「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫のぷらっとウオーク・・・無重力下で脳ミソは何を考えるだろうか③

2012-01-20 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

無重力下で脳ミソは何を考えるだろうか③
                                       情報プラットフォーム、No.292、1月号、2012、掲載



  無重力下では浮遊することを利用して、液体からの真球の結晶を得ようとするもの、容器なしの無接触溶融により汚染のない結晶を得ようとするも の、液滴や気泡の動的挙動の研究等がある。

無重力下では熱対流がないために別のマランゴニ対流と呼ばれる現象が顕在化してくる。濃度差や温度差に よって液体の表面張力が異なることから界面や表面と内部に対流が生ずるのである。実験の成否は容器の材質に大きく依存する。


  素人にわかりやすい提案は、どちらかというとライフサイエンス実験の方に多いように思える。生物の持っている体内時計が宇宙ではどうなるか、 細胞の電気泳動法による分離、などがある。蜘蛛がどんな巣を張るかという子供の提案はすでに試みられている。

宇宙酔いなど生理的な現象に対して人 間はすぐに適応して平常に戻るが、骨も中のカルシウムは減少しつづけるという。寝たきり老人と同じ状況と思われる。将来の宇宙旅行にとって解決し ておかなければならない問題である。


  無重力下の実験を考えるとき注意すべきことを2、3述べておきたい。できればon-off操作程度で実験操作がやさしく簡単であること、簡単 な操作でも所期の目的の通りに成功に導くための装置・サンプルアセンブリーに工夫すること、万一の場合でも人体に危険を及ぼす可能性の少ない物質 を選ぶこと、装置・試料の総重量をできるだけ軽くすること、エネルギー消費が少ないことなどである。


  いずれにしても巨額の費用を賄えるほど優れたものが現在つくれるとは思えないのだから、すぐに役に立つ材料の製造を目標にして無重力下の実験 を考えることは得策ではない。無重力下で生ずるさまざまな現象を正確に把握し、物理的・化学的な考察を可能にするような基礎的な地道な提案を尊重 することが、回り道ではあるが近道ではないだろうか。


  結論は、残念ながら、重力下に置いた2次元的思考が中心の脳ミソではあまり良い考えは出てこないだろうということである。日常我々がなにげな く使っている動詞は縮退することを念頭に置くことも役に立つだろう。逆立ちして考えるのも発想の転換の一方法かも知れない。望ましいことは、脳ミ ソを無重力下に置いて考え直すことではないだろうか。


  また、ゆとりと遊びの心がユニークな発想の助けになると思われる。俳人や歌人をスペーシシャトルに乗せて日本文学の代表的表現形態である俳句 や和歌を詠んでもらうのはどうだろう。宇宙と地上でやり取りする連歌はどうだろう。


「地球は青かった」よりも素晴らしい表現がでてくることが期待 できる。このとき季題はどうなるだろうか。どんな動詞を使うだろうか。また、秋の夜長に決められた時間に人工の流れ星をスペースシャトルからつく り、日本中で鍵屋・玉屋と楽しむのはどうだろうと、酒のさかなとして会う人ごとに話している。

もちろん、スポンサーを捜すことはそれほど困難では ないだろう。大部分の人は面白いと言ってくれるが、「それは難しいだろう」と現実的になる人が多い中で、あるグラフィックデザイナーの反応が最高 であった。彼の答は「それは打ち上げ花火ではなくて、打ち下ろし花火ですね」であった。(完)

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 これらの発想は高知県宇宙利用推進研究会(てんくろうの会)に引き継がれている。皆さんの頭が柔らかくなったところで、今年はさらに楽しい初夢を創り出せないものか。

 

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