hiyamizu's blog

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ジョン・ル・カレ『スパイはいまも謀略の地に』を読む

2021年05月23日 | 読書2

 

ジョン・ル・カレ著、加賀山卓朗訳『スパイはいまも謀略の地に』(2020年7月25日早川書房発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

イギリス秘密情報部(SIS)のベテラン情報部員ナットは、ロシア関連の作戦遂行で成果をあげてきたが、引退の時期が迫っていた。折しもイギリス国内はEU離脱で混乱し、ロシア情報部の脅威も増していた。彼は対ロシア活動を行なう部署の再建を打診され、やむなく承諾する。そこは、スパイの吹きだまりのようなところだった。 ナットは、新興財閥(オリガルヒ)の怪しい資金の流れを探る作戦を進めるかたわら、趣味のバドミントンで、一人の若者と親しくなっていく。 ほどなく、あるロシア人亡命者から緊急の連絡が入った。その人物の情報によると、ロシアの大物スパイがイギリスで活動を始めるようだ。やがて情報部は大がかりな作戦を決行する。そして、ナットは重大な決断を下すことに……。
ブレグジットに揺れるイギリスを舞台に、練達のスパイの信念と誇りを描く傑作。

 

ル・カレが88歳で書いたの最後の作品。原題は、”AGENT RUNNING IN THE FIELD”

 

イギリス秘密情報部(SIS)の引退時期が迫るナットは、エストニアから帰還後、吹き溜まりのような<ヘイヴン>へ異動となる。感情的ならが優秀な新人のフォローレンスが手掛かりを作った新興財閥(オリガルヒ)の資金ルートを探る作戦にやる気を見せ始めた。一方、若いときからの趣味のバドミントンではクラブのチャンピオンだったが、純粋な若者エドが挑戦してきて、好敵手となり、親しくなる。
ロシア人亡命者<ピッチフォーク>からの緊急連絡でロシアの大物スパイがイギリスで活動を始めるという情報が入る。

 

< >は暗号名

イギリス秘密情報部(SIS)(オフィス)

ナット: 主人公。ロンドン総局の吹き溜まりのような「ヘイヴン(安息所)の支局長

ジャイルス・ワックフォード:前「ヘイヴン」の支局長

フォローレンス:見習い2年目で「ヘイヴン」の新人。才能あるが落ち着きが必要。<ローズバッド作戦>立案。

「ヘイヴン」のメンバー:デニーズ、リトル・イリア

セルゲイ・クズネツォフ:暗号名<ピッチフォーク>、「ヘイヴン」の運用要員。

ドム(ドミニク)・トレンチ:ロンドン総局長。再婚相手は保守党の実力者レイチェル。

ブリン・ジョーダン:ロシア課課長

ガイ・ブランメル:ロシア対策支援課課長

パーシー・プライス:監視課課長

マリオン:保安局幹部

アネッテ(ワレンチナ):モスクワ・センター幹部。セルゲイにアクセス。

フェリックス・イワノフ:ロシアの休眠工作員

アルカジ―:SISのかっての運用要員。暗号名<ウッドベッカー>
<オルソン>:新興財閥(オリガルヒ)のウクライナ人、愛人は<アストラ>
エド(エドワード)・スタンリー・シャノン:ナットのバドミントン仲間。190㎝の長身。

プル―(プルーデンス):ナットの妻。無料奉仕の法律相談弁護士。娘はステフ(ステファニー)。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

実際に英国情報部のスパイだったル・カレの小説は、リアル感一杯。その分、裏切り、だまし合いなど複雑怪奇な人間関係の糸がからまっていて、ややこしい。会話も、裏の裏の読み合いで、面白いのだが、読むのにくたびれる。


スパイ物だが、撃ち合い、取っ組み合いなど派手な立ち回りシーンがなくものたりない。

複雑な人間関係で面白いのだが、登場人物が多すぎて、しばらく時間を置いてから再び読みだすと、年寄の記憶力では、話について行くのが難しくなる。またく、裏を読み合う陰謀ばかりで、くだびれる。

 

 

ジョン・ル・カレ John le Carre (1931年10月~2020年12月)

イギリスのドーセット州生まれ。オックスフォード大学卒業後、イートン校で教鞭をとる。東西冷戦期にイギリスの諜報機関MI5に入ったが、MI6に転属し、旧西ドイツのボンにイギリス大使館の二等書記官として赴任、その後ハンブルクの総領事館に勤務した。

1961年に『死者にかかってきた電話』で小説家としてデビュー

1963年、第三作の『寒い国から帰ってきたスパイ』でアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞と英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞受賞
スマイリー三部作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1974年)、『スクールボーイ閣下』(1977年、CWA賞ゴールド・ダガー賞受賞)、『スマイリーと仲間たち』(1979年)が人気。
スパイたちの遺産』、最後の作品は本書の『スパイはいまも謀略の地に

 


加賀山卓朗(かがやま・たくろう)
1962年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家

訳書、ル・カレ『地下鉄の鳩』、シズマン(共訳)『ル・カレ伝』

 

 

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