hiyamizu's blog

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桜木紫乃『いつかあなたをわすれても』を読む

2021年05月27日 | 読書2

 

桜木紫乃文、オザワミカ絵『いつかあなたをわすれても』(2021年3月31日集英社発行)を読んだ。

 

集英社のサイトにはこうある。

記憶という荷物を下ろし始めたさとちゃんは、ママのおかあさん。そして、わたしのおばあちゃん。おばあちゃんに忘れられてしまったママはこれまでの思い出の荷造りを始める。「あんしんしていいよ。これは、たいせつな、たいせつな、わたしたちのじゅんばん」。やがて訪れるお別れを前にして、ママからおばあちゃんへの、そしてわたしへの思いが語られる…。
直木賞作家・桜木紫乃による初の絵本。中央公論文芸賞を受賞した小説『家族じまい』に登場する人々のもう一つの物語。生まれ、育ち、そして子どもを生み育み、やがて老いていくこと、そのすべてが”たいせつなじゅんばん”だということがこの作品に描かれています。
おんなのこがおんなのひとになり、しあわせの階段を上がる時も、老いていろんなことを忘れていく時も、そのすべてがかけがえのないものだというメッセージが心に響きます。

 

【著者・桜木紫乃からのメッセージ】
母が、わたしの名前を忘れていることに気づいたとき、実はあまり悲しくなかったんです。ああそうか、とうとうきたか、という感じでした。不思議なほど、感情は揺れませんでした。思ったのは、ふたりが母と娘として半世紀かかって描いてきた絵に、ちゃんと余白が生まれて、完成が近づいてきたということでした。
この先、どんどんわたしを忘れてゆく母のことを考えながら、「家族じまい」という小説を書きました。絵本「いつか あなたを わすれても」は、小説からは漏れた、孫の視点で書いてみました。不要な言葉を取り払ってゆく作業のなかで、わたし自身が娘になったり孫になったり、いつか迎える老いた時間を眺めたり、ひとつ、女に生まれたことの答えを探す、よい時間を過ごせたと思います。
「おかあさん、わたしをわすれていいよ。わすれたほうが、さびしくないから。わすれたほうが、こわくないから」この言葉を、気持ちを、母に手渡したい。
その気持ちが、絵本というかたちになりました。

 

42頁の見開きに絵が描かれていて、数行の文が書かれている絵本だ。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

認知症で娘を忘れてしまったおばあさんのさとちゃん。さとちゃんの娘である母はそれほど悲しまない。母と娘として積み重ねてきた長い、長い日々がしっかりとあるから。
娘は、自分の娘であるさとちゃんの孫娘へ語りかける。母から娘へ、そして孫娘へと繋がれる女性としてのリレー。

 

オザワミカさんの絵は、とても優しい気持ちになる、さわやかで、すがすがしい絵だ。

 

 

桜木紫乃(さくらぎ・しの)の略歴と既読本リスト

 

オザワミカ

愛知県出身。イラストレーター。書籍や雑誌のイラストや演劇の宣伝美術を主に手がける。

2010年の漫画家・江口寿史氏との二人展「reply」など展示会活動多数。
2019年リボーンアートフェスティバル青木俊直展ディレクター。
フリーブックレット『BOOKMARK』イラストデザイン担当。

 

 

コメント
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