みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

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「他省庁ではもっと大規模に天下りが行われ、人事課も関わっている」-隠蔽工作は、官庁全体に蔓延している

2017-01-30 | いとすぎから見るこの社会-全般
日本が国際競争力ランキングにおいて技術やインフラにおいて
世界的に高く評価されているのは周知の通りである。

しかし、評価の低い項目、つまり国際的に劣っていると見られている分野は
大体決まっていて、それが日本の評価を低めているのである。
ひとつは「政府の効率性」であり、もう一つは「経済成長」だ。

今回の文科省の天下り騒動で、日本政府の効率性が相変わらず低い要因の一つが
図らずもまた一つ発見されたと言えるのではないだろうか。

個人的には天下りを全て否定するものではない。
日本社会に利益をもたらす公正で透明性の高いものであれば
何ら問題はないとすら考えている。

しかし、今回の天下りは、と言うよりも今回発覚した「氷山の一角」は、
明らかに日本社会のためのものではないばかりか、公正でも透明性のあるものでもない。

自民党政権がバラ撒いている補助金を利用して
官僚組織上層部の利益と保身のために行われたものである。

案の定と言うか、こうした天下り隠蔽は霞が関全体に蔓延しており、
文科省などよりも大規模かつ組織的に行われている
との証言が出ている。
(少し話を聞いたことのある者なら、大体あそことあそこが酷いのだろうと察しがつく)

安倍首相は相変わらず口先だけで、天下りを根絶するかのように大言壮語しているが、
全くこの天下り問題の構造を分かっていない実態を自ら証明している始末だ。

国民を欺く欺瞞的な天下りが起き、公益よりも組織益が優先される理由は明白だ。
代々の自民党政権が補助金バラ撒き政策を実行してきたため、
官僚組織による裁量余地が大きく拡大したからである。

文教政策で言えば、場当たり施策を打ち出して検証もせず、
ポスドクだのロースクールだので死屍累々の結果をもたらした自民党政権が、
天下り隠蔽工作のチャンスを提供したのである。

無責任で愚かな歴代自民党政権が、教育政策を散々に振り回してきたため、
各学校が「ヒラメ」状態になって文科省との結び付きを強めようとしたのだ。

相変わらず愚かな補助金バラ撒き政策を続ける安倍政権も、
天下り問題をもたらす不透明な構造を支える犯人の一人である。

▽ 日本より遥かに賢明で合理的な北欧では、労働市場に対応して再構築された大学教育が行われる

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)


日本の文教政策は事後検証が行われないだけでなく、
必然的に癒着をもたらすという意味で、二重に愚かである。

「愚劣な責任転嫁を平然と行う中教審の議論の「猫の目ぶり」を見れば
 文教政策が頭の悪い「モグラ叩き」でしかないことは明白だ」

「大学乱立は自民党政権時の愚かな規制緩和の必然の結果である」

「日本では教育問題の議論が常に目先のことばかりで
 利害関係者の方では必死に姑息な情報操作を行い、
 しかもメディアや国民がそれを見抜けないという情けない状況にある」

「文科省の審議会や認可が大学の質向上において
 殆ど無意味に近いのは、議論の余地のない明白な事実である」

「だから文科省が認可した大学でも次々と定員割れと経営危機を起こしている。
 最近では法科大学院の惨状は100%間違いなく文科省の制度設計に原因がある」

「文科省はそもそも大学教育の質や大学運営の質を評価する指標を持たないし、
 指標に基づいて政策調整しなければならないとの意識が全くない」

「計量経済学や計量社会学の専門家を雇い、
 若年人口の変動が大学経営に与える影響を測定し、
 労働市場の変化と人材需要に基づいて政策決定をしなければ
 日本の大学は悲惨な状況に追い込まれてゆくだろう」

「自民党は今年春に「理数系教育の強化」を提唱していたが、
 図に乗ったそうした低次元の論をあざ笑うかのような報道があった」

「PIAAC(国際成人力調査)で日本が世界一となり、
 「数的思考力」もフィンランドを上回りトップだった」

「現代日本の停滞や閉塞の原因が教育にあるとする連中は
 基本的に大嘘つきであると立証されたと言って良かろう」

「そもそも日本の競争力ランキングを見ると教育水準や技術力は
 向上余地はあるものの常に高く評価されている。
 評価が低いのは公共部門(政府・自治体等)の非効率性と財政赤字である」

「PIAACの結果からは日本はブルーカラーや中卒者の高い能力を
 経済分野で活用できていないことが推測されるが、
 これも日本の政治と行政、つまり公共部門の抱える問題点と言える筈である」

「少なくとも「失われた20年」を招いた責任が教育にないことは明らかであり、
 教育を犯人扱いしてきた低能な論者を黙らせる効果はありそうだ」

「確かに日本の高等教育には多くの課題がある。
 しかし日本の病巣は教育ではなく寧ろ程度の低い教育論議と政策にあるのである」

「権力に弱い官僚は、傲慢不遜な自民の圧力に負けて
 人文系学部と大学院の規模を縮小するそうだ。
 己の失態の責任も取らず、よくも若者に責任転嫁できるものだ」

「大学の粗製濫造やロースクールの大失敗は自民党と文科省が「A級戦犯」であり、
 これから確実に問題になるであろうポスドク量産の元凶も自民党と文科省である。
 平然と歳費や給与を得ている厚顔無恥な態度と無神経はおぞましいとすら言える」

「責任を取って役立たずの与党議員の歳費大幅カット、
 キャリア官僚の給与・退職金の大幅カットは理の当然であろう。
 どうして成果も出さずに国民のカネを受け取っているのか」

「これから確実に労働者の需要が増えるのは介護士と保育士、そして観光関連人材だ。
 (全て労働集約型なので、確実に労働力を必要とする)
 基本的にはみな人文系であり、自民と文科省のスタンスは根本的に間違っているのである」

「危険なほど速い少子化を放置して大学の粗製濫造を続けてきた自民党と官僚が、
 己の大失敗を隠して国民に責任をなすりつけている」

「教育・保育分野において雇用を創出したスウェーデンの積極的労働市場政策と比較すると、
 我が国の保守退嬰・自己保身の「選良」達は恥ずかしくなるほど程度が低い」

「福祉関連学部の惨状を見よ。
 労働者を低賃金でこき使い、選挙のためカネを高齢者にバラ撒き、 
 福祉利権と癒着してきた自民党と官庁がこの大失態を招いた元凶である」

「「社会的要請の高い分野」であるにも関わらず学生が集まらないのは、
 明らかに政策の失敗であり、与党政治家と官僚の能力が低く制度設計を間違えたからだ」

「日本の文教政策の最大の特徴は、農政以上の「猫の目」で
 明らかに失敗した政策でも全く検証されず誰一人として責任を取らない点だ」

「周知のようにロースクールが惨憺たる失敗になりつつあるのに、
 中教審は「専門職業大学」を構想しているらしい」

「理由としては「職業人に求められる能力も高度化・多様化している」とのことだが、
 「実務経験のある教員の配置」やインターンシップのように陳腐なメニューばかりだ。
 なぜ学部学科や課程の改変ではなく「大学」が必要なのか、まともな説明がない。
 そもそも審議会メンバーの能力に疑問があると言わざるを得ない」

「従来の文教政策も中教審の役割も厳しい検証が必要である。
 今までの失敗を誤摩化すために、安倍内閣のように
 新しい政策を打ち出して看板を代えるだけで終わっているなら税の無駄でしかない」

「文科相の「脱ゆとり宣言」も同じような無責任体質の象徴だ。
 「強靭化」というただの言葉遊びに過ぎず指標も数値目標も皆無、
 予算対効果も成果検証の概念も全く理解していない始末だ」

「おまけに流行のアクティブ・ラーニングまで持ち出して、
 政策検証ばかりかアクティブ・ラーニングも欠落しているのが
 中教審や官庁であることを自ら立証するものである」

「傲慢で現実を無視した軍上層部が無数の兵士を死なせた
 太平洋戦争とまさに同じ図式である」

「今回の「脱ゆとり」でも「専門職大学」でも
 学習能力のない愚かな失敗を繰り返すしかない」

と当ウェブログが指摘してきた通り、日本の近視眼の教育政策は相変わらずだ。

▽ アメリカでは、大卒者の48%が大卒資格が必要ない職に就いているという惨状である

『「教育超格差大国」アメリカ』(津山恵子,扶桑社)


安倍政権には、天下り問題を「根絶」などできる筈がない。

「英米で欠点が見えつつある制度を、
 いかにもバラ色の素晴らしいものであるかのように偽り、
 日本の粗忽で目立ちたがりの連中が喧伝する事例が多い」

「そうした「政策を売り歩く」輩に騙されて周回遅れで導入、
 見事に大失敗するという愚行はこの日本でよくある話である」

「ゆとり教育もロースクールもそうした失敗の一つで、
 次には専門職大学院とアクティブラーニングも同じ末路に至るだろう」

「安倍政権や文科省がそもそもアクティブラーニングができておらず、
 まともに検証していない政策を有権者受けだけ考えて打ち出すから失敗するのだ」」

「今、英米で問題になりつつあるのは、「オーバーエデュケーション」、
 つまり教育過剰で相応しい職が足りないという問題だ」

「日本も教育をいじくり回せば経済が回復できるように偽る詐欺師たちが大勢いる。
 なぜ日本より大学進学率の高い韓国が経済低迷に陥り、
 日本より大学進学率の低いドイツが日本より成長率も賃金上昇率も高いのか、
 そうした現実を無視している連中だから、絶対に信用してはならない」

「雇用市場の現状を踏まえた教育改革でなければ意味がない。
 そうした本質を教えているのが英米の抱えている問題であるが、
 安倍政権も文科省も視野狭窄で何も見えないまま失敗へ突き進んでいる」

「大卒である必要のある高度な職種がないと大学も意味がない。
 殆どの大学生は研究界ではなく実社会に出て働くことになるからだ」

「まして、安倍政権の失敗により経済低迷、実質賃金マイナスのままの日本では、
 大学教育の投資収益もマイナスになる可能性が極めて高い」

「流行るドラマには、必ずその放映時の社会背景に一致し、
 心理的要求に応える要素が含まれている」

「『逃げ恥』のヒロインは大学院卒で就職失敗、
 家事能力で必要とされて自己承認を得られるという役どころである」

「『逃げ恥』がこれだけ話題を呼んでいるという事実は、
 高等教育を受けていてもそれに相応しい所得や職を得られない、
 何十万人、年百万人という「みくり」(みくお?)がこの日本に存在することを意味している」

これまでの見当違いな施策への反省も全くなく、
経済政策同様に大根芝居と口だけの成果を掲げて誤摩化すであろう。
天下りもどうせ、一罰百戒で幕引きにするしか芸のない政権なのだから。

 ↓ 参考

「逃げ恥」が予言する、日本の大学改革の失敗 - 英国で「大卒者の増加が経済にマイナス影響」との警告も
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/5fd28cdf6aa2f330050b8d3b0db01af5

ロースクールを失敗させた文科省、専門職大学院もアクティブラーニングも同じ運命に - 反省皆無の惨状
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9a0ef0c26d3a1876f3273a69f83a2156

教育世界一でも日本経済停滞、教育改革論者は信用できない - 国際成人力調査PIAACの結果より
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0f0655df5ffb8fbd6d173b2ec18ecaea

文科省が認可した大学でも、続々と定員割れになっている - 問題の本質は田中真紀子大臣の不認可ではない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/6839b2d4f7aa07d1ad724d2146a3415e‎

大学生に責任転嫁する中央教育審議会、自らの分析不足を認識せず -「勉強時間」しか判断基準がない貧弱さ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/62943717b497b8613c43f5d980ed62b1

▽ 日本の教育改革は総じて、場当たり的で目先しか見ない愚かな議論と政治によって決まる

『格差社会と教育改革』(苅谷剛彦,岩波書店)


文科次官辞意:天下りあっせん「他省庁でも」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20170119/k00/00e/040/224000c.html‎
”「国民の批判は強い」「やむを得ない」。文部科学省の「天下り」あっせん問題で同省事務方トップの前川喜平事務次官(62)が辞任の意向を固め、省内に衝撃が広がった。
〔中略〕
 関係者によると、文科省では以前から、人事課の幹部職員らが中心になって、個室が与えられる各局の幹部職員らの天下りをあっせんしてきたという。ある職員は「実際にあっせんに関わるのはごく一部だが、前から続いている」と明かした。
 2007年の改正国家公務員法成立で天下りの規制が強化されたこと自体は多くの職員が認識しているが、再就職については定年退職が近くならなければ意識することは少ないため、細かな規制の内容について知る職員は多くはないという。
 一方、この職員は「他省庁ではもっと大規模に天下りが行われ、人事課の課長級以下の職員までかかわっている役所もあると聞く。再就職等監視委員会に情報提供があって調査が始まったと考えられるが、『なぜ文科省だけが責められるのか』と多くの職員が感じているのではないか」と省内の“本音”を代弁した。
 また、ある幹部職員は「首相官邸としては次官の辞任で幕引きを図りたいのだろうが、他省庁でも天下りがあるのは霞が関の常識で、他の役所にも問題が発展する可能性がある。その場合にも次官を辞めさせるのかどうか。あしき先例になる恐れがある」と話した。【佐々木洋】
◇最近の主な省庁トップの辞任・退任(※組織名、肩書は当時)
2011年8月 原発シンポジウムの「やらせ問題」の責任を取り、経済産業省の松永和夫事務次官ら関連省庁トップ3人が辞任
 10年12月 元特捜検事の証拠改ざん事件後、大林宏検事総長が辞任
 09年9月 公務員制度改革を巡り政府・自民党と対立した谷公士人事院総裁が辞任
 07年8月 小池百合子防衛相と対立した守屋武昌事務次官が退任
 02年1月 牛海綿状脳症(BSE)問題を受け、農林水産省の熊沢英昭事務次官が辞任
 02年1月 小泉純一郎首相が国際会議でのNGO排除問題を巡り、外務省の野上義二事務次官を更迭
1999年11月 茨城県東海村の臨界事故とH2ロケット打ち上げ失敗を受け、科学技術庁の岡崎俊雄事務次官が辞任
 98年11月 防衛庁調達実施本部の背任事件を巡る証拠隠滅疑惑を受け、秋山昌広事務次官が辞任
 98年1月 大蔵検査官の接待汚職事件を受け、大蔵省の小村武事務次官が辞任
 96年11月 社会福祉法人からの利益供与問題で厚生省の岡光序治事務次官が辞任”

いち早く、毎日新聞が文科省の本音と
霞が関に蔓延っている天下り隠蔽の現状を伝えている。
厳しく調査したら、ほぼ全での省庁で隠蔽問題が発覚するだろう。


天下り:背景に補助金、悪弊消えず…文科次官辞任へ(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20170120/k00/00m/040/075000c.html
”文部科学省の天下りあっせん問題は、事務方トップの辞任へと急展開した。再就職等監視委員会が発足するなど規制強化へと手は打たれてきたが、違反行為は後を絶たない。【伊澤拓也、大場弘行】
 天下りのあっせんは、2008年施行の改正国家公務員法で全面的に規制された。従来は離職後2年間について、離職前5年間に在職した国の機関と密接な関係がある営利企業への再就職を原則禁止しただけだった。改正のきっかけとなったのは、06年に発覚した国土交通省の水門工事談合事件と、農林水産省所管の緑資源機構談合事件。省庁OBらの受け入れが多い企業に優先受注させたことが厳しく批判された。
 改正とともに設置した政府の再就職等監視委員会を12年に始動させ、癒着につながるような天下りに目を光らせるが、これまで違法と認定したのは2例にとどまる。この2例はいずれも個人の不正行為と結論付けており、今回、組織ぐるみの違法な天下りを認定すれば初のケースとなる。
 こうした規制強化の後も文科省で天下りあっせんが疑われる背景には、特有の事情がありそうだ。私立大は文科省から私学助成金などさまざまな補助金を受け取っており、文科省とのパイプが補助金確保に有利となるとの見方がある。日本私立学校振興・共済事業団によると、私立大の運営費に占める国の補助金の割合は15年度で9.9%。年々減少しているものの、文科省は特色がある教育を支援する特別補助金事業を創設するなど、一律ではない新たな補助金もつくっている。
 天下りについて詳しい太田肇・同志社大教授(組織論)は「経営難に苦しむ私立大は予算配分に強い関心を持っており、文科省の影響力は大きい」と指摘。そのうえで「補助金を受けやすくするために天下りを受け入れることはあり得る」と警鐘を鳴らす。
〔中略〕
 新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)は「文科省は過去に多くの職員を天下りさせており、組織の中に悪弊として残っていたのではないか。不正を根絶するために、定年まで省庁で働く人を増やすような取り組みが必要だ」と指摘した。”

この毎日記事も非常に素晴らしい。
元文科省官僚の寺脇氏のコメントは省略したが、そちらも読んでおきたい。

補助金行政が天下りの温床であることが明瞭に分かる。
いま安倍政権は東京五輪関連分野や「働き方改革」でも補助金バラ撒きを行っているから、
間違いなく天下りや癒着が今この瞬間も黴のように広がっている筈だ。


天下り斡旋、氷山の一角 文科省、組織的に関与(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170120-00000066-san-soci
”■2カ月で再就職横行
 国家公務員が関係の深い民間企業などに再就職する「天下り」。平成24年に再就職等監視委員会が始動するなど規制強化が進められているが、文部科学省で今回発覚した斡旋(あっせん)問題は氷山の一角とみられる。離職から再就職まで2カ月程度と短期間のケースが多いからだ。水面下で組織的な斡旋が行われているのは「暗黙の了解」(関係者)との見方もあり、根は深い。
 管理職だった国家公務員が民間企業や団体に再就職した場合、離職後2年間は内閣人事局への届け出が必要となる。
 文科省の場合、管理職だった職員の再就職先は民間では学校法人が多い。27年度に再就職を届け出た元管理職の約3割が大学や中学・高校などを運営する学校法人に職を得ており、業務内容は「教育・研究」となっている。
 定員外の一時的な職名である「大臣官房付」を最後に59歳か60歳で離職するケースが一般的で、法人や法人が運営する大学の事務局長、副事務局長に就任するケースが目立つ。法人理事や大学副学長といった肩書もみられた。
 ただ、注目されるのは離職日から民間の企業や団体に再就職するまでの期間が短いことだ。退職から2カ月後に早稲田大学教授に再就職した元高等教育局長のケースと同様に、2カ月程度と短い場合が多い。
〔中略〕
 同省では、在職中の求職活動や人事課などによる組織的な斡旋が横行している可能性も否定できない。
 再就職の透明性を高めるために設けられた内閣府官民人材交流センターもほとんど活用されておらず、再就職活動の実態は不透明なまま。再就職の斡旋を規制した19年の改正国家公務員法の成立以降、再就職活動は厳しくチェックされているが、斡旋行為は続いているようだ。
 「受け入れ先との間で記録の残るやりとりはしない。再就職する職員との電話でも、用件が再就職だと分からないように話す」。別の省庁関係者はこう打ち明ける。
 「“あうんの呼吸”で通じる団体や企業を選んでいる」という関係職員もおり、歴代のOBによって引き継がれているポストも少なくない。
OBに退いてもらえるよう現役幹部が関与するケースもあるという。”

天下り隠蔽の実情については、この産経報道が優れている。
歴代自民党政権が裁量の大きい補助金バラ撒きを行っているから、
このように隠れた天下りが温存されるのである。


根深い関与、体質露呈=私学助成で癒着も―文科省(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017012000853&g=soc
”文部科学省の天下りあっせん問題で、政府の再就職等監視委員会の調査結果は、人事課OBを仲介させるなど組織ぐるみのあっせんが常態化している同省の体質を浮き彫りにした。同時に、助成金の配分で関わりの深い同省と私立大の癒着も改めて露呈した。
 監視委の調査や文科省によると、人事課が退職予定者の個人情報や法人からの求人情報を同課OBに提供し、適任者を「マッチング」してもらう手法が横行。2008年末に施行された改正国家公務員法で、省庁によるあっせんが禁じられたのを受け、規制違反を免れようと09年ごろから行われているという。引責辞任した前川喜平前事務次官も文科審議官だった16年3月ごろ、このOBを介して退職予定者の再就職をあっせんしていた。
 また、今回問題となった早稲田大教授に再就職した元高等教育局長のように、大学行政を所管する同局出身者が私立大に再就職するケースは多い。資金獲得で有利になるよう私大側がOBを受け入れる構図が、天下りの温床となっているとの指摘もある。
〔中略〕
 同省は一連の問題を受け、天下り規制に関する業務を、違反に関与していた人事課から総務課に移管。松野博一文科相は「省全体として法令順守の意識が不足していた」と認め、研修を通じて職員の意識改革を徹底するとした。再発防止には、組織ぐるみの慣習や私大との関係など根深い体質の改善も求められる。”

松野文科相は「法令順守の意識が不足」としているが、とんでもない。
「法令順守の意識が全くなかった」の誤りである。
文科省の法令順守どころか法令無視の実態ははっきりしている。


天下りあっせん:手口は二つ「現職ルート」「OBルート」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20170121/k00/00m/040/146000c.html
”◇「OBルート」規制強化の直後に構築、事実上骨抜きに
 文部科学事務次官の辞任に至った文科省の天下りには、人事課による「現職ルート」と、人事課OBを介する「OBルート」の二つが存在していた。政府の再就職等監視委員会の調査によると、OBルートは2008年12月の改正国家公務員法施行で天下り規制が強化された直後に構築されていた。規制は事実上骨抜きにされていた。
 文科省の違法な天下りが発覚する端緒になったのが現職ルートだ。16年に内閣人事局が取りまとめた再就職届で、吉田大輔・元高等教育局長の早稲田大再就職が判明。採用面接が文科省退職のわずか2日後だったことから、監視委は在職中の再就職準備やあっせんを疑い、調査に着手した。
 その結果、吉田元局長の在職中に人事課が受け入れを早稲田大に打診し、元局長と共に作成した履歴書や研究業績に関する資料を送付して採用面接の日程調整まで担った実態が分かった。
 違法行為の偽装・隠蔽(いんぺい)は徹底していた。「元局長の文科省時代の3年先輩で、早稲田大に再就職したOBが仲介した」。人事課は虚構をつくりあげ、元局長と早稲田大の人事担当者に口裏合わせを依頼した。監視委の調査に備えた想定問答まで用意した。元局長らは調査に対し、数カ月にわたって虚偽の説明を続けたという。際立つ悪質さに、監視委は「こんな組織的な天下りは初めて。驚いた」と漏らした。
 一方のOBルート。監視委によると、大学や企業からの求人情報が人事課に流れ、人事課が仲介役OBに求人情報と退職予定者の個人情報を提供した。監視委は100件以上の情報提供を確認している。
 仲介役OBは求人と求職をマッチングし、その結果を法人や人事課に伝えていた。監視委によると、人事課による情報提供自体に違法性はないが、現役職員が仲介役OBを通して特定の人物の再就職に関与すると違法になる。辞任した前川喜平事務次官はこのパターンだった。
〔中略〕
 OBを使った仲介は他省庁にもある。国土交通省の複数の幹部は「再就職を仲介する大物OBが調整している」と話す。
 「私は来年辞める。いい人がいたら教えてほしい」。企業や団体に再就職したOBからそんな連絡があれば、仲介役OBが調整に乗り出すという。建設、不動産など分野ごとに仲介するOBがいるといい「OB同士が連絡を取り合って、後輩の退職時期などを情報交換している。長年引き継がれた慣習だ」と明かした。【佐々木洋、金秀蓮、杉本修作、内橋寿明】
◇背景に「官僚の独特な組織構造」
 天下りのあっせんがなくならない背景には、官僚の独特な組織構造がある。キャリア官僚で事務方トップの事務次官になれるのは通例では同期入省の中で1人だけ。ほとんどは40代後半から次々と役所を去り、その結果、「ピラミッド型」と形容される組織になる。
 そうした出世競争からふるい落とされる官僚の受け皿になる天下り先にもメリットがある。業務を所管する中央省庁とのパイプができるからだ。

 国交省や厚生労働省などに比べ、文科省は民間企業との接点が少ない事情が今回の不正の背景にあるとの見方もある。元文科省大臣官房審議官の寺脇研・京都造形芸術大教授は「天下り規制が強化され、今まで以上に再就職先に苦労するようになったのでは」と話す。
 天下りに詳しい中野雅至・神戸学院大教授(行政学)は「官僚組織が変わらない限り、天下りはなくならない」としたうえで「能力のある官僚が自らの力で再就職すること自体は何も悪くない。天下りのあっせんとは明確に区別すべきだ」と指摘する。文科省の不正を突きとめた再就職等監視委員会についても「今回も含めて違法認定したのは3例で、少なすぎる。組織的なあっせんを許さないという姿勢をもっと見せるべきだ」と注文した。【伊澤拓也】”

このように、監視委が仰天するような隠蔽の実態だ。
日本の教育問題にはここまで熱心に取り組んでいたのだろうかと
つい疑いたくなるような入念で巧緻な裏工作の数々である。

早期退職と再就職の仕組みを根底から変えないと、
こうした隠蔽と癒着の構造はなくならないであろう。


文科省、天下り規制の研修せず 19日にも監視委から調査結果(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO11858460Z10C17A1CC1000/
”文部科学省の元幹部が組織的あっせんを受け再就職したとされる疑惑で、国家公務員の再就職規制が厳格化された2007年の法改正以降、再就職の規制に関する研修が省内で実施されていないことが18日分かった。内閣人事局は各省庁に制度の周知を求めているが、徹底されていない。
 政府の再就職等監視委員会は、19日にも同省に調査結果を通知する見通し。
 問題になっている元幹部は文科省の元高等教育局長。15年8月に文科…〔以下略〕”

日経新聞がかなり早い段階でこの記事を出している。
文科省が真面目に法例を守る気がなかったこと、
天下りを何ら問題視せず、寧ろ隠れて維持しようと考えていたことは明白である。


天下り:文科省が隠蔽工作 架空話でっち上げ「想定問答」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20170125/k00/00m/040/097000c.html
”文部科学省が元高等教育局長の早稲田大への天下りをあっせんしていた問題で、文科省人事課が違法行為の発覚を防ごうと、関係者の口裏合わせのために作成した想定問答の内容が分かった。実際には無関係の文科省OBが再就職を仲介したという話をでっち上げ、組織的な隠蔽(いんぺい)工作をしていた。元局長、早大、OBの3者それぞれに想定問答を用意して口裏合わせを依頼する徹底ぶりだった
 天下り問題を追及している民進党の要求に応じ、文科省が24日、想定問答の文書を開示した。
 政府の再就職等監視委員会の調査によると、文科省人事課の職員らは吉田大輔元局長が在職中の2015年6〜7月、早大への再就職を打診して履歴書を送付したり、採用面談の日程調整をしたりしていた。
〔中略〕
 しかし、想定問答では実際とは逆に、大学側が高等教育行政に詳しい人材を求めたいと考えて、以前、早大に勤務していた文科省OBに仲介を依頼した−−という虚偽のストーリーを設定。(1)OBが15年7月下旬の報道発表で吉田氏の退職を知り、早大に「吉田氏なら採用の可能性があるか」と電話連絡(2)大学側は「吉田氏なら是非連絡をとってほしい」と回答(3)OBが吉田氏と早大副総長との面談日時を調整−−など、実際にはなかった会話のやりとりを作り上げていた
 早大などの説明によると、早大の人事担当者は16年8月にあった監視委の1回目の調査では想定問答に基づいて虚偽の回答をしたが、11月の2回目の調査で口裏合わせの事実を認め、違法な天下りのあっせんが発覚した。
 国家公務員法は省庁が職員の再就職をあっせんすることを全面的に禁止しており、監視委はOBが仲介した形を取ることで合法性を装ったとみている。【佐々木洋、遠藤拓】”

この隠蔽工作に、文科省の体質が露骨に出ている。
国益より省益、国民には情報を出さない、
都合の悪いことは全力で隠す、ということであろう。
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