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フォークロック以上アダルトコンテポラリー一歩手前の独特の質感

2016-02-01 22:05:51 | 音盤ノート
Lo Borges "A Via Lactea" EMI/Odeon, 1979.

  MPB。ロー・ボルジェスは、ミルトン・ナシメントと共同名義で作った"Clube Da Esquina"で知られるブラジル、ミナス・ジェイラス州出身のシンガーソングライターである。本作は、"Clube Da Esquina"と同じ1972年にセルフタイトルのデビュー作を出したあとの7年ぶりとなるセカンドアルバムということになる。数曲で女性ボーカルとのデュエットになるが、本人の姉らしい。

  ブラジル産のわりには、全然MPBっぽくない。どちらかと言えば、1970年代の米国ロックに近い(現在の米国産ロックのイメージと違って当時のそれは繊細であった)印象である。打楽器は薄めだし、ガット弦ギターのバチータ奏法もない。ディストーションをかけないエレクトリックギターによるアルペジオ、または和音を重ねる鍵盤がバッキングの中心となっており、それにドラムとベース、さらにはストリングスが加わる。これらの伴奏を従えて、はかなく切ないメロディをボルジェスがゆるく軟弱に歌うという趣向である。全編を通じて淡い情感を湛えており、アダルトコンテポラリーとしてはやや青臭いが、フォークロックというには都会的に感じるという音だ。いい歳こいて大人になれきれない優柔不断なダメ男の音楽である。もちろん僕は好きだ。

  サウンド的には地味なアルバムだが、美メロ好きならばすぐに気に入るだろう。優れた楽曲が多いが、代表曲である'Clube Da Exquina 2'とエリス・レジーナが最後のスタジオ盤でカバーした 'Vento De Maio'が特に良い。
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