アボルダージュ!!

文芸及び歴史同好会「碧い馬同人会」主宰で歴史作家・エッセイストの萩尾農が日々の思いや出来事を語ります。

上映館が増えた!期間も延びた!映画「新聞記者」

2019-07-28 | 世情もろもろ
「この国の民主主義は形だけでいい」
そのセリフが、妙に、真実味がある映画だった。

映画は完成すると、テレビで宣伝したり、出演俳優が、バラエティ番組に出たりして、番宣するのが通常だが、この映画は、それを断られたそうだ。
テレビ局の政府への忖度。
「番宣は断られたが、大ヒット」で、よかった。
「忖度ニモマケズヒット}と、出ていた。
事実、この映画の製作段階では、依頼した製作プロダクションが二社、
「引き受けて、その後、干されたりすると困るから」と断ってきたそうだ。

けれど、日に日に、評判は口コミで広がり、あるいは、ネットで拡散して、7/19までだった上映期間が延び、上映する映画館も増えた。
たとえば、札幌、友人Fさんは見に行った。その札幌は8/1くらいで上映終わり・・のようだったが、そうしたら、他の映画館がいくつか、8/2から上映開始するーと。
東北地方も関西も、近畿も、九州も、沖縄も、8月から、上映する映画館が続々と増えた。
だから、どこに住んでいても、見る機会はまだ、まだ、ある。

映画「新聞記者」公式サイト


灼熱の夏がくるけど、映画館の中は、涼しい。
そして、見終わったら、もっと、足元が涼しくなる。自分たちの足元が崩れていかないように、しっかりと立っていよう、目をこらしてーという気持ちになる。

「この国の民主主義は形だけでいい」

2019-07-09 | 世情もろもろ
…という恐ろしいタイトル。
いや、これは、現在公開している映画『新聞記者』のなか、終盤近くで、内閣情報調査室のトップが言った言葉。
 このひと言が、現在のこの国の全てを物語る―と、ゾッとした。
 生きながら殺される―そんな言葉も浮かんだ。
 
 フィクションと言ってはいるが、ここに描かれる事象の一つ一つが、見る側に、現実に起こった事件、記憶に新しいそれらを思い出させる。

 公開前に上映館を調べたら、多くはなかった、
 先週末に行く予定で、席の確保でネットを見たら、上映館の数が増えていた。それでも、週末の席は取れなかった。
 それで、昨日、たった一つだけ空いていた席を前日にGetした。
「よかったよ~!!」
 と、笑顔マークで感想を述べられる映画ではないが、
「本当に、よく作ってくれた!」
「よく公開してくれた」
 と、忖度(そんたく)が大流行の現在、拍手を送りたくなった。
 原作は東京新聞の女性記者望月衣遡子氏の「新聞記者」―。
 彼女が現実にどういう対応を受けて、東京新聞というメディアに官邸がどういう事をしたのか、東京新聞を長い長~い間、読んできた私はよく知っていた。
メディアに圧力をかければ、かけられたメディアは、普通は、それを報道する。昨今、忖度が大流行だから、臆して、報道も避けるメディアが多くなったことは、嘆かわしい事態だ。NHKは「公共放送」から「公営放送」に、変身(?)したようだし(涙!)。
そんな世情なのに、この映画を作った勇気、そして、「よくぞ、出演を引き受けた松坂桃李クンに感服する」といったコラムもあった。同感だ。

 七月十九日までの上映―とのことだけど、これだけ、観客を動員しているのだから、上映期間を延ばす映画館があってほしいと願うばかり。
 今は、全国で上映している。

映画 新聞記者公式サイト



 元気になれる、温かくなれる―という類の映画では決してない。むしろ、ゾッとする、足元が崩れていくような恐怖。
けれど、自分の立つ国の姿は知っておいて損はない。国家は、決して、国民を守りはしない―と、自覚して、自分で立っているしかないから、自らを叱咤激励して、顔を上げて生きようとするだろうから。(見たすぐ後は、ガックリと肩をおとしても、ね)
そういえば、映画の中で「国を守る」と言う言葉はいっぱいでてきたが、「国民を守る」という言葉はひと言もなかった気がする。
全国で公開中―。
札幌の友人Fさん、「ユナイテッド・シネマ 札幌」で上映しているから、ね。


 各界の人々から寄せられた感想が公式サイトに載っている。

《これは、新聞記者という職業についての映画ではない。
人が、この時代に、保身を超えて持つべき矜持についての映画だ。(是枝裕和監督)

《昨今の日本映画が避けてきた政治という「危ないテーマ」に正面から挑んだ。
無自覚な自主規制や意図的な忖度にまみれた現代社会に楔を打ち込む意欲作だ。(毎日新聞記者》

《映画は時代を映す鏡だ。『新聞記者』は今の邦画には珍しく、時代の流れに「忖度」せず、現在の日本が置かれた状況に真正面から向き合った映画だ。一人の新聞記者として、この映画の制作に関わったすべての人にエールを送り、多くの観客に届くことを願っています。 (女性新聞記者)》

《この映画は怖い。言いたいことが言えない世の中の異常性と緊迫感に満ちている。だからこそ多くの人に観てもらいたい、そして考えてほしい。なぜなら、これは今我々が住んでいる日本のことだから。(俳優)》