近くの道路にこんな看板がある。
「親芋 ご自由にお取りください」
出荷できる里芋(子芋)は収穫するけど、かたい親芋は手間もかかる上に安いのか、出荷せずにこの看板を立てて、キャリーに入れて置いてある。
雨の日も、晴れの日も、キャリーに山盛り入れて置いてある。
気になっていたけど、車止めるにも何しろ道端なので目立つし、無料で頂くのもどうかな、ちょっと恥ずかしいと思う気持ちもあって、いつも通り過ぎていた。
でも端境期でどの野菜も高い。なので、思い切って、みかちゃんがある日もらってきた。
でっかい親芋は凸凹していて、分厚く皮を剥かないといけないけど、料理次第で美味しく頂ける。
真ん中あたりは煮物にして、煮物にできない所は細長く切って、フライドサトイモで頂く。
塩を多めに振って、青のりをまぶしたものと、カレー味の2種類を作って食べた。
美~味~!
次の日、じゅりちゃんがもらってきた。
量が増えたので、茹でてつぶして、コロッケにしてみた。
美~~味~~!!
その次の日、デイのスタッフにあそこの道で貰ってきた親芋だと話すと、場所を聞いたマイちゃんが、またまた貰ってきた。
またコロッケが作れるように、軽く茹でて冷凍庫に保存した。
そのまた次の日、休みなのに、さつきさんがまたまたまた貰ってきた。
カレーやシチューに入れて食べた。
あきなちゃんも、わいわいドライブ途中で立ち寄って、ついにデイのじい様を連れて親芋貰いに行く、池さん。
送迎、ドライブ、前を通るたびに、親芋貰いに立ち寄る、池さん。
全員出動で、親芋貰いに行く、池さん。
農家の方に会ったら、よ~くお礼を言おうと思っても、これだけ通ってるのに、一度もお目にかかれない。
なので、ここでお礼を言っとこう。
「お陰様で池さんの胃袋助かってます。ありがとうございます。」
それにしても、親芋の運命、ちょっと悲しくなる。
親芋は夏の暑い時も、雨が降らない時も、文句も言わず、立派に子芋を育てて市場に供給しているのに。
親と言うだけで、ただ固いというだけで、市場に出されることもなく、キャリーに入れられ道端に置かれる。
なんということだろう。
せっかく親になったのに、子どもだけ連れて行かれて独りぼっち。
親には親の意地もあるはずなのに。
親芋にも親芋のプライドがあるはずなのに。
ただで貰われてゆく親芋の気持ちに寄り添ってあげないと。
親の命を全うさせてあげないと。
とかなんとか・・・とブツブツ独り言を言いながら、私は今日も芋を料理する。
でもやっぱり固いな・・・と文句言いながら。
親芋さん、ほんとにありがとう。
親芋さん、感謝してます。
親芋さんの命を、皆でちゃんと頂きます。
善意の親芋に助けられて、本日も池さん頑張っております。
年と共に、独り言が増え、しわもシミも増え、思い込みも思い違いも増え、どうにもならない。
どうにもならないけれど、親芋みたいに固くならないように、無料でどうぞと言われないように、
柔らかい心を維持しつつ、しなやかに年を重ね、毎日を過ごしていきたい。