hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

カズオ・イシグロ『クララとお日さま』を読む

2021年05月21日 | 読書2

 

カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳『クララとお日さま』(2021年3月10日早川書房発行)を読んだ。

 

ノーベル文学受賞第一作で、8作目の長編小説。

表紙の裏にはこうある。

カズオ・イシグロ最新長編

人工知能を搭載したロボットのクララは、
病弱な少女ジョジーと出会い、
やがて二人は友情を育んでゆく。
生きることの意味を問う感動作。
愛とは、知性とは、家族とは? 

 

原題:“KLARA AND THE SUN”

 

語り手のクララはAF(Artificial Friend、人口親友)。AFは人口頭脳搭載のロボットで独自の個性を持つ。このクララと病弱な少女ジョジーの友情の物語。

 

クララ:最新版B2型ではなくB2型のAF。女子。外を見ることが好きで、お日さまを崇拝している。観察と学習への意欲が大。

AFも売る店:店長、クララの友だちの女子AFローザ、男子AFレックス。

ジョジー:病身の少女。一目見た時からクララを選んだ。

リック:ジョジーの幼馴染。(遺伝子)向上措置を受けていない。

アーサー・クリシー:ジョジーの母。ジョジーの姉・サリーを亡くした。クララをなんで選んだか?

ヘレン:リックの母。クリシーの友人。

バンス:ヘレンの昔の恋人

ヘンリー・カパルディ:ジョージ―の肖像画を描く。

ポール:クリシーの元夫でジョジーの父親。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

久方ぶりの五つ星。
「今年の五つ星は」と検索してみると、新川帆立著『元彼の遺言状』伊岡瞬著『いつか、虹の向こうへ』全卓樹著『銀河の片隅で科学夜話』東野圭吾著『むかし僕が死んだ家』向田邦子著『父の詫び状』アガサ・クリスティー著『春にして君を離れ』、『東野圭吾公式ガイド』。

2月1日以外は、3月3件と4月3件と集中している。気分が盛り上がっている時期には良く思える、つまり気分しだいの評価だということを再確認した。

 

と言っても、この本は面白くて、ちょっとだけ考えさせる。最初、「子どもの話かよ」、「流行のAIロボットの話?
」って思って読むのためらったが、好きなカズオ・イシグロだし、ノーベル賞受賞記念だし、一応読んでみるかと、読み始めたら、止まらなくなった。

 

描写が映像的だ。ロボットの目から見た外界がブロックに分割され、統一される課程、店のショーウインドウからの景色、野原の中の納屋内光景など、映画脚本も書いたことのあるカズオ・イシグロの筆には引き込まれる。

 

語り手がロボットというのがいい。外界から学びながら、成長していく。個性、自立性もあって、親友と決まったジョジーの、必ずしも言う通りではなく、彼女のためになる行動を取ろうとする所もあって、機械ロボットではないが、人間でもないという微妙なところでバランスよく描かれている。

読んでいくうちにロボットであるクララに引き込まれ、同一視している自分に気がつく。

 

クララが再会した店長に語るところもなかなか意味深だ。(p431)

「カパルディさんは、継続(継承?)できないような特別なものはジョジーの中にないと考えていました。探しに探したが、そういうものは見つからなかった――そう母親に言いました。でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。……」

 

カズオ・イシグロの略歴と既読本リスト

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする