酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

WPF、ニール・ヤング、そして遠藤ミチロウ~音楽で闘う者たち

2015-08-15 20:24:25 | 音楽
 安倍首相の70年談話(14日)は継ぎはぎだらけで、玉虫色の内容だった。沖縄でのヘリ墜落事故は、米軍特殊部隊と自衛隊の共同演習中に起きたとみる軍事専門家もいる。現実は戦争法案の彼方に進んでおり、明らかに首相の談話と乖離している。

 先日(12日)、渋谷・ハチ公前で開催された「WORLD PEACE FESTIVAL」(WPF)に参加した。俺は大場プロデューサーが場を離れる時、会場整理――といってもロープを持っているだけ――を担当した。棒立ちの俺の横、隣でロープを持つ美女が音楽に合わせて軽やかにステップを踏んでいた。

 東京新聞は1面、朝日新聞も社会面でWPFを取り上げていた。オープニングを飾ったROOT SOULのソリッドな演奏に、フジロック'10で見たジャガ・ジャシストを思い出す。出演者はそれぞれアピールしていたが、言葉で政治を語る難しさを実感する。政治家さえ稚拙な人が目に付くのだから、ミュージシャンにとっても容易ではない。その点で三宅洋平は傑出していた。

 自身、山本太郎参院議員、シールズの3者を意図的に離反させようと蠢く者がいると、三宅は切り出した。彼らをまとめて「極左」に分類する〝ネット右翼〟ではなく、合体を警戒する一部左翼を指している。言葉に接したこともないのに三宅をこき下ろし、山本を〝キワモノ〟と決めつけ、シールズの背後関係を仄めかす論調も気になる。チャランケを実践する三宅は「小さな差を乗り越えないと、権力に勝てない」と大同団結を呼びかけた。

 三宅は川内原発前で抗議を終えてやって来た。演奏の合間に、反原発と生き方との関わりを語る。戦争法案反対の盛り上がりと対照的に、フェイドアウトしつつある反原発の思いを込め、「川内原発再稼働反対」とシュプレヒコールを叫ぶ。そして今日(15日)、火山性地震が頻発している桜島の噴火警戒レベルが4に引き上げられた。

 外国人観光客がロープ内に入ってきて体を揺らしていた。三宅の持ち時間、アベックから「誰ですか」と尋ねられ、「三宅洋平といって」と説明しようとしたら、2人は雑踏へ遠ざかっていく。手を挙げて呼び止めても無視されてしまった。それはともかく、ささやかな試みが、うねりになっていくことを願っている。

 ニール・ヤングの「ザ・モンサント・イヤーズ」と遠藤ミチロウの「FUKUSHIMA」が最近の愛聴盤だ。多作ぶりがギネス級のニール・ヤングだが、「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」、「ハーヴェスト」、パール・ジャムが参加した「ミラー・ボール」ほか2、3枚しか聴いていない。そんな俺が本作に関心を持ったのは、「デモクラシー・ナウ!」等で大きく扱われていたからだ。本作は遺伝子組み換え食品を世界に流通させるモンサントを告発し、併せてスターバックスやウォルマートも攻撃している。

 ウィリー・ネルソンの息子たちのユニット「プロミス・オブ・ザ・リアル」との共演で、フォーク色、カントリー色の濃いアルバムだが、♯4「ビッグ・ボックス」のようにクレイジー・ホース時代を彷彿させる曲もあった。長年のファンは、ノスタルジックな気分に浸ることだろう。

 欧米のロックスターのメッセージ性といっても、米民主党、英労働党の掌で踊っているアーティストが大半で、資本主義の構造そのものに刃を向ける著名アーティストは極めて少数だ。ニールはこれまで、穀物メジャーによって没落を余儀なくされたアメリカの農民たちを支援し、環境問題や反核にも取り組んできた。カナダ人であること、商業的成功に拘る必要がないことも、反骨を保てる理由ではないか。

 上記の大場さんがプロデュースする「オルタナミーティング7」でPANTAと共演する遠藤ミチロウの「FUKUSHIMA」を、予習のため購入した。スターリンも聴いたことがない俺にとって〝ミチロウ初体験〟となった本作は、3・11以降、書きためた故郷福島への思いを詰め込んだ弾き語り集である。

 猥雑、途轍もないエネルギー、情念、怒り、誌的なイメージの煌めき、絶望、叙情、再生への夢、刹那的、詞の遊び、祝祭、自虐と露悪、喪失感、贖罪、鎮魂の思い……。これらが混然一体となったアルバムでとりわけ心に響いたのは、♯3「NAMIE(浪江)」、♯6「ワルツ」(友川かずき作)、♯8「俺の周りは」、♯11「放射能の海」、♯12「冬のシャボン玉」あたりか。聴き込むうち、脳裏のスクリーンに希望という名の蜃気楼がよぎった。

 既視感ならぬ既聴感を覚え、記憶の迷路を彷徨ううち、答えを見つけた。それは既読感というべきで、町田康の「告白」を読み終えた時の感覚と極めて近い。ミチロウと町田が共有するパンクスピリットが、分野を超えて無上の花を咲かせたのだろう。

 ニール・ヤングは69歳、そして妹の命を奪った膠原病と闘っている遠藤ミチロウは64歳……。気高い生き様に触れた以上、10月で59歳になる俺も老け込むわけにはいかない。無駄? に磨いた感性と蓄積した知性を、形にする手段はあるだろうか。
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