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競争的環境に置かれた人間の生理と心理

2014-10-29 16:58:09 | 読書ノート
ポー・ブロンソン, アシュリー・メリーマン『競争の科学:賢く戦い、結果を出す』児島修訳, 実務教育出版, 2014.

  競争に対する生理的・心理的対応の科学の一般書、とした方が正確か。競争の適切な制度設計など社会学や経済学系のトピック以前の、それらの土台となる基礎的な人間生理を問題としている。著者は『間違いだらけの子育て』(参考)のコンビ。原書タイトルは"Top Dog"で2013年の出版。

  まずは、競争によって参加する個人のパフォーマンスは上るのか、という問題の答えだが、これが性格タイプによって良い方にも悪い方にも変わるという。およそ競争参加者のうち50%は成績を向上させ、25%は変わらず、残り25%はストレスで成績を下げるという。ただし、競争のストレスに弱いタイプも、勝負の回数を増やせばそれに慣れてゆき、最終的にはストレスに強いタイプに勝るようになるとも。ついでに、ストレスに弱いタイプが負けやすい一発勝負型の入試などはよろしくないとも加える。この他、「攻撃的」とされるテストステロンが実は自己評価を高めるために協力行動を促すこと、男はリスクテイクにおいて楽観的すぎる一方女性はリスクの見積もりが正確であること、ポジティヴシンキングは特に競争に有利な結果をもたらさず反省的な思考のほうが適切なこと、役割分担を明確にしたヒエラルヒーのあるチームの方が平等なチームより機能すること、スポーツにおける公正な競争が公正な民主主義を促すこと、などなどを論じている。

  競争的環境は25%の人々のパフォーマンスを下げる。ならば競争が無い方が良いのかというとそうではなく、競争を好む層が抜けてしまって結局は集団全体のパフォーマンスが下がってしまうという。では良い競争制度を設計する必要があるということになるが、本書には制度については明確に答えない。しかしヒントは与えてくれている。あと、邦訳に参考文献リストが無いのはマイナスポイント。引用された学者の主張が裏付けるがあるものなのか単なる自説なのかはっきりしない箇所がけっこうあったので。
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