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アーカイブ戦争以前のゲームに参加できていない状態

2014-12-17 10:08:18 | 読書ノート
福井健策『誰が「知」を独占するのか:デジタルアーカイブ戦争』集英社新書, 集英社, 2014.

  国産コンテンツのアーカイブ化推進を訴える内容。国の予算も期待しつつも、最大の問題は著作権制度なので、その制度的問題を明らかにしてどう改定したらよいかについて論じている。日本のアーカイブは不十分という話は耳たこではあるが、公文書に偏りがちなこの手の議論を、どちらかと言えば一般書籍など私的に所有されている著作物を中心に論じているのが特徴だろう。ただ、権利処理の大変さが強調されてしまうところもあり、「制度が整うまでアーカイブなんか作らない方がいいんじゃね」という怠惰な考えを関係者に引き起こす恐れもある。

  国立国会図書館の近デジプロジェクトや権利者不明の孤児作品問題が大きく採りあげられており、手軽に理解できる本としてはいいかもしれない。少しだけだが、同じく国立国会図書館による絶版書籍の公共図書館への電子配信するサービスについても挙げられている。個人的にはつい最近、このサービスに対する公共図書館側の反応はあまりよくないという話を聞いたばかりだ。需要が見えない、ということなのだろう。こういうのは先行するニーズがあるわけではなく、サービスが出来て初めて使い方が認識されるというものでもあり、普及に時間がかかるかもしれない。
  
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