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「年末には多くの資産の投資リターンがマイナスになる可能性」- ビル・グロス氏が警告、米利上げも後退か

2015-01-14 | 株式・為替マーケット全般
原油安の負の影響について重要な指摘が二つ出てきた。
一つは世界銀行、一つはビル・グロースである。

原油安の効果は世界経済の0.1%程度でしかない、
原油安が米利上げの時期を後退させる
との指摘であり、
他人の受け売りで「原油安で7兆円効果」などと世迷い言を吐く
我が国の閣僚とはまさに「次元の違う」鋭さがある。

年末年始にかけて様々な2015年の市場予想が語られた中で、
当ウェブログが注目したのは「債券王」ビル・グロースの見通しである。

債券王も近年は神通力が失われたかのように見えたが、
PIMCOを辞めた後になって斬れ味鋭いコメントを出している。

それは「2015年は低リターンに満足しなければならない」というもので、
年頭の経済誌やマネー誌で見苦しい提灯持ちを務める衆愚的な連中よりも
遥かに的確に現下の状況を言い当てている。

日米とも金融政策だけで成長率低下の問題を誤摩化すことはできず、
急速な少子高齢化と低い女性就労率、豊かな高齢層への所得移転で
アメリカより大きく成長率に劣る日本が異次元緩和もむなしく依然として低成長なのが現実だ。

▽ 量的緩和が日本経済を成長させていないことは、完全に実証された

『金融政策の死 ―金利で見る世界と日本の経済』(野口悠紀雄,日本経済新聞出版社)


「第一の矢は効いた」という誤った説があるが、「一時的な効果」しかない。
2013年の4Qで既にマイナス成長になっており、容易に予想できる惨状である。
当ウェブログは既に以下のように指摘している。

「安倍政権がただの無能ならまだしもましだが、
 日本経済を上向かせる能力には欠けていながら、
 破壊する能力はあるのだから非常に厄介である」

「週刊現代がオンラインで公開している記事が話題になっている。
 それはジム・ロジャーズ氏の大胆な予言で、
 アベノミクスの成果は短期的なものに過ぎないこと、
 結果的には日本経済を破壊する政策でしかないこと」

「その短期的な成果も「一部のトレーダーや大企業だけが潤っている」だけで、
 殆どの日本人にとっては無関係なものに過ぎないこと。
 (まさに今、起きていることである)」

「以前、当ウェブログは石井久・立花証券元社長への日経インタビューを取り上げ、
 熟読を強く推奨したが、内容はかなりジム・ロジャーズ氏の見通しと似通っている。
 ○市場活況はせいぜい1~3年
 ○10年後には予想もしないような円安へと進む
 ○中長期的には少子・高齢化が大きな問題
 ○一般の人が気づいた時には大きな損失が出ている
 ○政府が悪いのではなく、国民が愚かなだけ
 この一致は、余りにも不吉だ」

「残念ながら、ジム・ロジャーズ氏の主張はシンガポール程度の人口規模の発想であり、
 日本のような1億人を超す規模の人口「減少」大国で移民で人口減少を抑止することはできない。
 北欧型の高出生率を促進する合理的な社会政策の方が遥かに賢明である」

「また、TPPには年間数千億程度の貧相な効果しかない。
 当ウェブログが指摘したように成長率と人口規模でRCEPに及ばない」

「経済効果を言うならば女性就労率の向上の方が遥かに大きく、
 内需へのインパクトでもエネルギー効率を引き上げて
 電力大手のロスだらけの老朽火力を廃止する省エネ革新の方が優っている」

とは言え、多くのエコノミストも経済評論家もまともな有効策を提案していないのだから、
アベノミクスによる大惨事も当ウェブログの言う「コラテラル・ダメージ」も不可避である。

↓ 参考

「アベノミクスは日本経済を破壊する政策でしかない」- ジム・ロジャーズ、安倍首相の悲惨な没落を予言
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/be77d61983dc09d1c6e37ce8399e

アベノミクスの帰結は1000兆円超の政府債務+金利上昇 - 財務省が財政危機を事実上認める試算発表
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d7d54acd2408cc63f24a9d86b0d67753

▽ 金融業や投資家が儲かる大きな理由は、政策を操って自分に有利なように誘導するからである

『グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代』(クリスティア・フリーランド,早川書房)


今年は投資リターン低下、リスクテイク過去のもの=著名投資家(reuters)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0KF1RG20150106
”著名債券投資家のビル・グロス氏は6日、リスクテイクは過去のものになったとし、2015年は多くの資産にわたり投資リターンが低下すると警告した。
 グロス氏は月次投資見通しのなかで、「2015年は低リターンに満足しなければならない。リスクテイクの時代は過ぎ去った」とし、「年末には、多くの資産の投資リターンがマイナスになっている可能性がある」と警告した。
 こうした事態になった場合、米国債や高格付けの社債のほか、高配当の株式などに資金を振り向けるべきとの考えを示した。 
 同氏は前日、ドル高と原油安を踏まえると、米連邦準備理事会(FRB)は2015年中に利上げに踏み切ったとしても終盤になるとし、すべての先進国で金利はゼロ%近辺にどどまるとの見通しを示している。 〔以下略〕”

こちらがビル・グロース氏の発言。
年末年始の市場見通しの中では最も高く評価でき、実際に的中し始めている。

FRBの利上げが後退するとなると、今年のパフォーマンスはショートを的確に使うこと、
日銀の追加緩和の際に必ずロングポジションを取っておくことでほぼ決定されることになる。


世界の経済成長率、日欧低迷で15・16年見通しを下方修正=世銀(reuters)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KM2CT20150113
”世界銀行は13日公表した経済見通しで、2015、16年の世界経済の成長率見通しをともに引き下げた。
〔中略〕
 2015年の成長率予想は3%とし、昨年6月時点の3.4%から下方修正。16年についても従来予想の3.5%から3.3%に引き下げた。
 2017年については3.2%に減速すると見込む。
 世銀は米国と英国の成長見通しが堅調となる一方、ユーロ圏や日本といったその他の先進国・地域が引き続き景気停滞やデフレ懸念に直面するとした。
 世銀チーフエコノミストのカウシク・バス氏は記者団に対し、「世界経済は米国という単一のエンジンで動いている」と指摘。「これでは世界にとって明るい見通しとはならない」と述べた。

 新興国では、景気が減速する中国のほか、特にブラジルとロシアが世界経済見通しの重しとなった。バス氏はインドの経済成長率について、中国の2016年の成長率に追い付き、17年に7%前後に達するとの見方を示した。
 世銀は原油安について、原油輸入国の経済を押し上げるため、世界経済にとっては差し引きでプラスの影響を及ぼすとした。
 ただ、年内の原油相場は低水準にとどまると予想する一方、プラスの影響が経済成長見通しに反映されるまで数年かかるとしたほか、短期的に市場のボラティリティーを高め、シェールオイルといった非伝統的オイル向けの投資を抑制するとの見方を示した。
 そのため、原油安による今年の世界経済見通しに対する押し上げ効果は0.1%ポイントにとどまるとした。

 また、原油安は世界的にインフレ率を抑制しかねない。バス氏は、デフレ懸念がさえない世界経済見通しや米国賃金と相まって、米利上げを予想よりもゆっくりと進ませる可能性があると述べた。”

大きな話題となった世界銀行の発表。
日本経済がレヴェルの低いアベノミクスで停滞が続くのは分かり切った話で、
何故そこに慌てるのかは理解できないが。

それよりも重要なのは原油安の負の影響で、
ここまで押し上げ効果が少ないとなると日本の輸出も伸びず、
日本経済にとっては限定的な効果しかなさそうだ。

勿論、「原油安で7兆円効果」説も「日経平均2万円」説も風前の灯火である。

▽ 市場では、常に多数派が間違うものだ

『ヘッジホッグ―アブない金融錬金術師たち』(日本経済新聞出版社)


あと世銀の発表で興味深いのは成長率で停滞する中国がインドに追い抜かれるとの見通しで、
確かに今、香港とムンバイのインデックスに早くも織り込まれている現象だ。
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