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身体の運動による心の救済

2010-11-03 06:32:38 | 読書ノート
ジョン・J.レイティ『脳を鍛えるには運動しかない:最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳, NHK出版, 2009.

  運動が脳に与えるプラスの効果について説いた一般向けの書籍。著者は米国の精神医学者である。

  著者によれば、有酸素運動を習慣とすることは、集中力の欠如・ストレス・うつ病・依存症・女性のホルモンバランスの変化がもたらす不安定、などの対処法として効果的だという。なんでも、①運動は精神に対してプラスのホルモンを放出し、②運動を習慣的に継続することはそれらホルモンの伝達系(脳内)の接続を良くし、③かつ運動は健康状態を良好にすることによって気分を改善するという。その詳しいメカニズムはよくわかっていないとのことだが、さまざまな調査研究から推定して「確からしい」と言えるレベルのようである。

  しかしながら、一見、本書は邦題が示唆するような運動至上主義の内容ではない。決して投薬治療が排斥されることはなく、うまく運動と併用せよとのアドバイスが繰り返される。薬は即効性があるので、状態が悪いときには薬のほうが効果的だとのことだ。しかし、長期的に気分を改善したいのであれば、継続した有酸素運動が勝るという。根本的な治療という意味では、邦題は間違っていないとも言える。

  そういえば「うつ病には運動が良い」と別の本でも書かれていた(参考)。僕の周囲では、伴侶がうつ病にかかって離婚したというケースが三つある。そのうちの一人は実家にひきこもりながら投薬治療を受けている。最悪の状態は脱したものの、仕事する気力が戻らないまま数年が過ぎ、結果太ってひざを壊してしまって、ますます家の外に出られなくなるという悪循環に陥っている。今度、彼の親御さんに会う機会があったらジョギングするよう勧めてみるつもりだ。と考えてはみたが、ひざを壊したうつ病患者に運動させるのはハードルの高いことかもしれない。
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