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ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

雪の大谷へ「雪原で飲む珈琲」

2025年08月22日 20時20分16秒 | Weblog

ミクリガ温泉は毎年剱の下山時に立ち寄り、ここでソフトクリームを食べるのが自分流の「〆」となっている。

たまに昼食を食べビールを一杯、ということもあるがそれは希である。

一度だけ下山時に泊まったこともあるが、硫黄の匂いがなかなか取れなかった。

 

何年かぶりに食堂へと入り昼食を食べることにした。

室堂ターミナルのレストランよりはメニューの数は少ないが、リーズナブルな点がありがたい。

自分は白エビコロッケ定食を注文した。

確か富山の名物である白エビの旬は夏であり、おそらくは冷凍物だろう。

木のぬくもりが感じられる食堂。

写真には写っていないが、南を向いている窓は大きく開放的である。

メインの白エビコロッケは一つだけで、唐揚げが一緒に付いてきた。

まぁターミナルのレストランでかん高い○国語の喧噪の中で食べるよりは遙かに落ち着く。

 

食後はお勧めのソフトクリームを食べに外へと出た。

ここでは真夏か秋にしか食べたことのないものだが、一面の銀世界の中で食べるのもいいものだ。

ちょっと逆行になってしまったが、白い雪と白いソフトクリーム。

さて、珈琲を飲みにちょっと足を伸ばそう。

どうせならあまり人のいない場所で、さらに剱が見えるポイントであれば申し分ない。

ちょうど良さそうなポイントを見つけ、防水シートを敷いた。

風もなく穏やかな昼時、そして雪原と剱岳。

たまらなく贅沢な珈琲タイムだ。

今回はバーナーでお湯を沸かすのではなく、サーモボトルにあらかじめ朝に沸かしたお湯を入れて持ってきた。

保温性抜群のサーモボトルであり、熱々のお湯を注ぐ。

風がないこともあり、珈琲の良い香りが漂ってきた。

バックがぼけてしまっているが、剱岳に乾杯!

美味い・・・しみわたる美味さだ。

家でもかなりドリップ珈琲は飲んでいるが、不思議なもので山で飲む珈琲の美味さには遠く及ばない。

環境だけでなく、少しでも体を動かした後に飲むということでそう感じるのだろう。

妻は雪の上で珈琲を飲むのは初めてらしい。

今日はまだ暖かいし風も穏やかであるが、真冬の氷点下20°近い稜線上で飲む珈琲はもっと美味いし、ありがたみを感じるよと言ったが、「無理」の一言だった。(笑)

 

午後は帰りに黒部ダムへ寄ることになっている。

もう少しだけここにいたい思いがあった。

後ろ髪を引かれる思いでターミナルへと向かうが、つい振り返っては剱岳を見る。

何度も何度も振り返る。

「ほぉら、どうせ夏に来るんでしょう。登るんでしょう。早く行こうよ。」

「はいはい」

わかってはいることでも、室堂まで来て初めて山に登らなかったということがどうしても尾を引いている。

最後に一枚だけ妻にお願いして撮ってもらった。

(「夏には絶対にまた来るぞ。剱に登るぞ。」)

と心の中で自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


雪の大谷へ「雪の大谷を歩く:復路・ミクリガ温泉へ」

2025年08月18日 09時41分55秒 | Weblog

混雑の中、なんとか写真を撮り終えターミナル方面へと向かった。

往路とはまた違った景色に感動しつつも、雪を纏ったこの時期の剱を早く見たくて急ぎ足となってしまいそうだったが、妻のことを考えればそれは止めた方がいいだろう。

写真を撮ることでゆっくりと歩いた。

すると妻から意外な言葉が・・・。

「ねぇお父さんも撮ったら。」

つまり雪壁にへばりついてみたらと言うことらしい。

せっかくなので一枚だけ。

(「俺は剱をバックの方がいい」)とは言えないなぁ。

よく見ると壁の表面には様々な絵のような物が描かれていた。

文字もあったが、その殆どは明らかに中国語かハングル文字だった。

復路で写真を撮っていると気づいたことがあった。

「ハロ」である。

雪壁をやや見上げるようにしてデジカメのディスプレイを見るとはっきりとハロが目視できた。

試しにスマホでも撮ってみたがより鮮明にハロが分かる画像だった。

「こりぁ間違いなく崩れるなぁ」とつぶやくと、妻から「午後は降るの?」と聞かれ

「いや、今日は大丈夫。明日は間違いなく降られるね。今日来て良かったよ。」とだけ答えた。

太陽の周囲を円を描くように輪ができる「巻層雲」と呼ばれているもので、これが現れると翌日は天候が崩れる。

登山では常識の範疇だ。

 

さて、壁が削られているポイントまで来た。

残念ながらここから直接ターミナルやミクリガ温泉まで行くことは叶わなかったが、その分周囲に人は誰もおらずトレ-スすら無い手つかずの雪原と山を見ることができた。

はっきり言ってしまえば雪の大谷ウォークよりも遙かに大自然を堪能することができる。

これを見ずしてただ歩いて終わりではあまりにももったいない・・・と思っているのは自分だけだろうか。

奥大日岳をバックに一枚。

できれば赤い看板は不要だと思うのだが・・・

「剱岳をバックにもう一枚いいですか」とシャッターをお願いした青年(日本人)に言ったのだが「剱岳ってどれですか?」と聞かれた。

二人の間からちょこんと伸びているのが剱岳。

「あっちが奥大日だけですよ。」と教えたのだが、「みんな同じにしか見えませんよ。」という返事だった。

観光目的であれば致し方の無いことだろう。

 

ターミナルから今度はミクリガ温泉へと向かった。

僅かな距離だが雪原ウォークを楽しむことができる。

妻には6本爪の軽アイゼンを装着してあげた。

自分は爪の短いチェーンスパイクとした。

雪面へのかみつきは6本爪の方が深く安心感はあるが、さほど起伏の無いこのエリアであれば雪山に慣れている自分の方がチェーンスパイクだろう。

基本はフラットフッティング。

上り下りの時、不安を感じたらサイドステップで歩けば大丈夫と、プチ講習会をしてからスタートした。

 

ミクリガ温泉へは昼食をとるために行くのだが、このときだけは剱岳に向かっているようでちょっとした高揚感があった。

 

「何故ターミナルで食べないのか?」と聞かれた。

「はっきり言ってしまうけど、この時期にターミナルのレストランでお昼を食べることはほぼ不可能だよ。ましてや個人で来た観光者は尚のこと無理。外国からの団体さんで連日ほぼ貸し切り状態だし、運良く座れたとしても俺はあんな喧噪の中で食べるのは嫌だし。メニューは少ないけどミクリガ温泉の方が落ち着いて食べられるよ。間違いない!」

敢えて○○人とは言わなかったが、「喧噪」と言うキーワードで分かってくれたようだ。

 

ミクリガ池に着いた。

6月くらいになれば湖面の氷と雪はほぼ溶けているだろうが、この時期は何処が湖面なのかまだ分からない状態だ。

しかしそれがまた良い!

立山連峰をバックにお決まりの場所で撮った。

池の手前側に少しだけ雪が溶けているポイントがあったが、おそらく湖面は凍っているだろう。

別山方面をバックにもう一枚。

ここまで来て人の少なさに驚いた。

あれほどの賑わいだったターミナル周辺とは段違いな静けさである。

「静かでいいだろう。景色だってこっちの方がずっといいよ。食べ終わったらここのソフトクリームを食べようか。俺は剱から下山したら自分へのご褒美としていつも食べているんだよ。たまらなく美味いんだよ。」

そしてもう一つやってみたいことがあった。

食後の珈琲である。

その為の準備はしてきている。

景色も天候も文句の無いこんな日にはちょっとした贅沢だろう。

 


雪の大谷へ「雪の大谷を歩く:往路」

2025年08月15日 11時07分55秒 | Weblog

いよいよ妻にとって念願の雪の大谷ウォークへと向かった。

自分は立山縦走へと向かうバスの車窓からであれば何度か見たことはあったが、この区間を歩くのは初めてである。

一旦ターミナルへと戻りバスの駐車場へと出た。

空を見上げる。

青い・・・

今日だけはほぼ快晴とのことで、ラッキーなことだと思った。

 

ここから見る限りでは混雑しているようには見えないが、この先果たして・・・と思う。

 

路面に残雪は無いことと乾いていたこともあり軽アイゼンは不要だった。

そう言えば室堂平をアイゼンを装着して歩くときに妻に歩行テクを教えるのを忘れてしまったことを思い出した。

まぁミクリガ温泉へ行くときに改めて言えばいいだろう。

 

自分たちの目の前を大きなザックを背負って歩いているグループがいた。

これから雷鳥平キャンプ場へ向かうか下山するかの一行であろうことは容易に推測できた。

「いいなぁ・・・」という言葉が思わず口に出てしまった。

 

まだそれほど混雑していないこともあり、写真を撮った。

題して「雪壁へのべた付き」

この程度の雪壁は特に珍しくもないが、妻にとっては感動ものだろう。

少し歩くと雪壁が削られ開けたポイントが右手にあった。

「おぉ~剱が見えるじゃないか!」

 

 

 

「復路でちょっと寄ってみたい。」と言ったが、要は剱を少しでも近くで見たいだけのことだ。

 

奥へと進むにつれ壁の高さが増してきているのがよくわかった。

同時に人も増えてきている。

垂直に削られている部分だけでも高さは十分に伝わってくるのだが、よく見れば更にその上にこれでもかという雪壁が目視できた。

しかしおそらくは全てが雪では無く、雪が溶けてくれば岩肌のような物が見えてくるのだろう。

それでも冬季は絶対に人を寄せ付けることの無い、一が入ることのできない豪雪地帯であることを改めて感じた。

言い方は悪いが、それを逆手にとって観光として利用している訳になる。

夏の緑と青い空とのコントラストもいいが、やはり青い空には白い雪がよく似合っている。

あぁ~やっぱり登りたい!

 

 

美女平方面からバスが来た。

これはチャンスだ。

壁との比較対象物があればその高さがよく分かる。

ちょうど雪壁の最高地点ということもあり、その高さに改めて凄さを感じた。

今年は昨年より2mほど高い16mということだが、優にバス2台分以上の高さだとういう事が分かる。

それにしても最高地点ということもあり最も人で溢れかえっている。

一緒に写真を撮りたいが、誰にシャッターをお願いすればいいのか迷った。

三脚は持ってきているが、あまり時間をかけたくはないし・・・。

周囲の人の顔を見れば日本人に見えても聞こえてくるのはけたたましい中国語ばかり。

本音を言えば「ここは日本なのに・・・」と思っていた。

はて、どうしたものかと考えていると、自分たちのすぐ後ろに並んでいる女性から声がかかった。

「あの~すみませんが私の番が来たらシャッターをお願いしてもいいですか・・・」

頼まれ事だがこれは逆に助かったと思った。

「はい、もちろんです。じゃぁ私たちの時もお願いしていいですか。」

ということでお互いウィンウィンとなった。

「お二人の声が日本語だったのでちょっと安心したんです。良かったです。(笑)」

「いや、自分たちも同じですよ。(笑)」

デジカメとスマホでたくさん撮っていただいた。感謝である。

確かに実際にここを歩きその高さに驚き感動はする。

だが、どうしても所詮は人工的に造られた構造物の様な感じがしてならない。

そのことを口に出すことはしなかったが、少しでも近くで剱が見たくて仕方が無かった。

 


雪の大谷へ「室堂平」

2025年08月12日 10時55分39秒 | Weblog

現在いる場所から階段を上り室堂平へと出る。

天候はまずまずであり、ガスのかかっていない一面の銀世界をこの目でみることができる・・・はずだ。

期待感に胸が膨らむ。

 

建物を一歩出るとそこには予想していたとおりの白銀の大自然が広がっていた。

毎年来ているはずなのだが、見慣れている風景のはずなのだが、季節が少し違っただけで目に映る色は大きく違っている。

そんなわかりきったことでも息をのむ銀世界だった。

「うわぁーすごい! 綺麗!広い!」

単純な言葉しか出てこない妻だったが、ここの銀世界は何度か見ている自分であっても久しぶりに見れば感動はひとしおだ。

「ねぇあの山はなんていう名前なの?」

目の前の山を指さし聞いてきた妻に対し「別山だよ」とだけ答えた。

「立山って聞いたことがあるだろう。でも立山って言う山は無いんだよ。」

あまり詳しく説明してもかえって煙たがられるだろうと思い、時計回りに「浄土山、(一ノ越)、雄山、大汝山、富士ノ折立、真砂岳、別山」と説明した。

しかし大汝山や富士ノ折立などはあまりピークが明瞭では無かったこともありわからないようだった。

左から浄土山、一ノ越(コル)、雄山、大汝山、左端の小さなピークが富士ノ折立。

「お父さんはあの山に登ったことがあるの?」

「夏は何回縦走したかは覚えていないけど、今の残雪期は三回しかない。」

「大丈夫だったの?」

「はっは、大丈夫だったから今ここにこうしているんだろ。(笑)」

(「本当は今すぐにでも取り付きたいんだよ~!」)

という言葉が喉まで出かかった。

雄山から別山方面。

別山から室堂乗越、そしてその後方に屹立しているのが剱岳だ。

すこしアップで写した剱岳。

「後ろに見えているのが剱岳だよ。」

「えー遠くてよくわかんない。」

胸に募る思いで言った言葉だったのだが、残念ながら妻には届かなかったようだ。

 

久しぶりということもあったのだが、何とここからミクリガ温泉の建物が見えた。

「なるほどね・・・」

とその理由に納得はしたが、この起伏を埋めてしまうほどの積雪量の凄さに改めて驚いた。

妻にも説明はしたのだが、あまり分かってもらえないようだった。

浄土山、雄山をバックに一枚。

そして剱岳をバックに一枚。

一面トレースだらけの雪面であったが、ほとんど人の手が入っていないこと、そして目の前には立山連峰と剱岳。

妻には申し訳ないが、人工的に作られた雪の大谷よりもこっちの方が遙かに胸に来るものがある。

積雪量によってここまで見える景色が夏とは違うということ。

室堂乗越に向けた登山者のトレースがはっきりと見て取れるということ。

今だけしか見ることのできない数知れぬ雪渓。

それだけでも見応えがある。

ただ致し方の無いこととはいえ、聞こえてくるのは日本語では無く中国語ばかりだった。

雪の大谷へ行けばこの程度では済まされないんだろうなぁ・・・

ましてやターミナルのお土産売り場などはとんでもないことになるんだろうなぁ・・・

いやいや、せっかくの旅行だ。

ネガティブなことはあまり考えないようにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


雪の大谷へ「いつもの立山黒部アルペンルート」

2025年08月09日 10時31分59秒 | Weblog

二年ほど前から妻より「雪の大谷に行ってみたい」と何度か言われてきた。

一緒に行きたくなかった訳ではないが、「雪の大谷=室堂」である自分にとって「雪の壁を見るためだけにわざわざ室堂かぁ・・・」という勝手ながらの思いがあった。

室堂へは最低でも年に一度は行っている。

もちろん剱岳に登るためなのだが、どこか「そのためだけに室堂か・・・」となるわけだ。

雪の大谷そのものを見たことも何度かあった。

GW明けの残雪の立山縦走だった。

あくまでも目的は登山であり、バスの車窓からしか見たことはなかったが確かに圧巻であった。

妻曰く「黒部ダムも見てみたい」との希望もあり「それなら行ってみよう」となった。

旅行そのものの計画として、一日目は室堂、黒部ダム。

松本に泊まって二日目は松本市内観光とした。

本音を言えば二日目の松本市内観光が楽しみである。

混雑をできるだけ避けるためにGW直前の四月末としたが、天候が心配となった。

幸いに予報では室堂当日だけが好天であり、その前後はやや荒れるようだった。

 

自宅で夕食を済ませ夜になって出発。

ルートはもう何度も利用しているいつものルートであり、途中休憩する場所も同じとした。

ほぼ予定していた時刻(深夜)に扇沢駐車場に到着し、そこで車中泊。

そして翌朝7:30に扇沢駅を出発する。

剱岳へ向かうときと全く同じ行程となった。

 

切符売り場は相当な混雑があるだろうと予測し、6時頃から売り場前に並んだ。

とは言っても並んだのは自分だけであり、妻には「7時頃になったら来ればいいよ」と伝えておいた。

四月末とはいえ標高から考えればそれなりに寒いだろうとダウンジャケットを着て売り場前に並んだ。

この時簡易的な折りたたみの小型椅子と本を一冊持参した。

切符販売開始までの約一時間をどのようにして過ごすかを考えてのことだった。

これが大正解!

他の登山者や観光客の人たちは皆立ったままで待機しており、何もすることが無い。

持ってきて良かったアイテムだった。

 

持ってきた書籍なのだが、自室の本棚にあったもので「まぁせっかく山岳地帯に行くのだから・・・」と最初に目に入った本を何気なく抜いてきたものだった。

書籍名「どくとるマンボウ 青春の山」(著 北杜夫)。

本当に何気なく棚から抜き取っただけであり、何も考えること無く持ってきただけのものなのだが、この一冊の本が翌日の松本観光において今回の旅行を感慨深いものとしてくれた。

そのことは後に綴りたい。

 

7時となり切符の販売開始となった。

かなり前の方に並んだおかげですぐに購入でき、乗り場へと向かった。

残念ながらお弁当売りの名物駅員であるNさんはいなかったが、また夏に剱に来るときに会えるだろうと期待した。

 

室堂往復であればもう何十回と利用している交通機関であって何ら慌てる必要は無いのだが、妻が「大丈夫なの? すごく混んでるみたいだけど。」と心配していた。

「混むのはいつも同じだよ。室堂まではうまく乗り継げれば1時間30分くらいだけど、あくまでもうまく乗り継げればの話。そのためには乗り継ぎの時にちょっと急がなきゃだめ。ロープウェイの時にいい雪景色を撮りたかったら尚更のこと。まぁだからといって慌てて転んだら元も子もないけどね。」

それ以上のことは言わなかったが、要するに「ここに来たら俺に任せておけ。俺の言うことを聞いていれば大丈夫。」と言いたかった。

みごとな青空と残雪。

これを見ただけでも妻は感動していた。

 

扇沢から電気バス一本でダム駅に到着。

長いトンネルを歩いて抜ければ黒部ダムが見えてくる。

真夏でもこのトンネルの中は肌寒く、ましてや今の時期ともなればダウンジャケットは欠かせない。

このトンネルの先にダム湖が見える。

歩き慣れた道とはいえ、この時期はかなりの寒さだった。

 

できればダムでゆっくりしたかったのだが、先ずは室堂へ行くことが先決だ。

このポイントは帰り際に観光することにしている。

だがせめて写真くらいはと、何枚か収めておいた。

黒部ダム湖。

思っていたよりも水量は無かった。

残念ながら放水の時期にはまだ早く、あの圧倒的放水量を誇る様子を見ることはできなかった。

それでも満足げな様子。(笑)

「さっ、急いでケーブルカーに乗るよ。」

のんびりとダムの上を歩きたかったようだが、乗り継ぎのためにはそうはいっていられない。

ケーブルカー駅へと急ぎ足で向かった。

 

ケーブルカーに乗るにもちょっとしたコツのようなものがあり、室堂に向かうためにはできるだけケーブルカーの先頭に乗った方が良い。

これは次のロープウェイの乗り継ぎのためで、ケーブルカーを降りた場所はかなり急な階段状となっており、その階段を上らなければならない。

時短と距離短、体への負担軽減を考えれば車輌の先頭付近がベストとなる。

ケーブルカーに乗り込むときに「なんですぐに乗らないの? ここを登って乗るの。」と妻から聞かれたが「降りればわかるよ」とだけ言っておいた。

おかげでロープウェイの乗車時は先頭で並ぶことができ、写真撮影に良い場所、しかも椅子に座ることができた。

ロープウェイ内の後部席に座り残雪の北アルプスを愛でた。

立山方面は復路に見ればいいだけだ。

 

聞き慣れなアナウンスは無視し、妻には「山の天気はとにかく変わりやすいから写真は撮れるときに撮っておいた方がいいよ。ガスったらホワイトアウトで何も見えないから。」と言った。

ダム湖駅が遠く小さくなってくる。

大観峰駅が近いことがわかる。

大観峰まで来てしまえば室堂はすぐで、最後の電気バスに乗り10分少々の乗車で着く。

天候は問題ないだろう。

雪の大谷も良いのだが、あの一面の大雪原を見せてあげたい。

 

やっと室堂ターミナルに到着した。

「ねっ、どこ? 雪の大谷って何処なの?」と迫るように妻が聞いてきた。

「大丈夫。慌てることはないよ。先ずはトイレ、でもって一服したいな。」

妻からすれば何を暢気なことばかり言ってと思われていることだろう。

「とにかく先ずはトイレだよ。山に来たら行けるときに行っておかないとね。」

ゆっくりと一服させてもらい階段を上がってゆく。

ターミナル内でふと思ったことがあった。

これだけ混雑しているにも関わらず、ほとんど日本語が聞こえてこないのだ。

聞こえてくるのは中国語らしき言葉ばかりだった。

しかもドデカい声ばかりが構内に響き渡っている。

「こりゃぁ想定以上だな。(苦笑)」

階段途中の踊り場にあるいつもの掲示板。

天候や事故の報告などが記されている。

今日に限っては天候だけを気にすれば良いのだが、どうしても山岳事故にも目が行く。

室堂平でも転倒による負傷事故があったようだ。

妻にも自分の持っている軽アイゼンを持たせておいたが、雪原とはいえ雪山にはまったく慣れていないだけに、歩く前にもう一度歩行テクを教えておくべきだと思った。

さて、ここを上がれば室堂平、立山連峰、そして剱岳が見えてくる。

雪の大谷は妻、自分は残雪の北アルプスを堪能したい。