池さんで働くおばさんの日記

デイサービス「池さん」の大ちゃんママのブログです。

つたこさんのおしゃべり

2011-12-02 20:36:27 | デイサービス池さん

「つたこさん」と出会ったのは、最後の選挙の時。

選挙カーで回るたび、家の近くを通るたび、必ず私のパンフレットを手に持って道に出て手を振ってくれた。決して「親しい」間柄ではなかったが、そういう応援をしてくれる人は、当時の私にとって本当にありがたかい存在だった。

そして・・・月日がたち、つた子さんと私は再会した。「池さんの経営者」と「利用者」として。

老いてゆくつた子さんに、私は「その当時」の恩返しの気持ちで、向き合ってきた。

つたこさんのボケはますます進み、言葉さえ発することが難しくなってきた。

ただ時折感情は荒々しく爆発する。怒り・戸惑いは、いつも荒々しく目の前の人に向けられる。

気持ちが落ち着いているときには、笑顔が見られるものの、最近では「つたこさんと心が通じている」と感じる時は急激に減ってきた。代わりに、「なぜ?なぜ?こんな行動になるのか?」「何を思っているのか?」と考える場面が増えてきた。

社会というものを捨て、理性というものを捨て、他者と自分を認識できなくなり、もちろん時間も行為の意味も、順序も、手順も・・・全て捨ててしまったつたこさん。最後に捨てたのは、言葉。

今は・・・言葉も・・・捨て去っている。

ただ、感情のままに・・・生きる人。

でも今日、

つた子さんは迎えの車から降りて部屋へ入る時、確かにしゃべった。

「昨日は来れんかって寂しかったよ。ずっと待ってたのに。今日は迎えに来てくれたから、ここへ来れた!とっても嬉しかったんよ!」

・・・と。

その時、

私にはつたこさんの言葉が聞こえた。

心の声が。

その時、確かに聞き取れたのだ。

 

そして、今日確かにつたこさんは、何度もいろんなことを話していた!

最近は怒ったときにだけ、大きな声でわめくつたこさんが、今日はただ、普通にしゃべっていた。

ひとりごと・・・

もちろん・・・何をしゃべっているのかは、聞き取れはしない。

でも、

何かを一人でしゃべっていた。

つたこさんのおしゃべり。

聞こうとしても聞こえない、

つたこさんのおしゃべり。

ただ、

心にだけ聞こえる、

つたこさんのおしゃべり。

 

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