みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

『週刊ダイヤモンド』12月1日号 -「年金の給付水準が高いことが積立金不足の根本原因」と野口悠紀雄氏

2012-11-30 | 『週刊ダイヤモンド』より
週刊ダイヤモンドの特集は就職市場分析でした。
全体的なトレンドと新しい変化に重点を置いている印象。

雇用問題として鋭く裏面に切り込んだ先週の東洋経済サブ特集と好対照を見せています。
新卒及びその関係者はダイヤモンド、マクロ経済や雇用政策に関心があれば東洋経済がお薦め。

『週刊ダイヤモンド』2012年 12/1号


 ▽ 比較すると興味深い △

『週刊東洋経済』2012年 11/24号


エントリーのサブタイトルに挙げたのはP118のコラムで、
野口悠紀雄氏による「年金積立金不足は将来を映す水晶玉」。
企業年金も含め公的年金の根本的な問題は
運用の失敗ではなく給付水準が高過ぎること

と不都合な真実を明確に指摘した堂々の正論です。

運用利回りと割引率の実態を直視せず、
少しでも年金削減があると「財産権侵害だ!」と叫び出す連中は
恥ずべき利己的な守銭奴と考えてほぼ間違いない。

    ◇     ◇     ◇     ◇

今週の『週刊エコノミスト』は特集「資源ブームは終わった」でしたが
明らかに「終わった」という程の深刻な状況ではないですね。
中国経済の成長鈍化に気づかず高値掴みした人々が困っているだけです。

P25では交易条件が悪化しても下がらない豪ドルについて触れられており、
資源ナショナリズムの動きを強めるインドネシア経済分析とともに
バブルはないにしろ資源価格は簡単に下がらないことを示唆するものです。

『エコノミスト』2012年 12/4号


あと2箇所、P84の「山林資源で深刻化する幽霊地主」と、
P104の「信金に訴えられる新銀行東京」にも注目したい。

東京都民があんな人物を知事に選んでしまったために
新銀行東京が信金に提訴されて現在連敗中とか。
本当に馬鹿らしいにも程がある。

    ◇     ◇     ◇     ◇

週刊東洋経済のアマゾン特集は踏み込みが甘いと思う。
アマゾンのシビアで合理的な低コスト経営と
サードパーティを活用した市場占有戦略の凄みを分かっていないのでは。
…投資家からの評価が高いのはそれなりの理由があるのだ。

『週刊東洋経済』2012年 12/1号


▽ こちらなどがより参考になる

『ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』


    ◇     ◇     ◇     ◇

来週号はダイヤモンド誌の得意分野である
保険特集で戦いを挑んだ東洋経済に注目したい。

▽ よくあるだけに焦点の絞り込みがポイントとなる生命保険特集

『週刊東洋経済』2012年 12/8号


▽ ダイヤモンド誌の特集は内容を見てみないと判断できない

『週刊ダイヤモンド』2012年 12/8号

マネー誌と内容が重複しやすい分野をどう工夫するのか?
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東北での送電網整備、風力発電増強を選挙公約にすべき - 東北電力も遂に200万kWまで受け入れ拡大

2012-11-29 | いとすぎの見るこの社会-地球環境を考える
衆院選でなぜ風力発電への投資が話題にならないのか全く理解できない。

原発再稼働は事実上不可能になっており、再生可能エネと省エネは必須である。
コストの安いエネルギーで地域経済に大きく貢献することができ、
しかも被災地の復興に貢献するのは何と言っても風力だ。

これまで原子力での利益独占の上に安住して
風力発電に全力で抵抗してきた電力大手も少しずつだが
風力発電の受け入れや新設に積極的になっている。

特に原発立地自治体には風力を初めとする新しい選択肢を与えるべきである。
21世紀は間違いなく原子力停滞、風力急成長の時代になるからだ。

 ↓ 参考

世界の風力発電は10年で6倍に急増中 - 日本も遅ればせながら風力推進、茨城県鹿島沖に大型風力の建設へ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/67e2f8b3c51e19dd35da13b6e86a7497

原発30基分の洋上風力発電投資、英国の総電力の3割を賄う計画 - 日本でも5MW級の巨大風車開発へ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d3f0f93629c0fe73dad015335aea17fe

▽ 東北だけで3000万kWを超える風力発電の潜在能力がある

『風力発電が世界を救う』(牛山泉,日本経済新聞出版社)


▽ 日本はスペインやデンマークより風力の活用が下手過ぎる

『総力取材! エネルギーを選ぶ時代は来るのか』(NHK出版)


新築住宅、エネ消費「ゼロ」 グリーン政策大綱判明(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO48853450X21C12A1EE8000/
”政府が月内にも閣議決定する「グリーン政策大綱」の概要が明らかになった。省エネルギー分野では太陽光パネルや熱効率の高い建築材に補助金を出し、 2020年までにすべての新築住宅のエネルギー消費を実質ゼロにする。北海道や東北に整備する風力発電用の送電網は、18年の使用開始を明記した。ただ予算編成や仕組みづくりは衆院選後の政権に委ねられる。〔以下略〕”

公共事業は非効率的だが送電網は別である。
投資事業と言っても良い。積極的な取り組みが必要だ。
何度も言うように、利権化している原子力関連予算を移転すれば容易である。


東北電、風力発電の受け入れ拡大 200万キロワットに(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB0905G_Z01C12A1L01000/
”東北電力は9日、他社からの風力発電の受け入れを200万キロワットに拡大すると発表した。これまで158万キロワットを上限としていたが、拡大しても技術的に問題がないことを確認した。既に受け入れが決まっている分を除いた67万キロワットを追加募集する。同日、2011年度募集分について26件の受け入れ候補を決定した。
 風の強さによって出力が変わる風力発電は電力供給に悪影響を及ぼす可能性があるため受け入れに上限を設けている。
〔中略〕
 11年度募集分では計34万キロワットの受け入れ候補を決めた。ユーラスエナジーホールディングス(東京・港)が秋田県由利本荘市で計5万1000キロワット、ジャネックス(福岡市)が岩手県一関市と宮城県登米市で4万キロワットの発電を計画している。”

遂に東北電力も姿勢を変え始めている。
今度の衆院選で自民の単独政権はあり得ないから、
このトレンドは変わらないであろう。
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北海道での大規模停電の混乱は、コージェネで防げた筈だ - 効率的な分散発電で停電に強くなり原発も不要

2012-11-28 | いとすぎの見るこの社会-コミュニティ関連
冬の嵐で北海道が大規模な停電に見舞われている。
このため一部の利権勢力にとって不都合な事実が発覚してしまった。

「原発再稼働せず大規模停電になると人命に関わる」とのプロパガンダが
喧しいほど叫ばれていたが、実際に停電を招いたのは送電網のトラブルだった。
原発停止とは何ら関わりのない要因である。

また、原発に代表される大型発電所にばかり頼っていると
重要な送電網がやられるだけでパニックが起きることが明白になった。

必死で復旧作業を行っている現場の苦労には頭が下がるが
最初から大規模集中電源に依存していることこそ
いざという時に何も出来ず寒さに震えることになる原因だ。

原発再稼働をさっさと諦めて分散電源に舵を切り、
ガスコージネと木質バイオマスを伸ばしていれば
停電でこれほど苦労することもなかったのだ。

学校や役所といったセントラルヒーティングに向いた施設は木質バイオマス、
給湯需要の大きいホテル・病院・飲食店・家庭は断然ガスコージェネが便利である。

「北海道で泊原発を再稼働させて厳冬期に備えるのは愚の骨頂である。
 それは一部の原子力利権勢力を潤わせこそすれ、
 北海道経済にも日本経済にも利益にならない。

 厳冬期の家庭や企業では膨大な給湯需要がある。
 家庭や飲食店がホンダのガスコージェネで発電し、
 ホテルや工場が川崎重工のコージェネ・システムを導入すれば
 そもそも電力不足になどなる筈がない」

と当ウェブログは主張してきた。
どうしてこれほど有効な内需振興策を進めないのか全く理解できない。

コージェネを全力で推進していれば、今回のように送電線が寸断されても
家庭も企業もダメージを激減させることができた筈である。

 ↓ 参考

北海道の電力不足懸念は原発が原因、コージェネと風力で解決可能 -「人命に関わる」は再稼働プロパガンダ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/34029cf38d57704541d226c11d9ddf81

ガス会社が原発を抹殺し、東電を圧倒する日 -「2030年には1000万kW分のコージェネ導入」と宣戦布告
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/416259413bd719c5f3987882f1720897

▽ 日本の発電部門の効率が悪い理由は、設備更新の怠りとコージェネ不足である

『国民のためのエネルギー原論』(植田和弘/梶山恵司,日本経済新聞出版社)


北海道、なお4万2千世帯停電 暴風雪で送電線被害(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/1128/TKY201211280911.html
”暴風雪で大規模な停電が発生した北海道では、一夜明けた28日も登別市や室蘭市を中心に停電が続いた。北海道電力によると、正午現在の停電世帯は約4万2500戸。道のまとめでは、午前6時時点で約20カ所の避難所に計約300人が自主避難している。
 北海道電は、移動式発電機車4台を登別市内の変電所に送り、28日未明から送電を始めるなど復旧作業を進めている。全面復旧は30日になる見通しという。
 停電は、各地で送電線に雪が付着したり、登別市の送電線の鉄塔1基が倒壊したりした影響で起き、被害は最大で約5万6千戸に達した。28日午前9時時点で約1万1500戸まで減ったが、その後、再び増加。北海道電が原因を調べている。〔以下略〕”

特に北海道・東北は原発や大型火力に依存していると供給リスクがある。
まして地域経済への波及範囲が狭く利権化している原発は論外である。

都市部はガスコージェネレーション、それ以外は木質バイオマスの熱供給で
エネルギー消費コストを下げ、供給リスクを低減させるべきである。
その方が遥かに広い地域に恩恵が及ぶ。

▽ 日本のガスコージェネレーションの技術は世界最高水準である

『大転換する日本のエネルギー源 脱原発。天然ガス発電へ』(石井彰,アスキー・メディアワークス)

※ 但しこの著者の推す燃料電池は、ホンダのコージェネにコスト対効果で完敗なので注意

北ガス、石狩に新タンク LNG貯蔵で国内最大級(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFC2600G_W2A121C1L41000/
”北海道ガスは26日、海外からの液化天然ガス(LNG)の受け入れ拠点として石狩湾新港に建設した石狩LNG基地に、2基目の貯蔵タンクを建設すると明らかにした。貯蔵量は20万立方メートルで国内最大級という。来春に着工し、2016年9月に完成する方針。原料に使う天然ガスの海外産への転換を早める。〔以下略〕”

北海道ガスがLNGの基地を新たに建設している。
石狩と苫小牧にタンクがあれば原発ゼロでもエネルギー供給に懸念はない。
都市部ではガス供給網を整備してガスコージェネでリスク分散すれば良い。

今回のような停電があっても不自由なく生活でき、
しかもエネルギー効率が上昇して安価な熱利用が出来る。
まさに一石二鳥三鳥の良策である。

電力大手にとっては「不都合な真実」だが、公共の利益を考えれば結論は自明だ。
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米WSJ紙「日本のどの政党も説得力がない」- 人口減少や電力会社による地域独占等の問題を指摘

2012-11-27 | いとすぎから見るこの社会-全般
ウォールストリート・ジャーナルの日本政治分析が面白い。
我が国の大手メディアの国際競争力がいかに低いかよく分かる。

政府債務の増大と人口減少の問題を前にして、
日本の政党が説得力ある解決策を示さないことを批判し、
地域独占の電力会社を改革しようとしていない、
法人税を殆ど払っていない日本企業には、法人減税を行う
自民党案は効果が乏しいことを指摘している。

原子力擁護の会社方針に従順なサラリーマン新聞だけでなく、
日本の大手メディアにこの水準を期待できないのが残念である。

WSJも政策のディテールはよく分かっていないらしく、
同じ間接税増税でも日本のように高齢者3経費にバラ撒くか
北欧のように頑張って働く労働者の支援に廻すかで違うこと、
日本の火力発電の効率が悪く、
原子力というレントに固執する電力大手が多量の輸入燃料を
無駄に使ってしまっていることを理解していないようだが
大局的なポイントは押さえている。

↓ どの政党も人口問題の死活的重要性を理解していない

日本のGDPが16%増える真の成長戦略は「女性雇用増加」- 韓国と同類の不平等さ、中国にすら負ける
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/3e998a613e089a435b2e5bfd8c374dce

▽ 国際競争力の高い北欧の施策を見習うべき





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


日本の選挙「さえない」=米紙が社説(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121127-00000009-jij-int
”【ニューヨーク時事】26日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本のさえない選挙」と題した社説を掲載した。国内総生産(GDP)の約2倍に上る政府の借金や人口減少など問題が山積する日本だが、総選挙では「どの候補も説得力のある解決策を示していない」と厳しい見方を示した。
 同紙は野田佳彦首相が推進した消費増税を「明らかに悪い考え」と指摘。もう一つの成果とする脱原発方針の決定に関しても「世界最高水準の電気料金を課している地域独占型の電力会社の改革を打ち出していない」と批判した。
 一方、自民党の安倍晋三総裁が打ち出す法人減税には「日本企業は法人税をほとんど払っておらず、効果は限定的」と指摘。逆に、安倍氏が交渉参加に後ろ向きな環太平洋連携協定(TPP)は「国内市場を刺激的な競争に開放する最良の機会だ」と強調した。”

概ね正しいが、WSJがTPPに期待するのは誤りである。
海外からの対日投資優遇の方が遥かに効果がある。
(先進国比で明らかに外国からの投資が少ないため)

↓ 参考

TPP最大の問題は「効果がない」ことである - JAを罵倒する経団連「大企業のためとは言いがかり」?
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/c80c6ddb5d5a17fb4b68e255fc8ed33d

▽ 自由貿易は必ずしも成長率にポジティブではない。

『TPP 知財戦争の始まり』(渡辺惣樹,草思社)


広域FTA、15年の妥結目標=交渉開始を宣言―アジア16カ国(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012112000600
”【プノンペン時事】日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国は20日、カンボジアの首都プノンペンで、広域的な自由貿易協定(FTA)である「域内包括的経済連携(RCEP)」協定締結に向けた交渉の開始を宣言した。2015年末までの妥結を目指し、13年の早期に交渉を始める。
 16カ国を合計すると、人口は約34億人と世界の5割、名目GDP(国内総生産)は約20兆ドル(約1600兆円)と世界の3割を占める。世界最大規模の広域経済圏が実現へ動きだす。
 これに先立ち日中韓は同日、3カ国のFTA交渉開始を宣言した。野田佳彦首相は、環太平洋連携協定(TPP)と日中韓FTA、RCEPを同時並行で推進する姿勢を強調。日本国内では当面、賛否が割れるTPP交渉参加をめぐる論議が焦点となる。
 20日の東アジアサミット終了後、関係国の首脳らがRCEP交渉開始式典を開き、16カ国首脳による共同宣言を発表した。〔以下略〕”

TPPよりも市場の成長性を考えればこのRCEP、
つまり広域アジアFTAの方が有望である。
TPPと違って例外規定も設定しやすく政治的にも容易だ。
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「この国はお金十分持っていてそんなこと言うからダメなんですよ」- 高級住宅地で怒る熊谷俊人・千葉市長

2012-11-26 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
ビジネスメディア誠で若き千葉市長・熊谷俊人の講演内容を公開している。
一読して驚愕させられるので是非参考にされたい。

既存政党は全て熊谷市長の手腕に劣っており、
天下り・外郭団体の改革、公務員賃金の適正化を断行して
ドラスティクな財政再建策を進めた実績は大したものである。

中でも注目すべきは高齢者向けのバラマキの存在を明確に批判した点だ。
このバラマキが選挙の票目当てであり、日本全体の病弊であることも
熊谷市長は鋭敏に察知されている。

当ウェブログは何度も繰り返して
高齢層向けのバラマキが20兆円を超えていて財政の病巣となっていること、
子供手当など比較にならないほどのバラマキになっていること、
高齢者向けバラマキが預貯金に化けて内需を沈滞させていること、
それが社会保険料負担増と相俟って現役世代を苦しめていること、
更には経済成長率の抑制要因となっている疑いが強いことを指摘してきた。

高齢層向けの給付は本当に貧しい人々、困っている人々だけに限定し、
合理化した予算を次世代を育成する現役世代に所得移転しなければ
この国は悲惨な衰退を迎えるであろう。

人口老化で経済破綻するような日本であれば
尖閣諸島を守るどころの話ではなくなることが
どうして分からないのか。近視眼の既存政党は猛省すべきである。

 ↓ 参考

年金給付が政府想定を大きく超え、15兆円増に - 日本経済新聞が果敢に世代間格差を批判
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/80073090e2f634205389cc4a0c1ca998

2025年に年収の3割が社会保険料に、絶望的な「見えない増税」の重圧 - 問題は消費税だけではない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/2ea1e05a8bbae75f316b16cce95935c5

▽ 世代間格差拡大の大きい日本の経済成長率は低い

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


▽ 年金の実態は「老人手当」、積み立ててもいないカネのバラマキ

『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(原田泰,新潮社)


敬老会補助に銭湯無料券……千葉市が行ってきたバラマキ事業(bizmakoto.jp)
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1211/22/news019.html
”最年少政令市長が経験した地方政治改革(2):
 2009年に現役の市長では当時全国最年少、政令市長としては史上最年少の31歳で千葉市長に当選した熊谷俊人氏。それまでの60年間、副市長(=助役)出身の市長が続いた千葉市は役所体質がまん延し、累積債務が危機的な水準となっていた。
 就任直後に脱・財政危機宣言を発した熊谷氏。人件費削減、外郭団体の統廃合、事業仕分けなどの歳出削減を行うとともに、市税徴収率増加、資産経営やサービスの適度な有料化と歳入確保を打ち出し、ようやく財務指標に好転が見られるようになった。この3年間の取り組みについて熊谷氏自らが振り返った講演の内容を、4回に分けてお伝えする。

※この講演は2012年5月22日に熊谷氏がグロービスで行った講演を、千葉市とグロービスの許可を得て記事化したものです。

●事実上の飛ばしをやっていた千葉市

熊谷 千葉市の財政状況ですが、1988年には2000億円ほどしか借金がなかったのが、爆発的に借金が増えて1兆円を越えました。それから財政調整基金 ※、いわゆる貯金ですが、それも全部崩してしまって、200億円ほどあったのが7億円ほどになってしまって、それ以外にも基金はたくさんあったのですが、ほとんどの基金は取り崩してしまいました。
〔中略〕
 歴代の市長は右肩上がりの絵を描いて、その中で予算を作ってきました。そこのかじを変えられなかったんです。さっき言ったようなしがらみが続き、いろんな人たちから応援してもらったので、蛇口を閉めたくても多分できなかった。もう1つは、何とか大丈夫だという楽観的な気持ちもあったのではないか。この2つの中で借金だけが増えてきてしまいました。
 実質公債費比率※や将来負担比率※※という財政指標が連結ベースで政令市ワースト1位ということで、「何で議会は止められなかったんだ」とよく言われます。ただ、実質公債費比率や将来負担比率は、要は連結ベースで見るということです。夕張市が破たんした時に飛ばしをやっていたので有名だと思いますが、それは外郭団体や連結子会社に損失を飛ばして、4月1日時点に瞬間的に見えなくしていたんですね。
〔中略〕
 脱財政危機宣言というのは「これからちゃんと財政を良くしていくよ」という宣言で、やることは当たり前のことばかりです。収入を増やすためにちゃんとお金を徴収するということ、余っている資産は売るということ、受益者負担がないものから最低限のお金はとるということです。
 お金を削るところでは人件費を見直すこと、民間でできるものは民間に任せること、OBの天下りとかいらない外郭団体が生き残っているものをつぶすこと、事務事業を徹底して見直すこと、建設工事を本当に必要なものだけに絞っていくこと、こういう当たり前のことをやっていくわけです。


●市民が議会に関心を持つように

熊谷 人件費の削減では、私が就任した時、財政破たん寸前の自治体ということで、私を含めた特別職の給与を大幅にカットしました。名古屋市長の河村たかしさんが異常なことをやっているのですが、河村さんを除けば私が政令市で一番安いです。給料が安いというのは本来私は良くないと思うのですが、非常に削りまくった予算を市民に提示する以上、まず自分を切るということです。
 これも議会は切らしてくれなかったですね。「給与を削ります」と言ったら、「給与をカットする理由がよく分からない」「危なくないのに何でカットするんだ」と。私は「期末手当を半分カットします」「月額給与を2割カットします」と言ったのですが、「算出根拠が分からない」と言われました。「根拠と言ったって、明確に持っているわけではなくて、こんなもんでしょ」という話をしたのですが、財政再建の道のりを含めて、すべての全体像が見えない限り、そんなパフォーマンスはさせないということで、2009年6月に市長に就任して最初の議会に提示したら、継続審議になってしまいました。
 すると市民のみなさんから「ふざけんな」と非難の電話が殺到して、そこで彼らは議会での対応が市民の関心を得ていることに初めて気付くわけですね。
今まで無風状態でサロン的にやっていたのが、選挙を通して市民の関心が一気に高まってしまったわけです。今まで電話なんてしてこなかった人たちがガンガン電話をかけてきて、「市長がけしかけているんだろ」みたいに言われました。「そんなこと知りませんよ」とは言ったのですが。
 そういうことで次の9 月議会で彼らは承認してくれましたが、その時も落としどころを彼らは探りたいわけですね。いろんなことを言って継続審議にしてしまったので、普通の理屈だと次に賛成する理由がないということで、しょうがないので普通は市長は出ない常任委員会にわざわざ行って、「説明不足のところもございました」と若干わびを入れると、「よしよし」みたいな感じで決まりました。
 その後、職員給与をカットしました。最大9%ということで、政令市でも最大規模です。それから政令市で唯一ですが、退職金のカットまで実施しています。これも職員組合とは、大分ごねました。我々は橋下徹大阪市長とは違って、組合を悪者にしても後々ダメージが残るので、そういうことは極力せずにまとまれるんだったらまとまりたいということでした。ダメだったら全面戦争ですが。
 最大9%ダウンの提示をした時、当然彼らは反発をしたわけですが、交渉時期を異例なくらい長引かせて、予算の骨格を見せました。すると彼らは納得しました。後ほど説明しますが、高齢者を中心に予算カットの嵐でしたから、こんな予算を通したら、自分たちの給料も削っていないととても耐えられないということが、少なくとも幹部には分かるわけです。ですので、組合幹部はやむなしということで、相当突き上げを食らったみたいですが組合幹部も了解した中での大幅カットが実現しました。
 職員は3年間で200人以上削減しています。もちろんこれは仕事を減らした上での削減ですが、そういうことで人件費は私が就任する前と最新の予算では年間75億円ほど差が出ています。3年間の累計額で164億円削減しています。

 外郭団体の統廃合ではよく特殊法人が取りざたされますが、千葉市くらいの規模になると30くらいの外郭団体があるんですね。その中には必要な外郭団体も当然、いくつもあります。
 しかし、時代が変わって民間でできるものも外郭団体がやっているケースがあるので見直さないといけません。そして、すごく小さな単位の外郭団体もあるのですが、総務などの共通コストがどうしても高くなってしまうので、似たような業種は統廃合していこうということで、2つを解散させて、1つを統合、1つを事実上の休眠状態にしました。これは人がからむ話なので、ドラスティックすぎると後でよくないので、タイミングを見て、ひとつひとつ統廃合していく予定です。
 それから、その中で役員と職員の削減を進めています。市も偉い人たちの行き先を作らないといけないので、20人ほどしか職員がいないのに、役員が5~7人いるような外郭団体があるんですね。非常勤の役員が9人もいたのですが、よほどのことがない限りいらないので、3人まで絞りました。常勤の役員は41人から32人に減りました。
 最近は局長などを務めて辞めても、外郭団体に天下らない人が増えてきました。それはおいしくないからです。給料も大分削りましたし、「統廃合がお前の仕事だ」みたいな感じで、行政改革の先遣部隊として送りこまれるので、そこの職員から嫌われるわけです。天下りする人たちはそんなつもりではないわけです。残りの2~3年を市役所とのパイプ役を務めながら、それなりにやっていきたいという考え方の人たちなので、ちょっと仕事が割に合わないわけです。ですから、最近は「結構です」という人も増えてきました。
 外郭団体のトップでも、外部の人材が活躍できそうなものについては、民間から公募した人材を送り込むようにしていて、千葉都市モノレールは2010年から外部のコンサルタントに社長に就任していただいて、一生懸命頑張ってもらっています。今年度は産業振興財団というベンチャー支援をしたり、市内の企業のサポートをしたりする財団について、外部の金融などを経験した人に就任していただいています。
〔中略〕
 行政はコスト意識や収益を考えにくい、もしくは考えなくていいとなってしまっているので、仕事を減らしても何のメリットもないわけです。ただ怒られるだけで何のメリットもないので、減らすインセンティブがあまりないんです。ですから、どんどん増えてしまうわけです。仕事を増やすとほめられるし、「市民目線だ」みたいなことを言われてしまうケースもあるので、すごく増えるんです。
 ですから、全部ゼロベースで考えようということで、刊行物や報告、会議など、前例でやっていた業務を切っていきました。また、無意味に時間外勤務をやる人たちにも帰っていただこうということもやりました。

●高齢者層へのバラマキ?

熊谷 国の事業仕分けが有名になりましたが、我々はそれよりも先に事業仕分けをやりました。
〔中略〕
 国の事業仕分けとちょっと違うのは、我々はパフォーマンスがメインではないので、事前に見直したい事業を市民に公表しました。これに対して、利用者ややめてほしくない人もたくさんいるわけです。そういう人たちからの声を透明性の高い形で聞こうということで、市民から意見聴取できる形にして、事業仕分けの時にそういう声も併記する形で仕分け人に見せました。傍聴も可能で、時間が余ればそういう方々に発言の機会も与えました。障害者関係の補助などの福祉はあまりドライにやり過ぎると死活問題のようなものもあります。そういう意見も聞いた上で、切るべきか否か判断することをやりました。
 これはNHKなどでも取り上げられたのですが、結果的に廃止する事業など大幅な見直しが提言されました。例えば、見直し対象となった事業ですが、行政は票を集めるため、もしくは市民の歓心を得るためにいろんなことをやってきているんですね。
 その1つに敬老会の開催補助があります。敬老会を開催するに当たって、その地域にいる70歳以上の人数×830円を出すんです。これはいくつか問題点があって、まず1つは70歳という年齢を昔から変えていないんです。30年前は70歳というと長寿だったかもしれないですが、今の平均年齢は男性が79歳、女性が86歳です。平均寿命にもなっていないような人たちに出す理由は何なんだと。
 一応説明があって、家から出てくるから外出の機会になると。1年に1回ですけどね。それからお年寄りたちが一度に集まることで横のつながりが生まれる……というような、いろんな理屈が付いてくるのですが、そんなものは全部後付けです。
〔中略〕
 実は敬老祝い金という別の事業もあるんです。これは77歳、88歳、99歳の節目になった人たちに1~5万円のお金を出すというものです。少し前までは 70歳以上全員に毎年7億円とか出していたんです。絶対ありえないですよね。みんな投票に行きますから、ばらまいた方が喜ばれますよね。
 今でも77歳、88歳、99歳の時にお金を出すと、「市長様ありがとうございます」という手紙がたくさん届くんです。別に私のポケットマネーで出しているんじゃないんです。でも、“千葉市長熊谷俊人”で祝い金が出るので、何となく施しを受けた感じになって投票するわけです。よくできているシステムですが、私物化ですよね。
これもいずれ見直ししていこうと思っています。
〔中略〕
 我々は第一段階として、70歳以上を75歳以上に引き上げさせてくれ、830円を500円に削らせてくれと、平成22年度予算で出しました。すると議会が「ちょっとお年寄りに厳しいんじゃないの」ということで、でもあまり予算にいじる幅がなかったので、500円を650円まで戻したら、議会レポートで「市長の横暴を我々が止めた」「お年寄りに厳しいのを我々が止めたんだ」と喧伝されました。
 私も当時はお年寄りの一部から「市長が削ったんだよね」と言われました。「私が削りましたよ、おかしいから」と言いましたが。また、お金持ちの方々が住んでいることで有名な高級住宅街の敬老会に出た時、帰りに「市長、あれ何とか戻してくれない」みたいなことを言われて、「あなた、もうお金十分持っていますよね。こういうこと言っているからダメなんですよ、この国は」みたいなことになりました。
 でも、これは千葉市だけの話ではないんです。こんなのは全国的に行われているんです。お金のあった時代に作って見直しせず、投票に必ず行く人たちにばらまかれる施策が温存されまくっているわけです。
こういうのは議員が監視してこれなかったので、市民が監視しないといけない。議員はむしろ増やす側にいたわけですから。
 2つ目はシルバー健康入浴事業。これは65歳以上の独り暮らしの高齢者の方に、銭湯の無料券を年間48枚支給する事業です。銭湯に行くとお年寄りの気持ちも良くなる、外出支援になる、48回お風呂に入りにいくことで外出の習慣ができるといった理屈です。
〔中略〕
 もう1つ、これが私は一番すごいと思うのですが、針きゅうマッサージ施設利用補助です。これは一人暮らしという制限もなくて、65歳以上のすべての人が針きゅうマッサージを受けに行くと、上限24回で1回800円割引されるということです。「何で針きゅうマッサージなんだ」と思いますよね。ほかにもいっぱい健康支援があると思うのですが、針きゅうマッサージは割引が受けられるんです。毎年1億5000万円です。
 これをなくそうとしましたが、針きゅうマッサージ業界からすさまじいまでの反発がありました。それはそうですよね。年間1億5000万円が針きゅうマッサージ業界に流れるわけですから。1施設あたり、だいたい数百万円です。これがなくなってしまうわけですから、彼らにとっては死活問題です。ただ、我々は業界を生き残らせるためにやっているわけではないので、そんなの知ったことではないとなるわけですが、そこにまた議会、議員が絡んでくるわけです。大変でしたが、これもなくなりました。
 これは一例ですからね。ほかにもいっぱいありますよ。私が市長に就任して最初の予算で、60~70くらいの見直しを並べたものを作ったら議会がびっくりしてしまったのですが、先ほど申し上げたように一部修正はありましたが、通していただきました。私はひょっとしたら否決されるかと思ったのですが、この平成22年度予算が通ったのがすごく大きかったです。
 でも、市長に当選してすぐが一番求心力があるんです。私は圧倒的な得票で当選していますから(次点に5万3069票差の17万629票で当選)、その当時、誰も歯向かえないくらいの雰囲気があったわけです。後でやったらダメなので、この時に一番不評なことをやらないといけないということで、とにかく全部突っ込みました。
 議員にとってみれば、かなり認めたくない予算なわけです。彼らも苦しいわけですよ。支援者がいっぱいいるわけですから。決して彼らもひどい人たちなのではなくて、いろんな気持ちがあった中で、最終的には一部の修正だけで認めてくれたんですね。これは大きかったですね。一部ちょっと逃げましたが、彼らも橋を一緒に渡ってくれたという意味で、ここでほとんどのスリム化が終わったという感じでした。あまりテレビなどでは取り上げられなかったですが、地元メディアでは深夜まで及ぶ大闘争ということで、結構報じられました。
 いずれにしても我々は平成22年度に49億円削減して、平成23年度に24億7000万円削減し、平成24年度に21億5000万円削減と、ほぼ100億円近く身を削りました。我々の一般会計は3500億円ですから、相当な規模の金額を削りました。[堀内彰宏,Business Media 誠]”

素晴らしい内容なので全文を熟読されたい。
当ウェブログが「おかしな自治体はいくらでもある」と
厳しく批判してきた理由がよく理解頂けるものと思う。

また驚くべきことに、政権交代後の民主党が大失敗したスタートダッシュを
熊谷市長は見事にクリアしていることである。
高齢者向けバラマキのA級戦犯であり、いまだに頑として失策を認めない自民党も
熊谷市長に劣ること遥か遠いと言えよう。

▽ 高齢層の中に貰うことしか考えない利己的な者が少なからずいるのは明らか。

『大貧困社会』(駒村康平,角川SSコミュニケーションズ)


インタビューは第3回もあるそうなので大いに期待。
Comments (2)
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