ジェームズ・J.ヘックマン『幼児教育の経済学』古草秀子訳, 東洋経済新報社, 2015.
けっこう期待して読んだのだが、本の構成が駄目である。まず最初の40頁強で著者が持論を展開し、次に10組の専門家が著者の見解に5頁ずつ賛否を述べる。最後にまた著者が出てきて8頁を使って再反論する。邦訳では経済学者の大竹文雄による解説が16頁付されていて、四六判で正味127頁しかない。短すぎる。
短いのが悪いのではなく、説明不足となっているのが大きな問題である。著者によれば貧困家庭向けの二つの幼児教育プログラムが成果を上げたというのだが、地域と訪問頻度、実施期間以外の情報が欠けている。いったいどういう教育内容だったのかちっともわからない。また、似たような貧困家庭向けの幼児教育プログラムで、米国でより広範囲に行われているものに「ヘッドスタート」というのがある。これがうまくいっていないという評価があるのだが、こうした見方に対して著者は批判している。だが、しかし分量不足のため十分納得させるほどの反論となっていない。他人にコメントをもらってくる前にこれらについてもっと記述してよ、と言いたくなる。ちなみに、中盤の10組の専門家のコメントを読めば、彼らも僕と同じように感じていることがわかるだろう。
これはノーベル賞学者の権威を利用した政治的パンフレットなのだろうか。著者が示した結論がでたらめだとは思わないだけに、ちょっと残念である。ちなみに原書は2013年のGiving Kids a Fair Chanceである。
けっこう期待して読んだのだが、本の構成が駄目である。まず最初の40頁強で著者が持論を展開し、次に10組の専門家が著者の見解に5頁ずつ賛否を述べる。最後にまた著者が出てきて8頁を使って再反論する。邦訳では経済学者の大竹文雄による解説が16頁付されていて、四六判で正味127頁しかない。短すぎる。
短いのが悪いのではなく、説明不足となっているのが大きな問題である。著者によれば貧困家庭向けの二つの幼児教育プログラムが成果を上げたというのだが、地域と訪問頻度、実施期間以外の情報が欠けている。いったいどういう教育内容だったのかちっともわからない。また、似たような貧困家庭向けの幼児教育プログラムで、米国でより広範囲に行われているものに「ヘッドスタート」というのがある。これがうまくいっていないという評価があるのだが、こうした見方に対して著者は批判している。だが、しかし分量不足のため十分納得させるほどの反論となっていない。他人にコメントをもらってくる前にこれらについてもっと記述してよ、と言いたくなる。ちなみに、中盤の10組の専門家のコメントを読めば、彼らも僕と同じように感じていることがわかるだろう。
これはノーベル賞学者の権威を利用した政治的パンフレットなのだろうか。著者が示した結論がでたらめだとは思わないだけに、ちょっと残念である。ちなみに原書は2013年のGiving Kids a Fair Chanceである。