「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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沖縄通信・・・沖縄で愛される中浜万次郎 その1

2010-11-19 | 沢村さんの沖縄通信

沖縄で愛される中浜万次郎 その1



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 沖縄に移り住んで驚いたことの一つに、中浜万次郎(ジョン万次郎)がとても、県民の間でよく知られていることがある。


二〇〇五年一〇月だったか、初めて沖縄本島の南部に行ったとき、地図に糸満市の大渡(おおど)海岸が中浜万次郎の上陸地点であることが記されていて、「ああ、万次郎は沖縄に上陸したのだった」と改めて認識した。


沖縄に移り住むまで、万次郎がアメリカから帰国する際、沖縄に上陸したことは、まるで失念していたというか、そもそも認識がなかったという方が正確だ。東京に三〇年余暮らしていたので、万次郎に対する関心そのものが薄れていたといってよい。


 


 この上陸地点の大渡海岸(小度浜=おどはま=といっていた)は、沖縄戦の終焉の地といわれる摩文仁(まぶに)のすぐ近くにある。


沖縄戦の際、住民は海岸の岩陰や小さなガマなどに隠れたが、激しい戦闘に巻き添えになり、地区住民の半数以上が犠牲になった悲惨な歴史がある。


でもいまは、海岸に岩礁が広がる浜は、シュノーケルをする若者が集まるポイントになっている。万次郎が漂流した仲間二人とボート「アドベンチャー号」を漕いでこの浜に上陸したのは一八五一年二月三日のことだ。


いまから一五八年も昔になる。浜辺に立って「万次郎はどんな思いでこの浜に上陸したのだろうか」と考えながら、真っ青な海と空を眺めると、なにか感慨深いものがこみあげてきた。


 


 その後、図書館で万次郎に関する著書を探してみると、なんと万次郎の関する著書は、沖縄関係図書のコーナーに並べられている。


しかも、沖縄の人が、万次郎の生涯を書いた本が、青少年向けや絵本を含めて何冊も沖縄の出版社から出されていることにまた驚いた。


「上陸しただけで、こんなに万次郎本があるとは、いったいどういうことだろうか」「沖縄でなぜこんなに万次郎が注目されているのだろうか」と関心がわいてきた。


さらに、「ジョン万次郎を語る会」という団体まであって、活動していることを知り、なおさら興味がわいてきた。沖縄に上陸したといっても、滞在したのはわずか半年ほど。「万次郎はなぜこんなに愛されているのだろうか?」。


 


万次郎を語り継ぐ沖縄の取り組み


本題に入る前に、沖縄での万次郎に関する主な取り組みを紹介しておきたい。


万次郎が琉球に上陸して、一四〇年の節目に当たる一九九一年、万次郎ゆかりの豊見城村(とみぐすくそん、現在は市になっている)に在住する何人かの有志によって「ジョン万次郎を語る会」がつくられた。


会は、「万次郎伝」の執筆を長田亮一氏に依頼し、長田氏は九一年一〇月、『ジョン万次郎物語』を同会から刊行した。


その後、会はシンポジウム、講演会など催し活動を続けている。一九九三年には、万次郎の生まれた土佐清水市と豊見城市が姉妹都市を締結し、児童生徒の交流など行うようになった。


 


万次郎が沖縄に上陸して一五〇年目にあたる二〇〇一年二月三日、豊見城市内で「万次郎来村一五〇年を祝う会」が開かれた。


この年、六月一二日から「沖縄タイムス」紙上で「絵物語・琉球に上陸したジョン万次郎」が一二回にわたり連載された。著名な版画家の儀間比呂志さんの文・画、神谷良昌さんの案によるものだ。


 


二〇〇二年五月には、万次郎から四代目の中浜博さんが、万次郎の子孫としては初めて沖縄を訪れて、万次郎が滞在した豊見城の高安家の子孫と対面した。


博さんは「万次郎が沖縄で親切にしてもらったことは代々伝わっている」と述べたという。この年、一二月には、豊見城市の市制施行記念自主企画事業として、長田氏の著書を原作にして市民劇「歴史ロマン・ジョン万次郎の夢~豊見城編」が上演された。


二〇〇六年一一月には、劇団四季のファミリー・ミュージカル「ジョン万次郎の夢」が宜野湾市で上演された。


 


二〇〇六年四月に、第一〇回豊見城市教育長杯(ジョン万カップ)少年野球交流大会が行われ、土佐清水市からも二チームが参加した。二〇〇七年九月には、万次郎の子孫で五代目の中浜京さんが豊見城市に来て「私の大好きなジョン万次郎」と題して講演した。


二〇〇八年一二月には、「寺子屋ニッポン!じんぶん伝―ジョン万次郎琉球へ」が沖縄テレビによって制作され、フジテレビ系列で放送された。


万次郎はなぜ琉球を目指したのか、琉球上陸は偶然ではない、綿密な計算があったというのが主題になっている。


HN:沢村 (二〇〇九年二月三日、万次郎の沖縄上陸から一五八年目の日に) 月刊誌「高知人」からの転載




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