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『週刊ダイヤモンド』11月9日号 - 日本の医療には既に20兆円近い公費が、保険料だけの問題でない

2024-11-07 | 『週刊ダイヤモンド』より
11月第1週は連休で経済誌も合併号となった。
先週書いた通り内容としてはエコノミストが最優秀だったが
実はダイヤモンドにも良記事が複数あったので今回、取り上げる。

エントリーのサブタイトルに挙げたのはコラム「数字は語る」、
行政システム総研・顧問の榎並利博氏による執筆である。
氏としては珍しく社会保障についての分析であり、
厚労省によると2023年度の医療費が47.3億円で
コラムによれば保険料以外の公費負担が約4割であるので
概算すると日本国民は高額な保険料負担以外にも
年19兆円もの医療費を負担している
ことになる。

氏は既に失敗しかけているマイナンバーで事務費の合理化をと唱えるが、
そもそもこれほど巨額の公費を食い潰しているのであれば
小手先の合理化で済むような話では全くなかろう。

マイナンバーが使えない制度なら既に付与されている保険証か
納税者のナンバーを用いて資産を補足し、豊かな高齢者には
現役世代並みの窓口負担を課すべきである。
執筆者も、同世代や先輩方が医療費負担をツケ回しすることで
下の世代を貧しくしている現実を認識し真摯に対処策を考えるべきでは。

『週刊ダイヤモンド』2024年11/2・9合併特大号 (最強財閥・オーナー企業)


池上氏の連載は相変わらず良かった。
旧東独でAfDのような極右政党が台頭する背景に、
旧東独における平均所得の低さを挙げている。
経済成長率が低下してインフレに苦しむ米国で
トランプのようなポピュリストが大統領に二度もなれたのも
経済的要因以外に考えられない。経済低迷は右傾化を招くのだ!
そう考えれば、主要国で最も早く右傾化が指摘されたのが日本であり、
安倍政権が長期安定を保ち得たのも経済低迷が元凶であると判断できよう。


書評では佐藤優氏が、国民の非合理な感情論が国益を損なうと
取り上げた本とは殆ど関係のない自論を展開しているが
それは寧ろドイツ極右、安倍政権、トランプ再選に当てはまる話だ。
しかも氏は先週のAERAでは北朝鮮の兵士はカフカス方面の
建設要員として派遣されるのではとロシアの怪情報を鵜呑みし書いている。
北朝鮮から弾薬も兵士も送られないと言い切ってしまった自身の立場が
刻々と悪化してきており焦っているのはよく理解できるが
国民を批判する前に自身の胸に手を当ててよく考えた方が良いのでは。

    ◇     ◇     ◇     ◇

エコノミスト誌にも良い記事があった。
サブ特集が良くて、インバウンドが急速に戻ったものの
都市と地方の格差が拡大してオーバーツーリズムと閑古鳥に二極化、
「下位7県の訪日客は(全体の)0.1%」という悲しい話が出ている。

これは明らかに、安倍・菅による売国安売りインバウンド政策の弊害だ。
今からでも遅くない、特にアジアからの訪日客を大幅に絞り込むことで
人数ではなく消費単価を政策目標とする正しい政策に大転換すべきである。
黒田日銀の始めた異常な緩和策の正常化も急ぎ、違法行為続出の
アジア客を絞り込んで健全な観光産業へと正してゆかねばらならない。

『週刊エコノミスト』2024年11/12・19合併号【特集:日立 ソニー パナソニック 復権の道のり】


市岡繁男氏の連載は矢張り素晴らしい。
アメリカの乳幼児死亡率が三年連続で悪化して
何と中国に抜かれてしまい、かつてエマニュエル・トッドが
ソ連崩壊を警告したパターンと似てきているとのことである。
これまでは改善が続いていたから明らかな異常事態だ。
中国の数値が正しいかどうかにはかなり疑問があるが、
米国の数値は間違いないであろう。

個人的にはインフレ確実のトランプが再選されるような
アメリカは完全に衰退の局面に入ったと考えているが、
乳幼児死亡率に早くもその前兆が見てつつあると判断している。

    ◇     ◇     ◇     ◇

ところで東洋経済、合併号で最重要の記事を紹介するのを忘れていた。
ジャーナリスト金田氏の連載で、ぎょっとするような話が出ている。
れっきとした上場企業(建設業)である上司が部下に
法律なんか守っていたら会社が倒れる」と放言していたとか。

『週刊東洋経済』2024/11/2・11/9合併号 (銀行 大波乱)


自民党にたっぷり献金して仕事を貰おうとするような業界だから
驚くまでもないことだが、溜め息の出る実態である。
裏金問題で落選続々の自民党、自民党にカネを出し続ける業界。。
日本経済が成長しないのも至極当然の話であろう。

    ◇     ◇     ◇     ◇

次週はダイヤモンドに注目、今度の大学入試改革はかなりの大変動になりそうで必読だろう。

▽ 「大学受験“5歳差の明暗”」か。。深刻な少子高齢化により大学生の質の劣化が進むに違いない

『週刊ダイヤモンド』 2024年11/16号 (大学格差)


▽ 東洋経済は孤独特集、高齢層や若者の問題はよく言われるが深刻なのは氷河期世代では。。

『週刊東洋経済』2024年11/16号 (超・孤独社会)

サブの「陰謀論にハマる中高年」はやや牽強付会だが、茨城の中年警官がヘイトデマで捜査受けるような時代だしな。。
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ゼロ成長の真因は労働時間減少、「年収の壁」打破こそが成長戦略 - 物価に負ける賃上げは非力

2024-11-06 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
自民党の経済政策の大問題は、まず統計を直視しないこと、
そして事実から謙虚に学ぶ姿勢が皆無という点だ。

野党もその点では大同小異なのだが、
自民党の場合は大きく勘違いしているのが欠陥で、
自分達の経済政策は優れていると妄信しているから
尚更のこと厄介で悪質なのである。

所得でも消費でも共働き世帯が高水準であることは
10年以上前から指摘されてきた明白な事実である。

だから、経済成長のためには企業への利益誘導でなく
「年収の壁」を打破して労働投入を増やすべきだったのだ。
人手不足が深刻になってから漸く動き出すようでは遅過ぎなのだ!

しかも日本は独特のジェンダー意識が強固で、
男性は働いて家計を担う、女性は就労より家庭を重視するという傾向が
心の底に深く深く浸潤していてびくともしない。だから強力なナッジが必要なのだ。

▽ 専業主婦を選ぶ最大の理由は「育児に専念」、働く女性の幸福度は夫の所得と正の相関

『貧困専業主婦』(周燕飛,新潮社)


矢張り、当ウェブログが前々から批判してきた「自己欺瞞の岩盤」は、
安倍・菅の低次元さによって増幅され、日本社会を深く蝕んでいる。。

「日本企業の中にいる女性が仕事と育児の両立に苦労するのは
 トレンダーズ創業者である経沢元社長が何年も前に指摘したことであり、
 今更取り立てて言うものではない陳腐な話である」

「多忙な夫を選んだなら妻が育児しながら仕事にフルコミットするのは
 極めて困難であると考えねばならない。
 長時間労働にフルコミットしたいなら家事育児の大半をカバーできる夫を選ぶべきだ。
 また、やり甲斐のある仕事を求めるなら起業の道を選ぶのが理の当然である」

「多忙でも社会的地位の高い夫と結婚したい、育児にも時間をかけたい、
 やり甲斐のある仕事も貰って当然、というのは単なる強欲に過ぎない」

「あのアメリカですら、経営・管理層の女性の出生率が低いという事実は重い。
 ましてや北欧のように育児・雇用支援のため重税負担に耐えていない日本では、
 仕事と育児の両立が困難なのは当たり前で、所詮は自業自得でしかない」

「女性は高学歴層ですら他国に比べ専業主婦志向の者が異常に多く、
 しかも大多数が「上方婚」なので仕事を捨てざるを得ない選択肢を自ら選んでいるのだ。
 (女性医師が高所得な同業と結婚して、仕事を自ら辞めるのと似ている)」

「日本経済の停滞と人口動態劣化が強力に進んでいるのは、政治の責任だけではない。
 「育休世代のカリスマ」を含め、多くの人々の視野が狭く自己中心的だから、である」

「東洋経済オンラインで元大手メディアの高学歴女性が「女性活用」と言っているのは、
 「私達のような高学歴・高所得でハイスペックな夫と上方婚した女性の活躍」という意味である。
 高卒で低賃金で必死に働く労働者や、苦境に喘ぐ大多数のシングルマザーや、
 凡庸な大学・短大を出て仕事より私生活を重視する層は、はなから無視している訳である」

「また、日本の高所得女性については別の問題もある。
 税・社会保険料負担が北欧諸国より遥かに軽い日本では、
 仕事と育児の両立が極めて困難なのは当たり前の話である」

「日本の女性労働者の多くは負担の重い正社員の長時間労働を嫌っている。
 時間拘束の少ない契約社員や派遣社員の方が実は満足度が高く、
 土日に休める事務職(労働需要は少ない)にばかり希望が集中する。
 低賃金の保育士や介護士は避けられる」

「独身の時は給料が安く税金は高いと不平を言い、
 結婚して子供ができると子育て支援が手薄と政府や行政を咎め、
 育児と両立する環境がないと職場を批判する」

「アメリカでは育休のための制度が整っておらず、無給の場合すらある。
 酷い話にも、学歴によって育休を取得できる率が大幅に違ってもいると言う。
 メイヤーCEOが二週間の育休で復活せざるを得なかったため、大きな議論になったほどである」

「それでもアメリカでは「企業のせい」「政府のせい」「夫のせい」という議論には殆どならない。
 しかも調査では日本よりも遥かに「育児しやすい社会」だとする回答が多いのである」

「それなのに、より育休制度が整っていている日本では
 企業や政府や夫への不満が強いのである。不思議ではないだろうか」

「被害者意識を募らせているばかりでは、永遠に問題は解決しない。
 自称被害者こそ、今の社会システムを支えている張本人だからだ」

「政策によって長時間労働を強力に規制するとともに
 育休等の際の給付や代理要員に所得移転しなければならない」

「経済政策の面から言う正しい「女性活躍」は女性就業率の引き上げであり、
 労働者の税・社会保険料負担を引き上げて育児支援・積極的労働市場政策に投入し、
 家事育児を集約化して労働投入を増やし、総量でも一人当たりでもGDPを増大させるものだ。
 同時に長時間労働への規制やペナルティを強化すれば労働生産性を改善させることもできる。
 安倍政権はそうした実効性ある施策を何ひとつ実施していない」

「また、日本の女性労働者が求めているのは出世や起業ではなく
 残業等の負担がない職種で安定した所得を得られる、快適な職場環境だ。
 つまり自分にとって都合の良い雇用を求めているに過ぎない」

「女性の犠牲者としての側面ばかり強調する愚かなリベラル的言説は、
 拡大しつつある「女性格差」から人々の目を逸らして隠蔽し、
 現状に満足し多大な恩恵を得ている高所得世帯の女性こそが、
 配偶者控除や第3号被保険者の利権を握りしめて貧困層を見殺しにする一般の女性こそが、
 現下の病んだ構造を支え強化しているという現実を見抜かなければならない」

「致命的な人口老化・生産年齢人口が続く現下の日本において、
 最も効果がある経済政策は女性就業増と出生率向上であるのは
 既に同志社大学の柴田悠准教授の計量分析で証明されている」

「安倍政権は配偶者控除を「拡大」するというとんでもない愚策に出るようだ。
 これで日本経済の低迷が決定的であるばかりか、回復の望みすら潰えたと言えよう」

「自民党の支持層には企業の経営・管理層の高所得世帯が多く、
 公明党の支持層には低所得の専業主婦世帯(パート含む)が多いことが知られている」

「配偶者控除は、こうした政党にとって「恩を売りつける」あさましい手段となっているのだ。
 まして、就業能力のある女性が働かない、或いは就業時間を抑制することに公費を払うのだから、
 無責任でかつ頭が悪いとしか言いようがない政策である」

「アメリカの成長率よりもスウェーデンの成長率の方が高く、
 女性が働かない韓国・ギリシャ・スペインの財政が悪化し成長率が低迷していることから、
 安倍政権が全く経済政策を理解せず「次元の低い」状態であることが証明されたと言えよう」

「元々、日本の女性労働者は階層によって全く意識が違っており、
 上層は納税を嫌がるのに社会や企業が自分のWLBを助けるのが当然と思っている。
 中層は長時間労働を嫌って夫が家計を支えてしかも家事育児を手伝うべきと考えている。
 下層は自分が弱者だから社会から支援されるのが当たり前と思って、納税者としての意識が希薄である」

「日本女性の多くはジェンダー意識が奥深くまで浸透しており、
 最も発信力や政治力の強い高学歴層ですら北欧並みの自立した意識ではない。
 男性社会を批判しておきながら同時にそれを支えており、自ら平等を放棄しているのである」

「日本の場合、大卒で有能な女性が働かないことにカネを出しているのが諸悪の根源なのだ。
 日本は上方婚と同類婚が非常に多いのだから、
 育児家事は外注しないと絶対に有能な女性の就労継続はできない。
 だから、育児家事の外注を促進するインセンティブを付けなければならないのは自明だ」

「逆に、働けるのに働かず、育児の負担もない妻には絶対に公費を与えてはならない。
 怠惰に対してカネを与えているも同然だからだ」

「今回の「働き方改革」とは名ばかりの「働き方改悪」、
 いや「経済停滞を決定づけるバラ撒き」の裏事情が分かってきた」

「選挙が怖くて猛烈に反対したのが公明党で、
 それに官邸が同調して配偶者控除の「拡大」などという
 意味不明の愚策になった、という顛末であるようだ」

「保険クリニックの調査によれば、配偶者控除の拡大によっても
 「働き方は変わらない」が圧倒的多数(7~9割)を占めたことが分かった」

「詳しくは、配偶者控除内で働いている主婦は71%が「変わらない」、
 配偶者控除外で働いている主婦は何と92%が「変わらない」との回答だった」

「しかもこれは対象を「働く主婦」に限っているので、
 実際の効果は更に低いことは間違いない」

「と言うのは、既に厚生労働省の数年前の調査によって
 功利的かつ利己的な日本女性の意識が明らかになっているからである」

「その調査では、独身女性の中で「出産したら仕事を辞めたい」と考える者が
 24.5%(2002年)から6.9%(2012年)と激減しているにも関わらず、
 「世帯収入のあるべき姿」としては「夫が主に責任を持つ」が
 依然として40%もの高い比率を保っているからである」

「しかも、男性の側では「夫婦いずれも同様に責任」が49%と最多回答となっていることから、
 (つまり、「夫が家計に責任を持つべき」と考える割合は、女性の方が多いということだ)
 日本では「女性の方が意識が遅れている」可能性が高いと考えざるを得ない結果だ」

「当ウェブログは、日本女性を責めている訳ではない。
 日本のように旧態依然のジェンダーの強い社会では、
 日本女性がジェンダーに囚われて功利主義や利己主義に基づいた行動をとり、
 堂々と功利主義的・利己主義的な主張を行うのは寧ろやむを得ないと考える」

「夫が家事育児を手伝わなければ苛酷なほど非難するのに、
 女性が夫の家族にひどい文句を言ったり、夫を「利用」していたり、
 夫の「稼ぎが悪い」と罵るのに対し何とも言わないのもジェンダーに支配されているからだ」

「当ウェブログが注目している社会統計学の舞田敏彦氏が、
 またしても日本社会の「不都合な真実」を明らかにしている」

「日本女性が「主な家計支持者」である比率は僅か5%で
 この数値はドイツの5分の1、アメリカの4分の1でしかないそうだ」

「このことから舞田氏は、日本では建前と本音が乖離しており
 日本女性は本音では「旧来のジェンダー観」が強いのだと結論づけている」

「当ウェブログは各種調査を分析した結果として同様の結論に辿り着いた。
 不幸なことに、日本女性は深層心理でジェンダーに支配されており、
 日本経済の停滞の一因にすらなっているのかもしれない」

「と言うのは、日本の女子中高生の就業や育児に関する調査で
 「専業主婦」志望が第1位であること、夫に対しては
 「育休を取らなくて良いから、育児も手伝うべき」が最多であること、
 こうした志向は母親の影響であることが判明しているからだ」

「「結婚しても働く」のがコンセンサスとなりつつあっても
 「家事でお金を貰いたい」や「できれば専業主婦になりたい」という意識が強く、
 調査によっては過半数を占めてすらいるからだ。
 「夫の収入で生活したい」という意見も相変わらず残っている。
 「本当は働きたくないが、仕方がないから働く」というのが多数派なのだ」

「「家事で賃金」を望むなら、ハウスキーパー等により市場価格で堂々と稼ぐべきである。
 管理も叱責も厳しい評価もされない自宅の家事で賃金を得るのが当然と思うなら、
 自分が幼い時に面倒を見てくれた親や祖父母に賃金を払うのが先だろう」

「興味深いのは、男性側の共働き志向は「相手の意思を尊重」なのに、
 女性側の共働き志向は「自分の生き甲斐」が優先されていることだ。
 また、「相手の収入のみで生活するのが望ましい」という意見がこれだけ出てしまうのは
 相変わらず日本型ジェンダーに完全にマインドコントロールされているためであろう」

「調査によれば、配偶者控除や社会保険料の壁を意識して働く女性が
 半数ほどいる。明白な「就労抑制」に他ならない」

「また、民間の女性労働者は「仕事は続ける」としているものの、
 「今の職場を辞めてパート・アルバイトになりたい」とする層が3割ほどいるようだ」

「国民の税金によって産休育休を取れる公務員ですら、
 3割もが今の就労形態を変えたいと考えているようだ」

「つまり、結婚・出産しても仕事を続けるとは言っても、
 あくまでも家計補助に過ぎず、就労は抑制して
 夫が家計を担うのは当然、というスタンスなのである」

「さして学歴もない一般的な女性にとっての「女性活躍」とは、
 北欧を見れば分かるように公共部門のケアワーカーとして
 ライフワークバランスを重視して働くということに他ならない」

「つまり民間企業は女性活躍の主要な舞台ではないし、
 もし民間企業で女性活躍を実現したければ国民負担を増やして
 育児支援や雇用政策に膨大な予算を投入しなければならないのだ。
 その点を誤摩化して他人のせいにしている限り、「女性活躍は女性によって妨げられる」のだ」

「なぜなら、日本女性の学歴や所得が向上したにも関わらず、
 実際の行動や意識は左程変わっていないことが様々な調査ではっきり分かるからだ。
 例えば、「家計を担うのは夫の役割」との意識は相変わらずで、先進国の中で突出して高い。
 実際に家計の半分以上を担っている妻は、超高学歴層でも驚くほど少ない事実も確認されている」

「通常、日本女性の就業率が低く家事育児時間が長いのは、
 日本社会や日本企業、職場環境や労働慣行が原因と指弾されることが多い」

「しかし、地域別の就業率の違いや意識調査の結果からは、別の結論が導き出される。
 「女性の就業意識が依然として日本固有のジェンダーに支配されている」ということだ」

「様々な幸福度調査を見ると、一般に女性の幸福度の方が男性より高い。
 また、専業主婦の幸福度は明らかに就業女性よりも高いことが知られている。
 日本女性が一方的な被害者や犠牲者なのであれば、どうしてそのような結果になるのだろうか?」

「当ウェブログの仮説はこうだ。
 日本において発言力のある高所得・高学歴女性の「女性活躍」は、
 自らの属する階層の「My QOL(自分の生活の質)」向上の婉曲話法である」

「だから、低所得の一般女性が仕方なく働かざるを得なかったり、
 シングルマザーが貧困に苦しんでいても完全無視して、
 「自分の夫の時短」や「自分の夫の家事育児参加」を求めるのだ。
 北欧のような高負担は拒否し、同性を無視して自分達だけの恩恵を求めているのだ」

「「ワンオペ育児」は男性のせいと決めつけて攻撃する視野狭窄の女性大学教員は、
 シングルマザーがそもそも「ワンオペ家事育児」で、しかも貧困率が高いのを完全無視している。
 所詮、自分の属する高所得・高学歴階層のことしか眼中にないからであろう」

「真の「女性活躍」は必然的に女性の中で亀裂と論争を引き起こす。
 女性同士であっても互いに価値観も利害も大きく違うのだから当然だが、
 その事実から目を背けて責任転嫁している限り、日本社会が大きく変わることはないのだ」

「日本には他国には見られない「ジェンダー・ガラパゴス」とも言うべき歪んだ傾向があり、
 高学歴な女性ほど就業率が低いという理解不能な状況に陥っているのだ」

「例えば、結婚出産後に最も退職する率が高いのは女性医師であり、
 一般女性の2倍以上も辞めていることが分かっている」

「女性が高度な教育を受けても労働には結び付かない。
 平均値を見れば明白である。しかも、高学歴の医師の方が退職率が高いので、
 寧ろ教育程度の高い者の方が労働を通じての経済への貢献度が低い可能性すらある」

「女性医師の育児負担が大きいのは、多忙で高所得な夫と結婚したこと、
 しかもそれにも関わらず欧州に比べると国民負担が軽いからだ」

「世界経済フォーラムが「人的資本指数」を公表して
 各国の人材育成力のランキングを明らかにしている」

「容易に予想できることではあるが、日本の順位が急落している。
 今年から「雇用の男女格差」が評価されるようになり、
 特に25~54歳の日本女性の社会進出の遅れが足を引っ張った形だ」

「女性の就業率が上昇すると、本来なら経済成長率が改善する筈である。
 しかし日本の場合は寧ろ成長率が低迷しているから「仕方なく働いている」だけなのだ」

「しかもジェンダーの強固な日本女性の就業抑制は一向に変わっていない。
 家計を主に担うのが夫という大前提は全く変わっておらず、
 「子供の傍にいたい」「プライベート重視」の就業意識は調査ではっきり確認される」

「東京医大の手法は間違っていたし受験生にも大学の歴史にも深い傷を与えたが、
 本質は女性差別ではない。日本女性の強いジェンダーと日本医療界の体質が
 危険な「化学反応」を起こして自壊しつつあるのである」

「当ウェブログは日本女性が高学歴高所得でもジェンダーが強固だと以前から指摘してきたが、
 「ドクターX」に関わったフリーランス女医が「ゆるふわ女医」と絶妙なネーミングを行っている」

「「ゆるふわ女医」の能力を日本のため十分に発揮して頂き、
 大病院で殺人的な忙しさの中にある勤務医の先生方を助けるためにも、
 「ゆるふわ女医」には投入された公費を返還させる制度に変え、
 (医大学費は勤務医として働く時間と年数に応じて段階設定すれば良い)
 医師の先生方全ての社会保険料負担を引き上げて
 産休育休の代理医師への報酬を上積みする必要がある」

「東京医大問題を受けて日本をおちょくったツイートを出した
 フランスやフィンランド(女医率が高い)の国民負担率を見るがいい」

「女医の比率を高めるためには絶対に高負担高福祉が必要なのだ。
 もし仏や北欧にいたら日本の医師の先生方は手取りが15%は減る筈である」

「結局、東京医大問題は医療界に深々と傷を残し、今年度の女性医学生を急増させ、
 「ゆるふわ女医」とその予備軍を大量生産して勤務医の労働環境を一層悪化させるであろう」

「何と、勤務医のユニオンは自由開業(先進国では異常な制度である)の特権に沈黙し、
 女性医師の比率の高い欧州国(北欧が多い)の高負担重税も完全に無視し、
 単に「勤務医の労働環境」にすり変えて問題を矮小化させようとしている」

「勤務医ユニオンの先生方は、日本より遥かに労働環境の良いドイツで
 医師の開業が規制されていること、開業しても休日や夜間診療が義務化されていること、
 医療アクセスが制限されていて診療回数が日本より少ない事実を知るべきである。
 (ドイツ並みの国民負担率なら自らの可処分所得が大幅低下する点も計算すべき)」

「勤務医ユニオンが選択すべき策は三つあったが、よりによって「下策」を選択したのである。

  上策:北欧のような高負担を受け入れ、女性医師が仕事と家庭の両立を支援する
  中策:医師のみの社会保障基金を創設し、保険料を引き上げて負担を分かち合う
  下策:医師不足問題について責任転嫁し、現状維持と既得権擁護を図る

 「上策」は最も望ましい道だが、高所得な先生方が低所得女性を経済的支援する形になるので
 (社会的公平性としては正しいが)医療界では猛反対を受けるだろうと容易に推測できる」

「「中策」は最も実現可能性の高い方策だが、所得の5%程度の負担でも
 物凄く不機嫌になるジェンダー女性がかなりいるので、そこが問題である。
 北欧のように働かざるを得ない仕組みにしないと医師教育に費やした巨額公費が無駄になる。。」

「「下策」は最悪の選択で、医師不足問題については医師偏在と自由開業の影響が確実にあるのに
 それを無視して大きな制度変更もなくただ勤務医の労働環境だけ改善しようという小手先の糊塗策」

「医師不足の直接的な原因となっている医師偏在を緩和するには、
 医師不足の診療科や地域に診療報酬を移転するという経済メカニズムと、
 先進国の「常識」である開業規制の二つしか方法がない」

「医師の先生方は聡明だとは思うが、その聡明さが屢々自己の利得のために用いられている。
 本音は言葉にではなく行動に出るので、普段の言動をよくよく観察すると真相が分かる」

「また見逃せないのは、「コメディカル(医療事務)やNPにさせる」という高慢な意見だ。
 コメディカルやナースは時給で言えば医師の半分かそれ以下である。
 重要な職務を委譲するなら賃金も移転すべきであるが、どうもそうした認識が全くない」

「東京医大の問題で勤務医ユニオンや現場の女医の方々の声が
 メディアに出るようになったが、矢張り「下策」を選んでいるようだ」

「勤務医ユニオン代表は必要な負担増にも触れず医師増員を主張し、
 日本国民の受診回数の多さだけを批判して自由開業の特権には沈黙。
 OECD諸国並みの医師数のためにはOECD並みの国民負担が必要という「常識」も語らない」

「現場の女医の先生方からは東京医大の問題は「仕方ない」、
 最も風当たりが強いのは「同世代の女医」との証言も出ている。
 (案の定、日本型ジェンダーは高所得層でも強固だと証明された)」

「東京医大の女子学生一律減点の発覚に端を発して、
 女性医師のジェンダーの強固さが改めて証明された訳だが、
 (女医率の高い北欧のような負担を嫌い、職場に責任転嫁する)
 法曹界でもジェンダーが深々と巣食っている事実が発覚した」

「法曹界での女性比率はいまだに20%半ばで低迷、
 激務を嫌いインハウス(企業内弁護士)の女性率が高いと言う。
 結婚や子育てとの両立が難しいと考える女性も多く、
 女性の人権を守る筈の女性法曹人材自身のジェンダーの歪みも露呈された」

「口では男女平等を唱える女性弁護士は矢張り同業との同類婚が多く
 (所得水準の高い同類婚を選好する女性医師と酷似している)
 自らのジェンダーを社会や制度に責任転嫁しているのだ」

「明治安田の調査では日本女性の「理想」の所得は夫の3分の1でしかなく、
 現状は更に不平等で「4:1」なのだと言う。40代以上の学歴差の大きい世代なら兎も角、
 女性の大学進学率が高まった30代以降は言い訳ができない。
 女性自身の強烈なジェンダー意識にも重大な責任がある」

「理想ですら年300万円以下というのもジェンダーそのものだが、
 (完全に「夫が家計を支えるのが当然」という旧態依然の意識である)
 理想では夫があと150万稼ぎ、自分が120万程度の増加だから、
 「ワタシのために夫が働いてより稼ぐのが理想」なのである」

「勿論、日本女性は「犠牲者」の面もある。
 今の40代半ばから上は自立する教育を受けていないこともある」

「しかし、利己主義に固執して今の歪んだ制度を温存していると
 先になればなる程に苦しくなり、社会劣化・貧困化・経済低迷から脱却出来なくなる」

「日本FP協会の調査によれば、日本女性の6割以上が「ゆるく働く」派で、
 その働き方が「自分らしい」と認識している」

「また、驚愕すべきことに「家庭のことに注力したい」割合が
 最も高い(5割弱)のが20代女性という絶句するような数字が出ている」

「日本女性は家事育児負担を押しつけられているのではない。
 自ら仕事を制限しジェンダーの影響の元に自ら選んだ道なのだ」

「育児分担の数値は、意外に公平なものだと分かる。
 日本の夫:妻=4:1は、実際の所得比と同じであり、
 スウェーデンのように3:2まで引き上げたいなら
 女性がより働いて所得を増やさなければならない。
 また、保育を外注して育児より仕事の時間を増やさなければならない」

「東京医大事件の影響は覿面、今年は多浪生と女子受験生の合格率が上昇したとか。
 しかし目先の数字に振り回されて喜ぶ輩は特殊な日本医療を理解していない。
 後年、「東京医大の入試不正が医療を崩壊させた」と言われかねないのだ」

「統計上、女性医師は男性医師より労働時間が明らかに少ないことが分かっている。
 また、女医だけ異常に同類婚が多いというジェンダーバイアスも明白である」

「更に有名な話として、診療科を選択する際にもジェンダー選好がある。
 本来なら各医大・医学部は専攻別の定員を設け、QOL重視の受験生を絞るべきだった」

「日本の高学歴層に専業主婦(パートを含む)が多いのは
 保育サービスが充分に提供されていないからではない。
 そもそもジェンダー婚で多忙な夫を自ら選んでおり、
 しかも家事育児に多大な時間を費やすことを選好しているからだ。
 (その証拠に、家事育児時間が北欧より明らかに長い)」

「残念ながら女医の先生方も一般庶民と同じようにジェンダーが強固である事実は
 (結婚と出産が唯一、職業満足度を高めるという不可思議な傾向が確認されている)
 同志社大学の研究調査によって浮かび上がっている」

「今や医療現場は一刻の猶予もできない。
 自由開業を廃止してドイツのような厳格な規制を導入すること、
 女医の就業抑制を防止する高負担の保険料を医師免許取得者全員に設定すること、
 それを財源として代理要員の高額な人件費に充当するなど産休育休を充実させること、
 配偶者控除は原則廃止して家事育児外注の税控除(←欧州では常識)に切り替えること。
 何もしなければ、日本女性の強固なジェンダーによって数年後の医療現場は悲惨になるだろう」

「矢張り懸念していた通り、東京医大問題がより深刻な問題を招いている。
 直接的には研修制度の変更が契機となったようだが、
 「ゆるふわ女医」「お惣菜」女医の増加が医療界で指摘されている」

「残念ながら、日本の医療現場崩壊も現実化が近付いたと言わざるを得ない。
 岩盤ジェンダーに支配された女医の増加により犠牲になる勤務医が増え、
 本来は必要な開業規制と診療科の統制(人員統制か経済メカニズム)、
 そして労働時間の短い医師から激務の勤務医への所得移転(社会保険による)を怠れば
 東京医大問題よりもより深刻で、より大規模な問題を招くであろう」

「日本では売れないフェミニストと女性問題の本。
 寧ろ日本のジェンダーの特殊性を明らかにした本が次々と出てきて、
 どちらが日本社会の真相に近いか、徐々に明らかになりつつある」

「上野・東大名誉教授がヒールを「野蛮」とこき下ろしたのに対し、
 若手女優から「(女らしさの否定も強要と同じく)権利の侵害」、
 「人のセンスを野蛮呼ばわりする方が野蛮」と見事に切り返されてしまったのだ。
 論理的には上野完敗であり、どちらが大学教員なのかさっぱり分からない」

「しかも上野の著作は日本社会で完全に裏目に出ており、
 「差別」されているはずの日本女性は自ら非正規を選び、
 満足度も高いという事実が調査によって裏付けられている」

「医師を対象とした調査で明白なジェンダー差が確認された。
 男性医師より女性医師の方が三割以上は所得が低いのだ」

「現在、女医の比率が増え続けている状況なので年齢要因はあるものの
 これほどの所得差は労働時間の長短によってしか説明できない。
 女性医師は同類婚もしくは上方婚を選好し、育児のため就労抑制しているのだ」

「ドクターXを監修した筒井冨美医師は近著の中で、
 女医は夫の職業で就労が左右されると言明している。
 (「夫が医師だと女医は働かない」とまで述べている)
 高所得高学歴層でもジェンダーに支配されているのは明白だ」

「日本の女性労働者への調査で浮かび上がってくるのは、
 平均値で言えば就労に置かれる比重が男性よりも明らかに軽いこと、
 そして男性よりも他者(社会や企業等)の責任を問う姿勢が強いことだ」

「その傾向は大学生でも同じで、ある座談会では驚くべき発言が出ている。
 「独身のままで「私は楽だよー」って言いたい」
 「まだ大したこともしてもらっていない」
 「国のために子どもを産む気にはなれない」
 当ウェブログでは困窮している同性を見殺しにする冷淡さを指摘してきたが、
 これがまさに「いま、利己的なジェンダーが生まれる場所」とすら言えよう」

「子を持つのは勿論、国のためではないのは言う迄もないし
 従属人口(本格的に働いていない年齢層で、学生も含む)は
 国に保護され公費を投入されて生活しているというのが「常識」である」

「その程度すら理解出来ないのだから、このまま自らの錯誤を覚らず
 実社会に出れば他人の子供から搾取する「フリーライダー(ただ乗り)」確定だ」

「上の世代が根深く日本特有のジェンダー意識に囚われているから、
 大学生がこのような本音をつい吐いてしまうのも無理はない」

「男女平等が進み経済的自立が当然の北欧ならば
 「パートナーの協力不足」などと言わずすぐ離婚する筈である。
 一人親でも子育て出来るように高負担を受け入れる筈である」

「誰がどう考えても受益層が限られるクオータ制よりも
 配偶者控除から育児関連費用控除(or保育現物給付)への転換や
 第三号被保険者の撤廃(北欧にはこのように不公平な差別制度はない)、
 負の所得税による勤労所得増額の方が優先度が高く社会的公正にかなうのだが。。」

「研究史に残る名著『貧困専業主婦』が出版され、
 国際比較研究により日本女性固有のジェンダーが根深いこと、
 北欧のような男女平等が進んでいる地域とは全く異なる意識であること、
 経済的自立を望まず自ら子育てすることを選好していること、
 専業主婦と就業女性の幸福度の格差が世界有数の大きさであること、
 専業主婦の幸福度も世界有数の高さであることが明らかにされた」

「コロナ禍は、日本女性の中にある冷酷な「階級」構造と、
 根深く巣食っている岩盤ジェンダーをも剥き出しにした」

「流行りの言葉で言えば、リモートワークやテレワークは
 「上流国民」の女性労働者のものであり、庶民のものではない。
 或るオンライン調査ではリモートワークが可能なのは20%以下であり、
 大多数の労働者にとっては手の届かないもの、或いは最初から不可能なものなのだ。

 上流国民女性:企業や社会を責め立てて、自分だけの厚待遇とQOLを求める
 中流国民女性:企業や社会のせいにするが、主に家計を支えていないので諦める
 下流国民女性:企業や社会のせいにする余裕すらなく、生活を支えるのに必死

 という構図になり、しかも互いに(少しは)同情はしても
 フランスや北欧のように高負担で支え合おうという「連帯」が極めて希薄である」

「立派な大学を出ていても「岩盤」ジェンダーを意識化できないのは驚くべきことだ。
 自分が東京に行きたいと思って奨学金を借りたのを日本社会のせいにしたり、
 親ではなく日本のせいにして責任転嫁したり、日本の国民負担の軽さにも無知であったり、
 教育投資効果の大きい名門大学の貸与奨学金を「乗ることのできないベンツ」呼ばわりしたり」

「嘆かわしいことに、ガラパゴス・ジェンダーは高学歴女性の心の中にも浸潤し、
 この日本社会において経済低迷と利己主義を黴のように拡大させてしまっている。。」

「その証拠に、コロナ禍で苦しむ女性達と連帯しようとせず、
 支援は政府の役割であるかのように他人事で責任転嫁する者が多い」

「高い職業倫理と献身精神でコロナ治療の現場で奮闘している方々には
 心から尊敬と感謝の念を捧げたい。彼ら彼女等こそ日本の医療を支えている柱石なのだ」

「ただ、コロナ治療の現場に立っていない医療人も実は多く、
 寧ろその方が多数派なのである。そして、興味深い現象も起きている」

「診療抑制で医療機関の経営が悪化し、医療関係各位の賃金が低下しているのだが、
 その割に日本国民の健康度は寧ろ改善しているかもしれないのだ。
 その証拠に死亡者数は11年ぶりに改善した」

「ある看護師の業界団体は待遇悪化で医療崩壊と主張していたが、
 実際には日本国民の健康が逆に改善しているとしたら皮肉なことだ」

「しかも、大学の研究で更に興味深い数字が出ており、
 コロナ感染者が多い地域でも少ない地域でも看護師は
 「社会は自分たちを犠牲にしている」との意識が強いそうだ」

「つまり、コロナ問題とは殆ど関係なく被害者意識が強い訳で、
 研究者にはぜひ待遇や賃金との関係も調査することをお勧めしたい」

「衆院選の一つの争点がジェンダー平等だとする皮相な見方があったが、
 女性議員比率が寧ろ低下した衆院選の結果は示唆的である」

「同性であっても連帯が希薄で自分の利害が最優先だから、
 「18歳以下に現金10万円」みたいなふざけた買票政策を歓迎するのだ。
 これは学歴や所得が高くとも総じて似た傾向が強いため、
 本当の弱者を無視して自分達にばかり給付を求めるという、
 日本社会にとって深刻な問題となっているのだ。。」

「医療関係の管理職女性が困窮している同性は完全無視で仕事を辞めたいとか、
 かなりの高所得と思われるのに手当に尋常でない執着心を見せるとか、
 日本特有のバイアスの強さが如実に示されていて興味深い」

「こうした根深いジェンダーに囚われた者には北欧並みの高負担を適用すると良いだろうし、
 児童手当で逆上するような者には英国のような育児関連費の税控除を用意して
 日本社会のため、困窮する同胞のためにもしっかり働いて納税して頂くのが至当である」

「今年の男女共同参画白書は、評価できる内容だ。
 漸く、漸くにして女性の経済的自立の重要性が指摘され、
 人生の選択肢の多様化とともに(つまり、女性間の格差が拡大し階層化が進んだ)
 寿命が長いので貧困に陥るリスクが高まったことも明記された」

「白書では配偶者控除も槍玉に挙がった。
 第三号被保険者への厳しい批判も時間の問題だろう。
 独身女性の過半が年収300万円以下であることも示された。
 「結婚したくない」理由として「自由でいたい」が上位に挙がっていることも示された」

「それは結構だし寧ろ遅きに失したことであるのだが、
 処方箋が流石は内閣府クオリティで、賃金格差の解消やキャリア教育という
 効果が著しく乏しい拙劣な政策案しか出て来ないのが情けない」

「本来は内閣府のキャリアのような安定収入の労働者に負担を求めるべきで、
 それを財源として低賃金の労働者に給付付き税額控除を適用する。
 第3号は原則廃止、配偶者控除は育児家事外注費の控除に完全転換するのが理の当然だ。
 どうしてこの程度の政策提案すらできないのか、本当に情けない。。」

「地方での産科の減少が顕著になっている。
 これは先進国として異例、歪んだ日本の医療体制と
 日本特有のジェンダーとの「合成の誤謬」であり、
 そして今後は東京医大の事件によって確実に「悪化」する」

「米国ですら女医が負担の重い診療科を避け、地方に行かない事実は鮮明で、
 ましてジェンダー要因で労働投入の少ない日本の場合は尚更である」

「東京医大の事件以来、女子医学生が一気に増え「正常化」した訳だが
 同時にキツい診療科と地域医療は確実に「悪化」することは避けられない」

「2025年以降、日本型ジェンダー要因により診療時間の短い女医が増えるのは確実、
 制度的対応が遅れたことで医療崩壊がじりじりと進むことは避けられないし、
 労働投入の少ない女医の育成に莫大な公費を男性同様に投入することの
 (国公立なら医師一人で公費1億円弱とされる)悪平等が問題視されるだろう」

「内閣府調査で衝撃的な結果が明らかになった。
 まず日本社会全体において「男女の地位が平等」との回答が過去最低になり、
 しかも家事育児負担のために女性活躍が進まないと考えるのが84%もの多数になった。
 また、男性がより家事育児に参加するため職場が協力すべきだと
 調査対象の67%もの者が回答したことも判明したのである」

「メディアが報じず、日本型ジェンダー論者の無視する現実はこうである。
 日本女性の育児に費やす時間は先進国で突出して長く、より男女平等な欧州と異質だ。
 それなのに男性や職場に責任転嫁する意識のバイアスがまさに日本特有なのであり、
 男性や職場に責任を押し付けることで女性同士の連帯の稀薄さを隠蔽し、
 経済低迷や少子化、貧困を深刻化させる社会分断の元凶なのだ」

「その証拠に、パーソル総合研究所の調査で結婚後の男女間のジェンダー差が明らかになっている。
 男性は管理職志向が強くなり、女性は時短志向が強くなるという。
 日本社会の現状は男女双方の責任なのであり、女性は犠牲者ではないのだ」

「所謂「年収の壁」への対策が打ち出されたが、矢張り
 自民党お得意の口だけ政策、大山鳴動して鼠一匹といったところ」

「手取りが減るのが問題なのだから、壁を超えた労働者にはその分、
 保育・学童・外食・中食・高機能家電・家事サービスの控除を認めれば済む話だ。
 103万円、130万円と二段階で額を増やしていけば極めて公平な補填になるし、
 更には就業促進の効果が大きい。働けば働くほど可処分所得が増えるからだ」

「日本は主要国で専業主婦の多い国として知られるが、
 「年収の壁」への抵抗が強い一因が女性側にあるのも事実である」

「少し前、SNSで「産休クッキー」が騒動になっていたが、
 これは女性間の分断、連帯の乏しさを示したものであり、
 かつ日本固有のジェンダー意識のバイアスを示したものでもある」

「これは所謂「子持ち様」批判と通底しており
 ①仕事より家庭や私生活を重視する傾向が強い
 ②公共性や連帯より私的な利害を優先する傾向が強い
 という独自のジェンダー・バイアスの証左なのである」

「同時に、人手不足のいま働ける労働者が300万人規模でいると
 日経新聞が報じているにも関わらず労働投入が増えない理由もそこにある」

「そもそも、「産休クッキーはいらない」「挨拶だけでいい」
 「産休取得者が出ると業務量が増える」というのが職場の多数意見なのだ。
 産休クッキー批判も、お子持ち様批判も、出るべくして出たものである」

「産休クッキー批判も、お子持ち様批判も、男性でなく女性から出ている理由は
 仕事より家庭・私生活を重視するジェンダー・バイアスに由来している。
 だからこそ立場や利害が異なると、解決策の工夫より対立やいがみ合いに繋がるのである」

と当ウェブログは指摘してきた。高学歴高所得層においても日本の特異さは顕著だ。。

▽ 日本でイクメン否定派が最多なのは若年女性、大卒若年女性は中高年男性より保守的という驚愕の調査

『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』(吉川徹,光文社)


懸念した通り、安倍や菅の「愚劣なバラ撒きが日本型ジェンダーと結合し、日本社会を劣化させている」のだ。。

「安倍・菅政権で最低賃金の引き上げが進み、
 それが成長政策の一環であるかのように騙られた訳だが
 経済成長率の低迷、実質賃金の低迷からも明らかなように
 日本経済の低迷が続いていることは厳然たる事実である」

「最低賃金の引き上げが生産性向上をもたらすと論陣を張ったのがアトキンソン、
 日本のメガバンク(かつて都銀と呼ばれた)が三行に集約されると予言し
 それは的中したのだが、企業経営は見通せてもマクロ経済では見事に外れた訳だ」

「安倍も菅もアトキンソンも理解していなかったのは
 日本女性のジェンダーの強固さであり、所謂「年収の壁」の弊害である。
 「年収の壁」があると最低賃金が上がっても就労時間が減るだけなのだ」

「シンクタンクの研究員の分析では「年収の壁」で就労抑制している者は何と445万人、
 「年収の壁」引き上げ程度でも年間数兆円規模の消費増が見込めるという」

「再分配が嫌いな労組は、最低賃金引き上げを求めるようになっているが、
 「年収の壁」を温存したままでは日本女性は就労抑制を間違いなく続ける。
 ある労組は雇用維持を求めた自分達が「デフレの共犯」だったと認めたが、
 「年収の壁」を温存したままではデフレだけでなく「貧困の共犯」にもなるであろう」

当ウェブログが警告してきた通り、嘆かわしい現実は依然として変わっていない。。

 ↓ 参考

労組は「貧困の共犯」でもある、年収の壁の温存が経済低迷を招く - 最低賃金引き上げで誤摩化すな
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/8f280d989fc13a5dc0b7fe5df900728c

男性は出世志向が強くなり、女性は時短志向になる - 結婚後のジェンダー差が大きい日本社会
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e335718cf8f0d4935a8c93c0c847c06a

手当が貰えないなら「怒りで一晩眠れない」- 困窮者は完全無視する、冷酷な日本の利己的ジェンダー
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/64054abb9b75948502df38bafd8e00c8

「独身のままで「私は楽だ」って言いたい」- 大学生にも蔓延る日本型ジェンダー、フリーライダー予備軍に
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1989e9ae58c043d9e3592f83a1f5aeb5

日本女性の「家計を支える」意識は世界最低、高学歴でもジェンダー強固 - 女医増加で医療現場も崩壊か
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/ad1ab981a4672170a20ee9c61655019b

勤務医を過労に追い込む「ゆるふわ女医」、高学歴高所得女性のジェンダーを証明 - 東京医大問題の背景
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/23da8a7f1d85f80fde0d484713277f19

「家事でお金を貰い、専業主婦になりたい」が半数超、日本女性の本音 -「相手の収入で生活したい」も多い
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e2fb0ae3e8b642b05aa0d0737fa6dd41

「主たる家計を担う」日本女性は僅か5%、世界最低レベル -「夫が働き、育児も手伝うべき」が本音か
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/dcf01dce53580730ef38ea60ee11c320

▽ 高成長で女性就業率も高いスウェーデン、男女平等と女性活躍には高負担が必須





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


賃上げ・中小支援が急務…各党の財源確保策、説得力欠く(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20241017-OYT1T50017/
”[政策分析 24衆院選]<経済対策>
 衆院選を戦う与野党には、経済再生や社会保障、外交・安全保障など様々な分野の課題に対する処方箋をいかに示せるかが問われている。
 日本の現状を分析し、各党の公約を点検する。

 日本経済は、デフレから完全に脱却できるかどうかの正念場にある。
 物価下落が続くデフレ下では、企業の売り上げは伸びず、コスト削減で利益を確保するしかなかった。岸田前首相は「コストカット型経済」から「成長型経済」への転換を打ち出し、石破首相もその路線を引き継ぐ。
〔中略〕
 最近は物価高が進み、消費者物価指数など数字の上ではデフレではない状態となっている。ただ、主にエネルギー価格の高騰や円安による輸入物価の上昇など外的要因によるもので、成長型の経済への移行を反映したものとは言えない。
 個人消費が伸び、企業の売り上げが増えて、自然と物価が上がるという経済の好循環が伴って初めて、デフレ脱却がかなう。

 そのために不可欠なのが働く人の賃上げだ。今春闘で賃上げ率は5%を超え、33年ぶりの高水準だった。しかし、物価上昇の影響を差し引いた実質賃金は、6月に27か月ぶりに前年同月を上回ったものの、8月に再びマイナスに転落。賃金は物価上昇に追いつかず、消費は伸び悩んでいる。
 公約で、自民党や立憲民主党など各党は、最低賃金の引き上げを訴えた。立民や公明党、共産党は時給「1500円」の数字を掲げた。日本の最低賃金は国際的にみて低水準にある。その引き上げは非正規社員を含む多くの労働者に波及するため、極めて重要だ。
 ただ、大幅な引き上げは中小企業の経営には打撃となる。海外では、急激に引き上げたことが逆に雇用の悪化を招いた事例もある。最低賃金の引き上げは、中小企業の支援策とセットで行うことが欠かせない。
 中小企業が人件費を増やした場合、大手企業との取引で価格転嫁できるよう、強力な支援を行うべきだ。人手不足を補う省力化投資や、デジタル投資を強く後押しする施策も望まれる。
〔中略〕
 一方、デフレから脱却できれば、日本銀行の金融政策も正常化し、「金利のある世界」が本格化する。
 そこでは、国の借金である国債の利払い費が増えることが想定される。新型コロナウイルス対策で一段と悪化した国の財政を、早急に立て直す必要がある。
 だが、各党の公約からはそうした危機感は読み取れない。自民は「経済成長と財政健全化の両立」と記したが、道筋は不明確だ。
 立民は、これまでの消費税減税こそ封印したが、給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」(消費税還付制度)を目玉施策に掲げる。他の野党には消費税減税の主張が目立つ。
 ただ、そのための財源をどう確保するのか、各党の説明は説得力を欠く。
〔中略〕
 国の財政を巡る国民の将来不安は、個人消費が伸びない一因ともされる。そうした問題への各党の認識も問いたい。(編集委員 佐々木達也)”

この読売新聞のデフレ脱却論は、統計と事実に基づいていない典型的な例だ。
成長率で見ればデフレ脱却と言い出してから逆に悪化しているので、
デフレ脱却を目指したアベノミクスが根本的に間違っており
金融政策ではない強力な処方箋を欠いているから経済低迷に陥ったのである。


連合、年金の3号廃止を正式提起 「年収の壁」で働き控え招くと批判(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241018/k00/00m/040/259000c.html
”労働組合の中央組織・連合は18日の中央執行委員会(中執)で、年末にまとまる公的年金制度改革に関連し、「第3号被保険者制度(3号)」の廃止を提起する方針を確認した。3号は会社員らに扶養される専業主婦らが年金保険料を納付しなくても老後の基礎年金を受給できる仕組み。連合として正式に廃止を求める考えを打ち出したのは初めて。
 3号は、厚生年金に加入する会社員や公務員らの配偶者で、年収130万円未満の人が対象。約700万人の3号のうち98%は女性。もともとはサラリーマン世帯の専業主婦も自分名義の年金権を確保できるよう、1985年に導入された。だが、家族の形態や働き方が多様化し、人手不足が加速する中、近年は働き控えを招く「年収の壁」の温床になっているとの批判もあった。
 連合の廃止案は、まずは将来的な廃止を明示し、被扶養の基準を年収130万円から縮小し、完全に廃止するまで段階を踏む。10年程度の経過期間を設け、第1段階として新たな3号にはできない制度にし、既存の3号のうち▽配偶者の年収が850万円未満▽子を養育する親――などの受給要件を満たす人を3号に、それ以外は国民年金に加入する「第1号被保険者」とする。
 同時並行でパートら短時間労働者の厚生年金への適用拡大を進めた上で、第1段階のプロセスでも3号に残った人を1号に区分して廃止する。ただし、3号の期間があった受給者の年金は減額せず、過去の3号の加入期間に基づく基礎年金も減額しない。自営業者ら1号の所得補塡(ほてん)の仕組みや、基礎年金の国庫負担割合の引き上げを検討していく――との構想だ。
〔中略〕
 ただ、厚生労働省が今回の公的年金制度改革で、3号の廃止について具体案をまとめるのは難しい状況だ。【宇多川はるか】”

連合が漸く唱えるようになった「年収の壁」改革の方が
次元の低いアベノミクスより遥かに効果的なのである。
但し連合の案は迂遠過ぎて大きく効果が削がれるため、改革は悠長に行ってはならない。


日本人の「賃金」は本当は上昇している…この10年間で「もっとも時給水準が上がった都道府県」の名前(president)
https://president.jp/articles/-/87442
”物価が上昇する中、日本人の賃金は実質的に減り続けていると言われている。リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志さんは「賃金を比較するときは、年収ではなく時給で考えるべきだ。日本人の労働時間が大幅に減っているため収入が上がっていないように思えるが、実は時給水準は上昇している」という――。
※本稿は、坂本貴志『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

■年収は430万円→369万円に減少
 日本人の賃金が安すぎるという認識が近年広がっている。しかし、賃金を国際比較する際にはその時々の為替の影響などを避けることができず、日本人の賃金が本当に安すぎるのかを検証することは実は難しい。
 また、少子高齢化に伴う社会保険料負担の増加や、国際商品市況の価格上昇による国民所得の漏出など、日本人の賃金が抑制されてきた原因は企業側だけに求められるわけでもない。
 しかし、労働市場の需給がこれまでの賃金の動向に確かに影響を与えてきたことも事実だ。そして、その構造は近年明らかに変化している。
 図表1は、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」から実質の年収水準の推移を示したグラフであるが、これをみると確かに、2020年基準の実質の年収水準は1996年に430.5万円でピークをつけた後、2023年には369.5万円へと長期的に低下している。
 これは国際比較をしても同様である。年収水準を国際比較してみると、イタリアを除けば日本以外にこんなにも長期にわたって年収水準が上昇していない国は見当たらない
〔中略〕
■重要な指標は「時間当たりの報酬水準」
 仮に従業員の時給が高くなれば、労働力の過度な利用は人件費コストの上昇につながるため、経営者はこれを節約しようと考える。
 このように経営者が利潤最大化の意思決定にあたって考慮するのは、従業員の年収水準というよりも、単位労働当たりのコストである時給水準である。
 これは労働者も同様だ。労働者にとって時給水準の変動は余暇と労働の相対価格を変化させることで、その人の労働供給量の決定にも影響を及ぼす。経済主体の意思決定を記述するうえで重要な指標は、あくまで時間当たりの報酬水準なのである。
 近年、賃金統計の母集団を構成する労働者の属性は大きく変わってきている。平均労働時間が急速に減少するなか、年収や月収水準の平均値を追うのみでは経済の実態は掴(つか)めない
〔中略〕
■日本人の賃金は上がった? 下がった?
 日本で賃金に関する代表的な統計として用いられるのは、厚生労働省「毎月勤労統計調査」である。同統計調査は、毎月多数の同一事業所の賃金の状況を調査しており、賃金の動向を時系列で分析する際には最も信頼できる統計である。
 しかし、同調査がヘッドラインとして公表している現金給与総額はあくまで月給である。人々の働き方が急速に変化しているなかで、各種メディアで報道される現金給与総額だけを見ていると日本人の賃金の趨勢(すうせい)を見誤ってしまうということをまず最初に指摘しておきたい。
 現実の経済主体の行動を規定するのは時給水準であり、さらに言えば特に重要なのは実質値である。
〔中略〕
 それでは、肝心の時給水準は近年どのように推移しているのであろうか。
 図表2では、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「消費者物価指数」から労働者の時給水準と年収水準を実質化したものを掲載している。
 なお、実質化にあたっては、物価指数に何を採用するかがその形状を大きく左右するが、ここはわかりやすさのため消費者物価指数を用いている。

■実質自給は2221円から2347円まで回復
 時給水準をみても、過去日本人の賃金は長期にわたって低迷してきたことが確認できる。実質時給は1997年に2288円まで大きく上昇したあと、2015年の2225円まではほぼ横ばい圏内で推移してきた。
 バブル崩壊後は、雇用・設備・債務の3つの過剰が指摘されるなど、日本経済はバブル期に拡大しすぎた生産能力の調整に迫られた。労働市場に目を向ければ、労働力のプールが豊富に存在するなかで、有効需要は不足して、日本の労働市場の需給は緩んだ状態が続き、賃金上昇圧力も長く高まらない状態が続いてきた。
〔中略〕
 こうしたなか、グラフからは賃金の基調が近年変化しつつあることもうかがえる。上昇基調に転じ始めたのは2010年代半ばだ。実質時給は2014年に2221円で底をついたあとじりじりと上昇していき、2020年には2347円まで緩やかに伸びていて、年収とは逆の傾斜を描いていた。
 足元では、円安進行による輸入物価上昇などからまた実質賃金は低下基調に転じているが、現下の円安は日本銀行の大規模金融緩和や海外要因による影響が大きく、外生的で短期的な側面も強いと考えられる。

■年収が上がらないのは労働時間が原因
 名目の時給水準をみると、労働市場の局面変化がより鮮やかに浮かび上がる。先のグラフには名目の時給水準も掲載しているが、名目時給は2012年の2138円を底に単調に上昇を続けている。2023年には2418円と、この10年間で12.2%の増加となった。
 このグラフからも賃金について、1990年代半ばから2010年代前半までの期間と、2010年代半ばから現在に至るまでの期間とでは明らかに局面が変わっていることがわかる。賃金は長い低迷期から脱出し、上昇基調に転じているのである。
 近年、時給が上昇しているのは、年収が微増にとどまる一方、労働時間が大幅に減ってきたからだ。同じく10年前と直近の数値を比較すると、年間総実労働時間は1753時間から1653時間へと大きく減っている。つまり時給が上がっているのに、収入が上がっていないという認識が生まれるのは、労働時間が大幅に減っているからだといえる。
〔中略〕
 この10年で時給が最も増加した業界は飲食・宿泊業である。2013年の1201円から2023年には1489円と、10年間で24.0%増と上昇している。建設業(2163円→2623円、21.3%増)や卸・小売業(1948円→2271円、16.6%増)、運輸・郵便業(1984円→2263円、14.1%増)も堅調に増加している。
 一方で、賃金上昇率が相対的に鈍い業種も存在している。教育・学習支援(3012円→3032円、0.7%増)、金融・保険(3185円→3391円、6.5%増)、医療・福祉(2172円→2335円、7.5%増)などである。この中でも特に医療・福祉は就業者数が多く、全体の賃金の趨勢に与える影響が大きいが、賃金の上昇率は相対的に鈍い水準にとどまっている。

■この10年、地方の賃金が伸びている
 横軸が2013年時点の時給水準、縦軸が2013年から2023年にかけての時給水準の変化率を取っている。これをみると、この10年間で最も時給が上がった都道府県は北海道だった。2013年の1804円から2023年には2151円まで上昇している。10年間の上昇率は19.2%。
 そのほか、岩手県(1720円→1981円、15.1%増)、大分県(1739円→2028円、16.6%増)、鹿児島県(1655円→1900円、14.8%増)、山形県(1773円→2036円、14.9%増)などもともとの時給水準が低かった都道府県が賃金の伸びが強い傾向にあることがわかる。
 一方で、大都市圏では賃金上昇率は実はそれほど高くない。
〔中略〕
■人手不足が深刻なところほど変化が明らか
 最後に、企業規模別に賃金上昇率を算出したグラフを紹介しよう(図表5)。
 企業別に時給(名目)の変化を確認すれば、実は賃金上昇は中小規模の事業所から広がっていることがわかる。一般の労働者について、500人以上の事業所では10年間で時給は5.4%しか上昇していないが、5~29人の事業所では12.2%増加している。また、雇用形態に着目すれば、パート労働者の時給は事業所の規模によらず大幅上昇している。
 以上、賃金の動向をあらゆる角度から検証してきたが、これらの現象はなぜ生じているのだろうか。
 もちろん最低賃金による外生的な影響もあるとみられるが、失業率が安定的に低位で推移していることも踏まえれば、本質的にはこういった業界や地方、中小規模の企業ほど人手不足が深刻だから賃金が上がっているのだと考えることができる。

■「人が安すぎた時代」が終わりつつある
 地方や中小企業の経営者などからは、人口減少と少子高齢化に若者の都心流出が拍車をかけ、近年はとにかく人が採れないと話を聞くことが増えた。しかし、人が採れないという言葉の裏には異なる意味が隠されている。
 多くの経営者が言う人手不足とは、従来通りの賃金水準では人が採れなくなったという側面が強い。過去、報酬を引き上げないでも容易に人手を確保できた状況が長く続いてきたなか、賃金を上げなければ人が採れない現在の労働市場の構造は経営者に不都合な現実として立ちはだかっている。
 市場メカニズムを前提とすれば、特定の地域や業種で人手不足が深刻化すれば、人員を確保するために、企業は否が応でも賃金を引き上げざるを得なくなる。
〔中略〕
----------
坂本 貴志(さかもと・たかし)
リクルートワークス研究所研究員/アナリスト
1985年生まれ。一橋大学国際公共政策大学院公共経済専攻修了。厚生労働省にて社会保障制度の企画立案業務などに従事した後、内閣府で官庁エコノミストとして「経済財政白書」の執筆などを担当。その後三菱総合研究所エコノミストを経て、現職。〔以下略〕”

統計的に見れば、労働時間の減少は明らかであり、
何故かこの記事の執筆者は言及していないが、時給水準よりは
労働時間と経済成長率の低下との相関性の方がより強いのではと考えざるを得ない。
他方、時給の上昇は経済成長率と全く違う推移を示している。
(寧ろ生産性の高い職種の時給改善が乏しい点が日本経済にとって重要かもしれない)
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2024年10月第5週チャート

2024-11-04 | 注目投資対象・株価の推移
バタバタして結局、軟調という労多くして……の週だった。
NY次第、為替次第という当ウェブログの見通しは概ね妥当だったと言えよう。

最も驚いたのは日銀が現状維持だったのに日経平均が1000円もの下落となったこと。
米大統領選前で東証は月曜に休みだから動けない状況だったとはいえ、
今後の利上げが想定されていたのに、これだけ値幅が大きい下落は深刻だ。

夜、NYのお蔭で先物は急回復していたものの、慎重さは失わないでおきたい。
FRBは既に利下げ局面に入っており、東証の円安バブルは脆弱な状況にある。


金利高に陰りが見えて雇用統計はネガティブ、ドル円は頭が重くなるだろう


ユーロは対ドルで反転しかけたが急落、週明けは米金利次第であろう


(以上のチャートはZAI)

週初めから急反発、これで再び上方トレンドが見えてきた


8316も同様、日銀の利上げを早くも織り込み始めたのか?


7261は円安なのに逆行安、かなり苦しい形になっている


(以上のチャートはRakuten.sec)
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秋の新刊 -『就職氷河期世代』『ロシアから見える世界』『分断国家アメリカ』『アジア・ファースト』等

2024-11-02 | こんな本を読んでいます
連休なのでいつもの新刊紹介です。
本格研究もあり、ドグマの強い新刊もあり、テーマは幅広くなってきました。

もう目前となっている米大統領選については非常に良いレポートが出ており
(有象無象の評論家の関連本は思惑やバイアスが強過ぎて寧ろ有害なノイズ)
良書を選ぶことの重要性が改めて確認できます。


『アジア・ファースト 新・アメリカの軍事戦略』(エルブリッジ・A・コルビー,文藝春秋)


 → 日本の防衛力強化はほぼ完全にアメリカ側からの要請によることがよく分かる一冊、
   ただ人口過密でありかつ米軍の装備を導入した強力な軍事力を持つ韓国や日本を
   中共が狙ってくるという発想は歴史的にも戦略的にも大間違いであろうに。。
   (中国の経済力に対して弱腰な、アセアンが狙われる可能性の方が大きい)。


『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』(近藤絢子,中央公論新社)


 → 就職氷河期世代の苦境について恐らく初めての本格研究、
   女性の就業・正規雇用率の世代差が数年で解消されたことや
   出生率への影響が明確でないことなど驚きの事実が数々明らかになっている。

   他方で氷河期世代で賃金は低下しニートは増加しており
   これから政治無策のツケが顕在化してくるという点は概ね想定通りだろう。


『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』 (江森百花,光文社)


 → これはイデオロギー色が強く、批判的検討が必要な新刊。
   一般国民と乖離した恵まれた出自で高学歴な著者らのジェンダーバイアスが露骨、
   外語・芸術・薬学・看護系学部に女子が過度に集中する構造を無視して
   自分たちのドグマを押し通す上から目線に対し余りに無自覚。

   大卒層ですら実社会に出てから勤労や婚姻、家族ケアにおいてOECD加盟国とは異なる
   ジェンダーバイアスを示す日本の実態を明らかにした実証研究から謙虚に学ぶべき。


『分断国家アメリカ 多様性の果てに』 (読売新聞アメリカ総局,中央公論新社)


 → トランプを支える所謂「MAGA」支持層において、
   白人の被害者意識が人種差別と結び付いているという苦いアメリカ社会の現実。
   読売新聞記者による優秀でバランスンの良いレポートである。
   米大統領選関連の新刊では最もお勧めできる一冊。


『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』(駒木明義,朝日新聞出版)


 → 北方領土交渉が最初から呉越同舟で失敗必至だったことと「プーチンは既に敗北」は正しいが、
   後者は著者の言うようなウクライナの抵抗によるものではなく旧ソ連のアフガン侵攻と同様に
   戦略の誤りによる戦争長期化で国力を損耗し内部から自壊するためと考えるのが至当だろう。


『象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む』(原武史,岩波書店)


 → ソ連と中共は侵略主義と見抜いていた英明な昭和天皇、
   戦前の軍部の青年将校には「私の真意を理解しない」とバッサリ。
   (自由党より社会党右派を評価していたなど興味深い話が次々と出てくる)


『なぜヒトは心を病むようになったのか?』(小松正,文藝春秋)


 → 後半の諸研究の紹介は良いが、タイトルはミスリードで
   理系なのにエヴィデンスに乏しい主観的見解が多いのに注意。


『中学受験のリアル』(宮本さおり,集英社インターナショナル)


 → クリームスキミングで営業色丸出しの合格話とは大違い、
   偶然に左右され個々によって大違いとなる中学受験の暗部も紹介した貴重なレポートである。


『始皇帝の戦争と将軍たち 秦の中華統一を支えた近臣軍団』(鶴間和幸,朝日新聞出版)


 → これは夏の段階で既に出ていた。
   当該分野の泰斗による執筆だが、キングダムの内容がかなりの部分が脚色(捏造に近い)で
   史実と大幅に異なっている事実は注意深くオブラートに包んでいるのが興味深い。


『ジャパニーズウイスキー入門 現場から見た熱狂の舞台裏』 (稲垣貴彦,KADOKAWA)


 → 最後にこちら。「クラフト蒸留所」というのは言い得て妙、
   日本経済で最も付加価値を高めた分野であると言って良く
   この本格派の入門書でジャパニーズウィスキーの洋々たる未来も見える。

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『エコノミスト』11月5日号-データセンターの消費電力は全体の0.1%、原発稼働の口実にならない

2024-10-31 | 『週刊エコノミスト』より
先週に引き続きエコノミストを取り上げる。
それだけ重要な記事が多く、他誌よりも優れているからだ。

まずは80頁、自民党や電中研あたりの言う「電力需要50年に1.37倍」が
かなり欺瞞的で作為的である点を鋭く衝いた寄稿である。
(エントリーのサブタイトルはこちらより)

執筆した東北大の明日香教授が理路整然と論じているのは、
①データセンターの電力消費量は日本全体の0.5%程度しかない
②将来予測での電力需要増の多くは、水素生産のための再エネ増加分
③2050年に電力需要最大1.37倍とする電中研予想は、他の研究機関より過大
④仮に1.37倍としても年率1%程度の増加に過ぎない
⑤環境省が公表した再エネ導入可能性は、風力だけで現在の総発電量の2倍以上


また、引用された米研究によれば2018年までの8年間で
クラウドコンピューターの仕事量が500倍以上になったのに
データセンターのエネルギー消費量は6%しか増加しておらず、
時間当たりのデータセンターでの電力消費が年20%減少した

と非常に重要な指摘が為されている。

本来、日本企業はAIを口実とした原発稼働を画策するより
データセンターの省エネを実現するイノベーションに注力すべきだろう。
それでこそ利権依存ではない真の意味での成長が実現するのだから。
この寄稿は、太陽光のコスト低下を論じるならV2H必須を語るべきで、
かつ潜在風力資源が膨大でコージェネ開発余地も大きい東北と北海道に
AIデータセンターを誘致するよう主張していないのが残念だが、他は完璧だ。


74頁の「デジタル赤字の正体」も興味深い。
日本のサービス収支における所謂デジタル赤字の拡大は、
「専門・経営コンサルティングサービス」の寄与が大きく
一般にイメージされている情報通信サービスの増加は限定的だとか。
執筆者は外資コンサルの収益が右肩上がりになっているのに
日本企業の国際競争力が必ずしも向上していない
ことを懸念している。
(全く以て同感であり、外資コンサルの知人が同様に言っていた)

他にサービス収支で赤字が急増しているのは保険・年金サービスだが
これは新規制を前にした再保険料の急増によるもので
継続的にサービス収支の赤字を増大させるものではないとのこと。


……二週に渡って紹介してしまったが、このエコノミスト合併号が
賢明な読者諸賢にとって熟読する価値が高い内容だったと理解頂ければ幸いだ。

『週刊エコノミスト』 2024年10/29・11/5合併号【特集:セブンショック 次の標的は】


尚、50頁の「小規模医療機関への優遇税制は必要か?」も素晴らしい。
津田塾の総合政策学部・伊藤教授の鋭い論考で、
2011年度の会計検査院の調査では診療所の経費率は平均53%、
しかし7割超の概算経費率が認められる優遇税制のため
何と診療報酬の18%もの額が免税になっている
と指摘している!

執筆者は、小規模診療所ほど事務経費が高いことを明らかにし、
グループ化して効率的な運営をしなければ
「地域医療の持続性を自ら危険に晒す」
と警告しており全く同感だ。
そもそも、無医地域や過疎地以外にこのような特権を許すべきではなく、
まして休日夜間に無人になる都市部の雑居ビル診療所には適用不可だろう。

    ◇     ◇     ◇     ◇

東洋経済の銀行特集は意外に良い。
「結局メガバンクが恩恵を受け含み損を抱える信金が沈むような展開か」
と先週書いていたが、必ずしもそれだけではない。
3メガバンクの比較対象ではかなりよく調べてあるし
働き甲斐、働き易さなどES関連の地銀ランキングが非常に興味深い。

ただ、北海道銀、北國銀、山形銀といったランキング上位の地銀は
(称賛されるべきだが)必ずしも業績に正の相関があるようには見えない。
ともに大都市部への人材流出が問題になっている地域なので
人材確保策として必要に迫られた結果、ランキング上位になったのかもしれない。

『週刊東洋経済』2024/11/2・11/9合併号 (銀行 大波乱)


佐藤優氏の連載は引き続きロシアと資本主義の話。
矢張り中国経済が成長してロシアが遅れを取った理由は不明。
次回以降も恐らく触れられないであろう。

ノーベル経済学賞に輝いたアセモグルの研究では
イデオロギーではなく社会制度の重要性が明らかにされている。
イデオロギー偏重の氏にはそうした観点が欠けていると思われる。

    ◇     ◇     ◇     ◇

ダイヤモンドは次週に取り上げる予定、メイン特集以外に良い記事が幾つかあった。

▽ 池上氏の連載は有益で、佐藤氏の書評は恣意的という恒例のパターン。。

『週刊ダイヤモンド』2024年11/2・9合併特大号 (最強財閥・オーナー企業)


▽ エコノミストはサブ特集の「インバウンド新次元」に期待、ただ問題は単価の伸び悩みだと思うが。。

『週刊エコノミスト』2024年11/12・19合併号【特集:日立 ソニー パナソニック 復権の道のり】

メイン特集は他誌に近い、エヌヴィディアやTSMCを目指せないのが悲しいところ。
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