミ自身も別れた夫にどんな顔していたのかと考えてしまう。

 

まど 昭和二十八年

道子たちの母は遠い病院に入ったままで、雇った小宮さんに付き添われている。たったひとり残った息子を亡くした小宮さんは「母親の私がわるかったんだね。幸せになることだけ考えてあげてたら、それを叶えてもらえたのにね。わるいことばっかり考えていたからさ、私のせいだよ。私のせい‥‥」と嘆く。夫の達夫がバスがもうない時間に自転車で訪ねて来た。まだ10歳の道子がいなくなって皆で探しているという。深夜になって病院の外で小宮さんが泣いていた道子を見つけた。母に会おうと山を越えて歩いてきたのだ。途中道に迷ったとき男の子が送ってくれたという。日吉のところの和夫らしい。

道子は小宮さんに「私ね、道子がいなくなったって聞いてから、一生懸命に道子が大人になって幸せになっている姿を想像したの。ご先祖様に、いい願いだけ叶えてもらおうと思って。でもね、いくら道子が幸せになることだけ考えようとしても、その倍くらい、道子が命を落とすことを考えてしまった。親はどうしても、そういうふうに考えるものなのね。わるく考えるのは親だからなのよね」

 

 

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神田茜『オレンジシルク』を読む

2020年07月06日 | 読書2

 

神田茜著『オレンジシルク』(2016年4月25日新潮社発行)を読んだ。

2018年6月に『一生に一度のこの恋にタネも仕掛けもございません。』と改題。

 

新潮社の宣伝文句は以下。

三十歳で恋愛経験ゼロ。ダメな私が一目惚れした相手はイケメンの人気マジシャンだった。無理な恋、でも彼に近づきたい。仕事をやめてマジックの世界へ飛び込んだものの、恋も芸も前途多難。気持ちが折れかけたとき、不思議な巡り合わせが……一人の女性が心の殻を脱ぎ捨て、違う自分に出会うまでを柔らかなユーモアで描く長篇。

 

天野印子(インコ):キヨミは親友。30歳独身。地元の四葉信用金庫勤め。

キヨミ:印子の親友。30歳独身。建設会社勤務。無表情でファッションセンス0。

北川ヨネ太郎:キヨミの彼氏。マジシャン。

タカミユウト:「マジックバー シマノ」で働く女性に人気のマジシャン。

マモル:ユウトのアシスタント。

神谷支店長:四葉信用金庫の支店長。趣味はマジック。

相沢喜久子:信金の顧客。82歳。結婚前は松洋斎天鈴。印子と支店長は天鈴姐さんと呼ぶ。

マジ―光司:印子が弟子入りしたマジシャンの師匠。

 

 

神田茜(かんだ・あかね)の略歴と既読本リスト

 

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

正直に言います、読む前ははっきり言ってバカにしていました。読みやすくスイスイ読めたのは想定範囲でした。もともとそのために読んだのですから。でも、マジックの裏側、師匠と身の周りの世話をする弟子の関係、寄席の演者側の裏側、モテない30女二人の頼りあい、引っ張り合う友情関係など興味引く話がゾロゾロ。

後半、どんどん挑戦的になっていくインコちゃん。ご都合主義だって? 「いいの!」(CMの(長澤)まさみちゃん風に)。楽しいんだから!

 

 

作家・吉野万里子さんの書評

そして、最後にもう一つ。私がこの物語で最も楽しんだ部分。それは「女の友情」。たったひとりの友人・キヨミに対する印子の態度といったら、もうひどい。容姿をボロクソに批判し、ファッションをこき下ろし、恋愛などしたことがないはずだと決めつける。キヨミも負けじと、見下したことを言い放つ。これは友情のふり? ならふたりは、本当は嫌い合っているの――?
 これもまた虚構と真実のミルフィーユの一部なのだ、とだけ言っておこう。

 

以下、雰囲気だけご紹介。

それにくらべてキヨミは、何年もクシを通していないのかというほど毛の絡んだおかっぱ髪といい、爬虫類っぽいヘラ形の指といい、鼻の下のうぶ毛といい、女性としてはマイナス百二十点くらいだろう。

 若くは見えるかもしれないがそれは、女性として成熟していないせいだ。今年から三十路になったのだから、成人女性としての期間を経ないまま男性化してしまう可能性もある。女子学生からいきなりオッサンになるパターンだ。(p8)

 

 もしもユウトの部屋にきれいな女性がいて、わたしが揃えたキッチン用品を使って、わたしよりもずっと本格的なハヤシライスを作っていたとしたら、わたしはマンションの廊下にへたり込んでコンクリートの床に溶けて染み込んで、地縛霊になるかもしれない。(p154)

 

 

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神田茜『ぼくの守る星』を読む

2020年07月04日 | 読書2

 

神田茜著『ぼくの守る星』(2014年3月10日集英社発行)を読んだ。

 

集英社の特設サイトにはこうある。

学習障害の一つ「ディスレクシア」(読み書き困難)を抱える夏見翔。
息子の可能性を伸ばそうとするあまり、空回りする母・和代。
新聞社のカイロ支局勤務のため、家での存在感がほとんどない父・尚人。
翔の面白さに惹かれ、お笑いコンビを組もうと持ちかけるクラスメイト山上強志。
教室では一切口を開かず、静かに微笑んでいるもう一人のクラスメイト中島まほり。
人生のはじまりの時間を生きる少年少女たちと、人生のとまどいの時間を生きる大人たち。
それぞれの思いが交差した先に灯る、小さな光を描く六編の連作短編集です。

 

夏見翔(かける)は、中学2年のクラス担任・吉井の数学の授業で、応答がトンチンカン(死語?)になってしまいクラスの笑いを呼ぶ。クラスには漫才でコンビを組もうと熱心に誘う山上強志と、まったくしゃべらないが時々目が合い、何故か気になる中島まほりがいる。

有能な新聞記者だった母・和代は翔のために新聞社を辞め、教師や講演会講師に「障害」を「特徴」と言い直させるなど激しく抗議する。母は「俳優のトム・クルーズも台詞は録音して耳で覚え、すばらしい演技をする。翔の才能もそっち系だと思うな」「翔、あなた、本当に頭がいいのよ。特別な才能を持って生まれてきたのよ」などという。父・尚人は長期海外勤務で身も心も不在だ。

 

山上の姉の真奈は4歳で亡くなり、母は未だに骨壺を手放さないので納骨もできない。父は火葬場で働き、山上は線香くさいと言われる。翔は障害があることを山上に説明したが、それでも3年生を送る会で漫才をやった。

 

中島まほりの母が精神病院に入院し、ほとんど耳が聞こえない理生は父と北海道へ、中学生のまほりは祖母と住み、母が帰ってきて3人で暮らした。やがて母は祖母を避けて、まほりと二人でアパートで暮らすようになった。まほりは北海道へ行って、9歳になった理生に会ってから死んでしまうつもりだった。ずっと、さみしくて、甘えたいのをがまんしていたのに、それが言えない。母親と同じだと思った。

 

夏見尚人は帰国し山登りの記事を書く暇な仕事になった。家では妻・和代から「あなたは、父親、やらなくていいから」と宣言される。3人で河口湖と西湖を見下ろす毛無山と十二ガ岳への登山を計画したが、妻と二人だけで行くことになった。「あなたとは仲のいい夫婦を演じようと思う」

 

(翔は)空にひとつだけ光る星を見つけた。僕にだけ見える星だ。生まれてよかったと思った。はじめて思った。

 

集英社の本書の特設サイトには著者・神田茜へのインタビュー記事がある。

俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーブン・スピルバーグが「ディスレクシア」(読み書き困難)であることを公表しているという。

 

初出:「小説すばる」2011年8月号~2013年4月号

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

現代の人情噺だ。障害者のことを描くのはかなり気を使うと思うが、のびのび書けていて、気持ち良い作品だ。障害児の母親は、負けまいと頑張りすぎても、沈んでしまってもいけない。父親をなんとあ巻き込まねばと思う。

 

それにしても、著者の神田茜さんは、書くたびにテーマをがらりと変える。底にある人の心のやさしさみたいなものは同じなのだが、書く対象はまったく違っている。そもそも、講談、落語、小説とチャレンジングなこと!

 

神田茜の略歴と既読本リスト

 

 

 

 

 

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朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』を読む

2020年07月02日 | 読書2

 

朝井リョウ著『風と共にゆとりぬ』(文春文庫あ68-4、2020年5月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

『桐島、部活やめるってよ』で鮮烈のデビューを飾り、『何者』で戦後最年少の直木賞受賞作家となった著者が、「ゆとり世代」の日々を描くエッセイシリーズ。雑誌・新聞連載のエッセイに加え、悶絶の痔瘻手術体験を綴った「肛門記」を収録。後日談「肛門記~Eternal~」は文庫オリジナル。ひたすら楽しいだけの読書体験をあなたに。

 

第一部 日常

小説に込めがちなメッセージや教訓を「込めず、つくらず、もちこませず」をモットーに綴ったエピソード

第二部 プロムナード

日本経済新聞に半年連載されたコラム21編+2

第三部 肛門記

切れ痔ほどメジャーな響きもない、イボ痔ほど笑いに変えられない――お尻の穴が増えちゃう病気、こと、痔瘻。発症、手術、入院、そのすべてを綴った肛門界激震の一大抒情詩。

 

初出:『別册文藝春秋』2016年9月号 - 2017年5月号

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お勧め)(最大は五つ星)

ばかばかしくて、十分笑える(本当に誉め言葉)。アホになれる人にはいいんじゃない。

第一部の4編まで読んで、若い人の悪乗りした悪ふざけにうんざりして、噂の第三部肛門記だけでもと読み始めたら、面白く、年甲斐もなく悪乗りして笑っていた。そこで、第一部に戻り読み続け、面白く読んだ。ただ、第二部は普通のエッセイが多く笑えないので、飛ばし読み。

 

朝井リョウ
1989年、岐阜県垂井町出身。
2012年春早稲田大学文化構想学部卒業。東宝の営業部員に。2016年に専業作家に。
2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞受賞。現役大学生作家として注目
2009年『もういちど生まれる』が直木賞候補。
2013年、『何者』で第148回直木賞受賞、最年少男性受賞者。

2014年、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞受賞

その他、『チア男子!!』『星やどりの声』、『少女は卒業しない』などを在学中に刊行。
エッセイ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』=『時をかけるゆとり』、本作『風と共にゆとりぬ』

本作表紙裏の著者紹介の最後には、「最も憧れているプロフィール欄は、受賞歴が多すぎるあまり「受賞多数」と略されているもの。」とある。

 

 

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