hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

野川で花見

2018年03月30日 | 行楽

 

3月29日、夕方、野川で花見した。

京王線布田駅北 1kmの大橋から野川の川べりの桜を眺める。

川下は両岸に桜が枝を伸ばし豪華。

川上は片側だが、これもよし。

川上を進み、榎橋へ。ここも川幅が狭くなった分だけ見事。



花に近づいてみると、


間近で見ると、花芽も発見できるが、ほど満開。
風が吹けは桜吹雪になるだろう。

明日はライトアップと書いてあった。

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辻村深月『水底フェスタ』を読む

2018年03月29日 | 読書2

 

辻村深月著『水底フェスタ』(文春文庫 つ18-2、2014年8月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

湖畔の村に彼女が帰ってきた。東京に出て芸能界で成功した由貴美。ロックフェスの夜に彼女と出会った高校生・広海はその謎めいた魅力に囚われ、恋に落ちた。だが、ある夜、彼女は言う、自分はこの村に復讐するために帰ってきたのだと。村の秘密と美しい女の嘘が引き起こす悲劇。あまりに脆く切ない、恋の物語。 解説・千街晶之

 

舞台は六ヶ岳の南麓に位置する睦ッ代(むつしろ)村。全編ほぼここで展開される地域限定小説だ。

睦ッ代村合併もせずにやってこれたのは、東京の日馬(くさま)開発と代々の村長が組んで誘致した野外ステージでの音楽イベント「ムツシロ・ロック・フェスティバル」のおかげだ。

 

主人公の湧谷広海は、父・飛雄が現在の村長で、専業主婦の母・美津子と暮らす高校2年生。囲むのは、親同士が決めた勝手な結婚の約束を信じ付きまとう織場門音、優秀で医者になったのに村に戻ってきた10歳上の従兄の須和広光。問題あって東京から転校してきた日馬開発の次男・日馬達哉。

 

広海はフェスで、8歳年上の村出身の女優・モデルの織場由貴美(ゆきみ)を見かけた。頭は良いが世界が狭い田舎の少年・広海は、最近活躍の場がなくなってきている年上の美人由貴美の意味深なセリフに誘惑され恋してしまう。親しくなった由貴美は「村を売る、復讐のために帰ってきた」と、村のおどろおどろしい過去を語る。広海の尊敬する父・飛雄もかかわっているという。

やがて、信じがたい事実と殺人が静かな村に次々と起こる。

 

初出:「別冊文藝春秋」2010年1月号~2011年5月号、単行本2011年8月

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

世間の狭い高2の広海の目から見た世界が語られ、舞台が山奥の閉鎖的な山村に限られているので、話がミニマム過ぎる。

 

山村の息詰まる人間関係、しがらみ、呪縛、そして狂気が迫ってくるが、シティボーイ?の私には息苦しい。

さらに、最後の方は、話が大きく動き、バタバタで、乗っていけない。

 

辻村深月(つじむら・みづき)の略歴と既読本リスト

 

 

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不信心者の疑問

2018年03月27日 | 個人的記録

 

       

単純理工系の私は験(げん)だの、縁起だのをまったく気にしない。競馬はデータしか考慮しないし、宝くじの売場も、番号にもこだわらない。勝負事や重要な場面で験担ぎの決まった動作をすることもない。そんな事をするくらいなら深呼吸でもしたほうが良いと思っている。

 

神社、仏閣の落ち着いた雰囲気が好きで良く訪れるし、ときどきは墓参りや仏壇を拝んだりする。しかし、手をあわせても家族の無事を報告し感謝するくらいで特に願ったりすることもない。考えてみればそれほど必死になったことがないということなのだろう。

 

願掛けで思い出すことがある。おふくろが私の受験のときに大好きなお茶を絶っていたと亡くなった後に、女房から聞いた。女房も息子の受験のときに、寒がりなのに長袖の下着を着なかったと後から聞いた。当人の私や息子はそんなこと思いもかけずのんびりしていた。

 

何故そんな無駄なことをするのだろうか? 効果を期待するというよりも、愛する者の望みが叶うために、何か一緒に苦労したいという気持ちを押さえられないのだろう。そしてその気持ちを自分の中だけに抑えこんでいるのだ。

まったく、母親というやつは!

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井之頭公園は満開

2018年03月25日 | 散歩

古めかしい門のあるお屋敷の桜も満開だ。

池の水抜きをして、底が見えていたが、花見時を迎えて水が入っている。


3月25日は日曜日だが、なにしろ朝9時前。ベンチも空いている。

桜の老木も頑張っている。

池の反対側の桜の連なりが見事だ。


ボートハウスにも白鳥のボートが戻っている。
七井橋にもまだ人が少ない。

橋から東側の池を見るおなじみの景色。


9時半からだというのに、もう並んでいたボートの料金は、高い?安い?


かいぼりをして水がきれいになったが、でも透き通ってはいない。
覗き込んでも、まだ戻していないのだろう、魚は見えない。見えるのは二人だけ。

青空に桜。

よく見ると、

さらに近づくと、

満開だ。

今夜に備えて、ゴミ分別対策は万全。

中田清直、サトウハチロウの「ちいさい秋みつけた」の碑

不動尊にご挨拶して、

池の西側から登り始める。


名古屋のお菓子のような「一人静」の説明板があったが、この花かな?
 
御殿山は確か徳川の鷹狩の休憩所があったところだが、3,4千年まえの遺跡があったらしい。
 
 
この碑文はまったく読めない。

まだ人も少ない吉祥寺の街を抜けて、早めの帰宅。6.5千歩。



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むかしむかし、笑ったこと、笑われたこと

2018年03月24日 | 昔の話2

 

 

親父は明治生まれの九州男児で、冗談など言うことはなかったが、一つだけ覚えている。

一軒置いた隣で葬式があり、続いて隣でまた葬式があった。今月は臨時出費が痛いと嘆く母に、任せとけとばかりに親父が言った。

「こんどは俺が稼いでやる」

 

幼いころ母に手を引かれて買い物に行った。パン屋さんに入ると、奥から小母さんが真ん中に大きな染みがある前掛けで手を拭きながら出てきた。少しこごんで僕の顔をのぞき込みながらニコニコして言った。

「僕! まだおっぱい飲んでいるんでしょう」

憤然として僕は言った。

「ちがうわい! 触るだけだわい」

この話、よくは覚えていないのに、母から何回も聞かされているうちに、なんだか情景まで目に浮かぶようになってしまった。

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加藤休ミ『クレヨンで描いた おいしい魚図鑑』を読む

2018年03月24日 | 読書2

 

加藤休ミ著『クレヨンで描いた おいしい魚図鑑』(2018年1月25日晶文社発行)を読んだ。

 

編集後記にこうある。

魚は海から食卓までが一生なのです。さいごに花咲く場だからこそ、魚料理はすばらしく多彩なのかもしれません。いまは思います。この図鑑こそ、魚図鑑の完全系だと。

 

海や河を泳いでいる魚ではなく、マサバは照りのいい文化干しに、金目鯛が煮付けに、ビンナガマグロは、ツナ缶に・・・なった調理されたおいしい魚の図鑑です。

 

冒頭のさんまの塩焼き。皮の焦げ目、しわ、身からの浮き上がり。衝撃のクレヨン画。

 

金目鯛の煮付け、目玉のあたりのブヨブヨしたところ。脂ののったマサバ。マアジのゼイゴのギザギザ。プリプリなマダイの刺身。いかめし、ササバのしめ鯖、ツナ缶のビンナガマグロ、黒マグロのまぐろ納豆、魚卵三兄弟の寿司、ししゃもの一夜干しなど、美味しそうな魚、魚料理が並ぶ。さらに、おでんの魚の練り物、海老チャーハン、真蛸の干しだこが続き、カニが入ってない外形だけのカニパンまで登場する魚図鑑だ。

 

よだれがこぼれそうな美味しいリアルな絵がふつうのクレヨンとクレパスだけで描かれているというのに驚かされる。

なお、クレヨンは幼稚園児でも使える固い棒状の画材で、線より面を描く柔らかく粉的なパステルとの中間のものを(株)サクラクレパスが開発しクレパス(クレヨンパステル)と名付けた。線を描くのがクレヨンで、面が描け、重ね塗り可能なのがクレパス(一般名称はオイルパステル)。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

魚好きな人、ただし食べるのが、にはお勧めだ。この図鑑を眺めてから魚屋に行けば、何もかもが美味しそうに見えるだろう。

水族館で銀色に輝くイワシの群れを見ても、「うまそうだな」と思ってしまう私にはうれしい魚図鑑です。

 

クレヨンとクレバスでこんなリアルな絵が描けることに驚いた。また、両者の違いを明確に理解したのもこの本のおかげだ。

絵本作家インタビューで著者はこう語っている。

まずクレヨンで塗って、クレパス、つまりオイルパステルで二度塗りする描き方をしています。定着させるためには上からニスをべったり。このニスがいいんです。クレパスって混ざるんですよ。それがいい特徴で油絵みたいに描けるんですけれど、混ざってほしくない時には、ニスを塗ってから色を重ねて深みを出したり、・・・

 

 

加藤休ミ(かとう・やすみ)
1976年生まれ。北海道釧路市出身。クレヨンとクレパスを用いた独特の画法と迫力あるタッチで、食べ物のリアルでおいしそうな描写が得意。絵本、挿画、画文などで活動しながら、クレヨン画を追求する。

絵本に『ともだちやま』(ビリケン出版)、『きょうのごはん』(偕成社)、『りきしのほし』(イースト・プレス)、『おさかないちば』(講談社)、『かんなじじおどり』(BL出版)、『ぼーると ぼくと くも』(風濤社・らいおんbooks)など。

絵本の挿画『ながしまのまんげつ』(林家彦いち原作、小学館)、『いのちのたべもの』(中川ひろたか文、おむすび舎)など。

 

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東野圭吾『素敵な日本人 東野圭吾短編集』を読む

2018年03月22日 | 読書2

 

東野圭吾著『素敵な日本人 東野圭吾短編集』(2017年4月5日光文社発行)を読んだ。

 

約30ページの短編が9編。

 

1. 正月の決意
夫婦二人きりになった前島達之は書初めをし、康代は屠蘇を用意し、朝6時に地元の氏神様へ初詣に出かけた。賽銭箱の前で町長が倒れていた。下着姿で頭部を鈍器で強く殴られていたが、意識は戻ったが、記憶はないという。以下、白字。社務所の奥に潜んでいた教育長が発見され、・・・、本殿の鈴が・・・。

2. 十年目のバレンタインデー

バレンタインデーの夜に1年以上新作を出していない作家の峰岸は10年ぶりに津田知里子から呼び出されてフレンチレストランで会っていた。峰岸と付き合っていた知里子は大学のサークルの後輩で、突然別れを告げてきたのだった。

以下、白字。彼女は友人の藤村絵美が小説を書いていて、自殺したのではなく、殺されたのだと話し出す。知里子は、峰岸が書けなくなるのを待っていて、連絡したのだった。

3. 今夜は一人で雛祭り

3年前、三郎は妻加奈子をくも膜下出血で失った。一人娘の真穂は研修医の木田修介と結婚することになった。三郎は、木田家が地方の大病院を経営する資産家だと知る。顔合わせの席で、姑は修介も地元に帰って経営する病院で働き、真穂は専業主婦になるのよね、と告げる。三郎は、家に帰って自分の母が気の強い女性で、妻加奈子が苦労したことを思い出した。

心配する三郎に真穂は言う。「でも心配しないでいい。私にはお母さんの血が流れているから」「だから我慢強いっていうのか」「我慢?」真穂は首を傾げた後、くすくす笑った。「お父さん、何もわかってなかったんだね」

そう言って真穂は七段飾りの雛人形を指さした。

4.   君の瞳に乾杯

競馬場に出入りし、彼女いない歴8年の内村は、相手がモデルだという合コンに参加し、アニメ好きのモモカと意気投合する。何回目かのデートで告白すると、モモカは素顔を見れば幻滅するとカラーコンタクトを外す。

以下、白字。彼女は内村たちが長年探し求めていた女性だった。内村は警視庁捜査共助課で、指名手配者の特徴を記憶し街中から見つけ出すという見当たり捜査に従事していた。

5.   レンタルベビー

長期休暇中のエリーはレンタルの赤ちゃんロボットを借り、アキラとともに育児を楽しむことにした。育児は大変だったが、本当に楽しかった。エリーは今後も結婚も出産も迷い続けるつもりだ。

以下、白字。アキラは仮想ダディだったが、エリーは平均寿命のまだ半分の60歳なのだから。

6.   壊れた時計

男は、時刻が17時から19時の間に、ある家の白い彫像を盗むように依頼された。男は、ひょっこり帰ってきた家主を殺してしまい、壊れて止まった腕時計は余計な小細工に見えてしまうと外して盗み、時計屋で直して、男の腕に戻した。これが悪かった。

7.   サファイアの奇跡

美玖は近くの神社で猫を見つけた。パン、チーズかまぼこ、クッキーをあげたが見向きもしないで、マシュマロを喜んで食べた。美玖は彼にイナリと名前を付けピンクのベルトを着けて可愛がった。しかし、車にひかれて死んでしまった。

仁科は毛色が完全なブルーのペルシャ猫で雄のサファイアを増やそうとしたが、15匹失敗していた。サファイヤの17匹の子供が生まれると持ち主に死が訪れるとのジンクスを信じて、サファイアの去勢のために病院へ連れて行った。

以下、白字。そこで、ペット美容室で働く成人した美玖が入って来て、イナリと呼び、マシュマロをあげる。サファイアの脳は移植してイナリの脳だった。

8. クリスマスミステリ

脚本家の弥生の作品で人気が出た劇団員の黒須は、弥生に毒を飲ませるが、彼女は死なない。しかし、その後、・・・。

9. 水晶の数珠

父が会長の会社に勤める直樹は退職してハリウッドで夢を追っていた。姉から電話があり、父が末期がんでもう危ないから帰国してくれと要請された。夢実現の困難さに負け、オーディションを諦め日本に戻り父に会いに新幹線に乗った直樹に、父から電話がかかってくる。「馬鹿な夢をようやく諦めたか。オーディションなど受かるわけがない。日本での仕事は俺が用意してやる。」と言った内容で、直樹は怒って、そのまま成田に引き返し、米国へ戻った。しかし、オーディションに落ち、無為に毎日を過ごしていたところに父の訃報が届いた。

以下、白字。直樹だけへの遺言状には、水晶の数珠は呪文を唱えれば人生に一度だけ過去に戻れるとあった。父は万が一の場合は数珠に頼ろうと思い切った勝負に出て、実際には今までは使わなかったらしい。そして、帰国の翌日新幹線が事故で止まって直樹は米国へ帰れず、オーディションは受けられなかった。父は数珠の力で一日戻り、新幹線に乗車中の直樹を怒らすように電話したのだった。

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

東野さんの作品は気楽にすいすい読めるのだが、なにしろこの本は短編集だ、“すい”で読めてしまう。易きに流れる私のような人間には大変ありがたい。

読んだあとには何も残らず煙と消えるのもありがたい。

 

なぜタイトルが「素敵な日本人」なのかはピンと来なかった。なぜ?

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

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むかし、むかし、トイレでは

2018年03月20日 | 昔の話2

          

 

 昭和20年代、住んでいたのは東京の山の手だが、我家のトイレは和式で汲み取り式だった。ときどき汲取人が来て、裏庭にある汲取り口の蓋を開け、ひしゃくで掬い取っていった。やがて、石油のタンクローリーのようなバキュームカーが来て象の鼻のような太い管を汲み取り口に差し込み、ポンプで汲み取っていくようになった。この蓋のわきにミョウガが生えていたので、いまだにミョウガを食べる気になれない。

トイレのドアを開けると男性用トイレがある。その先の扉を開けると和式便器がある。臭くないように使用後は、板につまみのついた木製のカバーを便器にかぶせる。トイレには竹で編んだ籠があり、中に二十センチ位に切った新聞紙が積み重ねてあった。そのままでは硬いので、これをよく揉んでから拭くのであるが、揉みすぎると破れてしまう。今考えると、多分お尻は黒くなっていたのだろう。

やがて、トイレが水洗になった。といっても天井に近いところに水のタンクがあり、そこから垂れている鎖を引いて水を便器に流す水洗式和式トイレである。その頃だろうか、新聞紙がちり紙に代わった。

ちり紙とは、鼻をかんだり、お尻を拭いたりするための専用の紙で、薄くいかにも安そうな粗末な紙で、あらかじめ裁断して売られていた。柔らかくするためにただ単に薄くしたようで、密度が均一でなく、ところどころ向こう側が透けて見えるものもあった。やがて、薄く柔らかいものや、はじめからシワシワになっていて、より柔らかい化粧紙と呼ばれるものも登場した。

庶民の家でも多くのトイレが洋式になる頃、紙はロールのトイレットペーパーになりトイレからちり紙とハエが消えていった。箱からティッシュペーパーをパッと取ると、次のティッシュペーパーが顔を出し、次々、パッパッと紙を取り出すTV・CMを覚えているだろうか。急速にティッシュが普及し、家庭からちり紙が消えた。

1980年に温水洗浄便座が発売され、1982年には、「おしりだって洗ってほしい」のCMが話題となり普及が進んだ。現在普及率は六割に達するという。ただし、熱風で乾燥させるには時間がかかり、依然トイレットペーパーも利用されている。なお、私は海外滞在用に電池で動く携帯型のトラベル・ウォシュレットを購入したが、いちいち面倒でほとんど使っていない。

さらに余談を一つ。

大正天皇の別荘を見学したときに、畳の部屋の真ん中にポツンと木製の椅子があった。お尻のところに穴が開いていて、天皇陛下のトイレだった。椅子の下に箱があり、毎日使用後に医者が成果物を調べて健康診断すると聞いた。さすが天皇陛下。

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湊かなえ『贖罪』を読む

2018年03月16日 | 読書2

 

湊かなえ著『贖罪』(双葉文庫み21-03、2012年6月6日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った──あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は !?

<特別収録> 黒沢清監督インタビュー。

 

「フランス人形」

田舎育ちの小学4年生4人、紗英、真紀、晶子、由佳と、東京からの転校生エミリは、各家の玄関の隣の応接間のガラスケースに入ったフランス人形巡りをする。そして、校庭でバレーをして遊んでいるところへ、「プールの更衣室の換気扇の点検に来たんだけど、脚立を忘れたので手伝って欲しい」と作業着を着た見知らぬ男が言う。エミリを連れて行った男は帰って来ず、6時のメロディーが流れ、4人は更衣室に行った。そこにはエミリが倒れていた。警察に事情を聞かれた四人は、犯人の顔を覚えてないという。

 

エミリ:小学4年生で、絞殺された美少女。手足が長くすらっとしている。バービー人形と同じ服を着ていたり、家が豊かだったり、4人にとって「都会のお嬢様」。

 

紗英:事件の時、現場で一人エミリの死体の番をしていた。小柄でおとなしい。事件後長年に渡り「なると殺される」という不安、ストレスから結婚するまで初潮がなかった。東京の女子大学を卒業、就職して、見合いする。「ヒト科のメスとして欠陥がある」と言ったにもかかわらず、孝博は結婚する。

 

孝博:紗英の結婚相手。エリート。紗英のことを子供の頃から知っていた。以下、*1

 

 

「PTA臨時総会」

真紀:事件の時、先生を呼びに行くが、校舎に入れず、逃げ出してしまう。背が高く、頼られるお姉さん的存在。成人後、小学校の教師になり、校内にナイフを持って侵入した暴漢に飛びつき、プールに落とし、上がろうとする暴漢の顔面を蹴り上げた。褒められて、やがて「いい気になるな」などと非難もされた。

事件から3年後、エミリの両親は東京に戻ることになり、4人はエミリ母親・麻子から呼ばれて、家に行った。そこで、麻子から、

「わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。そのどちらもできなかった場合、わたしはあんたたちに復讐するわ。・・・」

と言われてトラウマになる。

真紀は犯人を思い出せないので、償いとして立派な人間になろうとした。

 

 

「くまの兄妹」

晶子:事件時、足が早いからとエミリの母に知らせに行った。女の子としてはがっしり体形でスポーツも得意だが、おとなしい。衝撃を受けたエミリの母に突き飛ばされ、顔面にケガをする。以後15年経っても事件を思い出したりすると傷口がちりちりして頭が痛くなる。結局、引きこもりになってしまう。

 

幸司:晶子の兄。くまのような風貌だが、晶子に対しても優しい。地元の大学卒業後、町役場に就職。相談に来たシングルマザーの春花と結婚。春花の連れ子である若葉も可愛がっていたが、実は・・・。以下、*2

 

「とつきとおか」

由佳:事件時、交番に知らせに行き、警官に優しくしてもらったことから警官を好むようになる。喘息の姉だけが親から大切にされていることなどから非行に走る。警官の義兄の子供を産む。以下、*3。

 

 

「償い」

麻子:エミリの母。華やかな生活、付き合いをしていた東京から移転してきて、地元の母親たちからも、社宅の女性たちからも阻害されて孤独だった。事件後は精神を病み、安定剤を飲まないと生活できないほどになってしまった。事件後も、解決するまで引越はしないつもりで町にとどまり続けていた。エミリを殺害した犯人が捕まらないのは、目撃者である4人がその顔を思い出せないせいだと思いこみ、事件から3年後に町を去ることになった際、彼女達に対し腹立ち紛れに脅迫まがいの言葉を投げつけトラウマを植えつける。*4。

 

秋恵:麻子の大学の同級生。麻子と違い地味で真面目な学生だった。以下、*5。

 

南条弘章:麻子の大学の先輩。教師だったが飲酒運転で懲戒免職。エミリ殺害事件の15年後は、フリースクールを主催。以下、*6。

 

 

2012年1月~2月、WOWOWでドラマ化して放送。この作品の脚本・監督の黒澤清との「文庫版特別インタビュー」が巻末に16ページに渡り添付されている。

 

本作品は2009年6月東京創元社より単行本刊行。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

筋運びに若干強引なところはあるが、ともかく脅された4人の子供が4人共、殺人を犯してしまうという滅茶苦茶な話をしぶしぶ納得させて読ませてしまう。

最後の最後に明らかになるとんでもない事実は、ここまではなくてもよいかなと思う。このあたりが、「イヤミス」=いやな気持になるミステリー、と呼ばれる所以かなと思ったりする。

 

 

 

湊かなえ(みなと・かなえ)
1973年広島県生まれ。

2005年、BS‐i新人脚本賞に佳作入選し、07年には第35回創作ラジオドラマ大賞を受賞する。

2007年、短編「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。

2009年、短編「聖職者」を第一話とした連作長編『告白』でに本屋大賞を受賞。

2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門受賞。

2016年『ユートピア』で山本周五郎賞受賞。

他の著書に『少女』本書『贖罪』『Nのために』『夜行観覧車』『往復書簡』『花の鎖』『境遇』『サファイア』『白ゆき姫殺人事件』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』。

エッセイ集『山猫珈琲』など。

 

 

 

 

以下、完全ネタバレ(で白字)。

*1:彼はフランス人形フェチで、生きた人形の紗英を求めたのだった。・・・孝博は死んでいた。

*2:晶子は若葉の上のくまを殺した。

*3:由佳は思わず階段にいた義兄を突き飛ばして、殺してしまった。

*4:麻子は南条弘章の子供を妊娠していたが、子供のできない足立に請われて結婚し、エミリを生む。

*5:秋恵は南条弘章と相思相愛だったが、麻子に弘章を奪われて自殺する。

*6:秋恵の自殺の報を受けて、駆けつける途中、飲酒運転でつかまり、教師を懲戒免職となる。麻子に恨みを持ち、彼女の娘のエミリを殺すが、自分の娘でもあった。

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三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』を読む

2018年03月14日 | 読書2

 

三浦しをん著『あの家に暮らす四人の女』(2015年7月10日中央公論新社発行)を読んだ。

 

中央公論社の宣伝は以下。

謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。やがて重なりあう生者と死者の声――古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』

 

主要な登場人物は、“タニジュン”の名作『細雪』の鶴子、幸子、雪子、妙子と名前がかぶる鶴代、佐知、雪乃、多恵美の4人。(けして「ざんねんな女たち」ではないと思うが)

牧田佐知は自宅でささやかな刺繍教室を開く刺繍作家。37歳独身。世間知らずの苦労性だが、刺繍には誇りをもっている。

「結婚しても、家事の合間に刺繍するのは全然かまわないよ」と言った男もいた。その言葉、そっくり返す。「結婚しても、家事の合間に会社に行くのは全然かまわないよ」。


牧田鶴代は佐知の母。自分で稼いだこともない箱入り娘のまま浮世知らずの70歳近く。

 

谷山雪乃は保険会社で働く37歳独身。佐知と5年ほど前に偶然出会った友達。美人だが特徴のなく印象に残らない。仕事のできる女として会社で都合よく重用される。ヨガをやっていて、スリムな体形。男の影もないが、部屋はフェミニン。

 

上野多恵美(たえみ)は雪乃の会社の後輩で、佐知の刺繍教室の生徒。男性に可愛がられる27歳。部屋は雑然。本庄宗一という元カレがストーカーになり、多恵美は雪乃とともに、鶴代と佐知の家に転がり込んだ。四人で共同生活するようになって一年となる。


四人が暮らす150坪の古い洋館は、東京杉並区の善福寺川が大きく蛇行するあたりにあり、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩20分。

 

山田一郎は、牧田家の表門を入ってすぐのところにある小屋に住んでいる80歳の老人。恩を受けた牧田家の鶴代と佐知をお守りせねばと使命感に燃えている。

やがて、雨漏り事件から箱の中のミイラを見つけて大騒ぎ。カラスの善福丸が牧田家と鶴代の過去を語る。壁紙のリフォームで佐知が一目ぼれの梶が登場。ストーカーや、泥棒、佐知の父親・牧田幸夫の幽霊などが登場する。

  

初出:「婦人公論」2013年11月22日号~2015年4月14日号

  

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

前半何事もなく静かに進み、女性同士の細かな心理戦でゴチャゴチャした話かと思ったら、いろいろ事件が起こり、それなりに楽しく読めた。

佐知の気持ちは良くかけていて明快にわかり、雪乃についてもはっきり読み取れる。鶴代と多美恵については、外側からその気持ちが推測できる。これらの描き方、筆力はさすが三浦さんだ。ただ、何もカラスや幽霊に語らせなくてもよいのにとは思った。

 

三浦しをんの略歴と既読本リスト

 

 

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柴田元幸翻訳叢書『アメリカン・マスターピース 古典編』を読む

2018年03月12日 | 読書2

 

ナサニエル・ホーソーン他著、柴田元幸訳『アメリカン・マスターピース 古典編』(2013年10月19日)を読んだ。

 

柴田元幸がアメリカ古典小説から選りすぐったアンソロジー。ホーソーン、メルヴィル、O・ヘンリー、ポー、ヘンリー・ジェイムズの短篇選集。

 

ホーソーン「ウェイクフィールド」Nathaniel Hawthorne “Wakefield (1835)”

この夫婦はロンドンに住んでいた。夫は旅行に出ると偽って、自宅の隣の通りに間借りし、妻にも友人にも知られることなく、またこうした自己追放の理由などこれっぽちもなしに、二十年以上の年月をそこで過ごしたのである。・・・妻ももうずっと前に人生の秋の寡婦暮らしを受け容れていたところへ、ある夕暮れどき、あたかも一日出かけていただけという風情で、男は静かに自宅玄関の敷居をまたぎ、終生愛情深い夫となった。

 

ポー「モルグ街の殺人」 Edgar Allan Poe “The Murders in Rue Morgue (1841)”

「当たり前だのクラッカー」だが、子供の頃読んだ内容と一緒だった。。しかし、文章は英語なら当然、翻訳文でも堅苦しい。遥か昔に読んだのは子供向けの文だったのだろう。内容も時代掛かっていて、大仰。

 

メルヴィル「書写人バートルビー」 Hermann Melville “Bartleby, the Scrivener: A Story of Wall-Street (1853)”

ウォール街の事務所に勤めるターキーは、午前中は礼儀正しく有能に働くが、午後は怒りやすく乱暴になる。その他、ニッパーズも気の粗い変人だった。そこに募集に応じて加わったのがバートルビーだった。はじめのうちは正確で速い書写を行い、満足していた。そのうち、私が何か仕事を頼むと、「そうしない方が好ましいです(“I would prefer not to”)」と答えて、私を驚かせた。以後、何を言っても冷静に「そうしない方が好ましいです」を繰り返すようになった。そして、最後には・・・。

(コピー機が発明されるまでは手で書き写すことが事務所の主な仕事になっていたのだろう。)

 

エミリー・ディキンソン「詩」 Emily Dickinson “Poems (1858~1864)”

6編

 

マーク・トウェイン「ジム・スマイリーと彼の跳び蛙」 Mark Twain “Jim Smiley and His Jumping Frog”

 

ヘンリー・ジェームズ「本物」 Henry James “The Real Thing”

 

O・ヘンリー「賢者の贈り物」 O. Henry “The Gift of the Magi”

おなじみのデラとジム(ジェームズ・ディリンガム・ヤング)の贈り物交換の話。これも文は固く、なじめない。

 

ジャック・ロンドン「火を熾す(1908)」 Jack London “To Build a Fire”

火を熾す」参照

 

編訳者あとがき

各著者の紹介。エミリー・ディキンソンは女性を一人入れるために詩であるが選んだという。

本書に収められた作家たちのうちで、歴史上おそらく一番読者がおおいのはこのO・ヘンリーではないかと思う。そして文学史上の評価がおそらくもっとも低いのもこの人である。この人に関する当編訳者の思いは複雑である。

・・・こういう出来合いのノスタルジアこそ諸悪の根源だという声もあることは承知しているのだが、

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

子供の頃、おそらくは子供向けの本で読んだ作品の原本を(翻訳で)あらためて読むのも面白いだろうと思って、この本を選んだ。

結果として、過去に読んだことがあるいくつかの作品を、ざっと読み返すには良いが、あらためて丁寧に読むと文章が時代がかっていて、大げさで古めかしく読みにくい。

 

大好きな柴田さんがあとがきで、「引き続き、準古典編(フォークナー、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、オコナ―・・・)、現代編(カーヴァー、ミルハウザー、ダイベック、ケリー・リンク・・・)を刊行したい」と言っているので楽しみだ。

 

 

柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年東京都生まれ。米文学者、東京大学名誉教授。
1992年『生半可な學者』で講談社エッセイ賞
2005年『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞
2010年トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞を受賞
文芸誌 MONKEYの責任編集を務める。

訳書
ポール・オースター(『ガラスの街』『幻影の書』『オラクル・ナイト

ミルハウザー(『ナイフ投げ師』『マーティン・ドレスラーの夢』『エドウィン・マルハウス あるアメリカ作家の生と死』)、
ダイベック(『シカゴ育ち』他)
レベッカ・ブラウン(『体の贈り物』『家庭の医学』他)

他、「火を熾す」。『犬物語

著書
ケンブリッジ・サーカス』『バレンタイン』『翻訳教室』『アメリカン・ナルシス』『それは私です』など。

対談集
高橋源一郎と対談集『小説の読み方、書き方、訳し方』『代表質問

 

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ビストル アルブルでディナー

2018年03月10日 | 食べ物

 

目黒通りの環七との交差点=柿ノ木坂陸橋を北に10mほど行ったBistro Arbre ビストル アルブルで、珍しくランチでなくディナーした。

多人数で好みもいろいろなので、コースでなく、一品一品を注文。

まずは生ハム。塩辛くなく、オリーブで合う。これは3人分。

サラダ。品が良いのだが、少な目。

カキ。大きくて美味。ソースは2種。

タコ(?)、ネギなどのマリネ(?)。

カモとジャガイモ。3人分。

鹿の肉。柔らかく美味。3人分。

スズキ。3人分。

私の頼んだデザートはヌガー。お菓子でないヌガーは初めて。

 

小さな店だが、楽しい会話とともの美味しい料理をいただいた。いいね!

 

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伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』を読む

2018年03月08日 | 読書2

 

伊坂幸太郎著『首折り男のための協奏曲』(新潮文庫い-69-11、2016年12月1日発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

被害者は一瞬で首を捻られ、殺された。殺し屋の名は、首折り男。テレビ番組の報道を見て、隣人の“彼”が犯人ではないか、と疑う老夫婦。いじめに遭う中学生は“彼”に助けられ、幹事が欠席した合コンの席では首折り殺人が話題に上る。一方で、泥棒・黒澤は恋路の調査に盗みの依頼と大忙し。二人の男を軸に物語は絡み、繋がり、やがて驚きへと至る! 伊坂幸太郎の神髄、ここにあり。

 

色々な人が首を折られて殺されるという事件が起こり、「隣のアパートに住む人物を犯人ではないかと疑う夫婦」、「よく人違いされる男」、「学校でいじめられている少年」というという7編の短編集。

 

「首折り男の周辺」
若林絵美がテレビのニュースで首折り事件での犯人像を見て、夫の順一に言う。

「ねえ、あなた、これ、隣のお兄さんじゃないかしら」

あまり首を突っ込まない方が良いと言う順一に対し、絵美の方は興味津々で、・・・。

 

髪が短く体格が良いが気が弱い小笠原稔は、「大藪!」と呼びかけられ、間違いとわかっても、結局代役を頼まれる。バーで会った瓜顔の男は恰幅の良い初老の男の写真を見せて、予定通りの実行を確認して去る。

 

中学2年の中島翔は同級生の山崎久嗣にいじめられていて、彼の先輩から金を持ってくるように脅されていた。そこへ、大男が応援するから闘えと現れる。ところが、現場に来たのはよく似た別の大男だった。

 

この3人の視点で話が進み、やがて、それぞれの人物の話が少しずつ絡み合っていって最後に・・・

 

「濡れ衣の話」

3年前に息子を車で撥ねた女の住所を丸岡直樹は知っていた。平然と暮らしている女を彼は刺殺した。その彼が二人組に襲われようとするとき、刑事を名乗る男が現れて彼を救う。男は刃物の処理とアリバイを考えておくことを忠告する。そして男は女性の首を折った。15年前、小学4年のとき男はキャッチボールの相手をしてくれると言った近所の大人を待っていたが、来なかった。

以下、ネタバレのため白字。その大人は丸岡で、この殺人のために約束を守れなかったのだ。そこで、男は、死体を引き受けて、丸岡が約束を果たせるようにすると提案する。

 

「僕の舟」

末期がんで意識のない夫・順一のベッドの脇で看護する若林絵美に、調査を依頼された黒澤は言った。「・・・(当時勤めていた菓子メーカーで、絵美は)お茶を入れながらよく口ずさんでいたらしいな。水兵リーベ僕の舟」。その会社は倒産したが、二代目社長は絵美を覚えていて、好きだったと言った。

また、絵美の初恋は、7歳の頃、遊園地で迷子になり、同じ迷子で、頼りになる少年がいたのだと言う。そして、黒澤に依頼にしたのは、20年前に銀座で4日だけ会った男の行方だった。当時、二人とも、スパイと翻訳家と身分を偽っていた。絵美は70歳を前にして、その、もう一つの人生を知りたくなったのだと言う。

「黒澤さん、馬鹿にしているんでしょ」若林絵美が笑う。「たった八時間の思い出を、五十年経っても大事にしているなんて」
いや。黒澤はすぐにかぶりを振った。「昔見た、陸上のカール・ルイスの百メートル走は、ほとんど十秒くらいだったが、今でもよく記憶している。思い出は別に、時間とは関係がない」

 

以下、ネタバレのため白字。結局、銀座の男は夫・順一だったし、60年前に壁に書かれていた相合傘の名は、「えみ」と「じゅんいち」だった。絵美は言った。「嬉しいような、がっかりしたような、何ともいえない気分ね。わたしの大事な思い出が、夫に崩されたような」

 

「人間らしく」

釣り堀での黒澤の仲間の女性が、義理の弟に不倫の証拠を調べて欲しいと依頼する。結婚した妹は認知症の義父の介護を押し付けられ、夫は不倫し、あげく結局離婚を切り出された。

中学生が通う塾でのいじめの話と、作家の窪田の「飼っているクワガタに対して自分は天罰を与える神の立場だ」との話が続く。

 

「月曜日から逃げろ」

月曜日:釣り堀は空(す)いていたが、鯉の腹は空いていなかった。テレビプロダクションで羽振りの良い久喜山は、黒澤を裏の顔を知っていると脅しながら、ドキュメンタリー番組「空き巣テクニック」への出演を依頼して来た。同時に依頼してきたのは、久しぶりに帰った東京の久喜山の自宅に、覚えのない肖像画が飾ってあり、それが美術蒐集家のコレクションからの盗品なのだと言う。そこで、久喜山の出張中にその絵を盗んで、持ち主の所蔵部屋に返して欲しいと黒澤は依頼される。

 

久喜山は黒澤が空き巣に入ったときの監視カメラ映像を持っていて、警察に提出すると脅しながらの依頼だった。

火曜日:黒澤は、東京の美術コレクターの邸宅に忍び込む。あの肖像画を壁に戻すところをビデオカメラで録画した。久喜山に証拠として見せるためだ。ついでに、金庫を見つけて、監視カメラがないだろうなと警戒しながら、ダイヤルを回す。

 

水曜日:仙台駅西口の喫茶店で、「実はあの家、防犯カメラを設置してあったんですよ」「実はあの家、私の親しい老夫婦の家だったんですよ」久喜山は嬉しそうに黒澤に言う。

 

木曜日:黒澤が釣堀に行くと、以前、久喜山というテレビ屋がおまえのことをかぎまわっていたぞと教えてくれた中村がいた。黒澤は「あの男はやはり、食えないな」「俺が空き巣をやる場面を録画していた」と告げる。

 

そして、久喜山というヤツは、蕎麦屋に転職した元タレントの店主に、蕎麦打ちなどのドキュメンタリー制作と言いながら、店にエロ雑誌を置き忘れたかのように装って、店主がそれをめくる姿を盗み撮りして放送するような陰湿なヤツだと、中村が教える。
(蕎麦屋の息子が言っていたのは、このことか。)

金曜日:宅配業者に化けた黒澤は、マンションの久喜山宅の金庫から現金を盗んで、さらに元の金庫に戻しておく。防犯カメラを見つけて電源を切り、一連の行動を撮った録画データカードを引き抜く。パソコンとカードを接続して、編集ソフトで編集して、カードに上書きし、防犯カメラに戻す。

 

土曜日:仙台駅東口のホテルラウンジで、黒澤は仲間の大西若葉と会って、パソコンの編集ソフトを使って、映像を逆回転再生することを教わった。

黒澤は、大西若葉に計画と打ち明ける。それは、逆回転ソフトを使ったので、お金を盗んだんじゃない、金庫に入れただけだと主張する。そして、来週にでも、東京の美術コレクターの邸宅から盗んだ絵画を、久喜山の家にこっそり飾っておき、警察に調べられたら彼に頼まれてやったと言う。

日曜日:蕎麦屋で、黒澤は初対面の久喜山と会うと、番組で空き巣テクニックを見せてほしいという依頼だったため警戒する。久喜山が電話対応で店の外に出ている間、蕎麦湯を運んで来た小学生の息子が、久喜山が制作した蕎麦屋のドキュメンタリー番組のせいで、大迷惑を受けていると言う。

以下、ネタバレのため、白字。さらに、クイズを出す。

『月曜日にケーキを食べました。でも、火曜日にはケーキがまだあります、なぜでしょう』

・・・

火曜日は火曜日でも先週の火曜日だったからでした。

「なるほど」黒澤は答え、曜日だけを並べられても先に進んでいるのは、遡っているのか分からぬものだな、と思う。・・・カレンダーでいえば、一つ上の行に行けば、そこにも火曜日はある。なるほど、月曜日、火曜日、水曜日と六日ずつ遡っていくこともできる、と眺めた。

この話は、時間を逆転して書かれていたのだった。

 

 

「まあ、そこはほら、私、風来坊なところがあるから、家にはめったに帰らず」「普段は、若くて綺麗な女のところにか」「調べたんですか」久喜山は警戒心に満ちた苦々しい表情を浮かべる。「ウィキペディアに載っていた」。(251ページ)

 

「親密で何よりだ」「昵懇(じっこん)ロールです」「ロックンロールと掛け合わせた駄洒落だったんですが、面白くないですか」「悪くはない」

「テレビの制作会社で、撮影を生業とする男を、映像で攻めるわけですか」「そういう諺(ことわざ)があつても良さそうだな」「驕(おご)れるもの得意分野に隙(すき)あり、とか」「この言い方、流行らせたいですね」「予備校の壁に貼ってありそうだ」。

 

「相談役の話」

学生時代に同じクラスだったというだけの父親の会社に入った男と、文筆業の私はホテルのラウンジで会っていた。彼は山家(やんべ)清兵衛のことを聞いてきた。以下略。

「それ以降ね、僕の書く小説が面白くないんだ」「はあ」「書いても書いてもつまらない作品しか生まれてこないんだから、これはもう、何か恐ろしい、人知を超えた力によると思うんだ。悩ましいよ。悩ましいし、恐ろしい」

 

「合コンの話」

尾花は友人の井上が企画した3対3の合コンに参加した。ただし、井上は当日ドタキャン。

合コンの近くで俳優の佐久間覚が首を折られて殺された。

尾花:27歳。彼女が別の男とコンサートに。

臼田:体格がよく、爽やかな二枚目。唐突に変な言動をする。

佐藤:27歳だが老けている。おとなしくて、合コンは初めて。実はピアノ・・・

加藤:清楚な美人。ホステスで資金を稼ぎ、今は雑貨店をやっている。

木嶋:溌剌とした美人。美容師だが、演劇のオーデションの結果を待っている。

江川美鈴:尾花の大喧嘩して別れた元カノ。不倫で苦しんでいる。

 

「解説/福永信」

 

本作品は2014年1月新潮社より刊行。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

面白いのだが、話が分かりにっくい。「月曜日から逃げろ」などは話を逆の時間順で書いている。付箋をつけながらざっと読んで、さいどあらすじを書きながら再読してようやく訳が分かった。伊坂さん! 年寄りをからかわないでください。

 

 

伊坂幸太郎の履歴&既読本リスト


 

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ジャック・ロンドン『犬物語』を読む

2018年03月06日 | 読書2

 

ジャック・ロンドン著、柴田元幸訳『犬物語』(2017年10月28日スイッチ・パブリッシング発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

生か死か、勝つか負けるか、犬か人か――。
第1弾『火を熾す』から9年、満を持して贈る『犬物語』は極北の大地を舞台に犬を主人公にした物語集。 代表作「野生の呼び声」を含め、柴田元幸が精選・翻訳した珠玉の5篇。

 

この本に登場する犬は、身も心も狼に近く、人間と対等なパートナーであって、ペットとはかけ離れた犬である。

1900年代初頭では、まだ、極寒の極北の地を犬がそりをひいて郵便物を運んでいた。

 

 

「ブラウン・ウルフ」Brown Wolf

ウォルト・アーヴィンとマッジ夫妻が偶然見つけたのは、体格、毛皮、尾は巨大なシシリンオオカミと思われるが、茶色の模様はまぎれもない犬だった。夫妻はウルフと名付けてなつかせようとするが、何度も遠く北へ脱走し、付けた名札で家へ届けられた。それでもやがて、二人に親しみを見せるようになった。

そんなある日、その犬を仔犬から極めて優秀な犬ぞりのリーダーに育てたと主張するクロンダイクから来た男が現れた。両者が犬を我々のものだと主張して譲らない。男は犬に飼い主を選択させようと提案する。取り決めでは、男は無言でウルフの前から立ち去り、夫妻は身動きしないと決める。ウルフは平和で安逸な生活か、過酷な北極の大地か選択に苦悩し、両者の間をウロウロする。そして、彼が選んだのは・・・。

 

「バタール」Batard

バタールの父親はシシリンオオカミで、母親はずる賢いハスキー犬だった。仔犬のときから邪悪なブラック・ルクレールに叩かれ、殴られ、粗野で残忍に育てられた。成長したバタールは他の犬から魚を奪い、隠してある食べ物を盗み出し、橇犬仲間全員をねじ伏せ「地獄の申し子」と呼ばれた。バタールはいつかルクレールを殺してやろうとチャンスを伺っていたが、いつも失敗反撃され雪の上で意識を失う結果となっていた。ルクレールもバタールを売ろうとはせず、今度こそお前を降参させるといきまいていた。やがて、両者とも瀕死の重傷を負うことになって、・・・。

 

「あのスポット」That Spot

「俺」と信頼する相棒のスティーヴン・マッカイは、1897年のゴールドラッシュ時にクロンダイク川を目指した。途中、立派な見かけの犬、スポットを手に入れた。しかし、スポットは大食いでまったく働こうとしない犬だった。しかし、売り払っても捨てても必ず俺たちのもとに戻ってきてしまった。殺そうとしたが、二人とも失敗し、スポットのおかげで身も心もボロボロになった。やがてスティーブンとスポットを残してこっそり俺は姿を消して、オークランドですっかり元の体調を取り戻した。しかし、ある日、我が家の門柱に・・・。俺はスティーブンがこんなに卑劣な男だとは思わなかった。

 

「野生の呼び声」The call of Wild

セントバーナードの父とスコッチシェパードの母を持つバックは、陽ざしあふれる判事の家で満ち足りた暮らしをしていた。厳寒のクロンダイクで金鉱が発見され、犬ぞり犬にふさわしいと思われたバックは金に困った使用人にこっそり売り飛ばされ北の地に運ばれた。誇り高いバックは棍棒を持つ男に何度も飛びかかったが叩き伏せられ、棍棒を持った人間は掟を定める者と思い知った。しかし、必ずしも追従する必要はないとも学んだ。

犬ぞりを引く立場に身を落とすが、郵便配達人、仲間の犬たちなどから多くを学び、リーダー犬としてたくましく成長していく。一方で執拗にリーダーの地位を狙うスピッツとの闘いが続く。厳しい自然の中で、経験によって学んだのみならず、長く眠っていた本能、野生の血が目覚めもして、・・・。

 

「火を熾す(1902年版)」To Build a Fire

極寒の中、水につかってしまった男が、凍傷を防ぐため、火を熾そうと苦労する。しかし、頭上の木から落ちた雪でやっと熾した火が消えてしまい死に直面する。

火を熾す{1908年版}」には犬が出てくるが、この「火を熾す{1902年版}」では犬が出てこないし、トム・ヴィンセントと男の名前が明示されている。(でも、この『犬物語』に入れてある)

 

 

初出、「ブラウン・ウルフ」:すばる2015年4月号、「野生の呼び声」:MONKEY 2014年第四号、「バタール」・「あのスポット」:訳し下し、「火を熾す{1902年版}」:Coyote2009年第34号

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

想像を絶する厳しい自然の中で、なんとか生き延びようとし、闘う犬たち、そして人間。

 

極限の状況が、簡潔で、客観的に、美しくさえ感じられるほど描写される。敗色濃厚の中で、なんとか活路を見出そうと最後の戦いを挑む絶望的生命力が鋭く光る。心地よい床暖房に寝ころびながら、思わず応援している自分に気が付く。

 

 

ジャック・ロンドン Jack London
1876年サンフランシスコの貧しい家に生まれる。1889年小学校卒業。工員、漁船の乗組員などを経験。
1897年カナダ北西部クロンダイクでの金鉱探しで越冬。
1903年「野性の呼び声」で流行作家に。その他「白い牙」など。
1916年 40歳で病気が悪化し自殺。

各地を放浪する中で、「一日千語」のノルマを課し、20年ほどの作家生活でジャーナリストとして記事を寄稿しながら、長編小説を20冊、200本もの短編小説を残した。


柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年東京都生まれ。米文学者、東京大学名誉教授。
1992年『生半可な學者』で講談社エッセイ賞
2005年『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞
2010年トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞を受賞
文芸誌 MONKEYの責任編集を務める。

訳書
ポール・オースター(『ガラスの街』『幻影の書』『オラクル・ナイト

ミルハウザー(『ナイフ投げ師』『マーティン・ドレスラーの夢』『エドウィン・マルハウス あるアメリカ作家の生と死』)、
ダイベック(『シカゴ育ち』他)、
レベッカ・ブラウン(『体の贈り物』『家庭の医学』他)

他、火を熾す
著書
ケンブリッジ・サーカス』『バレンタイン』『翻訳教室』『アメリカン・ナルシス』『それは私です』など。
対談集
高橋源一郎と対談集『小説の読み方、書き方、訳し方』『代表質問

 

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2月の花

2018年03月04日 | リタイヤ生活

1月末にプレゼントされた花

普段の花と比べると格段に豪華! なかなか自分では買えない。


これは、いつも毎月配達される花で、2月上旬の花。

これもなかなかのもの。


2月下旬の花は、届いたばかりだと、ちょっと寂しげ。

でも、咲いたところを上から見ると、

赤いチューリップの中心がちょっと不気味。

ポピーのつぼみに毛が生えていて気味悪いので、

咲く前に、手でむいてあげたら、黄色みたいに開かず、チリチリのままで終わってしまった。

花はじっと見守ること、余計な手出しはいけません。















 

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