hiyamizu's blog

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井戸川射子『共に明るい』を読む

2024年05月13日 | 読書2

 

井戸川射子著『共に明るい』(2023年11月7日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOK倶楽部の内容紹介

\『この世の喜びよ』で芥川賞受賞、待望の受賞後第一作!/

その瞬間、語られないものたちがあふれ出す。

早朝のバス、公園の端の野鳥園、つきあってまもない恋人の家、島への修学旅行、バイト先の工場の作業部屋――。
誰もが抱える痛みや不満、不安、葛藤。
目に見えない心の内に触れたとき、「他人」という存在が、つながりたい「他者」に変容する。
待望の芥川賞受賞後第一作、心ふるわす傑作小説集。


「共に明るい」早朝のバス、女は過去を語り出す。

「野鳥園」産後の女性と少年が過ごす、仮初のひととき。

「素晴らしく幸福で豊かな」出会って一ヵ月、恋人と過ごす不安定な日常。

「風雨」台風で足止めをくらった修学旅行生たちの三日間。

「池の中の」電池の検品バイトでの会話、起こる揺れ。

 

5編の短編集だが、全部で132頁と薄い。

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

詩人としてデビューした著者だが、詩のような文章ではない。まちがいなく物を語っている小説の形なのだが、書き手の心は詩人のままだと思う。ついつい筋を追ってしまう私には面白くない、合わない小説だった。

 

少し前まで赤の他人だったけれど、言葉を交わし、輪郭が浮かび上がる。井戸川さんは「人が触れ合ったときに生まれる、輝く瞬間を描きたかった」と語っている。

「共に明るい」で、主語は「誰か」になっている。性別も人数も不詳のまま、「誰かは思った」とつづる。「映画や演劇では『誰か』という主語は難しいけれど、小説にはできる。小説だけにできることをしてみたい。自分にとって新しいことをしたいと思って書き始めています」。(好書好日より

結局、女性なのだが、なんでこんなことするの??

 

「野鳥園」では、初めて出会った2人の会話が続く。会話の内容から次第に、幼い子供がいる女性と少年が話しているとわかる。「風雨」では、生徒と教師の思いが混じり合い、いま読んでいるのは誰の視点なのか、わからなくなる。

 同時に、それでいいのだと思える。誰かがそこにいて、心を動かし、生きている。そのことがわかれば十分ではないか、その空気にただ身を委ねればいいのだ、と文章が伝えてくる。「誰が何を言っていてもいい。どっちのセリフでもいいなと思って書いています。だから、どっちでもいいやと思ってもらえるのがうれしいですね」(好書好日より

 

こんな小説、楽しくない!

 

井戸川射子(いどがわ・いこ)

1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。

2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行
2019 年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞。
2021年に小説集『ここはとても速い川』で第43回野間文芸新人賞受賞

2022年に『この世の喜びよ』で第168回芥川龍之介賞を受賞。

他の著作に、詩集『遠景』がある。

 

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