不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

酒井順子『負け犬の遠吠え』を読む

2012年09月30日 | 読書2


酒井順子著『負け犬の遠吠え』2003年10月講談社発行、を読んだ。

未婚、子ナシ、30代以上を「負け犬」と定義し、論争を巻き起こし、世の中に「負け犬」という言葉を定着させ、そして、酒井さんを一躍有名にした9年前の本。講談社文庫化されている。

「いやー仕事がたのしくって」などと言うと、相手は心底可哀想という顔をして、「まあ、仕事もいいけど・・・」と言います。・・・その場を丸く収めるコツは、「本当に、これでいいのかって感じですよねぇ。親も可哀想だから安心させてあげたいんですけどねぇアッハッハ」と、負け犬に徹することです。



美人でオシャレな負け犬をなぜ男性は敬遠するのか。日本男性は、学歴も年収も身長も自分より低い女性を望んでいる(低方婚)。服装もダサいくらいの女性の方が安心する。

まず思い浮かぶのは、もちろん「独居老人腐乱死体」。そうなる可能性は非常に高いわけですが、独居老人腐乱死体になるような死に方というのは、長患いによるものではなく、ポックリ系なのではないか。ある意味幸せな死に方と言えなくもないわけで、「腐乱も辞さず」の覚悟は、やはり決めておかなくてはなるまい。



巻末に、「・・・っすよ」と言わない、腕を組まないなど「負け犬にならないための十ヵ条」、がある。
さらに「負け犬になってしまってからの十ヵ条」があって、その8条には、男性から「酒井!」などと名字で呼ばれてはいけないとある。「私のことは順子って呼んで下さい」と言うくらい厚顔でないとだめだ。勝ち犬は「順子ね、お腹すいちゃったの」という芸を持っているのだから。確かに、「・・・ならないための十ヵ条」の7条は、同性に嫌われることを恐れないだった。

本書は、「IN☆POCKET」2002年1月号~2003年2月号連載に加筆訂正、書下ろし追加したもの。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

今頃なんなのだが、これほど有名になった本を読んでいない人がいれば(それは私でした)、お勧めだ。負け惜しみで言えば、論争が冷め、ますます未婚、婚活が話題になる現時点で読むのもまた良い。

未婚、子ナシ、30代以上でも、低収入・低学歴・モテない負け組である女性は「負け犬」とは呼ばない。実質勝ち組である女性が、余裕を持ってユーモアたっぷりに、自虐ネタで負けて見せているのがこの『負け犬の遠吠え』だ。

佐藤可士和さんによる表紙の美しく知的で勝気そうな女性の絵がすっきりと印象的だ。



酒井順子の略歴と既読本リスト


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小林祥一郎『死ぬまで編集者気分』を読む

2012年09月28日 | 読書2

小林祥一郎著『死ぬまで編集者気分 -新日本文学会・平凡社・マイクロソフト』2012年4月新宿書房発行、を読んだ。

左翼系雑誌『新日本文学』を編集しながら、平凡社に入社し、百科事典ブームを築いた『国民百科事典』に続く『世界大百科事典』の編集に携わり、『太陽』編集長、さらに様々な新たな百科事典の企画、編集を進め、マイクロソフトに入社して電子百科事典『エンカルタ』編集長を務めた。50 年にわたって、戦後の編集現場を駆け抜けた編集者中の編集者が書き下ろした出版私史。

花田清輝、吉本隆明、志賀直哉、柳田國男、大江健三郎、梅棹忠夫、小松左京、加藤秀俊、安倍公房、石原慎太郎など有名文化人の名前が頻出する。私が知らない人も含めて約400名ほどの人名のオンパレードだ。それだけ、編集、出版は、とくに百科事典では、人脈が大切ということなのだろう。

雑誌創刊、百科事典企画、営業政策の裏話などが書かれ、その多くが企画段階で潰れ、生まれでてもすぐ廃刊されるなど失敗の歴史で、興味深い。

第二部は『新日本文学』に著者が寄稿した左翼系の論争文だ。

巻末に、登場する400名ほどの人名索引、300弱の書名索引があり、さらに「本書の基本データ」として、版型、製本、用紙など細かいデータが出ている。さすが編集者の本だ。

小林祥一郎(こばやし・しょういちろう)
1928年岡山県津山市生まれ。海軍兵学校をへて名古屋大学卒業。
1952年新日本文学会事務局に入る。
1954年花田清輝編集長解任に抗議して辞職。
同年平凡社入社。『世界大百科事典』編集部に配属。
1959年『日本残酷物語』編集部。1964年雑誌『太陽』編集長。1966年『新文学』編集長。1980年平凡社取締役編集局長。1985年平凡社を退社。
1995年マイクロソフト電子百科事典『エンカルタ』編集長。2001年辞職。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

特殊な本だから面白いと思う人は限られるだろう。
なにしろ360頁を超える本で、人名がずらずら出てくる。その多くは事典に限られるが、本の企画、編集の苦労話もある。著者は大ヒットした平凡社の百科事典の責任者の一人だが、そのビジネスの成功及び編集者としての満足感が忘れられずにその後、苦闘する。あれこれ考えて新しい事典を企画する話が面白いが、その多くは優秀な執筆者を確保する必要があり、また膨大な経費、時間がかかるので、経営上のリスクが高く、失敗に終わる。

それにしても左翼系の『新日本文学』の事務局に在籍したままで平凡社に入社するとは、時代とはいえ、本人の才覚はもちろん、平凡社幹部の度量の大きさは素晴らしいことだ。

当時の編集者の多くは左翼系の考えを持ち、それぞれが出版したい企画を胸に秘めながら、苦しい台所事情から多忙な仕事に追いまくられて、そしてやがて老いていったことに思いをはせた。

私は現在、小さな事典の編集補助作業をしているが、膨大な原稿、多彩な著者、そして正確さと各部門の記述の統一が要求される百科事典の編集作業の困難さは想像もしたくない。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米澤穂信『ふたりの距離の概算』を読む

2012年09月26日 | 読書2

米澤穂信著『ふたりの距離の概算』角川文庫よ23-5、2012年6月角川書店発行、を読んだ。

高校の部活である古典部シリーズの第5弾。
奉太郎等4人がメンバーの何をやっているのか本人達も説明できない古典部。その古典部に新入生の大日向友子が仮入部する。しかし、楽しそうだった彼女は本入部直前、急に辞めると言う。
奉太郎は、あいつが誰かを傷つけるなんて、俺は信じないと、真相を探る。翌日、入部締切日に行われるマラソン大会20キロの途中で、部員たちを待ちぶせて話を聞き、何があったのかを推理し、問題を解決しようとする。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

高校生活を描いているので、半世紀以上の差を埋められず、付いて行くのにくたびれた。そもそも冗長だ。例えば、新入生勧誘会で、前の部のテーブルがなぜ大きいのかの推理に32頁も費やすのだ(八つ当たり)。しょっちゅう殺人事件が起こるのも絵空事になるが、日常の中であえて疑問をひねり出して長々と推理するのには、忙しい身には(忙しくないが)付き合いきれない。

マラソン大会で走りながら、ゴールまでに謎を解決するという設定は、探偵にとって制約が大きく面白い。しかし、謎解きの過程や、結果は驚くほどのものでもない。笑いがもっとあれば楽しく読めるのだが。

学園物を愛する世代でとくにこのシリーズを楽しみにしている人には面白いのかも。
前シリーズを私は読んでいないのだが、里志と伊原がなんとなくいい感じになってきている雰囲気が感じられ、奉太郎と千反田は意識しているのにまだまだ距離が詰まっていない。そんなまどろっこしい関係の歩みも、シリーズものの楽しみの一つなのだろう。



米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年岐阜県生まれ。金沢大学文学部卒業。
大学卒業後、2年間だけという約束で書店員をしながら執筆を続ける。
2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞受賞しデビュー。
その他、『遠まわりする雛』『さよなら妖精』『春期限定いちごタルト事件』『愚者のエンドロール』『犬はどこだ』『ボトルネック』『インシミテル 』『儚い羊たちの祝宴』など



シリーズものなので、基本的キャラ、人間関係は頭に入っているほうが読みやすい。

以下、神山高校2年生で古典部部員(大日向以外)

折木奉太郎(おれき・ほうたろう):探偵役、余計なことはしないエコ人間、姉は共恵
福部里志(ふくべ・さとし):奉太郎の親友。奉太郎と鏑矢中学で一緒。総務委員でマラソンの監視役。何をやらしても無難にこなす。
千反田える(ちたんだ・える):古典部部長、真面目、名家の娘、お嬢様で美人。奉太郎との距離は?
伊原摩耶花(いばら・まやか):奉太郎と小中一緒。ズバズバ言う、小学生に見える。里志と近接か?
大日向友子(おおひなた・ともこ):1年生、仮入部、一見明るい


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お彼岸の墓参り

2012年09月24日 | 行楽
彼岸最後の日、月曜日だからそれほど混んでいないだろうと墓参りへ。
昨年に比べてまた少しキツくなった坂道を登る。



これも恒例の景観台なしの元麻布ヒルズ



そして、六本木ヒルズ



ふと手元の植込みを見ると、



近頃は珍しいセミの抜け殻。



簡単に家族全員が元気なことを報告して墓参りを終えて、坂を降りて麻布十番商店街へ。豆源は通りすぎて、



創業210年を誇る永坂更科本店に外人さんに続いて入り、昼飯に。



太兵衛ざる 860円と、



素直にタレに入らないほど太く腰が強い生粉打ちそば 860円



渋谷で降りて、ヒカリエへ寄るが、「若い人向けばかりだわ」とスイスイ通過。ならばとB2の「ル ショコラ ドゥ アッシュ/ポール バセット」という長い名前の喫茶店に入る。コーヒーとチョコの有名店のコラボだと言う。

私めは、コーヒーはブラックならとお勧めのルンゴ



ケーキはアルコールたっぷりのサバラン



奥様はカフェラテ



最近では日本でもお馴染みのミルクでハートが描かれている。
そして、名前を覚えられなかった甘すぎるケーキ



家に帰ると歩数計は1万歩。よく出来ました。













コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米澤穂信『遠まわりする雛』を読む

2012年09月22日 | 読書2

米澤穂信著『遠まわりする雛』角川文庫よ23-4、2010年7月角川書店発行、を読んだ。

高校の部活である古典部シリーズの第4弾。全7編の連作短編集。
折木奉太郎たち4人の高校1年の1学期,夏休み,2学期,冬休み,3学期,春休みでの謎解きの中で、少しづつ近づいていく2ペアー。

「やるべきことなら手短に」
高校入学後、1ヶ月。
タイトルは、「やらなくてもいいことなら,やらない。やらなければいけないことなら手短に。」という奉太郎の考え方から。
しかし、千反田えるの「わたし,気になります」と持ち込んでくる問題にどうしても関わってしまう奉太郎。

「大罪を犯す」「正体見たり」「心当たりのある者は」


「あきましておめでとう」
奉太郎と千反田が初詣に行って神社の納屋に閉じ込められる。千反田の着物姿に奉太郎は困る。

「手作りチョコレート事件」
二人の関係をまだ保留したい里志と、意地でもチョコを受け取らせようとする伊原。

「遠まわりする雛」
奉太郎は千反田の頼みで、十二単を着た「生き雛」が地域を練り歩く地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。連絡のミスで混乱するが、なぜこの手違いが起こったのか、奉太郎が推理する。

本書は2007年10月刊行の単行本を文庫化した。

主な登場人物は、神山高校1年生。

折木奉太郎(おれき・ほうたろう):探偵役、余計なことはしないエコ人間、姉は共恵
福部里志(ふくべ・さとし):奉太郎の親友。奉太郎と鏑矢中学で一緒。こだわり派から気楽派に宗旨変えをし、こだわらないように努めている。
千反田える(ちたんだ・える):古典部部長、真面目、名家の娘、お嬢様で美人。「わたし、気になるんです」といって奉太郎を謎解きに巻き込む。
伊原摩耶花(いばら・まやか):小中とも奉太郎と一緒。ズバズバ言う、小学生に見える、里志にアタック



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

中高生にはお勧めだ。だが、中高年だって昔を思い出せば楽しめる?? 日常の「ほっとけば?」と言いたくなる、なんでもない謎を追求するためもあるのだが、ミステリーとしてはレベルが高くない。しかし、男女の高校生の気持ちの触れ合い、戸惑いがくすぐったい。

一番面白かったのは、表題作の「遠まわりする雛」だ。田舎の伝統行事の準備の様子、人間関係、そして千反田のお嬢様ぶりが興味深い。そして、最後に千反田が奉太郎に自分の決意を語るところは、いいね~。

「手作りチョコレート事件」もなかなか。謎はどうということないが、バレンタインの本格的チョコレート作りに意地になって必死に取り組む伊原が、多少怖くて、可愛い。うまく行かず責任を感じる千反田に、がっかりした様子を見せない伊原がいう。「うん。でもちょっときついかな。今日は帰るね。ちーちゃん、本当に気に病まないでね」

学園物を愛する世代でとくにこのシリーズを楽しみにしている人には面白いだろう。
里志と伊原がなんとなくいい感じになってきている雰囲気が感じられ、奉太郎と千反田は互いに意識しているのにまだまだ距離が詰まっていない。そんなまどろっこしい関係の歩みも、シリーズものの楽しみの一つなのだろう。


米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年岐阜県生まれ。金沢大学文学部卒業。
大学卒業後、2年間だけという約束で書店員をしながら執筆を続ける。
2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞受賞しデビュー。
その他、『二人の距離の概算』『さよなら妖精』『春期限定いちごタルト事件』『愚者のエンドロール』『犬はどこだ』『ボトルネック』『インシミテル 』『儚い羊たちの祝宴』など




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

立山良司『イスラエルを知るための60章』を読む

2012年09月19日 | 読書2
立山良司編著『イスラエルを知るための60章』エリア・スタディーズ104、2012年7月明石書店発行、を読んだ。

私の最も嫌いな国はイスラエルとアメリカだ。嫌いなものについてはよく知る必要があると、前回アメリカについで、今回イスラエルの歴史、文化、生活を紹介する本を読んでみた。

歴史、政治、経済、軍事の話はもちろん、ユダヤ教徒の実際の生活、世界各地からの移民の影響、教育事情、ハイテク・医療など先端産業、文化などを紹介し、その複雑な全体像を描こうとしている。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

政治の話は腹が立ってイライラして、生活の話は興味深く読んだ。最先端の技術を誇る一方で不合理そのものの戒律が支配している社会に驚く。

ユダヤ教の戒律はとんでもない事が多く、ご同情申し上げたい。しかし、イスラム教やキリスト教のいくつかの教派に似通っている面があり、あらためて3つの宗敎は親戚だなと思った。

イスラエルでは、多くの人々が享楽的になっているのかと思っていたが、宗敎勢力がますます権力を持って宗教色を強化し、右傾化していく現状に絶望的になった。

シオニズムの目標は「シオニズムはパレスチナの地に、公的に認められ、法的に保障されたユダヤ人にためのホームグランドの創設を追求する」だそうだ。シオニスト達は、今のやり方で、「公的に認められ、法的に保障される」道が開かれると思っているのだろうか。
第57章の名前は「世界最大の刑務所ガザ」だ。



編著者
立山良司(たてやま・りょうじ)
防衛大学校総合安全保障研究科・国際関係学科教授。専門は中東現代政治。
著書、『イスラエルとパレスチナ』『エルサレム』『宗教世界地図』など



以下、私のメモ

ユダヤ人
イスラエルでのユダヤ人の法的定義:ユダヤ教を信じていて、母親がユダヤ人
(母系家族というところがユダヤらしい)

世界のユダヤ人(自分で認識している人)は、1342万人で、そのうちイスラエルに570万人(43%)、アメリカに528万人(39%)、フランス48万人(3.6%)、カナダ、英国、ロシアなど。
(アメリカに約半分いる。色々事情はあるだろうが、イスラエルに移住しない人が多い)

ユダヤ人男児は生後8日目にシナゴーク(ユダヤ教の教会堂)でブリット・ミラーと呼ばれる割礼を受ける。

宗敎
イスラエルの祝日はユダヤ暦に従うので、9月~10月にかけて新年となる。ローシュ・ハシャナ(元旦)の10日後は1年を懺悔するヨム・キムプール(贖罪の日)で、普段は宗教的生活とは無縁の人々も、その日は断食しながら、シナゴークへ行き聖書を読む。国民の60%が断食をし、40%がシナゴークへ行く。日本人が正月には神社へお参りするのと同じ。

正統派のラビによる結婚式しか法的に認められない。また、死者の清掃から墓穴を掘ることまでヘブラ・カディシャという宗教組織の権限である。ハレディーム(超正統派)が既得権限を保持している。なお、刺青はすべて剥ぎ取られてから埋葬される。

エルサレム旧市街の北西にあるメア・シャリームはハレディーム(超正統派)が集まって住む地域だ。男性は黒いスーツや帽子、あごひげやもみあげを伸ばす。女性は長袖、長いスカートに分厚いストッキング。既婚女性は髪を剃ったりカツラやショールで髪の毛を見せない。教義に基づき避妊しないため子供を10人生む女性も珍しくなく、人口が増大している。

イスラエル全体で、超正統派は8%、(キッパをかぶる宗敎派?、伝統派?)世俗派は42%。
エルサレムでは超正統派が29%、テルアビブでは世俗派が59%。

生活
18歳で徴兵があるが、アラブ系や、神学校のハレディーム(超正統派)などは免除される。近年約半数の若者は兵役の代わりに社会活動に奉仕する。

大半のレストランでは、カシュルートという戒律により、肉と乳製品を一緒に口にすることはできない。マックにもチーズバーガーはない。調理器具、流し台、食器を肉用と乳製品用で2つに分けている家庭も多い。
蹄(ひづめ)が分かれていて反芻するもの(牛や羊)を、規則にしたがって、血抜きした肉のみ食べて良い。ヒレやウロコのないエビや貝などの甲殻類は食べてはいけない。食べられる菓子や調味料など加工品には、カシュルート適合マークが付けられている。
しかし、イスラエルに住む限り、カシュルート不適合製品は少ないので自然に戒律に従うことになり大きな不便はないという。そう言えば、イスラム教徒が多いマレーシアでは肉売り場が2つに分かれていた。

金曜日の日の入りから土曜日の夕方まで(時間は毎週異なる)は安息日シャバットだ。公共交通は止まり、デパートなどは閉店する。家族や友人との団欒の時でもある。

米国
米国のユダヤ人は649万人で全人口の2.2%。議員の割合は7.3%。米国では福音派(エバンジェリカル)が力を伸ばしており(全米の30~35%)、その2/3を占める保守的キリスト教シオニスト達は、イスラエルの建国を聖書の予言の実現であり、イスラエルの勝利は神との契約が存在することの証であると信じている。

米国はイスラエルに対し、毎年2000から3000億ドルの軍事無償援助を行なっている。

今後
近年のイスラエル世論は右傾化し、和平への悲観的見方が強く、たとえパレスチナとの和平が仮に実現してもアラブ諸国との敵対関係が残ると考える人が多くなっている。

政府の優遇処置もあり入植は増加し続け、入植地は約150個所、約50万人になっている。最近ではイスラエル政府の許可無く土地を占拠する「アウトポスト」が増加し2千人にも達している。



以下は、明石書店HPの本書紹介より。

執筆者
池田明史(いけだ・あきふみ)
鴨志田聡子(かもしだ・さとこ)
武井彩佳(たけい・あやか)
立山良司(たてやま・りょうじ)
辻田俊哉(つじた・としや)
林真由美(はやし・まゆみ)
樋口義彦(ひぐち・よしひこ)
三上陽一(みかみ・よういち)
村橋靖之(むらはし・やすゆき)
屋山久美子(ややま・くみこ)

目次
はじめに
I イスラエルという国
第1章 一瞬も退屈のない国――波乱と緊張と多様性の中で
第2章 自然と気候――「肥沃な三日月地帯」の南端
 【コラム1】 世界のユダヤ人とイスラエル
II 歴史
第3章 シオニズム――ユダヤ人ナショナリズムの三つの流れ
 【コラム2】「近代シオニズムの父」ヘルツル
第4章 宗教共同体から民族共同体へ――ヨーロッパ近代がもたらした新たな潮流
第5章 パレスチナへの移民の波――ユダヤ人社会の誕生とアラブ系住民との軋轢
第6章 ホロコーストとシオニズム――悲劇をどう解釈するか
 【コラム3】アイヒマン裁判──陳腐ではなかった悪
第7章 イスラエル独立と第一次中東戦争――民族の悲願達成、戦いの歴史の始まり
 【コラム4】ダヴィッド・ベングリオン──イスラエル建国を実現
第8章 第三次中東戦争と「領土と平和の交換」原則――いまだ達せられない和平の枠組み
第9章 第四次中東戦争から現代まで――40年の変化は大きかったが
III イスラエル歳時記
第10章 夏に迎える新年――ユダヤの歴史に基づく年中行事
第11章 誕生から死まで――世俗的イスラエル人と通過儀礼
 【コラム5】メア・シャリーム
第12章 聖と俗の緊張関係――ユダヤ教とイスラエル社会
 【コラム6】労働禁止の安息日「シャバット」
第13章 産めよ育てよ――イスラエルの出産・子育て事情
第14章 教育重視社会――18歳で大きな転機
第15章 体外受精も保険でカバー――柔軟な医療・社会福祉制度
第16章 イスラエルのユダヤ料理――ユダヤ教の戒律と多様性
IV 多様な言語と社会
第17章 日常語になった現代ヘブライ語――手に入れた自分たちの言語
 【コラム7】イディッシュ語やラディノ語の「復活」
第18章 アシュケナジームとスファラディーム――移民とイスラエル社会
第19章 世界中のユダヤ人を受け入れるイスラエル――3分の1が国外出身
第20章 いろいろ話せて当たり前――多言語社会イスラエル
第21章 活発なメディア――SNS利用時間は世界一
第22章 ホロコースト生存者――高齢化と拡大する格差の陰で
第23章 時代とともに変化し続けるキブツ――自然と社会環境の豊かな生活
V 政治と安全保障
第24章 多党化と不安定な政権――百家争鳴の政党政治
第25章 右傾化するイスラエル――背景に人口構成の変化
 【コラム8】イツハク・ラビン──イスラエル建国からの“象徴”
第26章 「憲法」のない国――将来の憲法を構成する「基本法」を整備
第27章 政治と軍事――安全保障政策は誰が決定しているのか
第28章 国防軍(IDF)とイスラエル社会――「国民軍」から変わるのか
第29章 イスラエルの核戦略――曖昧政策と一方的抑止
第30章 兵器産業と武器輸出――最先端システムを支える柱
第31章 変化するイスラエルの脅威概念――「戦争を強いる」存在への変貌
第32章 情報機関――国家安全保障の根幹
第33章 モサド――失敗の系譜
第34章 軍事作戦と国際法――自衛権の行使か、過剰な軍事力の行使か
VI 経済発展の光と影
第35章 イスラエル経済の変遷――特異な発展モデル
第36章 二つの基幹産業――農業とダイヤモンド
 【コラム9】イスラエル産ワイン――ストレートで味わい深く
第37章 ITからナノテクまで――ハイテク国家の旺盛な起業精神
第38章 共存の夢は遠く――進むパレスチナとの経済分離
第39章 経済を取り巻く課題――国際協調と社会的不平等の是正に向けて
VII 文化・芸術・若者
第40章 イスラエル文学――ヘブライ語の再生・建国とともに
 【コラム10】村上春樹とエルサレム賞――「壁と卵」
第41章 クラシック音楽界――芸術音楽の限界と可能性
第42章 オリエント音楽からジャズまで――移民社会ゆえの多様な音階とリズム
 【コラム11】今あつい「ムズィカ・ミズラヒート」
第43章 元気なイスラエル映画――「芸術的なディベート文化」の結晶
第44章 ポスト・シオニズム論争――「新しい歴史家」が提起したもの
第45章 盛んなスポーツ――そこにも政治の影が
第46章 若者文化――サブカルチャーとバックパッカー
 【コラム12】二都物語――エルサレムとテルアビブ
VIII 外交
第47章 曲折の対外関係――最近は孤立傾向
第48章 米国のユダヤ人――政治的影響力の背景にも変化の兆し
 【コラム13】 キリスト教シオニズム
第49章 米国との「特別な関係」――活発に議論されてきた特別さ
第50章 米国政府の対イスラエル援助――大きな規模を維持
第51章 微妙なドイツとの関係――「殺人者の国」からパートナーへ
第52章 日本とイスラエル――高い関心、でも「遠い国」
IX 中東和平問題とイスラエル
第53章 オスロ和平プロセスとその破綻――行き詰まった和平プロセス
第54章 パレスチナ問題とイスラエル世論――2000年を境に大きく変化
第55章 宗教と政治の複雑な絡みあい――エルサレム問題とイスラエル
第56章 増え続ける入植者人口――パレスチナ人の反対をよそに
第57章 「世界最大の刑務所」ガザ――新たな変化の兆しも
第58章 アラブ系国民――2割を占めるマイノリティ
第59章 占領上の要衝ゴラン高原――シリアとの最前線
第60章 〈終章〉イスラエルはどこに向かうのか――「普通」と「特別」のはざまで
 イスラエルを知るための文献・情報ガイド


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有賀貞『ヒストリカルガイド アメリカ』を読む

2012年09月17日 | 読書2

有賀貞著『ヒストリカルガイド アメリカ(改定新版)』2012年7月山川出版社発行、を読んだ。

私の最も嫌いな国は、何ごとも力づくで弱いものいじめするイスラエルとアメリカだ。アメリカは大統領がオバマに代わって多少変化したが、暴力的体質はなくなっていない。
嫌いなものについてはよく知る必要があると、両国の歴史などの解説本を読んでみた。
今回はアメリカで、次回イスラエルに関する本を紹介する。

231頁でアメリカの建国から現在までの歴史を概説していて、大学一般教養の教科書になりうる。その多くは政治、人種問題だ。

目次
「新世界」の国アメリカ/イギリス領北アメリカの発展/アメリカ革命と連邦共和国の形成/西部の発展と南北戦争/移民の流入増大と多様化/産業社会の形成/二つの世界大戦とアメリカ/冷戦時代のアメリカ/差別廃止の成果と限界/あらたな保守主義の台頭/人種的・文化的な多様化/世紀転換期のアメリカ



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

要領よく現在までのアメリカ史をまとめている。ざっと通読して流れをおさらいし、抜けた知識を補うことができる。教科書的な概説書をもとにしているだけに著者は様々な立場を公平に説明している。

この本を読んでみてもなぜアメリカが暴力的かはよく分からなかった。依然として主流の農村部の保守的で、私には狂信的に思える福音派の人々、対抗する都市部の享楽的でリベラルな人々、中流と極貧に二極化した黒人達など、極端に多様な考えの人も集まっている国であり、一面的には捉えられないのだが。極端なこといえば、民主主義とは名ばかりで、ユダヤ人と全米ライフル協会に牛耳られていると私には思える。

中流も含め貧しい者の民主党、金持ちの共和党と考えれれば、99%の民主党が圧勝すると単純な私は思うのだが。例えば、未だ銃を持って質実剛健で中絶にも反対の共和党支持の人々が多くいるらしい。
まあなにしろ400年に歴史しかない新しい国なのだ。



有賀貞(あるが・ただし)
1931年生まれ。東京大学大学院修士課程修了
一橋大学名誉教授、専攻はアメリカ政治外交史
著書:『アメリカ政治史』『国際関係史』など




以下、私のメモ。

一番古いヴァージニア植民地に最初の入植地ジェームズタウンができたのが1607年(現在までわずか400年の歴史)。ピューリタン(イギリス国教会分離派)102人がプリマスに入植したのは1620年で二番目。この地は発展せず、マサチューセッツ・ベイ植民地が1630年から10年間で約2万人が入植した(中部イングランドから)。

コロンブスはアメリカがアジアの一部と信じていたが、アメリゴ・ヴェスプッチはアジアとは異なる大陸だと考えた。その名にちなんで「アメリカ」と名付けられた。

1788年世界で最も古い成文憲法、合衆国憲法が発効した。いくつかの修正条項を加えただけで現在も存続。1789年ワシントンを大統領とする合衆国政府が発足。

1920年代自動車や電化製品の大量生産、大量消費の時代となり、都市の中流階級は華やかな文化が広がった。一方、プロテスタントでアングロサクソンの質実剛健な農村の人々は、都市は異教徒の移民の街で退廃した文化の中心と考えられ、禁酒法継続を主張した。

アメリカの主要な戦争と戦死者数
南北戦争(60万人)、第一次世界大戦(12万人)、第二次世界大戦(40万人)、朝鮮戦争(3.6万人)、ベトナム戦争(5.8万人)、イラク戦争(4.3千人)
南北戦争の死者が一番多い。

公民権とは、シヴィル・ライツの訳語で、政治的権利だけでなく、市民として社会生活上差別されない権利一般を含んでいるので、「市民的権利」が正確な訳語。

アファーマティブ・アクション(積極的差別是正処置)により、黒人は中流階級と極貧層「アンダークラス」に2極化された。人種を超えたアンダークラスのための社会政策が必要だ。

茶会運動:中小事業主、大きい政府を敵視、教条的
占拠運動:失業者、大きい会社を敵視、情緒的、我々は99%なのだ

所得で5階層に分けると、21世紀に所得配分が増大したのは最も富裕な20%だけで、下位4層の所得を合わせても上位20%に及ばない。とくに1%の超富裕層の所得の伸びがとくに大きい。

人種(2010年(%))
白人72.4%、ヒスパニックでない白人63.7、ヒスパニック(ラティーノ)16.3、黒人12.6、その他6.2、アジア系4.8、複合人種2.9、先住民0.9、ハワイアン等0.2
2050年にはヒスパニック系以外の白人は約50%になると推定。
中堅市民となった日系アメリカ人は、アフリカ系から「バナナ」(一皮むけば中は白人)と見られる。

アジア系内訳(2000年、(万人、%))
中国系(273、23)、フィリピン系(237、19.9)、インド系(190、16)、韓国・朝鮮系(123、10.3)、ベトナム系(122、10.3)、日本(115、9.7)系、カンボジア系(21、1.7)、パキスタン系(20、1.7)、ラオス系(20、1.7)、モン(苗族)系(19、1.6)


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高田郁『みをつくし献立帖』を読む

2012年09月15日 | 読書2
高田郁著『みをつくし献立帖』時代小説文庫た19-9、2012年5月角川春樹事務所発行、を読んだ。

例えば、8ページには「はてなの飯」の写真にシリーズから一言「良いか、道はひとつきり。」が加えられ、9、10ページにはそのレシピ、11~13ページには内緒噺があるという構成だ。
22のレシピと20の内緒噺、さらにレシピがシリーズ本に掲載されている料理は写真と一言だけ載っている。その他、新旧「つる家」の間取り図と盛り沢山。

巻末の書き下ろし短編小説「貝寄風(かいよせ)」には、大店の三人娘のこいさん(末娘)で気が強いがやさしい野江と、塗師の娘でおとなしい澪(みお)が、あの蛤の貝合わせの遊びをするなど幼き日の思い出が描かれている。
風に吹き飛ばされそうになっている澪に、野江が手を差し伸べる。澪がその手を取ると、野江はぎゅっと握り返した。・・・両の目を固く閉じ、風に負けまい、とふたりの少女は足を踏ん張る。・・・


9月22日(土)21時からテレビ朝日で「みおつくし料理帖」を放映する。北川景子が澪を演じるというが、違和感がある。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

「みをつくし料理帖シリーズ」の愛読者には是非お勧めしたい。料理は作ることはもちろん、食べることにも情熱を持たない私でもこの献立帖は、内緒噺だけでも十分楽しめた。

著者はB5サイズのスケッチブックに登場人物のスケッチを書いているという。澪の顔、髪、着物、そして身長は145センチ、体重43キロ。新旧「つる家」の間取りイラストには人物も書き込まれ、色々想像をかき立てる。

料理の写真に添えられたシリーズから抜き出された一言。どんな場面だったか思いを馳せるのも良い。
「お澪坊、こいつぁいけねえ、いけねぇよう。」種市「花散らしの雨」26頁
「信じて寄り添ってくれる誰かが居れば、そいつのために幾らでも生き直せる。ひとってのは、そうしたもんだ。」種市「小夜しぐれ」48頁

この本もシリーズも表紙は卯月みゆき(うげつ)作の版画。

著者の高田さんが「漫画原作から時代小説へ転身を決めた直接の要因は、両目の網膜に孔があいたからでした。」もう時間がないと思ったのでしょう。
江戸時代に関する知識、素養を身につけるため図書館へ通うが、預金は減って生活は逼迫し、怖くて不安になる。そんな中、温かく見守る1通のメールで勇気をもらう。そして、「読み手の心の中で光になるような、そんな言葉を紡げる作家になりたい。」と高田さんは思う。

著者の読者へのサービス精神に感謝。



高田郁(たかだ・かおる)は兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。
2006年、短編「志乃の桜」で北区 内田康夫ミステリー文学賞区長賞受賞。
2007年、短編「出世花」で小説NON短編時代小説賞奨励賞受賞。
2009年~2010年、『『みをつくし料理帖』シリーズ第1弾~第3弾
第1弾「八朔の雪」で「歴史・時代小説ベスト10」、「最高に面白い本大賞!文庫・時代部門」、「R-40本屋さん大賞第一位」を獲得。
2010年『銀二貫』『みをつくし料理帖シリーズ第4弾の「今朝の春」
2011年『みをつくし料理帖シリーズ第5弾の「小夜しぐれ」
みをつくし料理帖シリーズ第6弾の「心星ひとつ」』『みをつくし料理帖シリーズ第7弾の「夏天の虹」


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

川上弘美『此処彼処』を読む

2012年09月13日 | 読書2

川上弘美著『此処彼処(ここかしこ)』2005年10月日本経済新聞社発行、を読んだ。

1月から12月まで、都内を中心に子供の頃過ごしたアメリカなどを加え、52箇所に関わる思い出を記したエッセイだ。いつもの身の回りのことなのに、ちょっととぼけた川上節が満載だ。

大学のとき、下級生とピーナッツ掘りに行った。13年後に、次男を生んだばかりで、この鶴巻温泉に移った。文学賞応募用に、ピーナッチ掘りが特技の女主人公の小説と、神様という短編を書きあげた。迷ったが「神様」の方を応募した。逆だったら、今と違った作風になっていたかもしれないと語る。このときの下級生その2は小説家になったと書いてあるので、多分、当時SF研究会の松尾由美だろう。

どうでもいいといえば、どうでもいい話がほとんどで、それがとぼけた、変わった捉え方で語られるのが川上節だが、ときどきマジになり、なるほどと思ったところがあった。長いが引用する。

憂鬱な時は、善意とか気配りとかおもんばかりといった類のものが表面ににじみ出ている人とは、ふれあいたくなくなるのだ。なぜか、自分にそういうものが足りないせいかもしれない。またはふだん自分がそういうものを指向してしまう――向いていないくせに――せいかもしれない。
辛辣な友だちの言葉を、受話器を握りしめながら、ふんふん聞く。時々わたしも辛辣なことを言ってみる。友だちがキレのいいことを言ったときには、なるたけ品悪く笑う。
そうしているうちに少しだけ憂鬱が晴れてくる。しょせん、とかいう言葉がうかんでくる。しょせんわたしは、でも、しょせん世界は、でも、どっちでもいい。



初出:日本経済新聞朝刊(日曜日付)2004年1月4日~12月26日



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

気楽に読めるが、なんという事ない話ばかりだ。川上ファン以外にはお勧めしない。主に東京の地名がそのまま出てくるので、私には「そうそう」と思ったりして親しみを感じるのだが。
銀座線の走行途中で一瞬電気が消え、金属製つり革が手前に引いて離すと元に戻る話が懐かしい。ついでに言えば、もっと昔には、地下水が豊富だったので、車外にはポタポタ水が垂れていて、車内内は夏でも涼しかった。

五才のときオークランド近郊のモーテルで、TVのアナウンサーが盛んに「サシネ(assassination)」と叫ぶ。お母さんに聞くとアンサツだという。ケネディが暗殺されたのだ。このとき私は山を縦走中だった。山を降りて初めてケネディが殺されたのは知った。あのときの衝撃、絶望感は今でも生々しい。



川上弘美の略歴と既読本リスト


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酒井順子『もう、忘れたの?』を読む

2012年09月11日 | 読書2

酒井順子著『もう、忘れたの?』2012年6月講談社発行、を読んだ。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

週刊現代連載のエッセイからの40本。多くの人が「本当そうだよな」と思う等身大のエッセイが並ぶ。

非常時にわかること
「そして、私は、ジュンパ・ラヒリの「停電の夜に」という小説を思い出したのでした。」
(おお! なつかしい。この小説、私のお気に入り(五つ星)です)

砂丘と脱毛
「鳥取砂丘は放っておくとどんどん雑草が生えてくるので地元の人がせっせと草むしりをしている」
(ここから女性のムダ毛処理の話、さらに男性の・・・になります。それにしても、体操の内村航平さんの着地のポーズを見て、もう少し腋のお手入れをと思いました)

なでしこ達の憂鬱
一躍時の人になって、テレビ出演が多いのですが、やたら「彼氏はいるのか」とか「結婚願望」とかの質問が多い。確かに男子サッカー選手にそんな質問はしていない。女子だから、マイナー競技だからだろう。アスリートとして扱っていない。

リカママの年齢、フネさんの年齢
リカちゃん人形のママの年齢は33歳、サザエさんの母フネさんは48歳。波平さんも54歳で石田純一よりぐっと年下。
(確かに昔の人(私が言うのも変ですが)は、今にして思えば若くして老成していた。同時に、今の人が若作りであり、幼いのだろう)

娘のパンツを洗うのは誰?
今時のお父さんは家事を分担するので、娘のパンツまで洗うという。
(小学生ならいざしらず、本当に中高生の娘が平気で父親に下着を洗わせているの?)

清水ミチコさんとの「スペシャル対談」も収録

初出:週刊現代2011年5月21日号~2012年4月28日号の内40本



酒井順子の略歴と既読本リスト

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

荻上チキ『社会的な身体』を読む

2012年09月09日 | 読書2
荻上チキ著『社会的な身体 -振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』講談社現代新書1998、2009年6月講談社発行、を読んだ。

(以下、私の頭で理解できたと誤解した内容であって、本文は高尚、難解)

第1章 有害メディア論の歴史と社会的身体の構築

電話が登場時は「聴覚の拡大」、TVは「千里眼」と説明されたようにメディアは身体感覚の変容と言い表れされた。人は新しいメディアを通じて新しい「身体能力」を獲得していくようだ。メディアは「社会的な身体」を構築していく。

一方で、新しいメディアはしばしば人を退廃させるものとして非難される。明治期に生まれた小説は、「バーチャルな世界に浸って碌でもないことになる」というように非難された。
TVや、ゲームは今も非難されている。

社会のあり方によって、求められる身体能力やその基準は異なる。「新しいメディアを身体に取り込む」ことで「社会的身体」が形成される過程において、バッシングは必須のものである。
新しいメディアの登場は、決まって教育上の観点から賛否を呼ぶ。なぜなら「教育」は、「未成熟な者」を《あるべき主体》へ近づける行為だから、《あるべき主体》の違いが大きいのだ。

第2章 社会的身体の現在――大きなメディアと小さなメディア

ネットにおける小さなメディアは、新聞、テレビの大きなメディアをチェックする機能を有するが、同時に追従することも多い。

ノート 「情報思想」の更新のために

最後の2行だけを拾う。
メディアは思想を作るのに加担する。そうした環境の支配について、不断の問い返しを行う作業だけが、希望を語る行為を可能にするのだ。
(僕、意味分か~んない)

第3章 お笑い文化と「振る舞いモデル」

TVの「お笑い」の変遷をたどり、現代の「キャラ」の時代への変化を語る。多くの視聴者がコミュニケーション的に「消費」しやすい一発芸、キャラ芸が現在流行していることの意味を問う。

第4章 ゲーム性と身体化の快楽




私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

「相変わらずニューメディア論は感覚的で、論理の積み重ねがない。マクルーハンから進歩がない」と、よく分からなかった頭の硬い年寄は思ってしまう。話が色々な例を積み重ねて進み、なんとなく感覚的にはその通りかもと思うのだが、しっかり納得できない。しかも、その例たるや、サブカルチャー作品なのだから。

数々のお笑い芸人が登場する第3章が面白かった。半分も知らないのだが、ずらりと変遷を並べられると、流れが実感できる。

「ゲッツ!」「なんでだろう~」「残念!」「間違いない」「ファオー!」「右から左へ受け流す」「自由だぁ!」「あたしだよっ」「そんなの関係ねぇ!」「オモロー!」「グ~」「悔しいです!」「なーに? やっちまったな!」
このうち、いくつの一発芸を覚えていますか? 私は最初の方の6つでした(付いて行ってない)。



荻上チキ(おぎうえ・ちき)
1981年兵庫県生まれ。成城大学文芸学部卒、東京大学大学院情報学環・学際情報学府修士課程修了。
テクスト論、メディア論を中心に評論、編集活動を行う。
著書に『ウェブ炎上』、『ネットいじめ』など。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北山修、橋下雅之『日本人の<原罪>』を読んだ

2012年09月07日 | 読書2

北山修、橋下雅之著『日本人の<原罪>』講談社現代新書1975、2009年1月、講談社発行、を読んだ。

『古事記』のイザナキ・イザナミの神話や海幸彦・山幸彦の神話、「鶴の恩返し」などでは、男はただ自分の欲望をぶつけ、女は自分の身を削って応えようとする。そのとき女は「決して見ないでくれ」(見るなの禁止)と懇願するが、男は禁を破ってしまう。

その結果、女の恥の意識だけがクローズアップされ、男の罪の意識は描かれていない。イザナキにいたってはあわてて逃げ帰り、我が身が穢(ケガ)れたと禊(みそぎ)をする。罪を水に流すことで無かったことにしようとする。そこには約束を破ったという加害者としての意識はまったく無く、むしろ自分が被害者であるかのように振る舞っている。

これら神話の出来事が日本人の原罪意識の無さを表しているのではないかと、元ザ・フォーク・クルセダーズのメンバーで精神分析医の「北山修」と国文学者「橋本雅之」が各々の専門分野に基づき日本人の精神分析を試みる。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

馴染みのない日本の神話の話では、どうにもピンとこない。私には、話もややこしいだけではっきりしないように思える。
しかし、罪を犯した者が穢れを祓(ハラ)うと、許されるという考え方は今も日本に生きていて、不祥事を起こした社長も辞任すれば、それ以上社会的には追求されない。日本を敗戦に導いた東条英機も死刑になれば靖国神社に祀られ神になり許されるというのが日本の考え方だ。

2章、3章の古事記の解説は分かりやすいのだが、やたらと神を生み出し、その神がどうなったかが書かれていない古事記は読む気がしない。例えば、イザナキにが逃げ帰って産み出した神が20以上も並び、その名前も複雑で読むのも困難なのだから。



目次
第1章 愛する者を「害する」こと――父神イザナキの罪悪感(北山修)
第2章 『古事記』神話への道案内(橋下雅之)
第3章 『古事記』を読み解く――現代語訳「古事記抄」(橋下雅之)
第4章 対談 今日を生きるための神話論(橋下雅之・北山修)

北山修
1946年淡路島生まれ。ザ・フォーク・クルセダーズで活躍。
京都府立医科大学卒業後、ロンドン大学精神医学研究所でフロイトの精神分析学を研修。
帰国後、北山医院を開業、現在は九州大学大学院人間環境学研究員教授。
専門は精神分析学。
著書に『悲劇の発生論』、『幻滅論』、『劇的な精神分析入門』

橋本雅之
1957年大阪市生まれ。
三重県伊勢市の皇学館大学文学部卒業。
現在皇学館大学社会福祉学部教授、専攻は国文学、神話学。
著書『古風土記の研究』など。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リュドミラ・ウリッカヤ『女が嘘をつくとき』を読む

2012年09月05日 | 読書2

リュドミラ・ウリッカヤ著、沼野恭子訳『女が嘘をつくとき』新潮クレスト・ブックス、2012年5月新潮社発行、を読んだ。

情が熱く信じやすい、それでいて頭の良いジェーニャ。離婚、再婚を経験し息子を育てながら働く彼女が出会った女たちが語るわけもなく他愛もない「嘘の話」6篇からなる連作短篇集。
原題は「貫く糸」といったような意味で、全編、さまざまな女性の嘘が続く中で、けして嘘をつかないジェーニャが常にいる。

1. ディアナ
赤毛で大柄な美人のアイリーンは、毎晩ポートワインを飲みながら波瀾万丈の人生を詳細に語る。ところが、彼女の昔の知りあいが話しの多くが嘘であることを明かす。ジェーニャは息子と貸別荘を出て新世界にたどり着く。

2. ユーラ兄さん
別荘のオーナーの娘ナージャは10歳。兄さんは木の上に家を作ったと話しだす。ジェーニャは考える。
「たしかに男の子だって嘘はつくけれど、いつも必要に迫られてのこと。罰を受けたくないときとか、しちゃいけないってわかりきったことをして隠そうとするときとか・・・」


3. 筋書きの終わり
13歳のリャーリャは40代の親戚の画家との恋愛について語る。ジェーニャはなんとか止めようとするのだが・・・。

4. 自然現象
傷つきやすい心を持つマーシャは、老女性教授アンナの語る自作の詩に感動する。

5. 幸せなケース
シンデレラ物語を語るロシア人娼婦たち。なぜかその話はほとんど同じだ。

6. 生きる術
30年以上後、リーリャは人の良い薬剤師になっていたが脳卒中を患う。ジェーニャは二人の息子は成人し、夫と二人だが、仕事でも成功して多忙なので、チェチェン人のお手伝いさんを雇う。そして事故が・・・。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

女性たちがいつまでも夢のような話を続ける。男性が聞き続けるには我慢が必要だ。

「女の嘘」は「何の意味も企みもないどころか、何の得にさえならない」「ひょいと、心ならずも、なにげなく、熱烈に、不意に、少しずつ、脈絡もなく、むやみに、まったくわけもなく嘘をつく」と著者は言う。自己顕示欲に満ちた、理由のはっきりした男の嘘とは違う。「女の嘘」は、女性たちの夢であり、希望であり、自身を救う物語なのだろう。

最初の5編すべてに登場するジェーニャは語り手に過ぎず、実質的に脇役だ。しかし5編全てにおいて彼女は真っ正直で一本の筋が通っている。その彼女が最後の6編では中心になる。面白い構成で、舞台は、1970年代から20年間、大変革が続く時代のモスクワだ。



リュドミラ・ウリツカヤ
1943年生れ。モスクワ大学(遺伝学専攻)卒業。現在ロシアで最も活躍する人気作家
1996年『ソーネチカ』でフランスのメディシス賞とイタリアのジュゼッペ・アツェルビ賞を受賞
2001年『クコツキ一家の人びと』でロシア・ブッカー賞を受賞
2004年『敬具シューリク拝』でロシア最優秀小説賞とイタリアのグリンザーネ・カヴール賞(2008年)受賞
2007年『通訳ダニエル・シュタイン』でボリシャヤ・クニーガ賞とドイツのアレクサンドル・メーニ賞(2008年)を受賞
2011年シモーヌ・ド・ボーヴォワール賞を受賞

沼野恭子(ぬまの・きょうこ)
1957年東京生れ。東京外国語大学教授。
著書に『夢のありか―「未来の後」のロシア文学―』、『ロシア文学の食卓』等
訳書にウリツカヤ『ソーネチカ』、クルコフ『ペンギンの憂鬱』、アクーニン『リヴァイアサン号殺人事件』等。















コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

角田光代『それもまたちいさな光』を読む

2012年09月03日 | 読書2

角田光代著『それもまたちいさな光』文春文庫カ32-8、2012年5月文藝春秋発行、を読んだ。

デザイン会社に勤める仁絵は35歳独身。いまの生活に不満はないが、結婚しないまま1人で歳をとっていくのか、悩みはじめていた。そんな彼女に思いを寄せる幼馴染の雄大。だが仁絵はときめかない雄大との結婚に踏み込めない。
仁絵自身、周囲の人に反対されてものめり込んでしまう恋愛に陥ったことがあり、そして友人達も抜け出せないでいる。

特別付録に、「小島慶子とラジオ対談」が載っている。
もともとこの本は、TBS開局60周年を記念して、角田さんにラジオ小説を書いてもらい、TBSでラジオドラマ化するという企画により生まれた。(放送は2011年12月23日、24日)

初出「オール読物」2012年1月号



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

まったく相手に誠意がないとわかっていても、友人たちにきつく止められても、どうしても止められない恋愛があるらしい。不可思議な吸引力があるというのだが。

いかにも角田さん、読みやすい。例えば、矮小な例だが、登場する人物の名前や概要がかなり読み進めないとなかなか分からない小説が多い。この小説では、最初の10ページで主要な7人の紹介が終わっている。

ラジオを聴く習慣がなかった角田さんなのに、ラジオドラマ向けの小説をあっさり(?)書いてみせた。ラジオを聴く人、番組を作る人、そして、同じ番組を聴いている人同士のつながりを見事にとらえている。

特別付録の小島慶子との対談の中で角田さんが、小説の書き方について語っている。

この小説みたいに結末がはっきりわかるものは、最後から組み立てていくんですね。
・・・
私は、書き手の名前を伏せて1文を抜いたときに、これは誰の文章か絶対にわからないような、無個性な文章を書くように心掛けているんですよ。・・・
私、形容詞を結構使っちゃうので、ゴテゴテした形容詞を取るとか、あえて平仮名にして個性を出すことをしないとか、感覚的な擬音語、擬態語を使わないとか・・・。
・・・
私が書く主人公は女性が多いんですけど、女性主人公は自分が嫌いなタイプを設定するんです。その人の性格と、あと、たぶん十人が十人、その人と話したときにイラッとするポイントを決めます。・・・
自分の好きなタイプの女性を書いてしまうと、自分の味方になって、その人が小説の中で正義を持ってしまうんです。でも、嫌いな人だと、私が客観性を保てるんです。





登場人物
悠木仁絵(ゆうき・ひとえ)
デザイン会社で働く35歳、独身。幼馴染の雄大から「35歳になった時2人とも結婚していなかったら結婚しようと昔約束した」と言われる。しかし、小さい頃から何もかも知っていて、全くときめかない。また、お互いの泥沼の過去の恋愛も知っている。

駒場雄大(こまば・ゆうだい)
仁絵の幼友達。洋食店を受け継ぐ。高校3年生の時に6歳年上の自称ダンサーにナンパされ、その人に溺れた。

田河珠子(たがわ・たまこ)
仁絵の友人で、美術大学の同級生。最近海外での展覧会も決まった売れっ子のデザイナー。
野島恭臣との付き合いは実質終わっているが、引きずって連絡を待っている。

野島恭臣(のじま・やすおみ)
かって人気のキャラクターデザイナー。珠子が泥沼の付き合いを続けている。

岸井ノブオ、野村香菜、国枝寛
仁絵の勤めるデサイン事務所の経営者、所員

長谷鹿ノ子(はせ・かのこ)
大手出版社の50代の編集者。仁絵の職場に出入りする。15年も不倫関係を続けている。

竜胆美帆子(りんどう・みほこ)
ラジオのDJ、パーソナリティ。最初は夜早く寝て朝早く起きる規則正しい生活をし、新聞など見てきちんとニュース抑えていた。しかし、入院した義母が、毎日漠然とラジオを聞いているとわかって、ラジオというのは毎日どうでもいい事を語れば良いと思った。どんなに元気がないときでも、ぐわい悪い時でも、届くこと、小さなことを話そう。
この本には、彼女のラジオの語りが所々ではさまれる。


角田光代の略歴と既読本リスト


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岸香里『笑うナース』を読む

2012年09月01日 | 読書2

岸香里著『笑うナース(新装増補版)』2012年4月いそっぷ社発行、を読んだ。

第1章は、新人ナースがびっくりの連続から一人前になっていくまでのエピソード。
第2章は、著者を困らせた患者、医者、主任ナース。
第3章は、キャラクター豊かな患者とその人生の笑いと感動。
以上が文章と漫画、約半分づつで描かれる。

ナース・キャップを初めてつけるだけなのに、来賓式辞、ナイチンゲール誓詞など厳粛に行われる戴帽式。

患者さんの排泄物を、柔らかさ、色、大きさなど事細かく観察し、看護記録につける。

ナース・ステーションの片隅にある死後処置セットには、バケツ、タオル2、使い捨て手袋、新しい寝間着、さらし、綿、割り箸が入っている。身体を水(お湯は必要ない)で洗って、死後硬直前に形を整える。割り箸は、人体の中の分泌物などが出てこないようにあらゆる穴に綿を詰めるのに使用する。これらもナースの仕事。

そしてユニークな患者さん達との哀しい別れ。

本書は、1997年発行の旧版に第9話、第10話を加えている。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

サラッと読めるが、とくに冴は感じられない。看護師は、見えない仕事もあり大変だなと思った。病を得た患者さん、とくに個性的な病人との触れ合いは大変なものがある。しかし、医師や他のナースとの人間関係の苦労は、どんな仕事にもつきもので普通の範囲。
死が近くにある病院ではもっと厳しい雰囲気があると思うのだが、著者の性格か、兼職のためか、悲壮さが少ない。良いことでもあるのだが。

漫画が読み慣れないので読みづらい。吹き出しの手書き文字が読みにくいし、絵もゴチャゴチャして読む気が起きない。歳のせいもあるのだろう。



岸香里(きし・かおり)
広島県生まれ。誕生日は11月18日
高校卒業後、岡山県の旭川荘厚生専門学院第一看護科入学してナースを目指す。
在学中に「ちゃお」が小学館のマンガ大賞の佳作に入賞し、少女マンガデビュー。
マンガ家業をやりつつ老人病棟、精神科、整形外科、産婦人科、内科などでナースもつづけたが、5年でリタイヤ。
その後の実体験マンガ「天使のたまご」がきっかけで、マンガ&エッセイ作家になる。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする