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武雄市図書館リニュアル時の選書問題についての雑感

2015-09-02 16:27:32 | 図書館・情報学
  『週刊朝日』9月11日号の記事“武雄市TSUTAYA図書館 関連会社から"疑惑"の選書”を見た。武雄市は、市の図書館の指定管理者としてTSUTAYAの商標を持つCCCを選定し、13年度にリニュアル開館する際に、CCCの子会社のネットオフから1万冊ほどを蔵書として購入していた。ところがその選書リストには、「Windows98」や「2001年の公認会計士試験」を主題にする古すぎる本や、『ラーメンマップ埼玉』のような地域的需要が乏しいと思われる本が含まれていた。記者がリストから100冊を選んで、ネットオフでの価格を計算したところ、大半が108円の本で、平均価格272円だったという。ネットオフの売れ残り本を公費で引き取らされたのではないか、というわけだ。一方で、同じタイミングで貴重な郷土資料が廃棄されていたという。

  選書リストは8月中からインターネットに出回って騒ぎになっていたので、僕も見たことがある。大半は小説類で僕にはその価値がわからなかったが、上記のようなパッと見で賞味期限切れであることや場違いであることが明らかなタイトルもけっこうな頻度で含まれていた。僕が読みたくなるような本は無かった。いらない本を買わせたという疑惑はたぶんそうなんだろう。武雄市図書館に対しては、売れる本は販売して、保存向きの資料は図書館が持つという役割分担への期待をかつて抱いたことがあった(参考)。だが、どうやらCCCにはそうしたコンセプトがないということがよくわかった。当初の、既存の図書館のコンセプトの延長(参考)という見方に戻すことにする。

  ただし、書籍の納入業者が図書館購入で儲けようとするのはそんなに珍しい話ではない。条例や慣習のため、自治体域内の小売書籍店を納入業者としている公立図書館はわりとある。そうした業者が図書館との競合を避けるために、「売れている本の納入を意図的に遅らせる」とか「売れ残り本を選書用にサンプルとして送ってくる」というのは昔からある話だ。とある新興大学では、新設の学科設置のために指定管理までを請け負う大手の新刊書店に図書館用の本の選書を依頼したのだが、2001年以降の新刊で取扱可能な書籍だけでできたリストが出てきて、教員らが頭を抱えていた。新刊書店に頼めば当然そうなる。学部新設の時は神田の古本屋に頼むのが常識だと、その昔恩師に教えてもらった。

  民間業者は利益を追求するもので、図書館が選書の権限まで彼らに譲ってしまうならば、こういう問題は起こりうる。だが、武雄市図書館のケースは目立って特殊で、指定管理者一般にあるような問題でもないように感じる。「在庫処分」感が露骨すぎるのだ。前段の他の業者のケースは、少なくとも図書館に相応しくない本を購入させようとしていたわけではない(ように見えるけれども、実態はどうなんでしょうかね?図書館員の皆様)。通常の業者は、「書店と図書館の役割は違う」という棲み分け論にのっかって、需要の劣る本を巧妙に図書館に買わせてきた。ところがCCCの場合、業者にとってだけでなく図書館にとっても不要な本を押し付けているわけで、その選書を信頼できないものにしている。今回の件が指定管理業への進出に影響するならば、その私利の追求の仕方は下手くそだったということになるだろう。CCCが学習してくれるといいが。
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