次の首相がきょう決まる。幾分ましに思える候補は馬淵氏だが、勝算はゼロだ。〝本籍アメリカ〟の前原氏は紳助同様、<反社会的な集団>との関係が囁かれ、永田町では支持が広がらない。
別稿(8月5日)で予測した小沢神話の崩壊が現実になった。小沢氏は自身の影響力を維持するため、海江田氏を選ぶ。脱原発の民意に反する最悪の選択に愕然とした。今回の流れで、小沢氏が政策より政局の人であったことが露呈した。
新宿で先日、「未来を生きる君たちへ」(10年、スサンネ・ビア監督)を見た。アフリカの剥き出しの暴力と北欧に潜む密やかな狂気が浮き彫りになる作品だった。主人公のアントン(ミカエル・パーシュブラント)はアフリカの難民キャンプで働くスウェーデン人の医師で、家族はデンマークで暮らしている。
ソマリアの飢餓がクローズアップされているが、アフリカを疲弊させたのは、グローバリズムと常任理事国の武器輸出だ。世界は確実に歪んでいるが、アントンに出来ることは限られている。伝染病や暴力に蝕まれた者を献身的に診療するだけだ。
デンマークとアフリカは<天国と地獄>として対比されるのではなく、同じ根を持つ世界の別の貌として描かれている。アントン自身、二つの地での存在の仕方は大きく異なる。アフリカでは敬意を得ているが、デンマークでは家族さえままならない。妻とは別居中で、長男のエリアスは学校でいじめに遭っている。
エリアスに強い味方が現れる。母を亡くしたばかりの転校生クリスチャンだ。いじめに抵抗できないエリアスと対照的に、クリスチャンは凶暴さを秘めていた。「力には力を」と主張し、自らにも突っかかってくる息子の友人に、アントンは不安を覚える。
休暇中に生じた波紋は、アフリカで血が滲んだうねりに転じる。正義とは、医師の良心とは、神とは……。アントンが苦悩していた頃、デンマークで思わぬ事態が進行していた。
人は、そして恐らく国も、癒やしと赦しで憎しみを克服できる……。ビア監督の信念と希望が結末に窺えた。冒頭とラストを含め本作に繰り返し現れるのは、トラックに乗るアントンらをアフリカの子供たちが追いかけるシーンだ。エリアスとクリスチャンだけでなく、アフリカの貧しい子供たちもまた、未来を担う重要な存在であると監督は訴えたかったのだ。
今年のベストワンと言い切れる本作のキーワードは、「奇跡」(是枝裕和監督)でも重要な意味を持った<世界>だ。父が漏らした「世界」という言葉に、主役の兄弟は戸惑う。「世界って何? どうしたら出会えるの?」……。思案する兄弟に小さな変化が訪れる。
デンマークとアフリカを交互に描き、俯瞰の目で同時代を捉えた本作は、想像力を駆使して世界と接することの意味を教えてくれる。グローバリズムと資本主義は、笑いながら、食べ物を頬張りながら、他者を殺すことが可能な構造をつくりあげた。想像力を駆使して世界を体感することがすべてのスタートラインだ。冒頭に記した日本の貧困な政治状況を変えるためにも……。
別稿(8月5日)で予測した小沢神話の崩壊が現実になった。小沢氏は自身の影響力を維持するため、海江田氏を選ぶ。脱原発の民意に反する最悪の選択に愕然とした。今回の流れで、小沢氏が政策より政局の人であったことが露呈した。
新宿で先日、「未来を生きる君たちへ」(10年、スサンネ・ビア監督)を見た。アフリカの剥き出しの暴力と北欧に潜む密やかな狂気が浮き彫りになる作品だった。主人公のアントン(ミカエル・パーシュブラント)はアフリカの難民キャンプで働くスウェーデン人の医師で、家族はデンマークで暮らしている。
ソマリアの飢餓がクローズアップされているが、アフリカを疲弊させたのは、グローバリズムと常任理事国の武器輸出だ。世界は確実に歪んでいるが、アントンに出来ることは限られている。伝染病や暴力に蝕まれた者を献身的に診療するだけだ。
デンマークとアフリカは<天国と地獄>として対比されるのではなく、同じ根を持つ世界の別の貌として描かれている。アントン自身、二つの地での存在の仕方は大きく異なる。アフリカでは敬意を得ているが、デンマークでは家族さえままならない。妻とは別居中で、長男のエリアスは学校でいじめに遭っている。
エリアスに強い味方が現れる。母を亡くしたばかりの転校生クリスチャンだ。いじめに抵抗できないエリアスと対照的に、クリスチャンは凶暴さを秘めていた。「力には力を」と主張し、自らにも突っかかってくる息子の友人に、アントンは不安を覚える。
休暇中に生じた波紋は、アフリカで血が滲んだうねりに転じる。正義とは、医師の良心とは、神とは……。アントンが苦悩していた頃、デンマークで思わぬ事態が進行していた。
人は、そして恐らく国も、癒やしと赦しで憎しみを克服できる……。ビア監督の信念と希望が結末に窺えた。冒頭とラストを含め本作に繰り返し現れるのは、トラックに乗るアントンらをアフリカの子供たちが追いかけるシーンだ。エリアスとクリスチャンだけでなく、アフリカの貧しい子供たちもまた、未来を担う重要な存在であると監督は訴えたかったのだ。
今年のベストワンと言い切れる本作のキーワードは、「奇跡」(是枝裕和監督)でも重要な意味を持った<世界>だ。父が漏らした「世界」という言葉に、主役の兄弟は戸惑う。「世界って何? どうしたら出会えるの?」……。思案する兄弟に小さな変化が訪れる。
デンマークとアフリカを交互に描き、俯瞰の目で同時代を捉えた本作は、想像力を駆使して世界と接することの意味を教えてくれる。グローバリズムと資本主義は、笑いながら、食べ物を頬張りながら、他者を殺すことが可能な構造をつくりあげた。想像力を駆使して世界を体感することがすべてのスタートラインだ。冒頭に記した日本の貧困な政治状況を変えるためにも……。