アボルダージュ!!

文芸及び歴史同好会「碧い馬同人会」主宰で歴史作家・エッセイストの萩尾農が日々の思いや出来事を語ります。

80人 イコール 35億人

2015-01-21 | その他
何が「イコール(同じ)」かと言うと、世界の富裕層の資産額―。

去る1月19日、貧困の根絶を目指し、各国で人道支援活動や政策提言を行う国際非政府組織オックスファム(本部英国)が、世界の富裕層上位1%が所有する資産が二〇一四年、全世界の資産の48%を占めたと発表した。
上位80人の資産合計は、下位50%、35億人を合わせた資産とほぼ同じとなったーとのことだ。
日本もいつの間にやら、格差社会。しかも、その差は広がるばかりだが、地球全体で1%の人々が、富の半分近くを握っているという、人間社会というものは、なんと不公平だろう!
そして、来年にはこの1%の人々の合計資産額は過半数に達して、残り99%の人々の資産合計を上回るだろうと言われている。
前述のオックスファムは「富裕層と貧困層の格差は急速に広がっている。世界のリーダーは今こそ公平さを阻害している強大な既得権者に立ち向かうべきだ」と訴えている。
ちなみにオックスファムは、英オックスフォードの国際本部を本拠に、日本を含む17カ国に拠点組織がある。

日本も子どもの6人に一人が貧困状態にあるという。三食満足に食べられない子どもが6人に一人いるーということだ。
繁華街で見渡せば、また、テレビの食べ歩き番組や、何とも馬鹿らしく愚かにしかみえない大食い競争番組など―そういう日常を目にすると、「飽食」という言葉が浮かんで仕方がないこの国に、「お腹いっぱい食べたことがない」という子どもたちがいるという現実。
この格差はまだまだ広がっていくだろう。政権は経済のトリクルダウン現象を期待した政策が一番と信じて疑わないようだが、上からの雫(しずく)が垂れてくるのを待っていられるほどの時間は、貧困層には無いのだ。

イスラム国から日本人の殺害予告の動画が公開された。
今朝のコラムに胸痛む事実が書かれていた。以下―。

《もうあれから十二年近くがたつが、胸に刺さったままの言葉がある。イラク戦争でバグダッドが陥落した直後に、かの地の病院を取材していた時、医師に投げ付けられたひと言だ。
「日本人?米国の味方だろ、帰れっ」。
市内では銃撃戦が続き、病院には次々とけが人が運び込まれ、痛みに泣き叫ぶ子らの声と、医師の怒声が響き続けていた。「希望はない。血の海を泳いでいるだけだ」
「ブッシユ(米大統領)が約束した平和はどこだ」。
米英が大義ある「テロとの戦争」と呼んだイラク戦争を、日本も明確に支持した。戦闘のために軍を送ったわけではなく「人道支援」であったが、それでも戦火にさらされた人々にとり日本は「憎き米国の味方」であったのだ。
一つの国を戦争で破壊し尽くす。それはまさに、地獄の扉を開けるようなものなのだろう。どんな魔物が出てくるか。開けてみて初めて分かる。
イラクとシリアの廃虚で絶望感と憎悪を糧(かて)に勢力を拡大させてきた過激派組織「イスラム国」の刃(やいば)が、日本にも向けられた。「イスラム国」対策のため周辺国に人道的な支援を申し出た日本政府に対し、邦人人質の殺害予告が届いたのだ。
それは、理不尽で卑劣な脅しである。しかし何が「イスラム国」を生み、育ててきたのか。そこに目を凝らさず、憎悪に憎悪で向き合うだけなら、「イスラム国」の思うつぼだろう。》


「絶望感と憎悪を糧に勢力を拡大させてきた」―とある。絶望感と憎悪は、格差や不公平が生むものだ。
「何がイスラム国を生み、育ててきたのか」―世界はわかっているはずだ。「最初の当事者」と表現しても間違いではないだろう米国は、わかっているか。アメリカはいつも「正義はアメリカにあり」の国だから、この点は、わかっているのかどうか、不明だ。
自国に攻め込まれたことのない米国が2001年9月11日、同時多発テロで、初めて攻め込まれた。その犠牲者は本当に気の毒だ。そして、アメリカは報復に出た。「大量破壊兵器を持っている」との大義をかざして…。しかし、それは、出てこなかった。宙ぶらりんの大義―。
「一つの国を戦争で破壊しつくす」―あらゆる国の為政者が、わが身(自国)のことに置き換えて想像すればいいと思う。
前回のブログにも書いたが、「私は戦争で多くを奪われたイラク人だ」―という言葉、世界の為政者たちが、噛みしめなければ、そのうち、「私は戦争で多くを奪われた○○人だ」という人々が増える。

「80人 イコール 35億人」を解消しない限り、テロや戦争を含むあらゆる問題は解決しないだろう。
それから、これだけの人種が住むこの星だ、思想(宗教含む)も習慣も生活様式も、それぞれ違うのは当たり前だ。相手を認めなければ、平和はない。宗教の違いによる諍いの根は深いが、それぞれの「神」が、争いを求めているとは、どうしても思えない私だが、これは、甘いのか。


☆★ 「トリクルダウン(trickle down)」という表現は「徐々に流れ落ちる」という意味で、大企業や富裕層の支援政策を行うことが経済活動を活性化させることになり、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体の利益となる」とする仮説である。→実証性の観点からは、富裕層をさらに富ませれば貧困層の経済状況が改善することを裏付ける有力な研究は存在しないとされている。(フリー百科事典 ウィキペディアより)。







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