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あくまでも発展途上国における貧困がテーマ

2012-11-14 08:16:15 | 読書ノート
アビジット・V・バナジー, エスター・デュフロ『貧乏人の経済学:もういちど貧困問題を根っこから考える』山形浩生訳, みすず書房, 2012.

  発展途上国の貧困問題がテーマ。実証的に解決方法を検討しようと姿勢がポイントで、効果的な援助というものを地域間の対照実験で裏づけようとする。

  その主張は、サックスvs.イースタリー論争(参考)の中間を行くもので、「貧困の解消を貧者の創意や自発性だけに任せてもうまくいかないし、さりとて外から多額の資金やインフラ投資を与えれば自動的に成長の軌道にのるというわけでもない。人々を貧しいままにさせている制度的要因をあぶりだして一つ一つ取り除いてゆきながら、細かく適切に援助を与えてゆくことが必要だ」とする立場である。

  ここで提案されているのは地道にこつこつやってゆくような解決法であり、最終的な貧困の解消には年月がかかりそうである。それが王道だということだろう。革命的な制度改革や、巨額の補助金ですぐさま貧困が解消されるなんてことはないのだ。

  残念ながら、対象は途上国に限られ、先進国における貧困は検討されていない。それでも教育に関する箇所は示唆するところがある。途上国の初等教育は、将来成功しそうな知的に優れた学童に資源が向けられることが多く、その授業についていけない学童は学校嫌いになって不登校になりがちであるという。どこかの国で同じような批判から「ゆとり教育」が導入されて、そして撤回されたなと思いだした。
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