今週の『週刊エコノミスト』の特集「良い貿易 悪い貿易」はかなり良かった。
実質的に、自由貿易やTPPなどの経済協定への厳しい批判となっており、
米の要求に屈してTPPを推進してきた安倍政権と民主党政権の愚かさが分かる。
指摘されているように「米国の本質は保護貿易」なのである。
そうした不都合な真実が、現下の貿易停滞で浮き彫りになってきたのだ。
経済学の所謂、新古典派や「比較優位説」に疑いの目が向けられていること、
米国民が自由貿易に対して根強い不信を抱いていること、
その不信を決定的なものとしたのがNAFTAであること。
現下の状況を整理するには30頁の「現実離れした自由貿易モデル」が良い。
32頁ではグローバル化と民主政治と国家主権の三つは同時に成り立たないという
「世界経済の政治的トリレンマ」が紹介されている。
ただ、この著者はブレトンウッズ体制を評価しグローバル化が長続きしないとしているが、
ブレトンウッズは米の圧倒的優位の上に立脚したものである上に、
企業や新興国、小国にとってグローバル化は利益の最大の源泉なのでその見通しは外れる筈である。
最も評価できるのは38頁、川北稔・阪大名誉教授の執筆による
「大英帝国が始めた自由貿易 特権階級の蓄財に利用」である。
自由貿易の祖であるイギリスでは、自由貿易を推進したのが経営層と金融業であり、
世界大戦時の食糧危機に繋がったため英国民の不満が強まり、社会民主主義的政策転換の原因となった。
特権層、利権層が自己利益の追求のため政策を歪めるという現代と酷似した構図であると言える。
(エントリーのサブタイトルはこちらから)
他方、期待した割にいま一つだったのは「日本は自由貿易で発展したのではない」だ。
イデオロギーの強い執筆者を選んだ編集部の失敗であろう。
日本の高度成長は人口要因が大きいと指摘するデービッド・アトキンソン氏か、
保護貿易と自由貿易の対比で鋭い問題提起を行っている渡辺惣樹氏の方が遥かに良かっただろう。
▽ 実は、自由貿易時代のイギリスより保護貿易時代のアメリカの方が経済成長率において勝っている
◇ ◇ ◇ ◇
『ダイヤモンド』の鉄道・民営化特集はよく読み込むとなかなか興味深い。
観光列車が採算性に劣ること、横並びになりかけていること、
割増料金の座れる通勤列車が増えていること、等々。
(最後の点は、誌面では言及されていないが高齢化の影響かもしれない)
しかし、最も興味深いのは葛西会長へのインタビューだ。
民営化においての功労者であるのは衆目の一致するところであるが、
今後のリニア計画についていかにもザル勘定で、
このままで行けば大失敗確実であろうと推測される。
過去の成功が未来の失敗の誘因になる可能性がまさに今、刻々と高まっている。
他には、名古屋の校風・学閥特集が興味深かった。
こういう記事を作らせると本当にダイヤモンドは上手だ。
中京圏ではきっと大きな話題になっていることだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』は銀行特集にフィンテックを絡めた感じ。
ダイヤモンド特集ほどの迫力はないような印象だった。
メイン特集よりも後ろの方の中川政七商店の記事の方が遥かに良質である。
名声は何度か聞いていたが、成る程と思った。
矢張り、旧態依然の仕組みや構造からイノベーションは出ず、
前例のない試み、業界の慣習打破がなければ真の革新は生まれないのだ。
だからこそイノベーターは旧勢力からバッシングされる、ということなのだ。
佐藤優氏の連載コラムは最近おかしいと思う。
北方領土交渉の直前で突然、安倍政権への批判がトーンダウンし、
いかにもロシア側がシグナルを送ってきているとの論調に転じた。
今回も南スーダン問題で安倍政権が「冷静に判断」などとしている。
真に冷静な判断ができていれば、そもそも南スーダンに自衛隊を出さない筈であり、
歴史に名を残したいという愚劣な政治的野心が疑われるこの自衛隊派遣について、
何らかの隠れた理由で官邸を擁護しているのではないかと疑いたくなる。
◇ ◇ ◇ ◇
次週の注目はダイヤモンド、アート特集はかなり期待できる。
▽ アートへの注目はバブル崩壊の前兆、という点でも興味深い
▽ 珍しいアニメ特集、江戸後期と現代が閉塞性と現実逃避で共通すると山田昌弘教授が指摘したのを思い出す
▽ メイン特集は何とも評価できないが、外債で大損失が出ていると噂される地銀の動向は重要
「カリフォルニア州独立運動」を扱ったエコノミストリポートは見ておきたい。
実質的に、自由貿易やTPPなどの経済協定への厳しい批判となっており、
米の要求に屈してTPPを推進してきた安倍政権と民主党政権の愚かさが分かる。
指摘されているように「米国の本質は保護貿易」なのである。
そうした不都合な真実が、現下の貿易停滞で浮き彫りになってきたのだ。
経済学の所謂、新古典派や「比較優位説」に疑いの目が向けられていること、
米国民が自由貿易に対して根強い不信を抱いていること、
その不信を決定的なものとしたのがNAFTAであること。
現下の状況を整理するには30頁の「現実離れした自由貿易モデル」が良い。
32頁ではグローバル化と民主政治と国家主権の三つは同時に成り立たないという
「世界経済の政治的トリレンマ」が紹介されている。
ただ、この著者はブレトンウッズ体制を評価しグローバル化が長続きしないとしているが、
ブレトンウッズは米の圧倒的優位の上に立脚したものである上に、
企業や新興国、小国にとってグローバル化は利益の最大の源泉なのでその見通しは外れる筈である。
『週刊エコノミスト』2017年03月28日号 | |
最も評価できるのは38頁、川北稔・阪大名誉教授の執筆による
「大英帝国が始めた自由貿易 特権階級の蓄財に利用」である。
自由貿易の祖であるイギリスでは、自由貿易を推進したのが経営層と金融業であり、
世界大戦時の食糧危機に繋がったため英国民の不満が強まり、社会民主主義的政策転換の原因となった。
特権層、利権層が自己利益の追求のため政策を歪めるという現代と酷似した構図であると言える。
(エントリーのサブタイトルはこちらから)
他方、期待した割にいま一つだったのは「日本は自由貿易で発展したのではない」だ。
イデオロギーの強い執筆者を選んだ編集部の失敗であろう。
日本の高度成長は人口要因が大きいと指摘するデービッド・アトキンソン氏か、
保護貿易と自由貿易の対比で鋭い問題提起を行っている渡辺惣樹氏の方が遥かに良かっただろう。
▽ 実は、自由貿易時代のイギリスより保護貿易時代のアメリカの方が経済成長率において勝っている
『TPP 知財戦争の始まり』(渡辺惣樹,草思社) | |
◇ ◇ ◇ ◇
『ダイヤモンド』の鉄道・民営化特集はよく読み込むとなかなか興味深い。
観光列車が採算性に劣ること、横並びになりかけていること、
割増料金の座れる通勤列車が増えていること、等々。
(最後の点は、誌面では言及されていないが高齢化の影響かもしれない)
しかし、最も興味深いのは葛西会長へのインタビューだ。
民営化においての功労者であるのは衆目の一致するところであるが、
今後のリニア計画についていかにもザル勘定で、
このままで行けば大失敗確実であろうと推測される。
過去の成功が未来の失敗の誘因になる可能性がまさに今、刻々と高まっている。
『週刊ダイヤモンド』2017年 3/25号 (国鉄 vs JR) | |
他には、名古屋の校風・学閥特集が興味深かった。
こういう記事を作らせると本当にダイヤモンドは上手だ。
中京圏ではきっと大きな話題になっていることだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』は銀行特集にフィンテックを絡めた感じ。
ダイヤモンド特集ほどの迫力はないような印象だった。
メイン特集よりも後ろの方の中川政七商店の記事の方が遥かに良質である。
名声は何度か聞いていたが、成る程と思った。
矢張り、旧態依然の仕組みや構造からイノベーションは出ず、
前例のない試み、業界の慣習打破がなければ真の革新は生まれないのだ。
だからこそイノベーターは旧勢力からバッシングされる、ということなのだ。
『週刊東洋経済』2017年3/25号 (大再編、金融庁、フィンテック 銀行マンの運命) | |
佐藤優氏の連載コラムは最近おかしいと思う。
北方領土交渉の直前で突然、安倍政権への批判がトーンダウンし、
いかにもロシア側がシグナルを送ってきているとの論調に転じた。
今回も南スーダン問題で安倍政権が「冷静に判断」などとしている。
真に冷静な判断ができていれば、そもそも南スーダンに自衛隊を出さない筈であり、
歴史に名を残したいという愚劣な政治的野心が疑われるこの自衛隊派遣について、
何らかの隠れた理由で官邸を擁護しているのではないかと疑いたくなる。
◇ ◇ ◇ ◇
次週の注目はダイヤモンド、アート特集はかなり期待できる。
▽ アートへの注目はバブル崩壊の前兆、という点でも興味深い
『週刊ダイヤモンド』2017年 4/1号 (美術とおカネ 全解剖) | |
▽ 珍しいアニメ特集、江戸後期と現代が閉塞性と現実逃避で共通すると山田昌弘教授が指摘したのを思い出す
『週刊東洋経済』2017年4/1号 | |
▽ メイン特集は何とも評価できないが、外債で大損失が出ていると噂される地銀の動向は重要
『週刊エコノミスト』2017年04月04日号 | |
「カリフォルニア州独立運動」を扱ったエコノミストリポートは見ておきたい。