「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・偏見

2010-11-21 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

「ぷらっとウオーク」                  情報プラットフォーム、No.204、9(2004)
{偏見}


  これが家族旅行のラストチャンスと考え、息子が修士2年、娘が大学4年の夏休みに家族4人でアメリカ旅行をした。まだ行ったことのないアメリカ南部を選んだ。

ボストンでの国際会議の後、日本からの家族をアトランタ空港に出迎えた。キング牧師の墓所や教会を訪れ、ウイスキー醸造所のあるリンチバーグ、歌に出てくるチャタヌガ駅、ロックンロール時代の名残を残すナッシュビルなどを廻り、西部開拓を記念するゲットアウエイ・アーチのあるセントルイスまでのドライブである。

天気図のホット・スポットを追いかけて、その中に分け入って行くような猛暑の毎日である。車のクーラーはフル回転。今日一日のドライブを終わり、予約したホテルの駐車場に我がレンタカーを休めた。

 ロビーが大混雑である。子供達が走り廻り、老若男女の黒人ばかりである。70~80人は居る。一瞬、予約したホテルが良くなかったと思い、家内と顔を見合わせた。

5階の部屋から下に見えるプールが急に騒がしくなった。先ほどの黒人のグループである。プールサイドのデッキチェアーに腰を下ろしているのは90才に近いと思われるおじいさんとおばあさんである。皆がつぎつぎと挨拶に来る。にこやかに挨拶を返している。そう言えば、ロビーに「〇〇〇家族ご一行様」と大きく掲示されているのを思い出した。

子供達、孫達、曾孫達、そしてその家族達に囲まれて、穏やかに、ゆったりと座っているお二人はとても幸せそうである。この二人から始まって、こんなに素晴らしい一族に発展して来たことを、集まったみんなが誇りにしているように見える。


 おじいちゃんやおばあちゃんに「若いときには大変な苦労をなさったのでしょう」とお話しを伺いたくなった。チェックインのときに、「選んだホテルが良くなかった」と一瞬でも考えたことを本当に恥ずかしいと思った。

 そして、1963年8月28日にリンカーン記念堂で行われたキング牧師の有名な演説を思い出していた。「私には夢がある。何時の日か私の4人の幼い子供達が肌の色によってではなく、人そのものによって評価される国に住む時があるという夢である。」のように始まり、「私には夢がある。」が何度も繰り返され、「自由です。ついに私達は自由になったのです。神様。自由になったのです。」で終わる素晴らしい演説です。

 差別の歴史を知り、誰の心にもある偏見と向き合ったアメリカ南部の旅行であった。

 

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

 高知県香美郡土佐山田町植718   Tel 0887-52-5154



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