英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

オリンピックが競技を歪める その2 「IOC理事会の歪んだ構成と不思議な採決」

2013-02-19 21:39:35 | スポーツ
オリンピックが競技を歪める その1 「オリンピック偏重」の続きです。相変わらず前置きが長く、記事本体にたどり着いていませんが、よろしければおつきあい下さい。

 前回は、「五輪偏重やメダル絶対視がスポーツ中継や競技そのものも歪めてしまっている現状があり、そこからから離れてほしい」という願望が主旨らしい(まとまりのない文章なので、書いた本人もよく分からない)。 
 今回は、先般のIOC理事会の決定に関する考えを述べるつもりでしたが、前回言い足りないことがあったので、それをまず述べさせてください。

 それは、柔道の女子日本代表の監督やコーチの暴力やパワーハラスメント問題の件。
 評論家やコメンテーターは「五輪の金メダル獲得と暴力行為は全くの別問題」と述べている。確かに、金メダル獲得という目標があっても、暴力が許されるものではなく、別次元の問題である。
 しかし、まったく別問題と言いきって、その実情を無視してしまっては、解決にはならない。金メダルを取る使命感が強くても、それが暴力に結びつくかは、監督やコーチの資質にも依るが、金メダル至上主義が暴力を誘発した一因になったと考えられる。特に、お家芸である柔道は、その家元としての誇りと、国民からの期待を背負っている。
 マスコミも暴力の有無や程度、指導体制、人間関係などの局所的な取材だけでなく、その根底にある「オリンピック偏重、金メダル絶対視」の風潮を問題視してはどうだろうか?
 この件を考えている間に、暴力とは直接関係ないが、福井県では次のような事項が報道された。
 『福井国体重点強化に22校40部 指導者固定、強化費を助成』(2013年2月8日)
 「ジュニア、高校生選手育成に向け指導者配置や強化費助成などが受けられる「重点強化校」に高校18校33部、中学4校7部、「強化推進校」に高校27校60部、中学36校68部を認定した。13年度から強化をスタートさせる。
 強化推進校は、強化の成果が見られた学校や競技会場市町周辺の学校などにも配慮し年度ごとに見直し、重点強化校に昇格する。重点強化校、強化推進校ともに遠征費、合宿費などの強化費が部活動の規模に応じて助成され、13年度当初予算案に盛り込まれる。
(抜粋)
 国体を開催することによって、「県民のスポーツの意欲が高まり、また、施設等の充実もなされ、県民がスポーツを楽しめるようになる」のが望ましいのではないだろうか(きれい事ではありますが)。
 それはともかく、国体を開催するのなら、充実したものにするため、役員や審判、補助員の充実、競技場・体育館や宿泊施設や交通機能の整備が第一なのではないだろうか。(関連記事を読むといろいろやっているようです)
 今回の高校バスケット部の体罰問題や、柔道の暴力行為と同じ臭いを感じてしまう。

 さて、ようやく、今日の本題です。
 レスリングを中核競技から外すことを決定したIOCの理事会であるが、たった15人で構成され、どの競技を行うか(外すか)をその少人数で決定してしまうこと自体、おかしい
 さらに、そのメンバー構成に偏りがある。
 国籍は、ベルギー、ドイツ、モロッコ、シンガポール、スコットランド、オーストラリア、南アフリカ、スウェーデン、台湾、スイス、アイルランド、ドイツ、スイス、グアテマラ、ウクライナで、15人の内8人が西欧が占めており、その他はアフリカ2人、アジア2人、オセアニア1人、中米1人、東欧1人となっている。
 また、競技別ではロゲ会長はセーリングとラグビーで、他のメンバーはフェンシング、陸上2人、バドミントン、ボート、ラグビー、バスケットボール、柔道、フェンシング、近代五種で、ウィリー・カールシュミット・ルファン氏は野球とボクシングの2競技、ガニラ・リンドバーグ氏は不明。
 中核競技を外れる有力候補であった近代五種の副会長のアントニオ・サマランチ・ジュニア(スイス)がメンバーに含まれることが、非常におかしい。
 この理事会が始まる段階で、全競技が外れる対象になっている状態ということを考慮すると、近代五種の副会長が決定メンバーにいることだけを問題視するのはおかしく、上記の競技すべてが有利な立場にいると言える。
 だから、理事会の始まる段階で全競技が対象となっていることが問題だと考える。IOC総会とか、個人の意思が反映されにくい理事会よりもっと多人数の選定委員会などで候補競技を絞り、絞った段階で該当競技を除いた理事で協議・採決するのなら公平であろう。

 採決方法やその経過も疑問がある。(会長を除く14人が投票)
 第1回では全競技対象に投票し、レスリングと近代5種が各5票、ホッケーが2票、テコンドーとカヌーが各1票だった。
 2回目からはこの5競技に絞って投票し、過半数を取る競技が出るまで、最少得票の競技を除きながら繰り返し実施。2回目はレスリングが7票、近代五種が4票、ホッケー、テコンドー、カヌーが各1票で、ホッケー、テコンドー、カヌーの中で外すべき競技を決選投票し、ホッケー6票、テコンドー5票、カヌー3票で、カヌーが最初にセーフ。

 しかし、この2回目の投票結果とやり方に大いに疑問。1回目の投票で各理事が除外と判断した候補がすべて残してあるので、通常ならば、1回目の結果と違う結果が出るのがおかしいので、2回目の投票する段階で最少得票だったテコンドーとカヌーを外すべきだ。
 しかし、2回目の投票結果は1回目と票が動いた。票を変えた理事は、よほど迷っていたのか、判断に確固たるものがなかったか、誰かに説得されたか。
 また、1票の3競技で決選投票したのも変。最少得票の3競技を外して、次の投票に進んでも、採決の目的に大きな影響があるとは思えない。「丁寧に採決した」という証拠作りか、説得工作をするための時間稼ぎと思えてしまう。
 3回目の投票はカヌーを除いた4競技で実施され、レスリング6票、近代5種5票、ホッケー3票、テコンドー0票。ここでも、2回目でカヌーに入れた1票がどこかに入るだけの変化のはずが、あっちこっち動いている。2回目にテコンドーに入った1票はどこに行ったのか?
 この状況は最終投票も変わらず、何と信念のない投票か!
 あちこちの記事で、「近代五種の票が5→4→5→3と変動。最後の投票で1回目より2票も減る不可解な結果」と記されているが、レスリングの票の動きも含めて、すべての投票が不可解だったと言える。

【補足】
 「レスリングの票の動きも含めて、すべての投票が不可解」と述べたが、1回目から2回目の投票で、レスリングに近代五種とホッケーから各1票移った(この動きもおかしい)と考えられる。この結果、レスリングが5票→7票、近代五種が5票→4票となった。
 3回目の投票では、2回目でレスリングに票を移した2人の内1人が改心?して近代五種に変え、レスリング6票、近代五種5票となった。
 これで危機感を募らせた近代五種派が説得工作をし、最後の投票で2人を改心させ、レスリング6票→8票、近代五種5票→3票となったという推測ができる。

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2 コメント

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秀逸な (IDEA)
2013-03-21 19:52:47
英さん こんばんは。

秀逸な分析だと思います。
特に【補足】のところは、非常にリアルな感じがしますね。

オリンピックに限らず、近代スポーツが西欧中心になっているのは「事実」だと思います。
何しろ、もっとも歴史が古くてもっとも近代化が早かったのですから、そうなるのもまあ流れかなと。
アメリカで生まれた野球などは別として、古代オリンピックから続く競技などはほとんどそうなんでしょうね。

ヨーロッパには階級社会と言うものがあって(今でもあるらしいのですが)、貴族と言う人たちが存在してました。
彼らはお金と暇をたくさん持っていたので、いろいろな遊びや文化を考案したと伝えられています。
スポーツはもともとお金持ちの余暇だったのかもしれません。
階級社会は悲劇もたくさん生んだのですが、今に残る貴重な財産もたくさん生んだと言われています。
その一つが「スポーツ」なのでしょうね。

日本にも階級社会があったのですが、敗戦でほとんど吹っ飛んでしまいましたから、今では名残程度しか残っていないですもんね。

五輪の競技選定は、もともと不透明なものです。
何しろ投票行動そのものが密室で行われていますし、第三者による監視やチェック等もありません。
公的な資金を受けていない(IOC自体は)団体なので、やりたい放題ですよね。
「嫌なら出るな」という姿勢が見え見えですから(笑)手の付けようがない。
それにしても日本プロ野球にしろ全柔連にしろ、スポーツ競技関係の団体の不透明さというのはどこから来るんでしょうかね。
スポーツ=健全という幻想に守られているからなのでしょうか?


二重の始末の悪さ ()
2013-03-21 20:46:37
IDEAさん、こんばんは。
三度(みたび)のコメント、と言っても既に4つ目のコメントをして下さっています。ありがとうございます。

なるほど、西欧中心のスポーツ界と「嫌なら出るな」というやりたい放題のIOCと、二重に始末が悪いですね。

>スポーツ=健全という幻想

 改めて文字で見ると、苦笑いしてしまうような現状ですね。

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