「ぷらっとウオーク」 情報プラットフォーム、No.205、10(2004)
{茸はこの木}
キノコの俳句・川柳などを集めてみた。手もとにあるものをご紹介しよう。俳句での季題は当然で秋である。
俳諧から。
手の前に蝶の息つく茸哉(一茶)
見つけたと伸ばす手の先に、先客がゆっくりと羽を動かしている状景である。どうしようかと少し躊躇するキノコ採りである。
うつくしやあら美しや毒きのこ(一茶)
ベニテングタケだろうか。このような毒々しいキノコを図鑑で見たことはある。カラー写真の世界である。
椎茸のほだ木精根尽き果てり(若林直子、俳句歳時記)
自分の身に置き換えているように思える。暗い林の中でうち捨てられているほだ木である。ほだ木の体積で椎茸の総生産量は決まる。もうキノコは生えないのである。
舞茸や杉箸ふとき坊料理(桂 樟渓子、俳句歳時記)
これはキノコを食べる時の一句である。精進料理であろうか。杉箸は太いのでだろうか、長いのだろうか。
狂歌から一句。
秋の田のかりほの庵の歌かるた
手もとににありてしれぬ茸狩(四方赤良、歌ごよみ秋)
有名な天智天皇作の和歌のもじりになっている。このようなものを狂歌と呼ぶ。百人一首のかるた会の様子である。札もキノコも、そこにあっても見つけるのは大変でる。
川柳、バレ句から一句。
初茸を食うと娘の声が錆び(俳風柳多留)
裂けたところや切り口が空気に接して紫色に変色する初茸にかけてあり、意味深長である。川柳の中でも、エロっぽいものを破礼句と呼んでいる。松茸の句は山ほどある。
ところで、表題には仕掛けがある。気が付くだろうか。言葉遊びの一つである回文になっている。「竹やぶ焼けた」、「僕は川久保」などが回文の例である。
注)「森ときのこを愛する会」の会報、Fungus, No.10 (2001)への投稿文を追補した。
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