麻生誠『日本の学歴エリート』講談社学術文庫, 講談社, 2009.
研究書。初版は1980年前後の論文をまとめた論文集として、1991年に玉川大学出版部から出版されている。『人事興信録』と日経新聞連載「私の履歴書」を資料に、日本の経営者や高級官僚の出自や教育歴、学卒後のキャリアを追っている。ただし、扱っているのは20世紀半ばまでのそれで、戦後の学校制度が改められた時代に教育を受けた人物は対象に入っていない(制度に関する分析はある)。
一般に、第二次世界大戦での敗戦もあって、戦前のエリートやその教育システムに対する評価は芳しくない。そうした雰囲気に対して、著者は経済界への人材供給という点で肯定的な視点を向けている。また、官僚出身者の伝記を分析しながら、その必要な資質や戦後に学校制度に必要な教育カリキュラムを再検討している。全体として、社会にエリートが存在するのは避けられないことなので、ならばその正しい在り方を追及しようという視点に立っていることがうかがえよう。
率直に言うと、何らかの疑問を解消するような面白さは無い本である。その意味で多くの人にアピールするような内容ではないけれども、手堅い一冊である。
研究書。初版は1980年前後の論文をまとめた論文集として、1991年に玉川大学出版部から出版されている。『人事興信録』と日経新聞連載「私の履歴書」を資料に、日本の経営者や高級官僚の出自や教育歴、学卒後のキャリアを追っている。ただし、扱っているのは20世紀半ばまでのそれで、戦後の学校制度が改められた時代に教育を受けた人物は対象に入っていない(制度に関する分析はある)。
一般に、第二次世界大戦での敗戦もあって、戦前のエリートやその教育システムに対する評価は芳しくない。そうした雰囲気に対して、著者は経済界への人材供給という点で肯定的な視点を向けている。また、官僚出身者の伝記を分析しながら、その必要な資質や戦後に学校制度に必要な教育カリキュラムを再検討している。全体として、社会にエリートが存在するのは避けられないことなので、ならばその正しい在り方を追及しようという視点に立っていることがうかがえよう。
率直に言うと、何らかの疑問を解消するような面白さは無い本である。その意味で多くの人にアピールするような内容ではないけれども、手堅い一冊である。