「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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三郎さんの昔話・・・怪つり(かいつり)

2010-11-26 | 三郎さんの昔話

怪つり(かいつり)

 大正十年頃といえば約七十年余り昔の話。当時の子供にはお年玉をもらう喜びは少なかったが、面白い行事の楽しみがあった。
 お正月の十五日は、待ち焦がれた「かいつり」の晩である。
 当時は親にねだって、狐や天狗のお面を買ってもらい、夕飯もそこそこにすまして、友達三、四人が思い思いの狐や天狗のお面を持って集まり、
「さあ怪い釣りに行こう」ときよい立ち、紙で張り合わせた厚いお面、色鮮やかに鼻高でピンと口髭の狐のお面や、鼻の高い天狗のお面を顔に付け、コンコンやプープーッと狐や天狗の鳴き声を真似しながら、隣近所を回りながら、「かいつりじゃ、怪い釣りじゃ」と口々に声を張り上げて、家の前で騒ぐと、家のおんちゃんがおばさんに、「かいつりじゃ、早ようお餅をやれ」と言うてあん餅や角餅を皆に一つずつくれる。「おうきに、コンコン、プープーッ」ではね回って次の家へ。
 「かいつりじゃ、お餅をやれや」そしたらおばさんが「しもた、お客が多うて無うなった、どうしよう」おんちゃんが「しょうがない、皆に一銭ずつやれや」と、かいつりのみんな一銭貰って喜んで、コン、プーッとはねながら次の家。
 「かいつりじゃ、かいつりじゃ、コンコンプープーッ」と声張り上げると、障子の内らから大きな声で、「怪い釣りはいらん」とどなられて、皆こけ逃げ。ああ怖い。
 子供のある家や親切な方々は、伝統的な子供らの楽しみの一つの「かいつり」を快く迎えて愛しんでくれましたが、たまには偏屈でガンコで、子供に嫌われる家もありました。
 「怪い釣り」を考えてみると、怪しい狐や天狗、怪人が家に入られては困る。早く物を与えて「怪いをおだて釣り」追い返す、節分の豆で鬼を追い返す行事と同じで、家の安全を願う行事の一旦が、子供らに楽しみをもたらし愉快であった。

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